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第二章 アーディル十歳
アゲイン…
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[アリスティリア視点]
「ただいま戻りました、お母様♪」
慌てふためくメイドや侍女達に呼ばれ、玄関に迎えばにこやかに微笑むフィルディアと、疲れきった様子のステリナがいました。
「……《空間移動》で帰ってきたのですか?」
父親であるエヴァン様となら、転移陣での帰宅だと思われますし、何より事前に連絡が来ます。
全く連絡のないままの突然の帰宅です。
「……フェリテ……」
「確認いたします…」
背後に控えていたフェリテに声をかけると、言わなくとも把握してくれました。
目の前のわたしの娘のフィルディアは、実年齢は九歳ですが、前世の記憶持ちのため、その精神年齢はわたしよりも遥かに上回っています。
そのフィルディアの突然の帰宅です。確実に無許可の帰宅でしょう。
ですが、突然の姉の帰宅に喜ぶ他の子供達の手前、話をするわけにもいかず、とりあえず食事をすることにしました。
……今頃、王宮は大騒ぎでしょうけどね……。
※※※※※※※※※※
「ワタクシ、アーディ様に嫌われたようですわ…」
子供達をフェリテと『育児メイド』達に預け、帰るのが遅れると連絡のあったエヴァン様を待たずに、わたし、フィルディア、アルヴィン、ラフィン、ステリナの五人でサロンで腰を落ち着けるなり、フィルディアがそう呟きました。
『……………』
フィルディアとステリナ以外は驚きました。
アーディル殿下がどれだけフィルディアのことを好きなのか、この部屋にいる者は知っています。
婚約破棄をされないようにと、一生懸命頑張っているのを、夫や兄達からも聞いているのですから。
「………」
詳しく聞こうにも、かなり落ち込んでいる様子のフィルディアに話しかけるのも躊躇われます。
「…それはちゃんとアーディル殿下に確かめたのですか?」
わたしの問いに顔を向けたフィルディア。その瞳には涙が溢れかけていました。
「……確かめておりません…」
唇を噛みしめ、溢れそうになる涙をグッと堪えて答える娘の姿に、娘もまた殿下にそういった感情が芽生えたのだと理解しました。
「……そもそも何故、嫌われたと思ったのですか?」
わたしの言葉にアルヴィンとラフィンも頷きます。
「……最近。殿下はメイド達の所に通っているのです…」
その言葉にアルヴィンは見当がついたのか、何とも言えない顔になりましたが、わたしやラフィンには分かりません。続きを促すために聞き入っていました。
「歳の近い者達の手を、両手で愛しそうに取られては、優しい笑顔を向けられて……」
この時点で、アルヴィンが両手で顔を覆いました。「だから、こうなると思ったんだよ…」と呟きが聞こえましたが、追求は後です。
「宝物に触れるように、優しく手を撫でていらっしゃるのです…。ワタクシがいるのに側室を迎える訳にはいかないので、愛人を選んでいるのだろうとお聞きしました…… 」
…今、とんでもない発言を聞いた気がします。側室?愛人?それが殿下の判断なら、我が侯爵家も実家のエベリウム伯爵家も、王家とは断絶させていただきます。
ですが、あの殿下にそんな感じはしませんでした。良くも悪くも一途な方です。もしかしたら、何処かで意見が擦れ違っているのを利用されたのかもしれません。何よりフィルディアを求める方々は多いのですから……。
「まずはゆっくりお休みなさい。これからどうするかは、明日改めて決めることにしましょう…」
そう言って、フィルディアを休ませた翌日。
「フィルちゃん。ムカついた時にはこれよ、これ♪」
早朝からやって来たお母様が、笑顔全開である物をフィルディアに渡され、しばらく話されて帰っていきました。
「フィル!私が悪かったです!!誤解させてしまったことを謝罪させてくださいっ!!」
入れ違いで殿下が来られました。
王太子が土下座してます。土下座して、延々とフィルディアに今回の件の説明と謝罪をし、戻って欲しいと訴えていらっしゃいます。
…ええ、見なかったことにしました。
「…分かりました。では、一発だけ叩かせてくださいませ♪」
「一発と言わず、フィルの気が済むま…で……、え?」
にっこり微笑む娘の手には、お母様から渡されたそれがありました。
「え?え?」
「参りますわ!」
それを目にした殿下は少し混乱されたようですが、フィルディアは容赦なく振り上げました。
バシコーン!!
殿下の頭にそれは直撃しました。
「……やだ…。これ、ものすごくスカッとしましたわ…♪」
お母様がフィルディアへと渡した物は、エイデル商会の目玉商品である〖ハリセン改〗の子供用でした。
さすがに王族相手に使うからという、お母様なりの配慮だと思われます。
これ以降、二人は擦れ違っては〖ハリセン改〗で仲直りをするということを繰り返し、絆を深めていった模様ですーーーー。
「ただいま戻りました、お母様♪」
慌てふためくメイドや侍女達に呼ばれ、玄関に迎えばにこやかに微笑むフィルディアと、疲れきった様子のステリナがいました。
「……《空間移動》で帰ってきたのですか?」
父親であるエヴァン様となら、転移陣での帰宅だと思われますし、何より事前に連絡が来ます。
全く連絡のないままの突然の帰宅です。
「……フェリテ……」
「確認いたします…」
背後に控えていたフェリテに声をかけると、言わなくとも把握してくれました。
目の前のわたしの娘のフィルディアは、実年齢は九歳ですが、前世の記憶持ちのため、その精神年齢はわたしよりも遥かに上回っています。
そのフィルディアの突然の帰宅です。確実に無許可の帰宅でしょう。
ですが、突然の姉の帰宅に喜ぶ他の子供達の手前、話をするわけにもいかず、とりあえず食事をすることにしました。
……今頃、王宮は大騒ぎでしょうけどね……。
※※※※※※※※※※
「ワタクシ、アーディ様に嫌われたようですわ…」
子供達をフェリテと『育児メイド』達に預け、帰るのが遅れると連絡のあったエヴァン様を待たずに、わたし、フィルディア、アルヴィン、ラフィン、ステリナの五人でサロンで腰を落ち着けるなり、フィルディアがそう呟きました。
『……………』
フィルディアとステリナ以外は驚きました。
アーディル殿下がどれだけフィルディアのことを好きなのか、この部屋にいる者は知っています。
婚約破棄をされないようにと、一生懸命頑張っているのを、夫や兄達からも聞いているのですから。
「………」
詳しく聞こうにも、かなり落ち込んでいる様子のフィルディアに話しかけるのも躊躇われます。
「…それはちゃんとアーディル殿下に確かめたのですか?」
わたしの問いに顔を向けたフィルディア。その瞳には涙が溢れかけていました。
「……確かめておりません…」
唇を噛みしめ、溢れそうになる涙をグッと堪えて答える娘の姿に、娘もまた殿下にそういった感情が芽生えたのだと理解しました。
「……そもそも何故、嫌われたと思ったのですか?」
わたしの言葉にアルヴィンとラフィンも頷きます。
「……最近。殿下はメイド達の所に通っているのです…」
その言葉にアルヴィンは見当がついたのか、何とも言えない顔になりましたが、わたしやラフィンには分かりません。続きを促すために聞き入っていました。
「歳の近い者達の手を、両手で愛しそうに取られては、優しい笑顔を向けられて……」
この時点で、アルヴィンが両手で顔を覆いました。「だから、こうなると思ったんだよ…」と呟きが聞こえましたが、追求は後です。
「宝物に触れるように、優しく手を撫でていらっしゃるのです…。ワタクシがいるのに側室を迎える訳にはいかないので、愛人を選んでいるのだろうとお聞きしました…… 」
…今、とんでもない発言を聞いた気がします。側室?愛人?それが殿下の判断なら、我が侯爵家も実家のエベリウム伯爵家も、王家とは断絶させていただきます。
ですが、あの殿下にそんな感じはしませんでした。良くも悪くも一途な方です。もしかしたら、何処かで意見が擦れ違っているのを利用されたのかもしれません。何よりフィルディアを求める方々は多いのですから……。
「まずはゆっくりお休みなさい。これからどうするかは、明日改めて決めることにしましょう…」
そう言って、フィルディアを休ませた翌日。
「フィルちゃん。ムカついた時にはこれよ、これ♪」
早朝からやって来たお母様が、笑顔全開である物をフィルディアに渡され、しばらく話されて帰っていきました。
「フィル!私が悪かったです!!誤解させてしまったことを謝罪させてくださいっ!!」
入れ違いで殿下が来られました。
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…ええ、見なかったことにしました。
「…分かりました。では、一発だけ叩かせてくださいませ♪」
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「え?え?」
「参りますわ!」
それを目にした殿下は少し混乱されたようですが、フィルディアは容赦なく振り上げました。
バシコーン!!
殿下の頭にそれは直撃しました。
「……やだ…。これ、ものすごくスカッとしましたわ…♪」
お母様がフィルディアへと渡した物は、エイデル商会の目玉商品である〖ハリセン改〗の子供用でした。
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