【続編完結】侯爵令嬢は今日もにこやかに断罪する

ミアキス

文字の大きさ
32 / 82
【番外編】腹黒王子は今日もこっそりと観察する

3.

しおりを挟む
四阿に着くと、彼女をベンチに座らせ、その隣りに腰を下ろした。
人払いをすると、使用人も護衛も声の聞こえない場所まで離れていった。

「ねえ、アディ。私は今まで君に婚約して欲しいと言い続けてきたよね?」

「そうですわね」

「いつも断られてるけど…」

「そうですわね」

「…エイデンにね。『何で断られてるの?』って言われて、アディから理由を聞いてないことに気づいたんだ…」

ハアと溜息をつきながらそう言ったカイエンに、アディは不思議そうな顔を向けた。

「ねえ、アディ。私の婚約者になるのは、どうして嫌なの?」

「……私は、両親に憧れてますので…」

「侯爵?ああ、夫人と仲がよろしいね。理想の夫婦と言われてると聞いてるよ?」

「…二妃様と三妃様のお話も聞いています…」

「……なるほど…」

アディエルの言葉に、カイエンは理解してしまった。
政略結婚だと言うのに、侯爵夫妻は周囲が羨むほどの仲睦まじさである。

そんな両親を見て育ったアディエルに取って、自分を支える立場の者と言えど、自分以外の妻をは真っ平御免であった。

つまり、アディエルは『一夫多妻制はお断りします』と言うことなのだ。

しかし、カイエンはもうアディエルしか選ぶつもりは無い。

その後のやり取りで、彼は『一夫多妻制』を廃止する法案を作ることを提案し、納得したら婚約を受け入れて、法案を通す手伝いを頼んだ。

しかし、翌年。アディエル達の母親セリナは、馬車の事故で怪我を負い、数週間で儚くなってしまった。

夫である侯爵の嘆きは凄まじく、アディエルとダニエルも、しばらく暗い顔をしている日が続いた。

そうして喪が開けた翌年。
侯爵がとある未亡人と再婚したことで、社交界に激震が走った。
当然、カイエンも驚いて、アディエル達姉弟を呼び出した。

「どういうことだい!?」

呼び出された二人は、キョトンとしてカイエンを見ていた。

「どうと申されましても…、ねえ?」

「母様の遺言を父様が守った…としか言えません」

コテンと首を傾げたアディエルの隣で、ダニエルも首を傾げながら答えた。

「……遺言?夫人は何て遺言を遺したんだい?」

聞けば、後妻は夫人の親友で、三年前に病気で夫を無くした未亡人だった。
二人の間に子供はおらず、夫の実家から追い出され、実家で肩身の狭くなっていた親友を、子供達のとして雇うつもりだったらしい。
そんな折の事故である。
幾ばくも残ってない我が身の余命を悟った夫人ーセリナは、夫と親友、そして二人の子供を呼び寄せた。

「ねえ、エクレア。あたくし、夢がまだ叶っていないの。このままじゃ、もう叶えられない。あたくしの代わりに叶えて欲しいのっ!!」

その夢の内容に、親友と夫は頭を抱えた。

夫人の夢。
それは欲しかった!
アディエルの花嫁衣裳選んで、ベールに刺繍をしたかった!

この二点である。

親友には夢を叶えて欲しいと言い、夫には自分を愛したように、親友も愛して欲しいと告げた。
それが無理なら、自分という存在を忘れないための同志として、と苦しみの中、泣きついた。

アディエルとダニエルは、母の願いなら叶えたかったし、後妻を迎えると言うならば、母の信頼しているエクレアが適任だと思った。

だから、子供二人は死の間際の母親の味方についた。
こうなると、二人は強く拒めなくなり、仕方なく約束をした。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

雪の女王を追って消えた、あんたは私と婚約してない!

さんけい
ファンタジー
「雪の女王」を追って村から消えたエイナル。 「君は僕の足かせだ?」ふざけんな、私はあんたの婚約者じゃない!

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

その婚約破棄、卒業式では受け付けておりません

ファンタジー
卒業パーティの最中、第一王子アデルは突如として婚約者クラリッサに婚約破棄を宣言する。 いわゆる『公開断罪』のはずだった。 しかし、周囲は談笑を続け、誰一人としてその茶番に付き合おうとしない。 困惑する王子と令嬢たちの前に立ったのは……。 ※複数のサイトに投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...