雪の魔法

SORA

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ホワイトクリスマス

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『お待たせ』

十二月二十五日。
世間一般ではクリスマスと呼ばれる日だ。
そんな恋人達の神聖なイベントを祝おうと地元の高校に通う高校生、雪奈(ゆきな)は自宅に彼氏を招待しようとしていた。
蓮(れん)『待ってないよ』
雪奈『そういう王道なやり取りいらないよ?』
蓮『可愛げないなぁ…』
蓮はそういいながらも雪奈の手を優しく握ってコートのポケットへしまった。
雪奈『可愛げなくて結構です』
蓮『その癖嬉しそうだね?』
雪奈『…うるさい』
雪奈は蓮の頬を膨れっ面でつねった。
蓮『ごめんって!』
雪奈『…ばか』
「はぁ…」
二人の吐息は白く変化し空気中に消えていった。
蓮『雪奈の息、白くなってるね』
雪奈『蓮君の方こそ』
二人はそんな事を笑いながら雪奈の自宅へ向かっていった。
雪奈『あー寒かった』
蓮『暖めてあげよっか?』
雪奈『どうやって?』
蓮『それ聞く?』
雪奈『え?』
そのきょとんとした顔に蓮は優しく笑いながら背後から彼女を抱き締めた。
雪奈『!!』
蓮『こうやってだよ』
(私、先輩なんだけど…)
蓮『雪奈?』
雪奈『…ご飯作れない』
そう言いながら、せっかくの抱擁を剥がしてぷいっと雪奈はそっぽを向いてしまった。
蓮『え、抱き締めた感想なし?』
雪奈『エアコンの方が暖かいよ?』
蓮『そんな元も子もないようなことを…』
雪奈『ほらテレビ見て待ってて?』
台所でエプロンを巻きながら声をかけてくる雪奈に蓮はつい「可愛い」と声を漏らした。
雪奈『は?』
蓮『あ、ごめんなんでもない』
雪奈『…ばか』
その後も恋人らしい平和なやり取りをしながらも
雪奈はスムーズに調理を進めていった。
「いただきます」
雪奈『熱いから気をつけ…』
蓮『熱っ!!!』
雪奈『…人(シェフ)の警告は最期まで聞くものだよ』
蓮『だっへ…』
蓮は相当熱かったのか舌を出して手で扇ぐような仕草を見せていた。
雪奈『もう…しょうがないなぁ』
スプーンでシチューを掬い、何度かふぅふぅと冷ましたものを雪奈は蓮へ差し出した。
蓮『これって…』
雪奈『言わないとわかんないの?』
蓮『ま、まあ?』
雪奈『ほら…あーん』
蓮『…』
少し恥ずかしいのは二人の頬は僅かに紅潮している。
蓮『うまい!』
雪奈『よかったね』
雪奈はこの日はじめて素直な笑顔を蓮に見せた。
蓮『…可愛い』
雪奈『もう…またそうやって言う』
蓮『今日はクリスマスだろ?』
雪奈『そうやって浮かれてると痛い目に遭うよ』
蓮『もう現実的だなぁー』
雪奈『であって開口一番、可愛げないって言われたけど』
蓮『…根に持ってたのね』
あからさまに不機嫌そうな雪奈に蓮はいたたまれない衝動に駆られた。
雪奈『…』
蓮『いい?』
雪奈『早く食べないと冷めるよ?』
蓮『火傷してるから』
雪奈『全くしょうがないなぁ…』
雪奈は握っていたスプーンを置くと、椅子から立ち上がって両腕を広げた。
雪奈『蓮君、おいで』
蓮『…うん』
蓮は雪奈の華奢な身体を先程よりも強く抱き締めた。
雪奈『少し苦しいよ』
蓮『へへ…クリスマスだから』
雪奈『ほんと、お子様だね』
その声色はそう言いながらもどこか嬉しそうでいつものクールな声色とは違っていた。
蓮『雪奈、好きだよ』
雪奈『こんな私を好きになってくれてありがとう』
蓮『またこんなとか言う…』
雪奈『だって……あっ!!』
突然声をあげたかと思うと突然、雪奈は蓮の抱擁を剥がして窓へ駆け寄っていった。
蓮『ちょっ…雪奈?』
雪奈『蓮君!雪!!』
蓮『えっ…』
無邪気な声に驚きながらも二人は並んで外の景色に視線を奪われた。
蓮『ホワイトクリスマスだ…』
雪奈『それ私が言いたかった』
蓮『ごめんごめん』
雪奈『そうだ。蓮君』
蓮『ん?』

粉雪が舞う中で雪奈は突然、蓮の胸に強く顔を埋めた。

蓮『!!』
雪奈『さっき言い忘れちゃったから』
蓮『何を…?』
雪奈『耳塞いでくれる?』
蓮『えっ…』
雪奈『嘘です』

『大好き』

蓮『っ…』
雪奈『あ、つい塞ぐ前に言っちゃった』
蓮『雪奈…』
雪奈『ちょっと、苦しい…』
外は雪が降るほど気温が低いはずなのに
胸のあたりがじんわりと熱を帯びた。
蓮『やばい』
雪奈『え?』
蓮『可愛すぎる』
雪奈『だからそう言うこと言われると…』

「照れるってば…」

蓮『……』
雪奈『…』
蓮『部屋…戻ろうか』
雪奈『うん。ご飯食べちゃお』

二人は笑顔を交わして
暖かな部屋へと戻っていった。
巡る季節を今日のように彩っていけることを祈りながら残りの時間を過ごしたのだった。

~Fin~
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