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第一章 予測できた邂逅
第四話 サイクロプスは出てこない
しおりを挟む「え?異世界?」
そんな俺の困惑を轢き潰すかのように龍車が目の前を横切った。
「いまいち状況が飲み込めないんだが……」
「俺、死んだの?」
夢オチ展開ではないだろうな。なぜなら俺の手にはさっきオトヒメからもらった玉手箱が入った便利収納ふろしきが握られているからだ。いやーこれまた便利、って現実逃避してる場合じゃないな。
これって異世界転生だよな、死ぬことで別世界に転生するって言う……それってつまり俺は死んだって事で。
だとしたら俺はいつ死んだんだ?
あのカメから投げ出されたときに頭でも打ったのか?
「あっ」
カメ!そうだ、あのカメはどこに。
#
海岸に戻ってもカメはいなかった。
そういえばあいつ『任務完了』とか言ってたな。『任務』ってなんだ?
ないものを憂いてもしょうがない。今はとりあえず落ち着こう。
#
俺は二、三時間海岸をウロウロして途方に暮れた後、ようやく街に入る決心をした。
とりあえず情報収集だ。
言葉が通じないハードな展開だけはやめてくれよ……
比較的健全そうな店を選び、中に入って店員に話しかけた。
「あ、あのーすいません、ちょっとこの辺りの世界観を教えてくれませんかね~あっ世界観とか分からないか、だったら竜宮城のこととか何か知ってたりします?」
若干早口になったけど頼む、伝わってくれ!
顎髭がよく似合うガタイのいい店長らしき男は身を乗り出して言った。
「んぁぬいっちょるぬべかささ、もぉういっちゅーいったんげ?」
……駄目だ何言ってるか一つも分からん。別言語パターンだ。
終わった。
俺が突然のハードモードの人生に文句をつけ始めるより先に、
バタン
と、扉が開く音がした。
「へいへいマスター、お客さんが困ってますよ!」
そう後ろから声が聞こえて思わず振り向いた。日本語だ!
振り向いた先には黒髪ショートに紫紺の目の少女が立っていた。
もしかして彼女も転生者なのか?いや、黒髪に紫の目は明らかに地球産のものではない。
「ごめんな~うちのマスター40手前まで実家に引きこもってたから、碌に王都に出たこともなくて、訛りが抜けてねーんだ。」
ああ、よかった。じゃあこのマスターが異常だっただけなのかって、
「え!?あれ訛りなの?」
「聞き取りづらいよな~異世界の言語みたいだよな!」
「いや、異世界の言語じゃねーのかよ、そもそもあそこまで訛ってたらもはや異世界語みたいなもんだろ」
「な~」
「いや、な~って……」
口ではツッコむもののホッと一息。どうやら言語は統一されているらしい。
「なあ、アンタ!」
「な、なんでしょう」
「さっき竜宮城がどうとか言ってたよな!」
「は、はい」
ずいぶんと無邪気な人だな。いや、実際子供なのかもしれない。
身長は145くらいだし、でも、今の俺には彼女は導き手の女神に見える。
「行くつもりなのか?竜宮城!」
「つもりって言うか」
ドゴォン
と、俺が言葉を言い切らない内に轟音が後ろから鳴り響いた。
「サイクロプスだ!逃げろ!」
店の客が騒ぎ出し店から急いで出て行った。
サイクロプス!?
サイクロプスってあの!?
ますます訳が分からなくなってきた。
「兄ちゃん、逃げるぞ!」
「え?ああ、」
外に出るとそこには一つ目の巨人が金棒を持って街を破壊していた。そう、あれがサイクロプスだ。
「いったいなんで……」
「なんでもなにも、魔物は魔力を欲して人や街を襲う。問題はサイクロプスが探してるそのバカでかい魔力の出どころだ。」
「あ……」
「どうした!兄ちゃん!」
「不本意ながら魔力の出どころに心当たりがある」
そういうと俺はおもむろに風呂敷から玉手箱を取り出した。
ーーその瞬間、俺は空を飛んでいた。
いや、『飛んでいた』というより『舞っていた』
……いや、『舞っていた』にも語弊がある。
端的に言えば『吹き飛ばされていた』
「グッ」
「兄ちゃん!大丈夫か!」
……さーて、今の俺にとって『いい話』と『悪い話』がある。どっちから話そうか。
『いい話』は飛ばされた先が屋根の上で重傷は免れたこと。
『悪い話』は免れたのは『重傷』だけだったってこと。
それともう一つ、
俺の知ってる浦島太郎にはサイクロプスは出てこないってこと。
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