双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

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第十章 他国訪問〔ユーディアナ〕

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[レオノーラ視点]

「いいか。とりあえずガディル殿下と行動を常に共にしておくんだぞ!」

    ユーディアナに向かう直前まで、耳にタコが出来そうなくらい、レン兄様にそう言われた。

「…何があっても気をしっかり持って…。己が身は己自身で守るんだぞ…。フレイアと婚約破棄したくないなら、何がなんでも一人になるなっ!!」

    エレに至っては、レン兄様ばかりか、外交官やら年配の騎士の方々やらが、交互に同じことを言いに来てたから、相当行くのを不安がってた。

「…えーと。行かない方がいいの?」

「いや、討伐対象が爆発的に増える可能性が高いから、早めに対処した方がいい…。いいんだが……」

    余りにも行かせたくないみたいだったから、そう聞いてみると討伐は必須らしくって、それなら野営してさっさと済ませて帰ればいいのでは?と提案したところ。

「や、野営も安全とは言えませんぞ!」

「いや、寧ろ野営の方が手当り次第で危険では?」

   なんて意見が出てくる始末。

「…そんなに厄介な魔物なの?」

   と問えば。

「ある意味、魔物より厄介です……」

   だから、何の話なの?

    訳の分からないまま、訪れたユーディアナは、なんて言うか陽気な人が多かった。
    前の世界で言うなら、南国?って感じの開放的な雰囲気の国で、しいて言うなら服装も露出が多めで、何人か鼻の下伸ばしてました。
    用意された王宮の部屋は、騎士達にまで個室ないし二人か三人部屋が与えられ、私はもちろん、ガディルとエレも個室に案内された。

「……部屋、違うよね?」

   ベッドに入って寝ようとしたら、何故か窓からガディルがやって来た。

「うむ。ちょっとした自己防衛だ。それにレンドル殿にも共にいろと言われているだろ?」

「………」

   反論の余地もなく黙ってたら、しれっと隣に入って抱き寄せられた。

「一応、俺の番だと話しておいたが、この国の連中の考え方ではアテにならんからな……」

「???」

    頭を撫でながらそう言われ、訳が分からないままにその手の心地良さに微睡んでいた時だった。

    カタン。シュー……。

「?」

    小さな物音と共に、部屋中に煙が充満していく。

「ガディ「しっ!」」

    叫ぼうとしたら口を塞がれ、黙るようにと合図をされた。

「…………」

    とりあえず煙に対して、《状態ステータス》を見てみる。

〖品名〗媚薬香
〖効能〗煙を吸った対象は、発情状態が続く。常習性はない。
〖対策〗《毒耐性》のスキル使用。または魔導具にて、対応可能。

    なんで、媚薬?私、一応、国賓だよね?しかも婚約者付きの国賓だよ?これ、国際問題とかって案件では??

    呆気に取られてる間に、部屋中に充満していた煙が消えていく。全て消える頃には、人の気配が分かった。

「よろしくって、お兄様。『勇者』様の同意を先に取れた方が、一番手でしてよ!」

「当然だ。同意のない行為は犯罪じゃないか…」

    聞こえてきた声に、思考が停止しかかった。

    待って。これ、確か第一王子と第一王女の声なんですけど?王族なら、国賓襲ってもいいとか?なわけないでしょーがっ!!

    叫びそうになるとこを、ガディルが宥めるように頭を撫でてきた。

「…こんなことだと思ったんだ…」

    呆れた顔のガディルに抱き抱えられたまま、天蓋の向こうの動きを見守っている。

「うふふ。お綺麗な上にカッコ良いのですもの。楽しみですわ~」

   弾んだ声の第一王女に、何が楽しみなのか聞くのも怖い。

「お前はガディル殿下に行くと思ったのだがな…」

「あら。確かに素敵な方ですけど、『勇者』様ほどではありませんわよ?」

    ガディルに行かなかったのは、喜ぶべきなんだろうかと、少し考えてしまったものの、王族二人の会話には色々突っ込みたくなった。

「さて。レオノーラ殿。疼く体を慰めるお手伝いを…」

   天蓋をめくった王子は、こちらを見て固まった。

「お兄様?『勇者』様はどうされてまして?」

    その後ろから顔を覗かせた王女も固まった。

「…これは俺の番だと伝えたはずなのだが…。ユーディアナこの国は余程魔族領を敵に回したいようだ…」

    ガディルに後ろから抱きしめられつつ、髪に口付けられている私は、人前でのことにいつもなら暴れるところだが、この二人にはイチャついて見せる方がいいかもと、大人しく身を任せていた。

「さて、御二方。媚薬香を使って、俺の番に何をしようとしていたのかな?」



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