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・エピローグ2/2 星に愛された男
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こうして騎士ヨアヒムは失った故郷への帰還を果たしたのでした。めでたし、めでたし。
一通りの事件を語り終えると、拍手喝采が響き渡った。怒濤のようにエネルギー通貨と、通貨となる資源が口座に振り込まれ、自分もまた大きなやりがいに身が震えた。
『あんな生き方、憧れるなあ!』
『ヨアヒムだからできた生き方だ! 俺たちなんかにはまねできない!』
『面白かった! 引き続き配信してくれよ、ジャック・ザ・ドローン!』
『あのおじさん、私たちに見られていると知ったらどんな顔するかしら……』
『意外と純情でかわいいのよね♪ はぁぁぁっ、誘惑したぁ~い♂』
自分の名はジャック。自我に目覚めた時にはもう、はぐれドローンとして宇宙をさまよっていた。
それから色々あってヒューマノイドの振りをして生きることにした自分は、この商売を始めた。
きっとそこには、有機生命体のことをもっと知りたかったのがあるのだと思う。
「ですが皆様、一つだけおわびしなければならないことがございます。この入金口座なのでございますが、偽りがございます」
この宇宙には太古の国が宇宙文明のセンサーに引っかからず、人知れず宇宙の暗闇に存在している。
自分の仕事はそんな国の民にショーを提供することで、今回の舞台の主役はずばり、騎士ヨアヒムだった。
「こちらでざいますが、実は私の口座ではございません。この口座の正式な名義は【惑星ファンタジア防衛基金】でございます」
惑星監視官ヨアヒムがファンタジアに夢中になっていたように、自分たちもまた騎士ヨアヒムの人生を追うことを楽しんでいた。
彼は最高の逸材。予想もしない行動に出て、奇跡を起こし、観客を沸かせる。古代国の皆様はこれに大喜び、自分も役者の一人として深く楽しませてもらった。
「入金下さった資金は私の私利私欲ではなく、この世にも希少なる星の防衛のために使わせていただく、とお約束いたしましょう。さあ皆様、彼の助けになりたい者はございますかな?」
ヨアヒムが惑星ファンタジアの民に手を差し伸べたいと願ったように、古代国の観客たちも同じことを願った。
この男の助けになりたい。禁を破ってでも未熟な文明に恩恵を授けたい。
この行為は古代国法違反にあたる。
『おおおおっっ、お前は最高だ、ジャック・ザ・ドローン!!』
『アンタ最高の配信者よぉぉっっ!! 軍艦買えるくらいあげちゃうっ♂♂』
『続きが見れるならなんだっていい! 彼の人生の続きを見せてくれ!』
『これは次の配信が楽しみだ。少量だが追加で入金させていただくよ』
配信は大成功、とてつもない額が集まった。その額――まあ、知らない方がいいっすかね、この金額は。
自分は騎士ヨアヒムのコルベット船のシステムをハックすると、口座の金をそこに移したっす。
「さあ、魔王バーニィは迫り来る敵対異星人からファンタジアを守り抜けるでしょうか。乞うご期待」
配信は騎士ヨアヒムがジャックの部屋の扉をノックしたところで終了。飲みの誘いをかけていた自分は部屋を出て、彼に笑いかけた。
「いやおかげさまで絶好調っす! 今日は自分がおごるっすよ!」
「なんだぁ、おめぇ? 彼女でもできたかー?」
「違うっすよ、今日は儲かったっす! あ、そうだ、ヨアヒムさんの金で宝くじを買っておいたんすけど、結果見てみないっすかー?」
「何勝手なことしてんよ、おめぇ!?」
ツッコミがいちいち気持ちいい。そこも騎士ヨアヒムの魅力だった。
「今年の銀河ジャンボはすげーっすよ! 一等はなんと、1京エネルギー通貨っす!」
「銀河中のバカ野郎が買ってんだぞ、当たるわけねぇだろ、んなもん」
「いや人生何が起きるかわかんないもんっすよ」
「バカ言ってんじゃねぇ。ったく、なんて始末の悪ぃアンドロイドだ……」
ウンブラのカオスな繁華街を歩きながら、騎士ヨアヒムは苦笑いを浮かべた。製造元もわからない元はぐれドローンの自分を、彼は対等な人間として接してくれる。
「おっ、当たってるっす」
「はっ、どうせカス当たりだろ。なん等だよ?」
「5等っす」
「お、おおっ!?」
「5等及び4等、3等、2等、1等、全部当たりっす」
彼の興奮が萎んでいった。全部足しても届かないほどの金が彼の口座に振り込まれているとも知らずに。
「……バカ言ってんじゃねよ! お前みたいな変なアンドロイド見たことねぇわ!」
「案外本当のことかもしれないっすよー?」
「アホ抜かせ、ビックバンが100ぺん起きてもんな奇跡起きねーよっ! おらいくぞっ、飲み屋のねーちゃんが待ってるぜ!」
自分の役目は彼の人生を観測すること。彼が真実に気付いて、バグったみたいな入金額になっている口座に酒を吹く瞬間を心待ちに、自分はへらへら笑ってウンブラの町並みを歩いた。
そしていつもの店に入り、いつものビールを注文した。
「口座、見てみたらどうすっか?」
「バーローッ、いつまで言ってやがる。んなバカみたいな話が現実に起きるわけねぇだろ」
「見ればわかるっす」
「しつけぇなぁ……。しょうがねぇ、あー、どれどれ……」
騎士ヨアヒムは目を閉じてコルベット船との回線を開いた。そして口に含んだビールを――
「ブゥゥゥゥーーッッ?!! なっ、なっ、なっ、なっ、なんじゃぁぁあこりゃぁぁぁっっ?!!」
吹き出して絶叫を上げてくれるもんだから、配信者冥利に尽きた。
アンタの人生に祝福あれ。星は確かにあの日、アンタのために惑星シールドを開いた。
ヨアヒム・バーニィ・サンダース。アンタは星を愛し、星に選ばれ、星に愛された男っす。
こうして騎士ヨアヒムは失った故郷への帰還を果たしたのでした。めでたし、めでたし。
一通りの事件を語り終えると、拍手喝采が響き渡った。怒濤のようにエネルギー通貨と、通貨となる資源が口座に振り込まれ、自分もまた大きなやりがいに身が震えた。
『あんな生き方、憧れるなあ!』
『ヨアヒムだからできた生き方だ! 俺たちなんかにはまねできない!』
『面白かった! 引き続き配信してくれよ、ジャック・ザ・ドローン!』
『あのおじさん、私たちに見られていると知ったらどんな顔するかしら……』
『意外と純情でかわいいのよね♪ はぁぁぁっ、誘惑したぁ~い♂』
自分の名はジャック。自我に目覚めた時にはもう、はぐれドローンとして宇宙をさまよっていた。
それから色々あってヒューマノイドの振りをして生きることにした自分は、この商売を始めた。
きっとそこには、有機生命体のことをもっと知りたかったのがあるのだと思う。
「ですが皆様、一つだけおわびしなければならないことがございます。この入金口座なのでございますが、偽りがございます」
この宇宙には太古の国が宇宙文明のセンサーに引っかからず、人知れず宇宙の暗闇に存在している。
自分の仕事はそんな国の民にショーを提供することで、今回の舞台の主役はずばり、騎士ヨアヒムだった。
「こちらでざいますが、実は私の口座ではございません。この口座の正式な名義は【惑星ファンタジア防衛基金】でございます」
惑星監視官ヨアヒムがファンタジアに夢中になっていたように、自分たちもまた騎士ヨアヒムの人生を追うことを楽しんでいた。
彼は最高の逸材。予想もしない行動に出て、奇跡を起こし、観客を沸かせる。古代国の皆様はこれに大喜び、自分も役者の一人として深く楽しませてもらった。
「入金下さった資金は私の私利私欲ではなく、この世にも希少なる星の防衛のために使わせていただく、とお約束いたしましょう。さあ皆様、彼の助けになりたい者はございますかな?」
ヨアヒムが惑星ファンタジアの民に手を差し伸べたいと願ったように、古代国の観客たちも同じことを願った。
この男の助けになりたい。禁を破ってでも未熟な文明に恩恵を授けたい。
この行為は古代国法違反にあたる。
『おおおおっっ、お前は最高だ、ジャック・ザ・ドローン!!』
『アンタ最高の配信者よぉぉっっ!! 軍艦買えるくらいあげちゃうっ♂♂』
『続きが見れるならなんだっていい! 彼の人生の続きを見せてくれ!』
『これは次の配信が楽しみだ。少量だが追加で入金させていただくよ』
配信は大成功、とてつもない額が集まった。その額――まあ、知らない方がいいっすかね、この金額は。
自分は騎士ヨアヒムのコルベット船のシステムをハックすると、口座の金をそこに移したっす。
「さあ、魔王バーニィは迫り来る敵対異星人からファンタジアを守り抜けるでしょうか。乞うご期待」
配信は騎士ヨアヒムがジャックの部屋の扉をノックしたところで終了。飲みの誘いをかけていた自分は部屋を出て、彼に笑いかけた。
「いやおかげさまで絶好調っす! 今日は自分がおごるっすよ!」
「なんだぁ、おめぇ? 彼女でもできたかー?」
「違うっすよ、今日は儲かったっす! あ、そうだ、ヨアヒムさんの金で宝くじを買っておいたんすけど、結果見てみないっすかー?」
「何勝手なことしてんよ、おめぇ!?」
ツッコミがいちいち気持ちいい。そこも騎士ヨアヒムの魅力だった。
「今年の銀河ジャンボはすげーっすよ! 一等はなんと、1京エネルギー通貨っす!」
「銀河中のバカ野郎が買ってんだぞ、当たるわけねぇだろ、んなもん」
「いや人生何が起きるかわかんないもんっすよ」
「バカ言ってんじゃねぇ。ったく、なんて始末の悪ぃアンドロイドだ……」
ウンブラのカオスな繁華街を歩きながら、騎士ヨアヒムは苦笑いを浮かべた。製造元もわからない元はぐれドローンの自分を、彼は対等な人間として接してくれる。
「おっ、当たってるっす」
「はっ、どうせカス当たりだろ。なん等だよ?」
「5等っす」
「お、おおっ!?」
「5等及び4等、3等、2等、1等、全部当たりっす」
彼の興奮が萎んでいった。全部足しても届かないほどの金が彼の口座に振り込まれているとも知らずに。
「……バカ言ってんじゃねよ! お前みたいな変なアンドロイド見たことねぇわ!」
「案外本当のことかもしれないっすよー?」
「アホ抜かせ、ビックバンが100ぺん起きてもんな奇跡起きねーよっ! おらいくぞっ、飲み屋のねーちゃんが待ってるぜ!」
自分の役目は彼の人生を観測すること。彼が真実に気付いて、バグったみたいな入金額になっている口座に酒を吹く瞬間を心待ちに、自分はへらへら笑ってウンブラの町並みを歩いた。
そしていつもの店に入り、いつものビールを注文した。
「口座、見てみたらどうすっか?」
「バーローッ、いつまで言ってやがる。んなバカみたいな話が現実に起きるわけねぇだろ」
「見ればわかるっす」
「しつけぇなぁ……。しょうがねぇ、あー、どれどれ……」
騎士ヨアヒムは目を閉じてコルベット船との回線を開いた。そして口に含んだビールを――
「ブゥゥゥゥーーッッ?!! なっ、なっ、なっ、なっ、なんじゃぁぁあこりゃぁぁぁっっ?!!」
吹き出して絶叫を上げてくれるもんだから、配信者冥利に尽きた。
アンタの人生に祝福あれ。星は確かにあの日、アンタのために惑星シールドを開いた。
ヨアヒム・バーニィ・サンダース。アンタは星を愛し、星に選ばれ、星に愛された男っす。
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