双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

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第七章 神獣様と一緒!

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[レオノーラ視点]

「まさか、本当につがいを見つけられたとは。しかもそれが『勇者』とは!殿下も運がよろしいことで、うらやましいですな!!」

    ガディルのつがいと認められるなり、あちこちから途切れることなく話しかけてくる。

    いや。そもそもつがいって何?

「『勇者』殿も、かようにお美しい方だったとは。我が魔族領は幸せですな~」

    何、それ。訳が分かんないよ。『勇者』の私に関係なくない?

    ひっきりなしに話しかけられても、隣のガディルはご機嫌で対応してるけど、こっちはさっぱり会話の内容が理解できない。隣りで首を傾げながら、「はあ…」とか「どうも…」としか答えようもない。

『クパッ!』

「へ?」

   突然、右肩の側からきんちゃんの声がした。

「っ!?」

   そちらを見れば、宙に浮いた赤ワインらしき液体がシュルシュルと右肩に流れてきていて、見るとノーマルサイズになったきんちゃんの口に 吸い込まれていった。

    いや、いつからそこにいたの?

『……………』

   突然の出来事に、周りは唖然茫然状態だ。そんな中、ものすごーく派手な格好のご令嬢が、空になったワイングラスをこちらに向けて立っていた。

「な、な、な、何なんですのっ!?何で、肩にワインが消えていきましたの!?顔を狙ったはずですのに…」

    ああ。嫌がらせだったのか。

    納得していると、グイッとガディルに腰を引かれ、顔を胸に押し付けられた。

「…お前。クシュリム家のアラベルだな…。我がつがいに何の真似だ……」

    初めて会った時のような傲慢な口調に、そう言えばこんな感じでしゃべってたなあ…なんて、呑気に思ってた。

「…だって…。だって、その女が悪いのですわっ!本当ならば、アタクシが殿下の妃になるはずでしたのに…。なのにつがいだなんて……。側妃にすらなれないなんて……」

    アラベルさんが泣きながら話してる。なるほど、私が成り代わったのか。と、納得しつつ、やはりつがいって何なんだ?という疑問が残る。

「…ねぇ。ねえってば!」

    しっかりと押さえ込んで離してくれないガディルの背中を叩き、意識をこちらに向けさせた。

「…どうした?」

   緩んだ腕から抜け出し、一歩分だけ離れた。

「ずーっと気になってたんだけど、つがいって何のこと?」

    私の言葉に、周りは「何言ってんだ、こいつ?」みたいな顔になっている。解せぬ……。

「……言ってなかったか?」

「聞いてない。なーんも聞いてない!」

    腰に手をやり、仁王立ちになると、背後からアルテの声がした。

「ドレス姿でやるんじゃないっ!」

   無視してようかと思ったけど、帰国してダリヤ達にチクられても困るので、腕組みに変えながらも、ガディルを見上げた。

「ご説明いたします…」

   呆れ顔で現れたラムダスさんによると、私の知らない間につがい契約をされていたらしい。

「本来ならば人族のレオ様は寿命が我らより短いですが、殿下のつがいとなられましたことで、殿下と同じ寿命となりました。子供もお二人が求めない限り作ることは出来ません…。今回開かれました【婚約者選別パーティー】とは、人族として寿命の尽きたレオ様の後に、殿下の正妃となる側妃を選ぶためのものでした。ですが、つがいならば、その寿命は殿下と等しいものとなります。故に側妃を選ぶ必要性もないのです……」

    ブチッ。と何かが切れた音がしてから、まともに覚えてない。


※※※※※※※※※※
[アルテ視点]

「………はああぁっ??」

    バチバチバチッ!

    ラムダス殿の説明が終わるなり、レオの体の周囲に雷が発生した。

「……親父。あれって……」

「ああ。本ギレしたな……。エレもいないのに、どうしたものか……」

    王都に来てしばらくの頃、レオは二度ばかし本気でキレてしまった事がある。
    一度目は村に残っていた両親を捕え、自分達の言いなりにしようとした貴族連中に。
    二度目はレオ達に無理やり会おうとしていた貴族を遮っていたダリヤが突き飛ばされて怪我をした時に。

    どちらの時も身体中に雷をまとい、周辺の建物が焼け焦げたり、吹き飛んだりしたが、側にいたエレによって人的被害は出なかった。

    そして、三度目となるだろう今回。エレは不在である。

「……レ、レオ?お前に内緒で勝手に契約したことは謝る……」

「謝るぅ?人の寿命に関わること、勝手にやらかしといて、ふざけんじゃないわよっ!」

『っ!』

    バリバリバリ…

    おびただしい数の雷撃が発生した瞬間、オレも親父も終わりを悟った。
  
    魔王城。崩れませんように…。

    そう祈った瞬間、奇跡が起きたのだ。

「クーパーァァァ、クパアッ!!」

   レオの肩から飛び出したきんちゃんが元のサイズに戻るなり、カパッと口を開けて、全ての雷撃を飲み込んだのだ。

「……クパフ……」

    ゲップらしき音をさせ、きんちゃんは一つ頷いた。

    周囲は雷撃から身を守ろうとして、しゃがみこんでる方々ばかりで、ハアハアと肩で息をしているレオの前にポテポテと近寄ると、尻尾を支えに体を持ち上げた。

「危ないのはダメクパ!反省するクパッ!!」

 「っ!!」

   ブンと音を立てて、きんちゃんの頭突きがレオの頭に落ちていたーーーー。




     






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