双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

文字の大きさ
108 / 110
第十一章 家族は家族

しおりを挟む
ご無沙汰してます。
久々にこちら、更新しました。
ぼちぼち稼働したいです……。


※※※※※※※※※※

気晴らしに出た散歩。その最中にそれ・・はレオの目の前に現れた。

「…………」

ビョーン。ビョーン。ビヨヨヨーン!!

「……ていっ!」

ひたすらに自分の目の前で飛び跳ねるだけのスライムであったのだが、一応は魔物である。
レオは軽く剣を振った。

パシュン!!

「…はい?」

ビヨン。ブヨン。ポヨヨン。ビヨヨン。ボヨン。プヨヨヨヨン。ピョヨン。

ーーーーレオはスライムを仲間にした。




**********

「捨ててこい」

野営地に戻ったレオの姿を見るなり、アルテはそう口にした。

「えー。珍しくない?この子、珍しくない??」

腕の中に抱えたスライムを、アルテに突き出しながらそう聞けば、彼は口を引き攣らせた。

「おま、…神獣きんちゃんの次は魔物スライムかっ!何でもかんでも拾ってんじゃねえっ!捨ててこい!!もしくはさっさと倒せっ!」

「そうは言うけどさ。倒せなかったし、懐かれちゃったし……」

「懐かれてんじゃねえーーっ!!」

腕の中のスライムをこねくり回すレオに、アルテは叫んだ。

「何を騒いでるの?」

薪を集めに行っていたエレが、戻ってくるなり首を傾げた。

「エ、エレ様!レオ様の腕の中にいるのは魔物ですよね?」

エレの手伝いがてら、山菜や木の実を集めたフレイアは、真っ青になりながらエレの服の裾を引っ張った。

「え?ちょ、レオ!今度は魔物拾ったの!?」

「ねえ、この子凄くない?珍しくない?」

ニコニコしながら突き出されたスライムは、レオの腕の中で大人しくしている。

「珍しい…けど。スライム…だよね?何でそんなに懐いてんの?」

産まれたての魔物を懐かせられることは稀にあれど、スライムが人に懐くなどとは、聞いたことがなかった。

「なーーーーーーっ!!」

そこにガディルの叫び声が加わった。

「レオ!お前、何処でそれを見つけた!!」

狩ってきた獲物を放り投げ、ガディルは慌ててレオに駆け寄った。

「え?普通に散歩してたら草むらから出てきたけど?ガディルはこの子知ってるの?」

「見るのは初めてだが、父上から話を聞いたことがある。…これは虹色レインボースライムと言って、滅多に現れない希少種だぞ…」

全員の視線を集めているレオの腕の中。
そのスライムは七色の層に色付いた身体をしていた。

「聞いたことないね…。魔族側にだけ伝わっているのでしょうか?」

「それよりもレオ様の腕の中にいても大丈夫なのでしょうか?レオ様がお怪我をされませんか?」

呟くエレに、不安そうなフレイアがレオを案じて問いかけた。

「随分賑やかですが、どうしました?」

ガディルの放り投げた獲物を拾いながら、魚を釣ってきたクルトが声をかける。

「レオがまた拾いやがったんだよ!!」

「は?」

アルテの叫びにレオを向く。
視線の合ったレオは、にっこり笑って七色のスライムを見せびらかすように持ち上げた。

「レ、虹色レインボースライムゥッ!?ちょ、レオ!乱暴に扱わないで!!それ、千年に一度見つかるかどうかと言われている、超希少種スライムですよーーーっ!!」

叫ぶクルトの両手からは、今夜のおかずが放り出されたのだったーーーー。


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)

ラララキヲ
ファンタジー
 乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。  ……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。  でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。 ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」  『見えない何か』に襲われるヒロインは──── ※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※ ※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※ ◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

処理中です...