惑星監視官、魔王になる - 助けて魔王様って言われてもそりゃ銀河条約違反だっての! 勘弁してくれよ、ったくしょうがねぇなぁ!? -

ふつうのにーちゃん

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・嵐の丘、無慈悲に旅人を焼き尽くす

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 あの戦いを契機に魔界は様変わりした。一つはヘズンの牙の恭順だ。やつらデーモン族は尚武の気質のロックで扱いづらい連中なんだが、ひとたび仲間になれば忠実でこの上なく頼もしいやつらだ。

 ウンブラはヘズンの牙の復興を支援することになり、彼らのために無償で食料と物資を提供した。本来はウンブラが受けるはずの被害を、彼らが盾となって防いでくれたのだから、そこは当然だ。

 この恭順により、ヘズンの牙の庇護を受けていた小勢力たちも新生魔王軍の勢力下に入った。

「星の世界の人たちってさー、みんなああなのー? なんか、あの人たち軽くなーい……?」

 商談が落ち着いたのでそのまま玉座でゆっくりしていると、パイアが魅惑のJカップをゆっさゆっさ揺らして飛んできた。
 いや毎日眺めていてもなお、驚かずにはいられない魅惑のでかさだった。

「ああ、浮かれてんだろうな。俺たちコモンウェルス星団の人間からすれば、ここは憧れの地だ。おまけにここには花と草木がある。ただそれだけでテンションだだ上がりってもんよ」

「アンタのことじゃないけどさー、じゃあ、いっつもコボルト族とかネコヒト族はべらせてニヤニヤしてる人はー?」

「ありゃケモナーっつー病気だ、ほっとけ……」

 同胞たちも新しい人生を満喫している。あれから1ヶ月経ってもお空の磁気嵐は収まらず、昼間から空がオーロラみたいに赤・青・緑と輝いて落ち着かないが、まあ偉大なる惑星シールドのおかげでどうにかなっている。

「ヨアヒム殿」

「ひぃっ、で、出たぁぁーっっ?!」

「失礼だぜ、パイア。リード隊長殿だって、好きでこんな格好してんじゃねぇんだ」

「いや、案外これが気に入っている。はぐれドローンに生まれ変わったら気楽だろうなと、前々から思っていた」

 討伐隊の隊長殿だが、磁気嵐が収まらないので奥手の手を打った。コルベットの複製機さえ使えれば、壊れた動力部を治してやれるのだが、まだしばらくファンタジアに戻ってこれそうもない。

 なのでスパイドローンのうち1体に首から上を移植してやった。

「意外とアンタも個性的なんだな……」

「でなければ懲罰部隊の隊長などやっていないよ」

「ああ、あいつらの面倒か……。さぞや大変な仕事だったろうな……」

「そうでもない。しかしここはいい……。我ら星の世界に出た者たちが忘れてしまった生活がある……」

「わかる。そりゃよくわかるぜ」

 5年間も衛星軌道上でボッチをやっていた俺には、惑星ファンタジアは楽園だった。

「……おっと、それよりも報告だ。先ほど空を散歩していたのだが、酷い損害を受けたキャラバン隊がこちらに向かっている。支援してやってはどうだろうか?」

「そういうこたぁ俺の許可なんて取らなくていい! うしっ、まずは俺が先行しよう。デスに言って受け入れ体制を整えさせてくれ」

「了解した、ヨアヒム殿」

「ああ待てっ、そのステルスを解除していけっ! そのまんまだとっ、空飛ぶ生首だろがよ……っっ」

「実は、驚かせるのを楽しんでいる」

「お前さんなぁぁっっ!?」

「しょうがないしー、あたしがついてくよー。アンタは早く助けに行ってあげてー」

 パイアに任せて俺は寺院の窓から外に飛び出した。んで空を飛んで、リード隊長から受け取った座標へとバビュッと加速した。キャラバン隊はすぐに見つかった。

「あ、貴方は……っ、新しい魔王様……っ!?」

「よう、ひでぇ有様だな。取り合えず傷とか治してやるよ、詳しい話を聞かせてくれ」

 気合い入れて全員に治癒魔法をかけてやると、みるみるうちに彼らの傷が癒えていった。おっさんがやっても映えねぇ絵づらだが、若者も中年も馬もみんな笑顔になっていった。

「あ、ああ、火傷だらけだった私の身体が、嘘……!? あ、ありがとう、魔王様っ!」

「新しい魔王様はやさしいって、本当だったんだぁ……!」

「ふぅぅ……っ、結構疲れんだぜ、コレ。感謝してくれよー?」

 あの日、魔法で電磁パルスを無効化してみてから、魔法の練習時間を増やしている。科学技術との応用次第で、とんでもないシナジーを発揮するとわかったからだ。

「しかし見かけねぇ顔だな……? お前さんたちどこからきた?」

「はい、それが……情けないことに……」

 そのキャラバン隊はウンブラの者たちではなかった。そのキャラバン隊は無謀にも、【嵐の山】を越えてこちらにやってきたという。
 ウンブラの北部には嵐の山と呼ばれる危険な領域がある。四六時中、落雷が降り注ぐムチャクチャな土地だ。

「なんでそんな無謀なことをしたんだよ?」

「面目ない……。安全なルートがあるとそそのかされまして……。それに遺物都市アルテマでは、モイライ絹の人気が急騰しておりまして、金に目がくらみました……」

「おおっ、そりゃ嬉しいっ! けど無茶し過ぎだぜ……? よし、これでみんな立てんな? 詳しい話は行きながら聞こう」

 俺は馬車を後ろから押してやって、彼ら遺物都市の商人をウンブラへと連れて行った。
 この話、興味深い。もっと詳しく知っておきたかった。
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