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第一章 予測できた邂逅
第二話 緑の亀の背に乗って
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さっきまで俺がいたはずの海面の景色も、もうとうの昔に忘れてしまった。それ程までに海は深く、慣れることのない目新しい景色が次々と俺の前に姿を現しては、消えていった。
不思議なことに深海でありながらこの亀につかまっている間は視界はクリアだし、呼吸もできる。高速で潜水していることから鑑みても水中での抵抗もないように感じられる。
ここで俺の悪いゲーマー癖が出た。もし、今、亀から手を離したらどうなるのだろうか、などと考えだした。
出来ることは試したくなってしまうのがゲーム廃人という生き物の悲しき性である。
好奇心が抑えられないお年頃……と言うには俺には少し可愛げが足りないが、た、試しに離してみようか。恐る恐る機械的なほどに均一な甲羅から指を浮かし始めると亀は言った。
「やめた方がいいですよ。離した瞬間、私の影響が消えて水圧でミンチになるので。」
焦るわけでもなく、あくまで事務的に淡々と亀は言った。それがむしろ俺に一抹の恐怖を感じさせた。明らかに海辺のときの物言いのそれとは違ったが、俺の軽率で短絡的な行動に幻滅したのかもしれないな、無理もない。
ミンチの話を聞いてから俺は萎縮してしまい、景色どころではなかった。
自分のゲーマー魂に殺されかければこうもなろう。
それからの俺はとにかく何もしないようにした。
#
体感時間で潜水を始めてから4、5時間程経っているが、未だ竜宮城に着く気配はない。時間的には、今はもう深夜だ。時間を気にし始めたらどうしようもないほどの眠気が襲ってきた。
「大丈夫ですよ。眠っていただいても。」
「えっ、そしたら俺ミントになるんじゃ……」
「大丈夫です。安全運転でいきますので、あと、手を離しても爽やかな口当たりにはならないのでご注意を」
言葉には相変わらず抑揚がなかったが、妙な安心感があった。俺はその内、眠りこけてしまった。
#
キイイイン
と、脳に直接語りかけてくるようなひどい耳鳴りと同時に俺は目を開けた。
ーーその瞬間俺は自分は死んでしまったのではないかと思った。
なぜなら俺の目には到底この世のものとは思えないほど美しく、壮大で且つ流麗な景色が広がっていたからだ。
「目が覚めましたかウラシマ様、ここがオトヒメ様が統治する竜宮城、その本殿前でございます。」
「ここが竜宮城……まるで天国みたいだな」
白を基調とした堂々たる本殿に、2本の金龍がトグロを巻くようして城の頂上に鎮座している。
ただの装飾ではあるが、それはまるでこの城全体に不届き者がいないかどうか睨みを利かせているようだった。
「どうぞ本殿へお進みください。オトヒメ様が待っておられます。」
「ん?お前は来ないのか?」
「私のような一介の従者に本殿へ入る権限はありません。私はこちらで待機ひております。」
……本殿に入ることすら許されないような従者を助けただけで人間がここに呼ばれるのか?
若干の違和感は感じたものの俺は進んだ。
赤と金の装飾が並ぶ渡り廊下には、大勢の従者が待機していた。人間一人相手にすごい対応だな。今までにここへ来た人間はいるのだろうか。あるいはあの浦島太郎の話は史実だったのだろうか。
そんなことを考えながら廊下を抜けると、宴会場へと辿り着いた。従者に案内されて自分の席と思わしき所に座った。
すると、宴会用の食事と共に、位の高そうな衣服を身に纏った初老の人間が出てきた。
いや、人は人なのだが身体的特徴として人間にはあるはずのないヒレやエラなどが存在している。これが俗に言う魚人ってやつなのか?
「遠路はるばる御足労願い申し訳ございません。小生はオトヒメ様の小間使いが一人、義籠と申す者です。なんでも、ウラシマ様は小生が指揮する軍の兵を救って頂いたとか、感謝してもしきれませぬ。」
自らを小間使いなどと謙遜してはいたが、『小生が指揮する軍』とか言ってる時点で重役確定じゃねーか!
やはり他の従者とは気迫が違う。そして、口では感謝しておきながら目は笑っていないように感じる。為政者たる者たとえ相手が客人だろうと隙は見せないというプロフェッショナル精神の表れだろうか。
「いえいえ、小生も人として当然のことをしたまででござるよ。」
なんか知らないけど小生って一人称かっこいいよね、
使ってみたくなるよね。その結果正しい日本語を話すことには失敗したけど。
シャラン
鐘の音が鳴る。
「抜け駆けはよくないな、義籠。よもや汝は余の命令よりも利益を優先するわけではあるまいな。」
「滅相もございません。小生はいつも貴方様のために、オトヒメ様。」
オトヒメ、この竜宮城の絶対的女帝にして、並み居る怪物達の中の頂点捕食者、それが俺の前に姿を現した。
うん、期待通り、美しい。
不思議なことに深海でありながらこの亀につかまっている間は視界はクリアだし、呼吸もできる。高速で潜水していることから鑑みても水中での抵抗もないように感じられる。
ここで俺の悪いゲーマー癖が出た。もし、今、亀から手を離したらどうなるのだろうか、などと考えだした。
出来ることは試したくなってしまうのがゲーム廃人という生き物の悲しき性である。
好奇心が抑えられないお年頃……と言うには俺には少し可愛げが足りないが、た、試しに離してみようか。恐る恐る機械的なほどに均一な甲羅から指を浮かし始めると亀は言った。
「やめた方がいいですよ。離した瞬間、私の影響が消えて水圧でミンチになるので。」
焦るわけでもなく、あくまで事務的に淡々と亀は言った。それがむしろ俺に一抹の恐怖を感じさせた。明らかに海辺のときの物言いのそれとは違ったが、俺の軽率で短絡的な行動に幻滅したのかもしれないな、無理もない。
ミンチの話を聞いてから俺は萎縮してしまい、景色どころではなかった。
自分のゲーマー魂に殺されかければこうもなろう。
それからの俺はとにかく何もしないようにした。
#
体感時間で潜水を始めてから4、5時間程経っているが、未だ竜宮城に着く気配はない。時間的には、今はもう深夜だ。時間を気にし始めたらどうしようもないほどの眠気が襲ってきた。
「大丈夫ですよ。眠っていただいても。」
「えっ、そしたら俺ミントになるんじゃ……」
「大丈夫です。安全運転でいきますので、あと、手を離しても爽やかな口当たりにはならないのでご注意を」
言葉には相変わらず抑揚がなかったが、妙な安心感があった。俺はその内、眠りこけてしまった。
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キイイイン
と、脳に直接語りかけてくるようなひどい耳鳴りと同時に俺は目を開けた。
ーーその瞬間俺は自分は死んでしまったのではないかと思った。
なぜなら俺の目には到底この世のものとは思えないほど美しく、壮大で且つ流麗な景色が広がっていたからだ。
「目が覚めましたかウラシマ様、ここがオトヒメ様が統治する竜宮城、その本殿前でございます。」
「ここが竜宮城……まるで天国みたいだな」
白を基調とした堂々たる本殿に、2本の金龍がトグロを巻くようして城の頂上に鎮座している。
ただの装飾ではあるが、それはまるでこの城全体に不届き者がいないかどうか睨みを利かせているようだった。
「どうぞ本殿へお進みください。オトヒメ様が待っておられます。」
「ん?お前は来ないのか?」
「私のような一介の従者に本殿へ入る権限はありません。私はこちらで待機ひております。」
……本殿に入ることすら許されないような従者を助けただけで人間がここに呼ばれるのか?
若干の違和感は感じたものの俺は進んだ。
赤と金の装飾が並ぶ渡り廊下には、大勢の従者が待機していた。人間一人相手にすごい対応だな。今までにここへ来た人間はいるのだろうか。あるいはあの浦島太郎の話は史実だったのだろうか。
そんなことを考えながら廊下を抜けると、宴会場へと辿り着いた。従者に案内されて自分の席と思わしき所に座った。
すると、宴会用の食事と共に、位の高そうな衣服を身に纏った初老の人間が出てきた。
いや、人は人なのだが身体的特徴として人間にはあるはずのないヒレやエラなどが存在している。これが俗に言う魚人ってやつなのか?
「遠路はるばる御足労願い申し訳ございません。小生はオトヒメ様の小間使いが一人、義籠と申す者です。なんでも、ウラシマ様は小生が指揮する軍の兵を救って頂いたとか、感謝してもしきれませぬ。」
自らを小間使いなどと謙遜してはいたが、『小生が指揮する軍』とか言ってる時点で重役確定じゃねーか!
やはり他の従者とは気迫が違う。そして、口では感謝しておきながら目は笑っていないように感じる。為政者たる者たとえ相手が客人だろうと隙は見せないというプロフェッショナル精神の表れだろうか。
「いえいえ、小生も人として当然のことをしたまででござるよ。」
なんか知らないけど小生って一人称かっこいいよね、
使ってみたくなるよね。その結果正しい日本語を話すことには失敗したけど。
シャラン
鐘の音が鳴る。
「抜け駆けはよくないな、義籠。よもや汝は余の命令よりも利益を優先するわけではあるまいな。」
「滅相もございません。小生はいつも貴方様のために、オトヒメ様。」
オトヒメ、この竜宮城の絶対的女帝にして、並み居る怪物達の中の頂点捕食者、それが俺の前に姿を現した。
うん、期待通り、美しい。
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