【『にこ断』後日談】三人の妻はにこやかに国王である夫を教育する【完結】

ミアキス

文字の大きさ
5 / 7

4.

しおりを挟む
「…という事ですのでぇ、この事は陛下とわたしの二人だけの秘密ですわよぉ?守らなかったら、お分かりですわよねぇ?」

お茶会から数日後。
三人の妻達とのお茶会で、妻に対する扱いやら、子供に対する扱い。果ては紅茶の淹れ方まで散々に叩き込まれたマクスウェルは、グレイスの処分も終え、グレインの今後の再確認を報告がてら、最愛の王妃エリザベスの寝室へと向かう途中。二妃エリアナに捕縛され・・・・、グレイスの今後を聞かされた。

「……待て、娼館?え?本当に娼館?」

二妃が働き先を斡旋したとしか聞いていなかったマクスウェルは、場所を聞かされてドン引いた。

「あらぁ?他にあの方が務められそうなお仕事がございまして?」

ニコニコ笑いながら言ってるが、彼女の背後から流れ出る気配が語っている。

文句があるなら言ってみやがれ!…と。

そして、彼自身も納得してしまった。報告書にあった姦通相手の数の多さを思い出して。
だから文句を言いようもないと、納得するしかないのだ。

確かに脳筋の三妃に話せば、娼館ではなく鉱山で働かせろと言いかねないし、王妃に話せば、修道院送りにしようとするだろう。
普段の毅然とした態度から、冷たいと思われがちな王妃だが、三人の妻の中で、最も愛情深いのは王妃なのだから。

「……了解した。そっちに全部任せる…」

そう任せるしかないのだ。二妃は彼と王妃の代わりに汚れ仕事・・・・をするために、嫁いでくれているのだから。

そして、そんな二妃と同じ血を引いている、とある令嬢を思い出す。

「…なあ、ちょっと聞きたいんだが…」

「何ですの?」

頬に手を当て、コテンと首を傾げるのは、彼女達の一族の特徴なのだろうかと思いつつ、マクスウェルは口を開いた。

「…今回の件。もしかしてアディエル嬢から、事前に連絡もらってた?」

マクスウェルの言葉に、一瞬キョトンとしたものの、すぐに悪戯を思いついたような笑みを浮かべ、口調も本来の・・・自分の話し方に戻した。

「アディはわたしの可愛い自慢の姪っ子ですわ。カイエン様は陛下と違って・・・、ツメの甘い所もございませんし、人材にも恵まれていますでしょう?」

「うぐ…」

二妃は国王に対して容赦がない。そして、事実なので反論できない辛さが悲しい。優柔不断な自分の代わりに、決断するのは王妃だし、人心を一つに纏めるのは三妃が上手い。

「…陛下は王妃にとベスを望まれましたけど、表向きは毅然と執務をこなしても、ベスは愛情深い人ですもの。いつかは心を病んでしまうかもしれませんでしょう?だからこそのわたし達なのです。陛下も分かっているから、わたし達を受け入れられましたでしょ?」

そう言って浮かべた笑みは、純粋なものだった。

「…つまり。あの二人は二人だけ・・・・で問題ないという事だな…」

「それもありますけれども。何よりあの二人と並べる令嬢がおりまして?アディはわたしに似ておりますけど、わたしよりも・・・情は深いですわよ?」

それ、自分で言っちゃうのか…。と、マクスウェルは思ったが口にはしなかった。

命、大事!

「その証拠に、グレインくんへの対応は、全てアディあの子の采配ですのよ?カイエン様とエイデン様は、ずっとグレインくんの将来を気にかけてましたし、血が繋がっていないと知ってさらに心配されてましたもの…」

聞かされた言葉に、マクスウェルは反省した。

血が繋がっていないと分かる前ですら、自分はグレインに関わろうとしていなかったのに、子供達と妻達は、グレインのせいではないからと、常に平等にしていたのだと。

確かに王籍から外れることが決まっていても、必要な事以外は、グレインは他の子供達と同じように扱われていた。
寧ろ、露骨に差別した者達は、容赦なく排除されていた。主に三妃に。

「……本当に俺は、お前達には頭が上がらない…」

肩を落としてそう言えば、呆れた顔が返された。

「……マクス。貴方、わたしやベラ相手に頭が上げれる・・・・などと思っていましたの?」

次いで掛けられた言葉に、ひんやりとした冷たさを感じ、マクスウェルはやらかしたと判断した。

「いや、その…」
「ねぇ、マクス。誰のおかげで、貴方はベスを王妃に出来たのだった?」

「……エリーとベラのおかげです…」

彼女達がエリザベスを推したからこそ、文句無しに王妃に出来たのだと、マクスウェルも分かっている。
自分の我儘だけでは・・・・無理だった。

いつの間にか、彼はエリアナの前に正座・・していた。

「グレイスとやらかしたと報告した時、落ち込んだベスを宥めて、貴方と過ごすように説得したのは誰だったかしら?」

「…エリアナのおかげです、はい…」

寝室どころか自室にも入れてもらえなくなったマクスウェル。入れてもらえるようになったのは、エリアナがエリザベス王妃に、事実確認・・・・をして、耐性のない媚薬を使われていたようだと言ってくれたからだ。

最も、当時はエリアナの情報にも『クォーツ』という香辛料の詳細は分かっていなかったために、グレイスが側妃となってしまったのだが……。

「わたし達が不在の社交界で、貴方にまとわりつく女性が減ったのは?」

「…ベラの睨みのおかげです…」

人前では女性らしく、しかしキツめの発言をするイザベラ。その発言に上乗せしての殺気のこもった視線。
どこの令嬢が、それらを乗り越えて自分に来れるだろうか。国王である自分ばかりか、周囲に控える近衛騎士すら怯えるのに……。

今後も・・・よぉく覚えておいてくださいねぇ♪」

にっこり笑って仮面を被り直したエリアナに、マクスウェルは深々と土下座・・・をしていたのであったーーーー。





しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

あなたへの愛を捨てた日

柴田はつみ
恋愛
公爵夫人エステルは、冷徹な夫レオニスを心から愛していた。彼の好みを調べ、帰宅を待ちわび、献身的に尽くす毎日。 しかし、ある夜会の回廊で、エステルは残酷な真実を知る。 レオニスが、未亡人クラリスの手を取り囁いていたのだ。 「君のような(自立した)女性が、私の隣にいるべきだった」 エステルは悟る。自分の愛は彼にとって「重荷」であり、自分という人間は彼にとって「不足」だったのだと。その瞬間、彼女の中で何かが音を立てて砕け散る。

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

「君は大丈夫だろ?」と可哀想な元恋人を選択した夫。~今さら復縁を迫っても、愛は既に錆び付いています~

水上
恋愛
夫と白い結婚をして、傾いた領地を努力と苦労の末に立て直した伯爵令嬢ヴィクトリア。 夫との関係も良好……、のように見えていた。 だが夫は「君は強いから」と、めそめそ泣く元恋人を優先し、ヴィクトリアの献身を踏みにじった。 その瞬間、彼女の恋心は錆び付き始めた。 「私が去ったら、この領地は終わりですが?」 愛想を尽かした彼女は、完璧な微笑みの裏で淡々と離縁の準備を始める。 これは、有能な妻が去り、無能な夫が泥沼に沈むまでを描く、冷徹な断罪劇。

『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様

恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。 不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、 伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。 感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、 ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。 「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」 足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。 「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」 一度凍りついた心は、二度と溶けない。 後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、 終わりのない贖罪の記録。 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

【完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

うわさの行方

下沢翠花(しもざわすいか)
恋愛
まだ十歳で結婚したセシリア。 すぐに戦場へ行ってしまった夫のニールスは優しい人だった。 戦場から帰るまでは。 三年ぶりにあったニールスは、なぜかセシリアを遠ざける。 ニールスの素っ気ない態度に傷つき疲弊していくセシリアは謂れのない酷い噂に追い詰められて行く。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

処理中です...