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【番外編】侯爵令嬢は今日もにこやかに拒絶する
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「そう言えば兄上達はいつから婚約が決まってたの?」
王太子カイエンと、第三王子エイデンから連名で招かれた茶会で、突然そう訊ねられた王太子の婚約者であるアディエルは、目をパチパチと瞬かせた。
「…いつから、ですか?さて?いつでしょうか?」
頬に手を当て、コテンと愛らしく手とは反対側に、首を傾げつつ悩んでいるアディエルに、彼女の婚約者であるカイエンは苦笑する。
愛らしく首を傾げるアディエルの仕草。
彼女をよく知る者ならば、おそらく今の彼女が本当に悩んでいると分かるのだ。
何故なら彼女には癖がある。
頬に手を当てた側に首を傾げた時は、それらしく演じている時。手と反対側に首を傾げた時は、素である。
つまり、彼女はエイデンの質問に本気で悩んでいるということだ。
当然だろう。アディエルは、カイエンがいつから彼女を婚約者にすると決めていたかを知らないのだから。
婚約を打診したのは、確かに学園入学前の十二の時。
当時は、第一王子であったグレインからも同時に申し込まれていたと知り、後で呆れたものだが、侯爵家は当然ながらカイエンとの婚約を受け入れた。
公式発表は学園卒業時での王太子としての宣言と共にされるのだが、妃教育は入学時には始まった。
婚約者として、休みの日には二人で会い、学園や妃教育の合間に二人きりで茶会もし、こまめに贈り物もした。
今となっては、かなり頻繁に人目に付いていたと思うのに、何故グレインが気づけなかったのか謎である。
「アディエル嬢。アディと呼んでもよいですか?」
婚約して半年経った頃。カイエンはアディエルにそう訊ねた。
「……ええ。お好きにお呼びくださいませ♪」
答えるまでに一瞬間があったことに、カインは引っかかりを覚えた。
「では、アディ。私のこともカイと呼んでください♪」
引っかかりを覚えながらも、カインが微笑んでそう言うと、
「まあ。恐れ多いことですのに、よろしいのですか?」
右頬に手を当て、コテンと首を右に傾げるアディエル。
「ええ、もちろんです。アディは私の婚約者ですから」
「分かりましたわ、カイ様」
それから、よくアディエルを観察していると、時折、手とは反対側に首を傾げることがある事に気がついた。
どうしてなのだろう?
それはさらに半年後。婚約が決まってから一年が過ぎた頃に判明した。
課外授業の班分けで、カイエン達はグレインが一緒の班になった。
四人一組の班分けだったので、もう一人は伯爵家の令嬢がいた。
当然、自分が一番だと仕切りたがるグレインを、適当に好きにさせておこうとカイエンは大人しくしていた。
伯爵令嬢に至っては、空気と化している状態である。
アディエルはといえば、たまに頬に手を当てながら、適当に返事を返していた。
笑みを浮かべていても、面倒くさいという気配が露骨に出されているのだが、それに気づけるようなグレインではない。
さて、どうしたものかと思っていた時だ。
「…というわけだ。どうだ!俺のこの衣装の素晴らしさが理解出来たかっ!!」
胸を張りながら、グレインが今日の衣装を自慢していた。特別なデザインだと語っていたのだ。
しかし、カイエンは知っている。
彼が着ている衣装が、実はとある意味で有名な人形と同じ意匠で作られていたことを……。
人形を気に入った側妃が、わざわざグレイン用にと作らせたのだ。ちなみに側妃は、その人形の持つ意味を全く知らない。
「…はい。素晴らしいですわ。ヴィットルーガの人形のようですわね♪」
そう言ったアディエルは、右頬に手を当て、首をコテンと右側に倒したのだ。
ヴイットルーガの人形。
それが意味するのは、『見かけだけで中身空っぽ』。
全国に支店を持つ大商会ヴイットルーガ。
その店先には、美しい衣装を着せられた人形が店内に飾られ、客の興味を惹いている。
美しい同じ姿の人形が、店内に無数に置かれているため、その人形にもかなりの額の金がかかっていると言われていたのだが、実は中が空洞の木の幹を加工し、特殊な染料で色をつけていただけなので、見習いの子供でも運べる軽さなのだ。
そのため、中身がともわないという意味で、その人形が例えられることが多くなった。
さすがにこれは気づいて怒るだろうと、カイエンはアディエルを庇うつもりで側に控えた。
「ヴィットルーガの人形とは、なかなか良い褒め言葉ではないかっ!」
しかし、グレインはグレインだった。
彼はアディエルの放った分かりやすい嫌味を褒め言葉として受け止めたのだ。
ご機嫌になったグレインが、離れている者達にも自慢に向かう姿に、残された三人はポカンとなった。
「…グレイン殿下は、ヴィットルーガの商会名しかご存知なかったのでしょうか?」
いつもの愛らしい笑みを浮かべないまま、アディエルがコテンと、手を置いた頬とは反対側に首を傾げた姿に、カイエンは首を傾げる方向で、アディエルの言葉の裏を知ることが出来ると理解した。
それからは、率先してアディエルの反応を楽しむように、会話や贈り物を頻繁にするようになった。
彼は、アディエルを婚約者にしようと決めた時の彼女が欲しかったのだーーーー。
王太子カイエンと、第三王子エイデンから連名で招かれた茶会で、突然そう訊ねられた王太子の婚約者であるアディエルは、目をパチパチと瞬かせた。
「…いつから、ですか?さて?いつでしょうか?」
頬に手を当て、コテンと愛らしく手とは反対側に、首を傾げつつ悩んでいるアディエルに、彼女の婚約者であるカイエンは苦笑する。
愛らしく首を傾げるアディエルの仕草。
彼女をよく知る者ならば、おそらく今の彼女が本当に悩んでいると分かるのだ。
何故なら彼女には癖がある。
頬に手を当てた側に首を傾げた時は、それらしく演じている時。手と反対側に首を傾げた時は、素である。
つまり、彼女はエイデンの質問に本気で悩んでいるということだ。
当然だろう。アディエルは、カイエンがいつから彼女を婚約者にすると決めていたかを知らないのだから。
婚約を打診したのは、確かに学園入学前の十二の時。
当時は、第一王子であったグレインからも同時に申し込まれていたと知り、後で呆れたものだが、侯爵家は当然ながらカイエンとの婚約を受け入れた。
公式発表は学園卒業時での王太子としての宣言と共にされるのだが、妃教育は入学時には始まった。
婚約者として、休みの日には二人で会い、学園や妃教育の合間に二人きりで茶会もし、こまめに贈り物もした。
今となっては、かなり頻繁に人目に付いていたと思うのに、何故グレインが気づけなかったのか謎である。
「アディエル嬢。アディと呼んでもよいですか?」
婚約して半年経った頃。カイエンはアディエルにそう訊ねた。
「……ええ。お好きにお呼びくださいませ♪」
答えるまでに一瞬間があったことに、カインは引っかかりを覚えた。
「では、アディ。私のこともカイと呼んでください♪」
引っかかりを覚えながらも、カインが微笑んでそう言うと、
「まあ。恐れ多いことですのに、よろしいのですか?」
右頬に手を当て、コテンと首を右に傾げるアディエル。
「ええ、もちろんです。アディは私の婚約者ですから」
「分かりましたわ、カイ様」
それから、よくアディエルを観察していると、時折、手とは反対側に首を傾げることがある事に気がついた。
どうしてなのだろう?
それはさらに半年後。婚約が決まってから一年が過ぎた頃に判明した。
課外授業の班分けで、カイエン達はグレインが一緒の班になった。
四人一組の班分けだったので、もう一人は伯爵家の令嬢がいた。
当然、自分が一番だと仕切りたがるグレインを、適当に好きにさせておこうとカイエンは大人しくしていた。
伯爵令嬢に至っては、空気と化している状態である。
アディエルはといえば、たまに頬に手を当てながら、適当に返事を返していた。
笑みを浮かべていても、面倒くさいという気配が露骨に出されているのだが、それに気づけるようなグレインではない。
さて、どうしたものかと思っていた時だ。
「…というわけだ。どうだ!俺のこの衣装の素晴らしさが理解出来たかっ!!」
胸を張りながら、グレインが今日の衣装を自慢していた。特別なデザインだと語っていたのだ。
しかし、カイエンは知っている。
彼が着ている衣装が、実はとある意味で有名な人形と同じ意匠で作られていたことを……。
人形を気に入った側妃が、わざわざグレイン用にと作らせたのだ。ちなみに側妃は、その人形の持つ意味を全く知らない。
「…はい。素晴らしいですわ。ヴィットルーガの人形のようですわね♪」
そう言ったアディエルは、右頬に手を当て、首をコテンと右側に倒したのだ。
ヴイットルーガの人形。
それが意味するのは、『見かけだけで中身空っぽ』。
全国に支店を持つ大商会ヴイットルーガ。
その店先には、美しい衣装を着せられた人形が店内に飾られ、客の興味を惹いている。
美しい同じ姿の人形が、店内に無数に置かれているため、その人形にもかなりの額の金がかかっていると言われていたのだが、実は中が空洞の木の幹を加工し、特殊な染料で色をつけていただけなので、見習いの子供でも運べる軽さなのだ。
そのため、中身がともわないという意味で、その人形が例えられることが多くなった。
さすがにこれは気づいて怒るだろうと、カイエンはアディエルを庇うつもりで側に控えた。
「ヴィットルーガの人形とは、なかなか良い褒め言葉ではないかっ!」
しかし、グレインはグレインだった。
彼はアディエルの放った分かりやすい嫌味を褒め言葉として受け止めたのだ。
ご機嫌になったグレインが、離れている者達にも自慢に向かう姿に、残された三人はポカンとなった。
「…グレイン殿下は、ヴィットルーガの商会名しかご存知なかったのでしょうか?」
いつもの愛らしい笑みを浮かべないまま、アディエルがコテンと、手を置いた頬とは反対側に首を傾げた姿に、カイエンは首を傾げる方向で、アディエルの言葉の裏を知ることが出来ると理解した。
それからは、率先してアディエルの反応を楽しむように、会話や贈り物を頻繁にするようになった。
彼は、アディエルを婚約者にしようと決めた時の彼女が欲しかったのだーーーー。
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