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第二章 伯爵家は幸運を引き寄せる
伯爵は狙われている
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付き合いで招待された夜会で、エベリウム伯爵アベル・クラン・エベリウムは、人混みの中にあって異彩を放つ女性を見つけた。
「……私の目がおかしくないのなら、アソコにいるのはストラディック家のナンシー殿だよね?」
「そっすねぇ…。間違いなくナンシー様っすねぇ…」
話しかけられたクロード・ゲーテは、見てはならないものを見てしまったような顔で主人に答えた。
「私、彼女は苦手なんだよね。なんかこう、グイグイくる。こっちを食べに来そうな感じで……」
「そっすねぇ…。ガッツリ肉食系なご令嬢ですよねぇ、色々と…」
二人して見なかったことにして、そっと遠ざかるように移動していく。
「うち、息子産まれて三年経つのに、まだ私の妻の座を狙ってるのかな?」
「じゃないっすかねぇ?エベリウム家の持つ情報で、自分の欲を満たしたいだけでしょうけど。旦那様がエイデルのお嬢と婚約中は、兄君達狙いだったらしいっすからねぇ…。貴族至上主義な方ですから、狙ってたエベリウム家の正妻に、マーケディアの商家の娘がなったのは許せんのでしょう。あの方、元々お嬢に攻撃しまくってましたから…」
クロードは母であるカーラが、伯爵夫人となったマリアステラの『護衛メイド』を、今は亡き父がエイベル商会で『傭兵』をしていたため、『執事』としての教育をマリアステラの側仕えとして働きながら受けていた。
こんな口調であるが、かなりデキル男なのである。
夜会や茶会。買い物先で鉢会うナンシー嬢は、ことある事に身分を振りかざしてマリアステラに、嫌味三昧を口にしていたが、その度に穏やかに微笑むマリアステラに軽くあしらわれていた。
『せっかくエベリウムの殿方とお付き合いされましたのに、末っ子の四男では意味がございませんわねぇ…。オーホホホホ』
と、とある夜会で高笑いをしたナンシーだったが、
『わたくし、別にアベルがエベリウム家の方だからお付き合いしてるわけではありませんわ。互いに相手を尊重し、想いあえるのですもの。そのような殿方に巡り会えたわたくしは、とても幸せでしてよ。ところで、ナンシー様は《必中》スキルをお持ちかしら?早めに取得なされた方がよろしくてよ。それとも《魅力》をお持ちになる方がよろしいかしら?』
既に様々な情報を集めて利用していたマリアステラに、自らが望んでも手に入れることが出来ずにイラついていたスキルを口にされ、カッとなって掴みかかろうとした所に、ワインを配っていた給仕に当たって頭からワインを被って帰宅する羽目になったこともあったが、懲りずにマリアステラに突っ込んでいくのである。
「すごいよねぇ、自分の欲に正直で……」
「お嬢追い出して後釜になっても、なあんも意味ないんですけどね…」
「そもそもマリアいなきゃ、私じゃ彼らは使いこなせないし、陛下もマリアが継ぐならって、私達の結婚を認められたわけなんだけど……。彼女、全く理解してないよね…」
実質、王家からは種馬扱いされてるようなものである。
それでもアベルは自分の向き不向きをしっかりと理解していたし、最愛の妻がその手腕を発揮出来るのだからと、種馬上等と思っている。
「そーいや、旦那様。《必中》持ってましたっけ?」
「…何だい、突然?」
首を傾げたアベルに、クロードが肩を竦めた。
「いえね。最近、ストラディック家が媚薬を購入したしたって、情報がありまして…」
「…おい……」
サッとアベルの顔から血の気が引いていく。
「クロード。今日、部屋変わってくれ!」
「え?そーなると自分めは何処で寝るんです?」
ニッコリと笑った主人に、クロードは従うしかなかったーー。
「……私の目がおかしくないのなら、アソコにいるのはストラディック家のナンシー殿だよね?」
「そっすねぇ…。間違いなくナンシー様っすねぇ…」
話しかけられたクロード・ゲーテは、見てはならないものを見てしまったような顔で主人に答えた。
「私、彼女は苦手なんだよね。なんかこう、グイグイくる。こっちを食べに来そうな感じで……」
「そっすねぇ…。ガッツリ肉食系なご令嬢ですよねぇ、色々と…」
二人して見なかったことにして、そっと遠ざかるように移動していく。
「うち、息子産まれて三年経つのに、まだ私の妻の座を狙ってるのかな?」
「じゃないっすかねぇ?エベリウム家の持つ情報で、自分の欲を満たしたいだけでしょうけど。旦那様がエイデルのお嬢と婚約中は、兄君達狙いだったらしいっすからねぇ…。貴族至上主義な方ですから、狙ってたエベリウム家の正妻に、マーケディアの商家の娘がなったのは許せんのでしょう。あの方、元々お嬢に攻撃しまくってましたから…」
クロードは母であるカーラが、伯爵夫人となったマリアステラの『護衛メイド』を、今は亡き父がエイベル商会で『傭兵』をしていたため、『執事』としての教育をマリアステラの側仕えとして働きながら受けていた。
こんな口調であるが、かなりデキル男なのである。
夜会や茶会。買い物先で鉢会うナンシー嬢は、ことある事に身分を振りかざしてマリアステラに、嫌味三昧を口にしていたが、その度に穏やかに微笑むマリアステラに軽くあしらわれていた。
『せっかくエベリウムの殿方とお付き合いされましたのに、末っ子の四男では意味がございませんわねぇ…。オーホホホホ』
と、とある夜会で高笑いをしたナンシーだったが、
『わたくし、別にアベルがエベリウム家の方だからお付き合いしてるわけではありませんわ。互いに相手を尊重し、想いあえるのですもの。そのような殿方に巡り会えたわたくしは、とても幸せでしてよ。ところで、ナンシー様は《必中》スキルをお持ちかしら?早めに取得なされた方がよろしくてよ。それとも《魅力》をお持ちになる方がよろしいかしら?』
既に様々な情報を集めて利用していたマリアステラに、自らが望んでも手に入れることが出来ずにイラついていたスキルを口にされ、カッとなって掴みかかろうとした所に、ワインを配っていた給仕に当たって頭からワインを被って帰宅する羽目になったこともあったが、懲りずにマリアステラに突っ込んでいくのである。
「すごいよねぇ、自分の欲に正直で……」
「お嬢追い出して後釜になっても、なあんも意味ないんですけどね…」
「そもそもマリアいなきゃ、私じゃ彼らは使いこなせないし、陛下もマリアが継ぐならって、私達の結婚を認められたわけなんだけど……。彼女、全く理解してないよね…」
実質、王家からは種馬扱いされてるようなものである。
それでもアベルは自分の向き不向きをしっかりと理解していたし、最愛の妻がその手腕を発揮出来るのだからと、種馬上等と思っている。
「そーいや、旦那様。《必中》持ってましたっけ?」
「…何だい、突然?」
首を傾げたアベルに、クロードが肩を竦めた。
「いえね。最近、ストラディック家が媚薬を購入したしたって、情報がありまして…」
「…おい……」
サッとアベルの顔から血の気が引いていく。
「クロード。今日、部屋変わってくれ!」
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ニッコリと笑った主人に、クロードは従うしかなかったーー。
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