惑星監視官、魔王になる - 助けて魔王様って言われてもそりゃ銀河条約違反だっての! 勘弁してくれよ、ったくしょうがねぇなぁ!? -

ふつうのにーちゃん

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・サイボーグ魔王VS魔将軍ヴィオレッタ

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「そなた、何者だ?」

「俺か? 俺っちは交渉人だ。デスの代わりにお前さんを説得にきた」

「断る」

「んなこと言わねぇで、話だけでも聞いてくれよ?」

「某はしばらく新しい魔王の動向を探っていた」

「お、おお? そうかい、それで印象は?」

 正しくは探りながらここに陣取って、ウンブラの避難民を守っていた。この時点で彼女は信頼できる。

「ウンブラの急速な発展。魔王の身で英雄を倒したその武力。庶民的な人となりからくる人望。デスが惚れ込むのもよくわかる」

 こんな美人のお姉ちゃんに言われると照れてしまう。現在の彼女はボロボロに破けた服からヘソやふとももを露出させたセクシーな姿をしていたので、なおさらだ。

「だが彼の傘下には入れない」

「そうか? 俺っちは助け合った方が断然、得だと思うぜ?」

「さらに深く調べたところ、魔王バーニィとやらは、愚かにも人間と貿易をするつもりらしい……」

「ああ、そんな話もあるらしいな」

 交易品の主力はモイライの絹だ。コイツは俺たちにしか作れない。美しく、頑丈で、裕福な者たちはこぞって金を出すだろう。
 服というのは社会ステータスの誇示に必要不可欠なものだ。必ずぼった値で売れる。

「何をのん気なことをっっ!! やつらは敵だ、敵を富ませる魔王がどこにいる!!」

「そうかね? そんなによぉ、おかしいことかねぇ?」

「当たり前だ!! 我々の戦いはどちらかが滅びるまで終わらない!! 人間との共存なんて不可能だとなぜわからない!!」

 ヴィオレッタは飛び退き、俺に槍を突きつけた。俺がただのお使いのおっさんではないと、とうに気付いていたようだ。

「交渉人よ、そなたは某を従わせたいのだろう。ならば、力ずくで従わせてみせろ。大抵のことはこれでどうにかなる」

 突然の決闘の誘い周囲の連中がうろたえた。彼女は相当に強いらしく、ステラとパイアが俺を止めようとした。
 腹ぺこのコボルトたちもご飯をくれる魔王軍をあまり怒らせたくないようで、姉さんことヴィオレッタを耳をペッタンコにして止めた。

「俺っちも手ぶらで帰ったらデスに笑われちまう。俺っちが勝ったら、仲間になってくれるんだよな……?」

「無論だ。人間との外交政策以外は非常に好ましく思っている」

「照れちまうなぁ、そりゃぁ……」

 俺は彼女から3歩ほど飛び退き、振動ナイフを構えた。

「ぶっちゃけると俺は、星の世界で半世紀戦い続けてきた騎士だ。異星人の巡洋艦に乗り込み、内部から船をぶっ壊したこともある。手加減なんていらねぇぜ、さあこいよ」

「戦う前に、名を」

「深宇宙探検隊のヨアヒムだ」

「戯れ言を。ではゆくぞ、魔王バーニィ・ゴライアスッッ!!」

 そっちが偽名で、こっちが本名なんだけどな。
 俺は魔界最強とコボルトたちが謳うヴィオレッタの槍を受け止めた。
 薙ぎ、突き、払い、振り下ろし。それぞれをナイフを受け流し、隙を突いて踏み込んだ。

「ちっ、生身だってのにどうなってんだ、お前ら……」

 この星のやつらは何から何までおかしい。俺たち人類とそう変わらない有機生命体のはずなのに、サイボーグ兵を越える動きをするやつらがいる……。

「この某をナイフ一本であしらうとは、恐るべし、魔王バーニィ……!!」

 ナイフの振動機能は使っていない。それを使うと貴重なあの槍を破壊してしまう上、フェアではなくなってしまう。

「さあ今度はそちらからこいっ、某を従わせてみろっ!!」

「おうっ、ならお言葉に甘えさせていただくぜ!」

 俺は対戦相手を注視した。借り物の魔王の力ではなく、サイボーグと経験の力で勝ちたかった。
 コモンウェルスの戦士の力でどこまでこの星の連中と渡り合えるのか、惑星監視官として検証せずにはいられなかった。

「くっ、なんという気迫だ……!! この者っ、粗暴で傲慢なだけだった先代とは格が違う……!!」

 しかしなんというわがままボディなんだ……!
 激しく動くたびにバルンバルンと暴れ回るあの動き! 気高く突き出たロケット!
 アレのせいで上手く踏み込めねぇ……!

「なんさかー、アイツ、胸ばっか見てない……?」

「え、やっぱり……?」

「だってアイツ、相手の顔とか一瞬も見てないじゃんっっ!!」

「言われてみれば……胸につられて、顔が動いているような……」

 俺は魔将ヴィオレッタに踏み込んだ。迎撃に繰り出される突きをかいくぐり、懐に踏み込んだ。近付くと、で、でけぇ……。

 パイアが面積ならヴィオレッタは奥行きだ!
 デカすぎて遠近感が狂いやがる……!

「な、なんという身のこなし……っ!? つ、強い……っ!!」

 かくなる上はしょうがねぇ。俺はサイボーグ化した左半身のリミッターを外した。槍の射程に逃げようとする彼女を追いすがった。
 追い付くだけでも精一杯だ。近付けまいと繰り出される乱舞を俺は受け流し、再び懐に踏み込む。

 今後の研究のためにもさらにじっくりと録画をしておきたいところだが、そろそろ生身の右半身が限界だ……!

「魔将ヴィオレッタッッ、これがっ、コモンウェルスの科学力だっ!!」

「バ、バカなっ、この男っ、魔王の力を使わずにっっ!! あっ、ああああっっ?!!」

 サイボーグの肉体がもたらす圧倒的膂力を駆使して、俺は鎧ごと振動ナイフで彼女の衣服を分解した。

 そこにスケベ心があったかどうかなんて、まあそこんところは答えるまでもねぇ。裸にひんむかれたヴィオレッタは裸体を隠しもせずに敗北にひざまずいた。

「力使ってねぇの、バレてたか。さすがはデスと並ぶ――あ、あたたたっっ?! こ、腰っ、腰痛ぇぇ……っっ?!!」

 生身の右腰に激痛が走り、俺も地にひざまずいた。やっぱり無理しないで魔王の力を駆使すればよかったと、そう思うくらいに腰が鈍く痛んだ。

「だ、大丈夫っ、お兄ちゃんっ!?」

「最低……いちいち裸にしなくてもいいのに、やっぱこの人、超サイテー……」

「うん……そこは私もよくないと思う……。嫌われちゃうよ、お兄ちゃん?」

「あたたた……っ、いや、これも俺っちに計算のうちなんだよ、うっ、うぅぅ……っっ」

 ステラとパイアが腰をさすってくれた。文句は多いがパイアもやさしい子だった。
 どうにか回復した俺は立ち上がり、対戦相手に振り返った。

「うおわっっ、あ、あたたた……っっ?!!」

「フッ、これではどっちが勝者だかわからないな」

「おいおい、一応俺っちの勝ちだろ……」

「ああ、某は魔王バーニィ・ゴライアスに従おう」

 そう彼女が恭順の意を示すと、コボルト兵たちが一斉に歓声の大声を上げた。強情を張っていたのはリーダーのヴィオレッタだけで、彼らは皆、ご飯がいっぱいのウンブラに移り住みたかったようだった。
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