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【番外編】腹黒王子は今日もこっそりと観察する
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四阿に着くと、彼女をベンチに座らせ、その隣りに腰を下ろした。
人払いをすると、使用人も護衛も声の聞こえない場所まで離れていった。
「ねえ、アディ。私は今まで君に婚約して欲しいと言い続けてきたよね?」
「そうですわね」
「いつも断られてるけど…」
「そうですわね」
「…エイデンにね。『何で断られてるの?』って言われて、アディから理由を聞いてないことに気づいたんだ…」
ハアと溜息をつきながらそう言ったカイエンに、アディは不思議そうな顔を向けた。
「ねえ、アディ。私の婚約者になるのは、どうして嫌なの?」
「……私は、両親に憧れてますので…」
「侯爵?ああ、夫人と仲がよろしいね。理想の夫婦と言われてると聞いてるよ?」
「…二妃様と三妃様のお話も聞いています…」
「……なるほど…」
アディエルの言葉に、カイエンは理解してしまった。
政略結婚だと言うのに、侯爵夫妻は周囲が羨むほどの仲睦まじさである。
そんな両親を見て育ったアディエルに取って、自分を支える立場の者と言えど、自分以外の妻を選ぶことは真っ平御免であった。
つまり、アディエルは『一夫多妻制はお断りします』と言うことなのだ。
しかし、カイエンはもうアディエルしか選ぶつもりは無い。
その後のやり取りで、彼は『一夫多妻制』を廃止する法案を作ることを提案し、納得したら婚約を受け入れて、法案を通す手伝いを頼んだ。
しかし、翌年。アディエル達の母親セリナは、馬車の事故で怪我を負い、数週間で儚くなってしまった。
夫である侯爵の嘆きは凄まじく、アディエルとダニエルも、しばらく暗い顔をしている日が続いた。
そうして喪が開けた翌年。
侯爵がとある未亡人と再婚したことで、社交界に激震が走った。
当然、カイエンも驚いて、アディエル達姉弟を呼び出した。
「どういうことだい!?」
呼び出された二人は、キョトンとしてカイエンを見ていた。
「どうと申されましても…、ねえ?」
「母様の遺言を父様が守った…としか言えません」
コテンと首を傾げたアディエルの隣で、ダニエルも首を傾げながら答えた。
「……遺言?夫人は何て遺言を遺したんだい?」
聞けば、後妻は夫人の親友で、三年前に病気で夫を無くした未亡人だった。
二人の間に子供はおらず、夫の実家から追い出され、実家で肩身の狭くなっていた親友を、子供達の教師として雇うつもりだったらしい。
そんな折の事故である。
幾ばくも残ってない我が身の余命を悟った夫人ーセリナは、夫と親友、そして二人の子供を呼び寄せた。
「ねえ、エクレア。あたくし、夢がまだ叶っていないの。このままじゃ、もう叶えられない。あたくしの代わりに叶えて欲しいのっ!!」
その夢の内容に、親友と夫は頭を抱えた。
夫人の夢。
それは子供は三人欲しかった!
アディエルの花嫁衣裳選んで、ベールに刺繍をしたかった!
この二点である。
親友には夢を叶えて欲しいと言い、夫には自分を愛したように、親友も愛して欲しいと告げた。
それが無理なら、自分という存在を忘れないための同志として、共に生きて欲しいと苦しみの中、泣きついた。
アディエルとダニエルは、母の願いなら叶えたかったし、後妻を迎えると言うならば、母の信頼しているエクレアが適任だと思った。
だから、子供二人は死の間際の母親の味方についた。
こうなると、二人は強く拒めなくなり、仕方なく約束をした。
人払いをすると、使用人も護衛も声の聞こえない場所まで離れていった。
「ねえ、アディ。私は今まで君に婚約して欲しいと言い続けてきたよね?」
「そうですわね」
「いつも断られてるけど…」
「そうですわね」
「…エイデンにね。『何で断られてるの?』って言われて、アディから理由を聞いてないことに気づいたんだ…」
ハアと溜息をつきながらそう言ったカイエンに、アディは不思議そうな顔を向けた。
「ねえ、アディ。私の婚約者になるのは、どうして嫌なの?」
「……私は、両親に憧れてますので…」
「侯爵?ああ、夫人と仲がよろしいね。理想の夫婦と言われてると聞いてるよ?」
「…二妃様と三妃様のお話も聞いています…」
「……なるほど…」
アディエルの言葉に、カイエンは理解してしまった。
政略結婚だと言うのに、侯爵夫妻は周囲が羨むほどの仲睦まじさである。
そんな両親を見て育ったアディエルに取って、自分を支える立場の者と言えど、自分以外の妻を選ぶことは真っ平御免であった。
つまり、アディエルは『一夫多妻制はお断りします』と言うことなのだ。
しかし、カイエンはもうアディエルしか選ぶつもりは無い。
その後のやり取りで、彼は『一夫多妻制』を廃止する法案を作ることを提案し、納得したら婚約を受け入れて、法案を通す手伝いを頼んだ。
しかし、翌年。アディエル達の母親セリナは、馬車の事故で怪我を負い、数週間で儚くなってしまった。
夫である侯爵の嘆きは凄まじく、アディエルとダニエルも、しばらく暗い顔をしている日が続いた。
そうして喪が開けた翌年。
侯爵がとある未亡人と再婚したことで、社交界に激震が走った。
当然、カイエンも驚いて、アディエル達姉弟を呼び出した。
「どういうことだい!?」
呼び出された二人は、キョトンとしてカイエンを見ていた。
「どうと申されましても…、ねえ?」
「母様の遺言を父様が守った…としか言えません」
コテンと首を傾げたアディエルの隣で、ダニエルも首を傾げながら答えた。
「……遺言?夫人は何て遺言を遺したんだい?」
聞けば、後妻は夫人の親友で、三年前に病気で夫を無くした未亡人だった。
二人の間に子供はおらず、夫の実家から追い出され、実家で肩身の狭くなっていた親友を、子供達の教師として雇うつもりだったらしい。
そんな折の事故である。
幾ばくも残ってない我が身の余命を悟った夫人ーセリナは、夫と親友、そして二人の子供を呼び寄せた。
「ねえ、エクレア。あたくし、夢がまだ叶っていないの。このままじゃ、もう叶えられない。あたくしの代わりに叶えて欲しいのっ!!」
その夢の内容に、親友と夫は頭を抱えた。
夫人の夢。
それは子供は三人欲しかった!
アディエルの花嫁衣裳選んで、ベールに刺繍をしたかった!
この二点である。
親友には夢を叶えて欲しいと言い、夫には自分を愛したように、親友も愛して欲しいと告げた。
それが無理なら、自分という存在を忘れないための同志として、共に生きて欲しいと苦しみの中、泣きついた。
アディエルとダニエルは、母の願いなら叶えたかったし、後妻を迎えると言うならば、母の信頼しているエクレアが適任だと思った。
だから、子供二人は死の間際の母親の味方についた。
こうなると、二人は強く拒めなくなり、仕方なく約束をした。
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