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「「「「「はあ………」」」」」
とある王宮内の一室で、ソファに背を預けて、一斉に五人が息を吐き出した。
「あー。穏便に終わって良かったぁ…」
エイデンが天を仰ぎながらそう呟く。
「穏便?穏便でしたの、あれ?」
最後のフィルマへの王妃の姿を思い出し、リネットは遠い目をしながらそう言った。
「まあ、流血沙汰にならなかったと言うことならば、穏便だったのではないかと…」
苦笑しながらダニエルが口にする。
「そうだねぇ。調べ始めた時は、半信半疑だったけど。父上もやっちゃったねぇ…」
上を向いて目を閉じたまま、カイエンがそう言う。
「二妃様も三妃様も王妃様の味方ですからね。かなり絞られているのではないでしょうか?申し訳ないですわね」
頬に手を当てたアディエルの言葉に、四人が呆れた顔を向ける。
「そもそも何で義姉上は、グレイン兄上…じゃなかったグレイン殿の首の付け根のホクロに気づいたのさ?」
エイデンの言葉に、ひくりと小さくアディエルの口の端が引き攣った。
「…私。初めての王族との顔合わせのお茶会で、あの方に池に落とされましたの…」
「あー。あったねぇ。その後、さりげなくグレインの足引っ掛けて、バレないように池に落とし返してたねぇ…。私はあれを見て、アディを妻にしたいと思ったんだよねぇ…」
「「「……え?」」」
カイエンの発言に、三人は声を揃えた。
何故、そんな事になるのか、彼らには理解できなかった。
「そうでしたわね。あの時の事が原因で、カイ様にはずーっと声をかけられてましたもの…」
遠い目をするアディエル。
「いや、話ずれてる。池に落とされて、何でホクロ?」
エイデンの言葉に、アディエルは息を吐き出す。
「あの方、池から上がるなり、ベタついて気持ち悪いからと、人前でシャツを脱ぎ捨てましたのよ…」
「…それは…。目につきますわね…」
呆れ顔のリネットが首を振る。
「それにしても、御二方とも良かったのですか?」
ダニエルの言葉に、カイエンとエイデンは顔を見合せ、肩を竦めた。
「まあ、血が繋がってなかったけど、生まれてから今までずっと兄弟として育っていたからね。いずれ離れていくと分かってても、それなりに仲良く付き合っていたとは思ってたんだ…」
「そうですよねぇ。寧ろ愚かすぎて、王籍外れて大丈夫なのかと心配でしたしねぇ…」
「だからこそ、アディエルはこの計画を立てたんだろ?」
カイエンの言葉に微笑むアディエル。
「グレイスの件はあそこにいた者しか知らない。一名を除き、口が堅く、王家に忠誠を誓った者達ばかりだ。外に漏れることは無い。グレインに関しては、まあ卒業パーティーでの一件で、ナタリー男爵令嬢と結婚することを勘ぐる者もいないだろう」
結局、フィルマは三妃から詳しく説明され、グレインとの結婚を受け入れた。
生か死か。
王妃に問われた言葉に、答えの出せないフィルマに対し、呆れながらも説明したのは三妃であった。
口封じのために殺されるか、全てを受け入れ、一生口を噤んでグレインと共に生きるか。
その選択を迫られていたのだと知るなり、フィルマは生きることを選んだ。
現在は呼び出されている父親と兄と一緒に、今後を話し合っているであろう。
男爵家に婿入りとは言ったものの、どちらにも無理だろうなと、全員が思っている。
恐らく、跡取りのいなくなった寂れた辺境の領地に爵位を与えられて、治めることになるだろうなと予想している。
そして、本人達には知らされず、監視としての使用人が周りに配置されるのだ。死ぬまでずっと……。
アディエルは、グレインと血が繋がっていない事を知った二人の王子が、彼を嫌っていないことを知っていた。
グレイスの関わらない場所では、三人の仲は良かったのだ。
案の定、二人はグレイスのとばっちりを受けるであろうグレインのことを、言葉にはしないが心配していた。
そして、アディエルはグレイン親子が、自分が彼らの婚約者だと思い込まれていることに気づいていた。
だから、グレインの側にいたダニエルから情報を手に入れた。
卒業パーティーという大勢の貴族達の集まる中で、如何にグレインが王族として向いていないかを証明し、爵位の低い令嬢を伴侶として選ぶように仕向けたのだ。
実際、どこの令嬢にするか悩む間もなく、自主的に現れたフィルマに、アディエルは安堵した。
彼女は確実にグレインに想いを向けていなかったからだ。
己の欲望を満たすために、他人を陥れることも気にしないフィルマに、良心の呵責など必要ない。
アディエルはダニエル以外にいた数人の協力者も使って、グレインが自分との婚約破棄を言い出すように誘導したのだ。
アディエルは周囲からは穏やかで物静かな淑女と思われているが、その中身は己の懐に入れた者に対して仇なす者には、情け容赦のない性格をしていた。
やられる前にやる!
彼女のそんな内面を正確に理解していたのは、両親と王妃。側妃の二人である。
この場にいる四人には知らせていないが、最終確認は王妃達と済ませていたのだ。
知らぬが華。
そして、この卒業パーティー以降。アディエルはあちこちの夜会や茶会で、家族や婚約者の相談を受け、次々と解決していく内に『断罪令嬢』と呼ばれることとなったのであるーー。
とある王宮内の一室で、ソファに背を預けて、一斉に五人が息を吐き出した。
「あー。穏便に終わって良かったぁ…」
エイデンが天を仰ぎながらそう呟く。
「穏便?穏便でしたの、あれ?」
最後のフィルマへの王妃の姿を思い出し、リネットは遠い目をしながらそう言った。
「まあ、流血沙汰にならなかったと言うことならば、穏便だったのではないかと…」
苦笑しながらダニエルが口にする。
「そうだねぇ。調べ始めた時は、半信半疑だったけど。父上もやっちゃったねぇ…」
上を向いて目を閉じたまま、カイエンがそう言う。
「二妃様も三妃様も王妃様の味方ですからね。かなり絞られているのではないでしょうか?申し訳ないですわね」
頬に手を当てたアディエルの言葉に、四人が呆れた顔を向ける。
「そもそも何で義姉上は、グレイン兄上…じゃなかったグレイン殿の首の付け根のホクロに気づいたのさ?」
エイデンの言葉に、ひくりと小さくアディエルの口の端が引き攣った。
「…私。初めての王族との顔合わせのお茶会で、あの方に池に落とされましたの…」
「あー。あったねぇ。その後、さりげなくグレインの足引っ掛けて、バレないように池に落とし返してたねぇ…。私はあれを見て、アディを妻にしたいと思ったんだよねぇ…」
「「「……え?」」」
カイエンの発言に、三人は声を揃えた。
何故、そんな事になるのか、彼らには理解できなかった。
「そうでしたわね。あの時の事が原因で、カイ様にはずーっと声をかけられてましたもの…」
遠い目をするアディエル。
「いや、話ずれてる。池に落とされて、何でホクロ?」
エイデンの言葉に、アディエルは息を吐き出す。
「あの方、池から上がるなり、ベタついて気持ち悪いからと、人前でシャツを脱ぎ捨てましたのよ…」
「…それは…。目につきますわね…」
呆れ顔のリネットが首を振る。
「それにしても、御二方とも良かったのですか?」
ダニエルの言葉に、カイエンとエイデンは顔を見合せ、肩を竦めた。
「まあ、血が繋がってなかったけど、生まれてから今までずっと兄弟として育っていたからね。いずれ離れていくと分かってても、それなりに仲良く付き合っていたとは思ってたんだ…」
「そうですよねぇ。寧ろ愚かすぎて、王籍外れて大丈夫なのかと心配でしたしねぇ…」
「だからこそ、アディエルはこの計画を立てたんだろ?」
カイエンの言葉に微笑むアディエル。
「グレイスの件はあそこにいた者しか知らない。一名を除き、口が堅く、王家に忠誠を誓った者達ばかりだ。外に漏れることは無い。グレインに関しては、まあ卒業パーティーでの一件で、ナタリー男爵令嬢と結婚することを勘ぐる者もいないだろう」
結局、フィルマは三妃から詳しく説明され、グレインとの結婚を受け入れた。
生か死か。
王妃に問われた言葉に、答えの出せないフィルマに対し、呆れながらも説明したのは三妃であった。
口封じのために殺されるか、全てを受け入れ、一生口を噤んでグレインと共に生きるか。
その選択を迫られていたのだと知るなり、フィルマは生きることを選んだ。
現在は呼び出されている父親と兄と一緒に、今後を話し合っているであろう。
男爵家に婿入りとは言ったものの、どちらにも無理だろうなと、全員が思っている。
恐らく、跡取りのいなくなった寂れた辺境の領地に爵位を与えられて、治めることになるだろうなと予想している。
そして、本人達には知らされず、監視としての使用人が周りに配置されるのだ。死ぬまでずっと……。
アディエルは、グレインと血が繋がっていない事を知った二人の王子が、彼を嫌っていないことを知っていた。
グレイスの関わらない場所では、三人の仲は良かったのだ。
案の定、二人はグレイスのとばっちりを受けるであろうグレインのことを、言葉にはしないが心配していた。
そして、アディエルはグレイン親子が、自分が彼らの婚約者だと思い込まれていることに気づいていた。
だから、グレインの側にいたダニエルから情報を手に入れた。
卒業パーティーという大勢の貴族達の集まる中で、如何にグレインが王族として向いていないかを証明し、爵位の低い令嬢を伴侶として選ぶように仕向けたのだ。
実際、どこの令嬢にするか悩む間もなく、自主的に現れたフィルマに、アディエルは安堵した。
彼女は確実にグレインに想いを向けていなかったからだ。
己の欲望を満たすために、他人を陥れることも気にしないフィルマに、良心の呵責など必要ない。
アディエルはダニエル以外にいた数人の協力者も使って、グレインが自分との婚約破棄を言い出すように誘導したのだ。
アディエルは周囲からは穏やかで物静かな淑女と思われているが、その中身は己の懐に入れた者に対して仇なす者には、情け容赦のない性格をしていた。
やられる前にやる!
彼女のそんな内面を正確に理解していたのは、両親と王妃。側妃の二人である。
この場にいる四人には知らせていないが、最終確認は王妃達と済ませていたのだ。
知らぬが華。
そして、この卒業パーティー以降。アディエルはあちこちの夜会や茶会で、家族や婚約者の相談を受け、次々と解決していく内に『断罪令嬢』と呼ばれることとなったのであるーー。
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