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・日本沼津市俺んち編 俺んちに異世界人連れ込んでみた
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冷蔵庫の中は凄惨だった。
ドロドロに溶けたレタス、発芽したジャガイモ、ミイラみたいなニンジン。
牛乳はヨーグルト風味の下剤に変わり、卵は一見食えそうに見えて危険な半年物。
豚肉はグロテスクな灰色の物体Xと化していた。
どこから入り込んだのやら部屋は埃まみれ、虫の死骸と黒カビも少々。
部屋干しの洗濯物と、テーブルに出しっぱなしの食器が帰らぬ家主を待っていた。
「これが……召喚魔法の……見えざる側面……」
「月並みな言葉で恐縮ですが、悲惨ですね!」
燃えるゴミの日は明後日。
腐食を遅らせたい物を冷凍庫にぶち込んで、窓を開け、換気扇を回し、ため息を吐いた。
「面白い物がいっぱいですの。ここがドロシー・トトがいた、科学の世界なのですのね!」
「んなに換気扇をしげしげと見る人、俺初めてだわー……」
ナタネ教授は興奮めされている。
ご町内にとてもお見せできない横に長いエルフ耳をひょこひょことさせて、俺が掃除機にコンセントを指すと駆けつけてきた。
「それっ、聞いたことがありますのっ!」
「わたしも、本人から聞いた……。これが、掃除機……?」
「なんだよ、面白味のないやつらだな、ビックリするだろうと期待してたのに――よっ!」
掃除機のスイッチを入れると、異世界の美少女たちが跳ね上がった。
特にシペラスの驚きは掃除機を目前にした猫のようで、今にも剣を抜きそうなほどの剣幕だった。
「ま、魔物……っっ、では、ないのですか、ミフネ様……?」
「すごい……うるさい……! それ、嫌い……!」
猫耳黒魔導師は帽子越しに耳を塞いで、ベストオブ不機嫌って顔をした。
掃除機と猫は光と闇。
永遠に相容れない悲しき宿命なのだ。
うーん、ル○バ買おうかな……。
「これはホウキとチリトリが一体化した電気で動く機械だ」
「そ、そんな物がっ!?」
それで埃のつもったフローリングをガーッとやると、ナタネ教授がおっぱい揺らして楽しそうに跳ねた。
「すごいですのっ! わたくし、それ使ってみたいです!」
「んじゃ掃除機がけは任せたぜ、教授」
「任されましたの!」
さて、次は――腐海か。
こんなことならこまめに洗い物をしておけばよかったでござるー。
という後悔を胸に俺は蛇口をひねる。
「ま、回しただけで水がっ!?」
「と思うじゃん? なんとこっちをひねるとお湯が出る」
「お湯まで出るのですかっ!?」
近所迷惑だなぁ、こいつら……。
些細なことに感動してくれる彼女たちに俺も感動しながら、洗い物に手を付ける。
「理解……これが、キョウコが言っていた……お風呂」
「全然ちげーよっっ、どう見たって尻しか入らねーだろがよっ?!!」
「わたしなら余裕……?」
「黒猫ちゃんになればなっ!?」
台所洗剤で腐海と化した流し台を綺麗にした。
2人は台所洗剤の泡が気になるようだ。
「なんだか、美味しそうな匂いがしますね……っ」
「あ、わたしも、思ってた……」
「いや死ぬってばよっ!? これは水で油を溶かしてくれる薬だ!」
洗剤で遊びたがるお子さんを抱えた親御さんになったような気分だ!
「楽しそうだし、それ、わたしやる……」
「んじゃ任せた。ついでに風呂掃除も任せたぜ」
風呂を見せると言うと、ナタネ教授もそろって後を追ってくる。
風呂は――うん、真っ黒。
「キョーコの世界……すごい……」
「この世界では、個人が自分のお風呂を持てるのですかっ、なんと素敵な!」
「緑の英雄様、後で3人で入ってもよろしいですのっ?」
「え、3人で……? まあ、いいんじゃね……」
「やった……! 酒池肉林……!」
「私、この世界にきてよかったです!」
独り住まいの小さな風呂に、成人女性が3人で入浴。
それ、なんかすっげーな、いろんな意味で! 浴槽から夢あふれてるわ!
彼女たちはテンション上げ上げで笑い合って、今晩の入浴に期待した。
「あー、んじゃ俺、買い物行くから……シペラスは荷物持ちを頼めるか?」
「外に連れて行って下さるのですかっ!? 嬉しいっ、早く行きましょう!」
「待て待て待て待てっ、ストップッッ、そのまま行くなっ逮捕されんぞお前っっ!」
玄関のドアノブに手をかけるシペラスを、ダッシュで追いかけて力ずくで止めた。
「なぜですか?」
「歩く銃刀法違反がいるとしたらそれはお前だっ! 鎧と剣は家に置いてけっ!」
「それはいけません、危険から貴方を守れません」
「危険なのはお前だよっ!! 沼津市民は剣とか携行して歩かない民だからっ!!」
「なるほど。ではマンゴーシュだけにしておきましょう」
「アウトだっアウトッ、アウトだバカッ!!」
武装解除させたシペラスと、近所の『しまざきま』で服を買いに出かけた。
常時コスプレ状態で生活された日には、痛いやつ認定されるのは囲っている俺になるからな……。
ドロドロに溶けたレタス、発芽したジャガイモ、ミイラみたいなニンジン。
牛乳はヨーグルト風味の下剤に変わり、卵は一見食えそうに見えて危険な半年物。
豚肉はグロテスクな灰色の物体Xと化していた。
どこから入り込んだのやら部屋は埃まみれ、虫の死骸と黒カビも少々。
部屋干しの洗濯物と、テーブルに出しっぱなしの食器が帰らぬ家主を待っていた。
「これが……召喚魔法の……見えざる側面……」
「月並みな言葉で恐縮ですが、悲惨ですね!」
燃えるゴミの日は明後日。
腐食を遅らせたい物を冷凍庫にぶち込んで、窓を開け、換気扇を回し、ため息を吐いた。
「面白い物がいっぱいですの。ここがドロシー・トトがいた、科学の世界なのですのね!」
「んなに換気扇をしげしげと見る人、俺初めてだわー……」
ナタネ教授は興奮めされている。
ご町内にとてもお見せできない横に長いエルフ耳をひょこひょことさせて、俺が掃除機にコンセントを指すと駆けつけてきた。
「それっ、聞いたことがありますのっ!」
「わたしも、本人から聞いた……。これが、掃除機……?」
「なんだよ、面白味のないやつらだな、ビックリするだろうと期待してたのに――よっ!」
掃除機のスイッチを入れると、異世界の美少女たちが跳ね上がった。
特にシペラスの驚きは掃除機を目前にした猫のようで、今にも剣を抜きそうなほどの剣幕だった。
「ま、魔物……っっ、では、ないのですか、ミフネ様……?」
「すごい……うるさい……! それ、嫌い……!」
猫耳黒魔導師は帽子越しに耳を塞いで、ベストオブ不機嫌って顔をした。
掃除機と猫は光と闇。
永遠に相容れない悲しき宿命なのだ。
うーん、ル○バ買おうかな……。
「これはホウキとチリトリが一体化した電気で動く機械だ」
「そ、そんな物がっ!?」
それで埃のつもったフローリングをガーッとやると、ナタネ教授がおっぱい揺らして楽しそうに跳ねた。
「すごいですのっ! わたくし、それ使ってみたいです!」
「んじゃ掃除機がけは任せたぜ、教授」
「任されましたの!」
さて、次は――腐海か。
こんなことならこまめに洗い物をしておけばよかったでござるー。
という後悔を胸に俺は蛇口をひねる。
「ま、回しただけで水がっ!?」
「と思うじゃん? なんとこっちをひねるとお湯が出る」
「お湯まで出るのですかっ!?」
近所迷惑だなぁ、こいつら……。
些細なことに感動してくれる彼女たちに俺も感動しながら、洗い物に手を付ける。
「理解……これが、キョウコが言っていた……お風呂」
「全然ちげーよっっ、どう見たって尻しか入らねーだろがよっ?!!」
「わたしなら余裕……?」
「黒猫ちゃんになればなっ!?」
台所洗剤で腐海と化した流し台を綺麗にした。
2人は台所洗剤の泡が気になるようだ。
「なんだか、美味しそうな匂いがしますね……っ」
「あ、わたしも、思ってた……」
「いや死ぬってばよっ!? これは水で油を溶かしてくれる薬だ!」
洗剤で遊びたがるお子さんを抱えた親御さんになったような気分だ!
「楽しそうだし、それ、わたしやる……」
「んじゃ任せた。ついでに風呂掃除も任せたぜ」
風呂を見せると言うと、ナタネ教授もそろって後を追ってくる。
風呂は――うん、真っ黒。
「キョーコの世界……すごい……」
「この世界では、個人が自分のお風呂を持てるのですかっ、なんと素敵な!」
「緑の英雄様、後で3人で入ってもよろしいですのっ?」
「え、3人で……? まあ、いいんじゃね……」
「やった……! 酒池肉林……!」
「私、この世界にきてよかったです!」
独り住まいの小さな風呂に、成人女性が3人で入浴。
それ、なんかすっげーな、いろんな意味で! 浴槽から夢あふれてるわ!
彼女たちはテンション上げ上げで笑い合って、今晩の入浴に期待した。
「あー、んじゃ俺、買い物行くから……シペラスは荷物持ちを頼めるか?」
「外に連れて行って下さるのですかっ!? 嬉しいっ、早く行きましょう!」
「待て待て待て待てっ、ストップッッ、そのまま行くなっ逮捕されんぞお前っっ!」
玄関のドアノブに手をかけるシペラスを、ダッシュで追いかけて力ずくで止めた。
「なぜですか?」
「歩く銃刀法違反がいるとしたらそれはお前だっ! 鎧と剣は家に置いてけっ!」
「それはいけません、危険から貴方を守れません」
「危険なのはお前だよっ!! 沼津市民は剣とか携行して歩かない民だからっ!!」
「なるほど。ではマンゴーシュだけにしておきましょう」
「アウトだっアウトッ、アウトだバカッ!!」
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