騎士団長はスキル《ストーカー》を極めたい!

ミアキス

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第一章 侯爵家は混乱する

本性ダダ漏れ

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    大神官の混乱は続いていた。
    混乱している大神官の姿に、周りの神官らはさらに混乱していく。

「……ラーフィーン。あんた、大神官様の身内でしょ?あれ、大丈夫ぅ?」

    いつの間にか隣に来ていたフェリテに、小声で尋ねられたラフィンは肩を竦めた。

「身内って言ったって、うちの祖父が親友だったから、私が孤児になった時に後見人になってくれたってだけよ。でも、まあ……。完全に混乱状態になってるわね」

    人族のラフィンは7歳の時、当時すでに大神官であったエルフ、カフィル・マティラスに引き取られた。
    物心つく前から家の事を手伝っていたことに加え、病気で寝込んでいた祖母の面倒も見ていたラフィンは、『祝福の日』に受けた【鑑定】により、高いレベルの《家事》スキルを持っていたため、エイデル商会でメイドとして教育を受けることを決めた。
    その教育を受けている際に出会ったエマリーに仕えたいと思い、『護衛メイド』として必要なスキルを身につけ、グランディバルカス家に雇われることができた。
    それでも、たまに与えられる長期休みにはカフィルの元に顔を出していた。
    引き取られる前から会っていたこともあり、ラフィンはカフィルの素を知っている。

ーーカフィル様。神官時代に神殿抜け出して、おじいちゃんと色々やってたらしいもんねぇ…。

    神官なのに、酒場で発見されることも多かったと聞いている。
    昔、一度だけ縁あって遭遇した聖王からも、

「ラフィン。そなた、良い子でいたければ、カフィルの真似をしてはならんぞ」

    と、自分の黒髪を優しく撫でながら言われ、大きな黒い瞳をぱちくりとさせたこともある。

「なんで大神官やってんのか、謎な方だよねぇ…」

「いやいや。それでいーの?大神官様だよ?」

    猫の獣人であるフェリテは、白髪に碧眼である。
ピンと立てていた耳をピクピク動かしながら、口許は引き攣っている。
    ラフィンと同期だった彼女もまた、自らエマリーに仕えようと『護衛メイド』になった娘だ。
    同期であるため、息もピッタリ。本性丸出しの付き合いである。

    二人の視線の先には、頭を抱えてブツブツ言ってる、最早怪しいエルフと化した大神官がいる。
    その近くに立っている彼女達の主であるエマリーは、オロオロと周りに視線を向けつつ、抱いているエヴァンも気にかけている。
    隣の侯爵に至っては、ただひたすらにカフィルが落ち着くのを待とうと耐えている。
    そこから離れた場所にいる他の神官達はといえば、突然の大神官の奇行に何人かは倒れかけ、何人かはひたすらに神に祈っている。

「仕方ない。緊急事態ってことで、許してもらう!」

「ラフィン?」

    どうにも先に進みそうにない状況にラフィンは息を吐き出し【鑑定石】へと近づいていく。

「…ラフィン?大神官様、どうなさったのか分かって?」

    不安気にラフィンを見てくるエマリーに、彼女は微笑んでみせた。

「御二方とも、少々お見苦しいところをお見せしますが、御容赦くださいませ」

    ぺこりとお辞儀をして、カフィルの背後に立つ。

「……」

    すうっと息を吸い、右手をゆっくりと頭上に掲げた瞬間だった。

「落ち着けー!!」

    パカーンと大神官カフィルの頭へ振り下ろされた手が音を立てた。

「はっ!思わず動揺して素が出てしまった……」

    正気を取り戻したカフィルの後ろで、よし!と言わんばかりにラフィンが右手で拳を握りしめていた。
    反対側にいた侯爵はラフィンに向かってサムズアップしている。

「……うわぁ、ここで本性出すとは思わなかったわ……」

    そういうエマリーも思わず本性を小さく漏らしていたことを、ただ一人獣人であったフェリテだけが聞いていたーー。


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