僕と彼女の七日間

PeDaLu

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【それから】

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「ん~、今日もいい天気だわ」
 高校三年生の春。あの桜並木も満開の桜に彩られて学生たちを迎え入れてくれている。本当ならこの景色を一条先輩と一緒に見るはずだったけども……。それは叶わななかった。でもこれが一条先輩の出した答えなら受け入れなくちゃいけない。あの時、一条先輩がどんな決意をしたのか。今ならそれが私にもわかる。私の方が先に死ぬのが分かっていたら自分が死んで、と選択したかも知れないけども、私が生き残った方が一条先輩は喜ぶ。そう思ったら私が生き残った方が、って思っていたと気がついたから。
 あれから、私の案内人は姿を消してしまったけれど、私はあの案内人を恨んでいない。だって案内人がいなければ一条先輩に出会うことはなかったわけだし。あと、一条先輩を好きだと言っていたという人も結局誰だったのか分からなくなってしまった。同じクラスにいたらしいけども、それらしき人はお葬式で見なかった。きっとその人も私たちと同じような人だったのかも知れない。だとしたら一条先輩と付き合うことができなかったその子はきっともっと辛い思いをしたのだろう。その人のことを、そう考えると私はもっと強く生きなければならないと思う。それに。あと半年もすれば一期一憂のお祭りで一条先輩に会おうと思えば会える。でも私は今は会いに行かない。どうしても心が折れそうな時に助けてもらうのが一番だと思ったから。そう思いながら私は桜並木を歩く。

「元気そうにやってるみたいだな」
「そうね。って、あなたは今の仕事を全うしないさいよ。無理を言って途中で代わってもらったんだから」
「そうだな」
 僕は未来に坂城さんと付き合う予定の人のシナリオライターをやらせて貰っている。この人の人生をねじ曲げるような感じで心苦しかったけども、シナリオライターと言うのはそのくらいの気概がないとやっていけないらしい。現世の人間を好きになる。だからシナリオにもそのことを書く。坂城さんは僕、一条亮斗とは付き合うことはできないけれど、僕の心の人物とは付き合うことができる。菜々緒ちゃんは輪廻転生なんてないって言っていたけども、これは生きながらにしての輪廻転生だ。本来なら別の人がこの人物のシナリオライターをやっていたのだけれど、無理を言って交代して貰った。そのシナリオライターのままでもこの人物は坂城さんと付き合うことになっていたらしい。だからそれを僕に代わって貰ったってわけだ。わがままだけどもこれで坂城さんと僕は一生、一緒に居れることになる。これじゃ僕が坂城さんを縛り付けているようになるけど、それくらいはいいじゃないか。
「彼女、一期一憂のお祭りに来ると思う?」
「僕と喧嘩をしない限りは来ないんじゃないかな」
「あなたがシナリオを書いてるんだから喧嘩させれば会えるんじゃないの?」
「そうかも知れないけれど、今、坂城さんと会っても何も話せないんじゃないかな」
「なんで?」
「だって坂城さん、僕のことを理解してくれたみたいだし」
「理解、かぁ。私も生きている時に理解してくれるような人、居てくれたらなぁ」
「居なかったんですか?」
「残念ながら。でもこうして案内人をやっていると、自分のことを理解してくれる人に出会えるんだ」
「死ぬことを受け入れてくれるみたいな?」
「そういうのとはちょっと違うけど。なんていうかな。今回の一条くんたちみたいな。ちゃんと私のことを理解して付いて来てくれる人たちに出会うってことかな。私は生前の未練を断ち切るのが仕事だから」
 未練。僕は坂城さんとの別れ、未練を断ち切れたのだろうか。断ち切ったからこそ、彼女を生かす選択をしたのだろうか。なんにせよ、僕はこの選択をして良かったと思っている。だって、二人とも死んでも意味がないじゃないか。片方が生き残る方がいいに決まっている。なんか自分に言い聞かせている感じがしないではないけれど、この人の人生を僕は託されたんだ。託された人生を僕は書き続ける。坂城さんの未来のために。
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