騎士団長はスキル《ストーカー》を極めたい!

ミアキス

文字の大きさ
144 / 154
第三章 アーディル十六歳

護衛騎士は語る

しおりを挟む
[アイオン視点]

    激しい嵐の夜。夜警の担当に殿下の部屋の前での警備を任せ、早めの就寝をした翌日。
    交替時の報告で、夜が明ける前に、フィルディア様の『護衛メイド』のステリナ殿が、令嬢の部屋からシーツを交換して出てきたらしいと聞きました。

    ……え?シーツを交換?まさか、殿下!

    婚姻まであと数ヶ月ではありましたが、とうとう長年の想いを果たされたのかと、ご令嬢の身支度の手伝いを終え、朝食の仕度を頼んだ後のステリナ殿に確認してしまいました。

    ……あ。最後まではしてないんですね。え?一線は越えてないけど、やりたい放題やっていたようなんですか?

    ステリナ殿は淡々と、ご令嬢の身体中に殿下が所有印を付けていたせいで、今日の衣装選びが大変だったとこぼされました。

    そうですか……。そんなにたくさん、跡付けたんですか、殿下は……。

    そこまでしておきながら、ちゃんと一線は越えなかった殿下を尊敬してしまいますね。

    などと思っていたのですが、ステリナ殿は違うようです。

「あれほど露骨に誘われておいでの時には、流されていらっしゃったのに、まさかの嵐の夜です。あれでしょうか?殿下は、天候の悪い日でなければならないケでもあるのでしょうか?」

    無表情に言われてますが、それ。一応不敬になるのでは?

「《鑑定》して際には見当たらなかったのだから、新しく増えた?そうなると…」

    ブツブツと呟かれるステリナ殿に、かける言葉が見つからずにいると、お二人の朝食が運ばれてきました。
    お二人共、《毒耐性》スキルMAXな上に、ステリナ殿が《鑑定》してしまうので、出来たてのお食事です。
    以前、お茶会や夜会でお二人が別行動になった際、媚薬入りの飲み物を勧めた者達がいたのですが、お二人共ケロリとされて何杯も飲み干され、逆に飲まねばならない羽目になった彼らは、策士策に溺れる………。お二人を引き離すどころか、自分達が離れられなくなる関係となってしまわれました。

「へえ…。あの二人がですか?意外ですね…」

   媚薬を盛られたことに全く気づいていなかった殿下は、穏やかに微笑んでそう仰り、

「あのような物を使うならば、自分達が間違って口にしてもいいように対策をするべきではありませんこと?」

    と、実に美しい笑みを浮かべていらっしゃったフィルディア様。

    護衛騎士たる自分にとって、殿下が媚薬それを口にするのは、お止めしなければならぬ立場だというのに、事前に動かぬように厳命ーしかも隣で抑止力のようにステリナ殿が配置ーされていては動くに動けず。

    あの時はハラハラしたものです。

    いや。普段もかなりハラハラすることはありますけども。あれほどのことは……。あるな!

    フィルディア様の家出騒ぎ然り。殿下の空回り然り。

    一番ハラハラしたのは、御二方が泊まりがけでお出かけになられた時でしょう。
    宿全体に《爆睡》の魔道具が使用され、そこへ《無効化》の腕輪を付けた者達が忍び込んできたのです。
   事前にステリナ殿のお父君が作られたという《万能無効化》などというとんでも魔道具を渡されていた自分は、殿下をお守りしていたのですが……。

    自分……。もしかして、いらないのでは?

    一個小隊程度の侵入者相手に、ステリナ殿が瞬殺制覇でした。
   使われていた魔道具もサクッと見つけて破壊され、他の者達にお二人の護衛を任せ、離れた空き地で始まったステリナ殿の行う尋問…。

    あ。そういや、この人〈鮮血〉の二つ名持ちだった。そっかぁ、こーゆー意味かぁ……。

    手を振る度に飛び散る血飛沫。なのに上げることの出来ない悲鳴。無事な侵入者達も、次は自分の番かと怯えていく始末。
    え?これ。死んじゃわないですよね?殺す気じゃないですよね?

    通信魔道具で、侵入者の数などを報告した後です。人数変わるのはヤバいのではないかと、ハラハラしながら見てました。

    結果。相手はとある国の公爵家の手の者と判明。フィルディア様を攫って、嫡男と関係を持たせる予定だったらしく、最高級品の媚薬持参でした。

    ところで、彼らのその後なのですが。件の公爵家に放り込まれたそうです。
    たまたまその任務に当たっていた同僚が、真っ青になって戻ってきたので尋ねた所。なんと、その日休暇のはずのステリナ殿が同伴されていたとか。

「いやもう、あの公爵家の坊ちゃん。人生、終わったわ……」

    公爵家の周りを《爆睡》の魔道具で囲み、嫡男の部屋に侵入者達を運び入れた後、ステリナ殿は内から開けれないように細工をし、侵入者達と嫡男に媚薬を飲ませたそうです。
    しかも、意識を混濁させる香まで部屋中に充満させて、全員全裸にして放置したとか。
    媚薬により発情した侵入者達は、朦朧とした意識でベッドの上で喘いでいる嫡男に………。

   それ以上は思い出したくないという同僚を慰め、自室に戻る途中でステリナ殿と遭遇しました。気まずいっ!

「……フィルディア様へご用意されたお薬の効果を、ご自身のお体で確認して頂いて参りました♪大層、お気にいられたのか、くんずほぐれ「ステリナ殿!!それ以上はお許しくださいっ!」」

    にこやかな笑顔で語られだしたステリナ殿に、食い気味で発言しました。

    『護衛メイド』の本気を見た気がした一件でしたねーーーー。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない

若松だんご
恋愛
 ――俺には、将来を誓った相手がいるんです。  お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。  ――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。  ほげええっ!?  ちょっ、ちょっと待ってください、課長!  あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?  課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。  ――俺のところに来い。  オオカミ課長に、強引に同居させられた。  ――この方が、恋人らしいだろ。  うん。そうなんだけど。そうなんですけど。  気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。  イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。  (仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???  すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。  だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。  エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。  そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。 「やっと、あなたに復讐できる」 歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。  彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。 過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。 ※ムーンライトノベルにも掲載しております。

Emerald

藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。 叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。 自分にとっては完全に新しい場所。 しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。 仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。 〜main cast〜 結城美咲(Yuki Misaki) 黒瀬 悠(Kurose Haruka) ※作中の地名、団体名は架空のものです。 ※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。 ポリン先生の作品はこちら↓ https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911 https://www.comico.jp/challenge/comic/33031

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...