惑星監視官、魔王になる - 助けて魔王様って言われてもそりゃ銀河条約違反だっての! 勘弁してくれよ、ったくしょうがねぇなぁ!? -

ふつうのにーちゃん

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・惑星監視官、ワイヤー運送システムを築く

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 情けねぇ話だが、赤の英雄ドキルマにやられた傷はてんで治らなかった。そのせいで俺は楽しい肉体労働を奪われ、現場監督として指示をするだけの退屈な開拓生活を強いられていた……。

 ちょっとでも仕事を手伝おうとすると隣のパイアが警笛を鳴らしやがって、負傷中の魔王様を仕事から引きはがす。まったくもって恩知らずなサキュバス族もいたものだった。

「もうっ、少しは反省しなよー……。あいつらに斬られたら一ヶ月は傷が治らない、それが魔王、それが今のアンタなのー……」

「おう、そうらしいな。次に英雄を見かけたら問答無用でぶっ潰すことにするわ」

「あ~もぉ~……この人全然わかってない……。英雄とはもう戦っちゃダメッ、いいっ!?」

「そりゃそんときの俺に言ってくれ、戦うかどうかはケースバイケースってとこだ」

 俺は今、現場監督として正三角形を基本構造とした六芒星型の区画整備を行っている。
 信号機を置くなら碁盤目構造が答えなんだが、信号機が要らない環境なら三角形に道を走らせた構造も効率的で面白い。

「てかさー、なんでこんな変な形の通りにするわけー……?」

 正面空中に浮かぶパイアがでっかい乳を弾ませて、両肩をだらしなくうなだれさせた。

「六芒星の街は、碁盤目構造の街より早くも目的地にたどり着ける。碁盤目構造はどの区画も均等な面積になる反面、移動距離がかかる構造なんだよ」

「はぁ……? 何言ってんだか全然わかんない……」

「要するにこっちの方がおもしれぇってこった!」

「ああ、結局そこなんだ……」

「当然だろ。つまんねー街なんて俺っちが作るかよ」

 遠い未来、天空からこのウンブラを見下ろした本国の連中は、大地に刻まれた幾何学模様に驚くだろう。
 物流を支えるメインストリートに、滑車とワイヤーによる物流システムが構築されているところにもな!

「お兄ちゃん、持ってきたよ……!」

「おう、ステラ! ご苦労だったな!」

「お兄ちゃんが作ったこれ、すごいよ……! 私たちシルフ族が運送でこんなに活躍できるなんて……夢にも思わなかった……!」

 一昨日、俺はあの丘に流星を11個降らせた。コルベット船の複製機レプリケーターにプラスチール製のワイヤーと、ベアリングシステムを内蔵した大型の滑車を作らせた。

 ああそれと千年経っても腐らない支柱もだ。それらで住宅街・製材所・伐採地をワイヤーで繋いだ。

 そしたら後は位置エネルギーを利用するだけだ。
 滑車でワイヤーに吊した原木を高所にある伐採地から低地の製材所に運び、そこで加工して、さらに低地にある住宅地へと滑車を走らせる。空を飛べるシルフ族にブレーキ調整をさせながらだ。

「へへへ、そう言ってもらえると設計したかいがあるぜ。せっかくこのウンブラには高低差があるんだ、利用しねぇ手はないだろ」

「うんっ、お兄ちゃん、天才……!! こんな魔王様、初めてっ!! お兄ちゃんのすること、楽しい……!!」

「頭はいいのよねー、頭はー……」

 パイアのJカップをチラ見すると『頭はいいのにどうしてそんなに魔王様はエッチなのですか』と、遠回しに言われてしまった。

「男がスケベで何が悪い」

「開き直るなぁーっ、少しは自重しなさいよ、このエッチ魔王ッ!」

「おう、エッチ魔王ですが何か?」

 歳を取ってもスケベ心は消えない。俺はヨボヨボの200歳のお爺ちゃんになってもスケベ野郎を貫く。

「お、お兄ちゃん……っ、エ、エッチなのはダメだと思うよ……っ!」

「ほら言われたーっ!」

 そう言われたって無理だ。パイアのそれはいい眺め過ぎて自重なんてしたら神様に失礼ってもんだ。

「それはともかく、俺っちはこのワイヤー式の運搬システムをウンブラ中に整備するつもりだ」

「え、ええええ……っ!? それは、すごく便利だと思うけど……そんなこと、本当にできるの……?」

「マ、マジ……ッ?」

 ステラとパイアはまるで子供のように目を輝かせた。6種の作物が育つ巨大キメラ作物、何でもくっつけるチート接着剤をもたらした魔王バーニィは既に奇跡をもたらす異才の魔王だった。

「おうっ、足りねぇ資源はこの星の月を削ってでも工面してやるから心配すんな」

「えっえっ、お月様でっ、作るのですか……っ?」

「うぇぇぇー……。ホラに聞こえるのに、ホラじゃないんだろうなー……ってところがたち悪ーい……」

「ははは、わかってんじゃねぇか!」

 俺にとってはこの星の月はただの資源衛星だが、地表で暮らすステラとパイアからすれば空に浮かぶ美しい宝石だ。

「ああ、お月様で作った魔法の鉄で、俺っちがお前らの生活を超便利にしてやろう。このワイヤーシステムがあれば、市場で買った荷物を自宅で受け取れるような街が生まれるんだぜ!」

「わぁぁ……っ、すごーいっっ!」

「あ、それ、それってちょっといいかもー……っ!! ていうか、かなりいいめじゃないっ!?」

 ならば決まりだ。俺は目を閉じると、衛星軌道上のコルベットを月の裏側へと発進させる命令を出した。
 これでしばらく星を降らせることができなくなるが、戻ってきた頃には流通の革命を引き起こせる。

 そこにデスのカボチャ頭が現れた。

「ここにおられましたか、魔王様。朗報にございます、サキュバス族を中心とする300名ほどの派閥がついに折れ、今夜にはここに到着するとのこと」

「おおっ、サキュバス族! そりゃいい、ぜひ会いたい!」

「は、お好きな魔王さまならばそうおっしゃると思っておりました」

「うぇぇぇぇ……建てても建てても難民がくるぅぅぅー……」

 同胞がくるってのにパイアは翼をたらしてげんなりとした。

「全然、解消しませんね、住宅不足……」

 ウンブラの現在の総人口は約1500名ほどだ。毎日のように難民がやってくるので、常に300~500名ほどのホームレスを抱えた状態が続いている。

「そいつら、どこにも行くあてがねぇんだろ? なら何千人だって迎え入れる義務があるだろ、魔王様にはよ」

「ありがとうございます。今は貴方様のおやさしさに甘えさせていただきたい……」

「気にすんな、俺っちは楽しんでんだ! どんどん俺っちのウンブラに連れてきてくんなっ!」

 俺の作っている六芒星の都に続々と住民が集まってきている。だったら喜んでお迎えする他にない。
 救いを求められる俺は嬉しくて胸が躍る。一週間前まではただ見守ることしか、俺には許されていなかったんだ。

 俺は魔界杉の柱を担ぐと、ソイツを魔王パワーで大地に突き刺して口うるさい連中を絶叫させた。

「傷開くって言ってるでしょっっ、このバカーッッ!!」

「みんなっ、魔王様を、押さえ付けて……!! 働かせちゃ、ダメ……ッ!!」

「はははっ、ケチくせぇこと言うなよ! セクシーな団体さん300名がくんだっ、男ならでけぇ顔してぇだろがよっ!」

 七色の英雄。次に遭遇したら負傷せられる前に、分子レベルまで分解してやろう。やつらは強化外骨格を貫けねぇとはいえ、確かに俺の天敵だった。
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