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竜将軍大会第三回戦:策士クルシュ VS 魔弓使いナルギス
・カロン・オボロス(職業:貧乏漫画家) - 印税ゼロ -
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ココロさんは見違えるように綺麗になったカロンさんと、ティティスを連れて帰ってきた。
ティティスとココロさんはいやにテンションが高かった。
私が台所の手伝いをしようとすると、ココロさんは私を追い出して、時代錯誤なあの言葉を口にしてくれた。
「男子厨房に入らずです。男の人に仕事を取られて困ります」
そう言うので、私たちは応接間での打ち合わせに入った。
風呂に入り、やたらに長い髪をとかしたカロン・オボロスはミステリアスな美人に化けていた。
「まず金15。これでまともな仕事場を借りることにいたしましょう」
「ティ、ティティス様ぁっ?! そ、そげなこと勝手にされたら困りますだぁよぉっ?!」
私は顎を撫でてティティスの案を検討した。
「今まではどこで作業を?」
「我が家だす!」
「3畳ほどの長屋になりますわ」
「環境を疎かにするとは関心しませんね。いいでしょう、投資を許可します」
「いえーいっ♪ 話わかるじゃん、クルシュ!」
私がソウジン殿と稽古に打ち込んでいる間に、ティティスが既に予算の用途を考えてくれていた。
私はあくまでパトロン。出すのは金だけでいい。
「次に金5、これで衣類一式を揃えますわ。外向けの、ブランド物の、ちゃんとしたお洋服を着ていただきます」
「ブランドォッ?! もったいねぇべよぉ、そんなのぉーっ?!」
私も同感だ。
だが人間は毛皮を捨て、他の動物の毛皮をまとうことで進化した生き物である。
時にブランド物という毛皮をまとい、やり手の大物をよそおうことも必要だ。
「腕はいいのに冷遇されていたのは、あのズボラな服装もあるかもしれませんね。よし、許可します」
「いやっふぅーっ♪ 着せ替えたのしーなぁーっ♪」
「おらは今までのボロがいいべよぉっ?!」
「カロン先生、せっかく美人に生まれたのですから、活用しないのは損ですわよ? そのお姿だって……超似合ってるから自信持ちなよーっ!」
カロン先生は今、青いアヤメのように華やかなドレスを着せられていた。
なかなか値段が張りそうだが、彼女はバトル4割、恋愛6割の恋愛漫画家である。
「こっぱずかしゅぅて死んでしまうべよぉっ?!」
「うふふふっ、今までの格好の方が2000倍は恥ずかしいですわよ」
我々パトロンとしては、あんな世捨て人みたいな格好を続けられては、支援のしようがなかった。
「続きまして金15、これで仕事道具一式と家具を新調いたしましょう。今までカロン先生は、畳で寝てらしたそうなので……」
「それはまたなんとストイックな……」
そこまで清貧の創作活動を極められたら、一周回ってカッコいい。まさに求道者だ。
「そそそっ、そんな恐れ多いっっ! おらみてぇな雑魚絵巻作家っ、ボロの道具と雑魚寝で十分だべっ!」
「カロン先生」
「な、なんだべさ、クルシュ様っ?!」
「私たちは貴女の漫画の続きが読みたいのです。続きを少しでも早く読めるならば、金10の筆を買っていただいてもかまいません」
「ピギャァァーッッ?!!」
次の試合に勝てば金160が入る。
この程度の出費、痛くもかゆくもない。
「ということで予算の使用を許可します。道具に金をかけないのは職人として間違っています」
「うわーいっ♪ 私家具とか見るの好きなんだーっ♪ 一緒に選ぼうねーっ、カロン先生♪」
「ふ……ふひっ、ひふっ、うひひひ……っ?!」
カロン先生は震えていた。
少し嬉しそうに口元が笑っていたが、やはり震えていた。
「次は予算ではなく、カロン先生の取引の話となりますが……今の問屋さんとの契約を打ち切らせていただきますわ♪」
「ンナァァァーーッッ?!!」
「あのさぁー、カロン先生? 問屋との契約書、ちゃんと読んだー?」
「おら見てないべっ、おらなんにも見てないべよーっっ!!」
この漫画家、よく今日まで生き抜いてこれたものだ……。
「足下を見られていたのか?」
「うん、サインがまだで助かったよー。契約書見せてもらったらさ、なんと印税ゼロ!」
「それ、さすがに舐めてねぇか……?」
「し、知らなかったべ……」
「いやなんで知ねーんだよっ?!」
「フゲッッ?!」
あまりにも社会人としてダメ過ぎて、私はうっかり女性の胸元に鋭いツッコミをぶち込んでいた。
ティティスとココロさんはいやにテンションが高かった。
私が台所の手伝いをしようとすると、ココロさんは私を追い出して、時代錯誤なあの言葉を口にしてくれた。
「男子厨房に入らずです。男の人に仕事を取られて困ります」
そう言うので、私たちは応接間での打ち合わせに入った。
風呂に入り、やたらに長い髪をとかしたカロン・オボロスはミステリアスな美人に化けていた。
「まず金15。これでまともな仕事場を借りることにいたしましょう」
「ティ、ティティス様ぁっ?! そ、そげなこと勝手にされたら困りますだぁよぉっ?!」
私は顎を撫でてティティスの案を検討した。
「今まではどこで作業を?」
「我が家だす!」
「3畳ほどの長屋になりますわ」
「環境を疎かにするとは関心しませんね。いいでしょう、投資を許可します」
「いえーいっ♪ 話わかるじゃん、クルシュ!」
私がソウジン殿と稽古に打ち込んでいる間に、ティティスが既に予算の用途を考えてくれていた。
私はあくまでパトロン。出すのは金だけでいい。
「次に金5、これで衣類一式を揃えますわ。外向けの、ブランド物の、ちゃんとしたお洋服を着ていただきます」
「ブランドォッ?! もったいねぇべよぉ、そんなのぉーっ?!」
私も同感だ。
だが人間は毛皮を捨て、他の動物の毛皮をまとうことで進化した生き物である。
時にブランド物という毛皮をまとい、やり手の大物をよそおうことも必要だ。
「腕はいいのに冷遇されていたのは、あのズボラな服装もあるかもしれませんね。よし、許可します」
「いやっふぅーっ♪ 着せ替えたのしーなぁーっ♪」
「おらは今までのボロがいいべよぉっ?!」
「カロン先生、せっかく美人に生まれたのですから、活用しないのは損ですわよ? そのお姿だって……超似合ってるから自信持ちなよーっ!」
カロン先生は今、青いアヤメのように華やかなドレスを着せられていた。
なかなか値段が張りそうだが、彼女はバトル4割、恋愛6割の恋愛漫画家である。
「こっぱずかしゅぅて死んでしまうべよぉっ?!」
「うふふふっ、今までの格好の方が2000倍は恥ずかしいですわよ」
我々パトロンとしては、あんな世捨て人みたいな格好を続けられては、支援のしようがなかった。
「続きまして金15、これで仕事道具一式と家具を新調いたしましょう。今までカロン先生は、畳で寝てらしたそうなので……」
「それはまたなんとストイックな……」
そこまで清貧の創作活動を極められたら、一周回ってカッコいい。まさに求道者だ。
「そそそっ、そんな恐れ多いっっ! おらみてぇな雑魚絵巻作家っ、ボロの道具と雑魚寝で十分だべっ!」
「カロン先生」
「な、なんだべさ、クルシュ様っ?!」
「私たちは貴女の漫画の続きが読みたいのです。続きを少しでも早く読めるならば、金10の筆を買っていただいてもかまいません」
「ピギャァァーッッ?!!」
次の試合に勝てば金160が入る。
この程度の出費、痛くもかゆくもない。
「ということで予算の使用を許可します。道具に金をかけないのは職人として間違っています」
「うわーいっ♪ 私家具とか見るの好きなんだーっ♪ 一緒に選ぼうねーっ、カロン先生♪」
「ふ……ふひっ、ひふっ、うひひひ……っ?!」
カロン先生は震えていた。
少し嬉しそうに口元が笑っていたが、やはり震えていた。
「次は予算ではなく、カロン先生の取引の話となりますが……今の問屋さんとの契約を打ち切らせていただきますわ♪」
「ンナァァァーーッッ?!!」
「あのさぁー、カロン先生? 問屋との契約書、ちゃんと読んだー?」
「おら見てないべっ、おらなんにも見てないべよーっっ!!」
この漫画家、よく今日まで生き抜いてこれたものだ……。
「足下を見られていたのか?」
「うん、サインがまだで助かったよー。契約書見せてもらったらさ、なんと印税ゼロ!」
「それ、さすがに舐めてねぇか……?」
「し、知らなかったべ……」
「いやなんで知ねーんだよっ?!」
「フゲッッ?!」
あまりにも社会人としてダメ過ぎて、私はうっかり女性の胸元に鋭いツッコミをぶち込んでいた。
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