双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

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閑話 10

おねだりをしてみた

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[御影視点]

「御影さぁぁぁんっ!!」

    私の神殿で、ヒナちゃんが必死に祈ってるとチュンタに言われ、空間を封鎖して会いに行くなり抱きつかれた。

「え?え?何?何があったの!?」

    涙目のヒナちゃんを引き剥がして話を聞いてみた。
    元々、多かった討伐依頼をこなしていた事と、勉強嫌いが重なって、現在急ピッチで各国の地理から王族情報の詰め込み教育が行われていて、とうとう限界がきたようで、神殿ここに逃げ込みに来たらしい。

「…それで、覚えてる最中に気がついたんです!私、ガディルのせいで寿命がかなりあるじゃないですかっ!!」

「そうね。ガディル殿下は、まんま見た通りの年だもんね……」

    五百年は軽く生きると言われているエルフと魔族。魔族の彼はまだ二十歳くらいだったと記憶している。

「それって結局、生きてる限り、数年事に情報覚え直しってことですよね?積もり積もってったら、頭爆発しそうなんですけどっ!?何かいい解決方法ないですかっ!?」

    本来、魔族は魔族領から出ることは少なく、出てもせいぜいヒューゲル王国くらいなので、彼らは覚えてもその程度らしい。しかし、ヒナちゃんは『勇者』である。魔族領に嫁いでも討伐依頼は発生するだろうから、当然、生き続ける限り、情報を更新していかなくてはならないのだ。

    残り四百年近く、勉強や仕事ばかりになるのは誰だって嫌よね。私らだって、ディーがパソコン用意してくれなきゃ、ひたすらあの癖字の山から情報探さないとダメだったもんねぇ……。

    パソコンが手に入るなり、チュンタ達がすごい勢いでデータ打ち込んでくのもすごかった……。

    神界に来たばかりの頃の苦労を思い出す。

「あとこの世界。《鑑定》出来るのに、ステータス画面とかないじゃないですか……。しかも《鑑定》だって、内容的には簡潔すぎだし……」

「あれ?『干渉世界こっち』って、どんな感じになってるの?」

    まさかまさか。世界ごとに設定内容が全部違うとか言わないよね?いや、ディーのやることなら、可能性高いわ…。

     必要なのは確認する覚悟・・だけだ。

「そうね。例えば、食べ物だとどう表示されるのかしら?」

「えっとですね。まあ、【みかん】があったとしたらですよ?生産地とか、銘柄とか。味の善し悪しとか、使用用途とか出るじゃないですか、ゲームだと…」

「そうね……」

「でも、オリクスから聞いてる《鑑定》の結果だと。【みかん】って、名前が表示されて、食用可とか、食用不可とかしか出ないんですよ!毒物とか入ってても、『食べると危険』って、出るだけらしいんですよね……」

「…待って。それ、《鑑定》必要なの?」

    いやまあ、百歩譲って、『食べると危険』と表示されるのは大事だけども。せめて、何の毒入りとか表示しようよ!

「ですよね。それで、魔族領の宰相さんも私の事《鑑定》した事あるから、私がどう見えてるのか聞いたんですよ」

〖名前〗レオノーラ
〖職業〗勇者
〖備考〗ガディルの番、神々の加護、神々の寵児

「…………え?レベルとか、保持スキルとかは?」

「見れないらしいんですよねえ…」

「…ちょっと待ってね…」

    他の三人に状況を知らせたところ、全員一致で

「ない(ねえ)わ~」

    という結論が出た。そして、チュンタからの提案で、ヒナちゃんに《鑑定》とは別に《状態ステータス》と言うスキルを新たに造って渡すことになった。

「試しに自分を見てくれる?」

〖名前〗レオノーラ
〖性別〗女性
〖職業〗勇者
〖武器〗【聖剣】エメルディア
〖HP/MP〗1200/999…………

    問題ないくらいゲームのステータス画面みたいな物が現れ、ちゃんと表示されるのが確認できた。

「すごいです!調べたい事も、頭に浮かべてスキル使えば、画面が出てきます!!」

    ヒナちゃん、大喜びである。私らも嬉しい。

「それじゃあ、エレくんにも渡せるように調整しておくわね」

「エレもいいんですか?」

「いや、だってねぇ…。彼もけっこう、ディーの被害者だからねぇ…」

「あー……」

    大喜びで戻っていくヒナちゃんを見送り、翌日。神殿に祈りを捧げに来たエレくんにスキルを与えると、複雑そうな顔をされたのだけが謎であるーーーー。




   



   
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