獣も魔物もお姉さんも、指先一つで即ヘブン! ~【器用さ9999】の転移者は払い損の月額課金を解約せんと帰還を企てる~

ふつうのにーちゃん

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・さらば沼津! 俺たちの異世界生活よ、無窮なれ!

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 それから半月が過ぎ去り、約束の日がやってきた。
 集うは沼津市俺んち。
 関西と関東の中継地点にある静岡は、ちょうどいい合流場所だった。

「やあ、仕事辞めてきたよ!」

「ははっ、それサイコーの一言じゃないっすか!」

「ああっ! 会社には交代が見つかるまで待ってくれと言われたけど、薄給で散々こき使っておいてもう遅いっ! よね……?」

「当然っ、んなもん付き合う理由ないっしょ!!」

 小林康一さんがうちを訪ねてくれた。
 俺は約束しておいた魔法使い主婦コバヤシのフィギュアを彼にプレゼントした。

「すごい! 若い頃の清美よりかわいいよ!」

「それ、言わない方がいいやつ」

「羨ましいなぁ。君なら模型雑誌のコーナーとか持てるんじゃないかなぁ……」

 パンツは白。
 指定通りのパンツをしっかり拝んで、康一さんはやさしそうに笑った。

 後は関西の柿島家だけ。
 あのちょっと押しの強い親子がやってきたら、この世界とはさよならだ。

 そう感慨に思ったところで、待ちかねていたチャイムが鳴った。

「えへ、きちゃった……アサお兄ちゃん♪」

「サ、サヤ……ちゃん……?」

「今日、お兄ちゃんのところに帰るんでしょ? だったらサヤも一緒に行く!」

「な、なんでそれ知ってるしっ!?」

「誰かはわからないけどね、親切な人が教えてくれたの! お兄ちゃんのアカウントから!」

 クローディアだ……。
 こういうテロ行為をやらかすやつはクローディアしかいない……。

 うちの住民は勝手に人のスマホを操作して、勝手に買い物をしたり、勝手にエロ画像エロ動画を保存したりして、出先でフォトモードを開いた俺を青ざめさせる!

 人のスマホでエロ画像を保存する行為は、条例で禁止にするべきだと思う!!

「いや、でも、サヤちゃんのお父さんとお母さんは……?」

「お兄ちゃんともっとお金を稼いできなさい! だって!」

「ホントかよ……。サヤちゃん連れ帰ったら、オケヤがどんな顔するやら――あ、面白れーし、いっか?」

「うんっ、いいと思う! サヤねっ、異世界に行ったらねっ、武道家になるのっ!」

「よーしっ、オケヤにアポ無しで異世界、いっちゃうかーっ!」

「おおーっっ♪」

 ということで帰還の道連れに、飛び入り参加でオケヤの妹追加、と。
 まあいいんじゃねぇの、しみったれたこっちで暮らすよりもずっと。

「あの、いいのでしょうか……?」

 白騎士シペラスはキャミとスカートを脱いで、元のテンプルナイトの装備に戻っていた。

「本人の望みだろ。それにここでハブって帰す方が可哀想だし」

「そうですけど、勇者オケヤ様がお怒りになられるのでは……?」

「俺はヘタレ勇者よりサヤちゃんの方が怖いし」

 とやっていると、外がまた騒がしい。
 チャイムが鳴り、カキシマさんの奥さんと娘さんが訪ねてきた。

「本日はお世話になります。これでやっと、夫に会えるのですね」

「わっ、白騎士がいるーっ! あっ、猫耳の魔法使いも!」

「お二人ともいらっしゃーい♪」

 娘の加奈子さんが驚くのも無理もない。
 クローディアも幅広帽子と黒魔導師の服に戻り、ナタネ教授も学者の姿に戻っていた。

「んじゃこれから異世界に転移するけど、みんな準備はいいか?」

 この一ヶ月で真の転移魔法をナタネ教授に教わった。
 極めて危険な術であるので、他の誰にも教えないことを条件に。

「通い続けた健康ランドが恋しいですが……帰りましょう」

「わたしは……残ってゲームしてたいけど……ミフネが行くなら、しょうがないし、帰る……」

「楽しかったですの、沼津。1ヶ月間の無断欠勤の言い訳が思い付かなかったことだけが、心残りですわ……」

「勇者オケヤに一筆書かせようぜ、協力させてたって。んじゃ、いくぜっ、みんな!!」

 さよなら、環境汚染にくすんだ空。
 何をするにしても人の目を気にしなければならない、しみったれた世界。

 そしていざ行かんっ、仲間たちの待つ異世界へ!
 真のフリーダムがある土地へ!

 俺はオズの魔法使いのように靴のかかとを3度鳴らすと、転移魔法を発動させた。
 少女ドロシーは苦難の果てにパパとママの待つ元の世界に帰った。

 けれど俺たちは違う。
 自らの意思で異世界に行く。
 パパのところにママと娘を連れて行く。

 部屋いっぱいのお土産と商品を魔法で飛ばして、俺はみんなを元の異世界へと運んだ。


 ・


「なっ、何奴っっ!? はっ、その全身緑尽くめの趣味の悪い格好はっ、緑の英雄殿っ!?」

 でもこれ、どこに飛ぶんだろう?
 俺、そこが疑問でした。

 疑問だけど深く考えず、『とにかく行けばわかるさこの道を』と術を完遂させたわけなのですが!

「趣味が悪いとはご大層だな。オッス、久しぶり、王様」

 まさか転移させられたあの日のように、玉座の目の前に飛ぶとか思わないじゃん?

 軍を動員する事態を招いた緑の英雄が、再びこの世界に爆着すると、国王陛下はメチャメチャ迷惑そうにこちらへ苦笑いを浮かべておられた。

「その者たちは、何者だ、英雄殿……?」

「勇者パーティのご家族に決まってんじゃん」

「なっ、家族!? 何を勝手なことを!?」

「勝手なのはそっちだろ、勇者オケヤの実家、全焼してたぜ。誰かさんたちが、確認も取らずに、油物の調理中に転移させるから。当然、賠償してくれるんですよね?」

 転移者は転移した時点で何かしらの才能が目覚める。
 俺の場合は【器用さ9999】ボーナスだった。

 つまりここにいるみんなが、何かしらの才能を受け取った異能者たちってわけ。

 そんなやつらに面と向かってケンカ売るやついる?
 いねぇよなぁ!?

「この王様が、うちの家を焼いた張本人!? ちょっと、どういうことなの、おじさんっ!! 私たち寒い外に焼け出されて大変だったんだからっ!!」

「勇者オケヤの妹、サヤちゃんだ。大切な兄を奪われ、家を焼かれた被害者を前にして、王として何か言うことは?」

「サヤの家を返してっ、お兄ちゃんを返してっ!!」

「せっかくだから僕からも言わせてもらうよ! 僕から妻を奪ったのは貴方なのですね、国王陛下っっ!!」

「パパを返してっっ!!」

「私たち、夫のために家を処分してこちらの世界にやってきました。何か経済的なサポートをいただけると、こちらとしてはありがたいのですが……?」

 被害者たちはズイズイと前に出た。
 近衛兵が国王陛下をかばうが、巨人を前にしたかのように及び腰だ。
 全て、相手の生活を考えない身勝手な召喚がもらたしたことだった。

「身勝手だったことを認める……。も、申し訳ない……」

 一言二言で被害者が機嫌を直すはずもない。
 突然現れた転移者のご家族に、国王陛下は玉座を背に膝を突き、再び謝罪の言葉を送ったという。
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