転生陰陽師は男装少女!?~月影の少女と神々の呪い~(ライト版)

水無月 星璃

文字の大きさ
59 / 86
第8章:帝都鳴動、荒神顕現

第2話:男装の陰陽師は囚われの月となる2

しおりを挟む
意識が戻った時、僕はひんやりとした硬い石の床の上にいた。
薄暗い、だだっ広い部屋。
儀式でもする場所なのかな。
ゆっくり体を起こして、自分の姿を見て息を呑んだ。

雪のように真っ白な、女性の装束。
嘘でしょ、これって婚礼衣装じゃないか……!
本気で僕を嫁にする気なの、あの男……!?

床には僕の力を封じるための禍々しい紋様が描かれてて、紫の怪しい光を放つ帯が檻みたいに僕を取り囲んでる。
それに、なんだか鼻の奥に絡みつくような、甘ったるい香りが部屋に満ちてて……。

「……うっ……」

濃厚すぎる匂いに吐き気がして、思わずえずいてしまった。


その時、階段の上から、楽しげな声が降ってきた。

「……目が覚めたか、我が花嫁よ」
「……誰が、花嫁だ!」

睨みつける僕に、玄道は歪んだ笑みを浮かべる。
このままじゃ、本当に結婚させられる…‥。

でも、もう少し待てば、きっと夜刀たちが助けに来てくれる。
なんとかして時間を稼がないと! 
僕は脳みそをフル稼働させた。

そして、ふとイザナミ母様の言葉を思い出した。

「……あなたは、我が師、清晄と、清耀兄様を恨んでいたのか?」

僕が訪ねると、玄道はニヤリと嫌な笑みを浮かべた。

「萩壺から聞いたか。……いかにも。あの男どもは邪魔だった」

彼は語り始めた。
彼の祖神たるスサノオを封じた師への憎しみ。
その才能と人柄から人望も厚く、次期陰陽頭と期待されていた兄様への嫉妬。
特に、帝の御前での力比べの際の出来事が、玄道のプライドをズタズタにしたらしい。

「勝負に勝ったのは私だった!」

玄道は自慢げに声を張り上げる。
でも次の瞬間、その顔は屈辱に歪んだ。

「……だが、帝が称賛したのは、術に巻き込まれた蝶なんぞを助けて負傷した、あやつだった!」

勝負より命を大切にする。
いかにも優しい兄様らしいエピソード。
それを理解している帝もやっぱり素晴らしい御方だ。

でも、力に溺れ、それしか見ていない玄道には、それが理解できなかった。
そして、二人への恨みを募らせた玄道は、邪魔者を消すためにイザナミ母様と手を組んだ。
強力な妖魔を作り上げて、二人を死に追いやったんだ……。

「ふふ……イザナミは良い隠れ蓑になってくれた。私に利用されているとも知らずに……」

満足そうに笑う玄道に、怒りがこみ上げる。
そんな……そんなくだらない理由で、僕の大切な師匠と兄様は殺されたっていうの──?
許せない、絶対に許せない!

「なぜ……そこまでして地位を、力を、求める……?」
「決まっているだろう。復讐と、世直しのためだ」

彼は、自分が三貴神の一柱であるスサノオの末裔であること、そのせいで一族が不遇をかこってきたことを語った。
スサノオ……海神であり、その粗暴さから荒神とも言われる、僕──ツクヨミの弟神。
まさかここでその名前を聞くとは思わなかった。

驚く僕を置き去りに、玄道はこの腐った世界を一度壊して、自分の手で正しく再生させるんだって、狂気じみた野望まで語った。
部屋に満ちる玄道の霊力は、彼が興奮するにつれてどんどん濃くなってくる。

(このままじゃ、あいつの思うつぼだ……)

だけど、何とかしなきゃと焦る僕の隙を突いて、彼は禍々しい光の檻の中に入り込み、抵抗する僕を軽々と抱き寄せた。

「……この、離せ!」
「気乗りがせぬなら婚礼は今でなくとも良い。だが、まずはその力、少し借りるぞ」

そう囁くと、玄道は自分の人差し指を噛み切り、その血で僕の額に呪印を描いた。

「ぐっ……ぁ……!」

瞬間、体から力が抜けて、眩しい光が溢れ出す。
ツクヨミの神力が、無理やり引き出されていく……!
ぐったりと彼の腕に抱かれる僕を、玄道は愛おしそうに見下ろし、額に口づけた。

やめて……触らないで……!

「……もはや、逃がしはせぬ。共に世界を統べようぞ」

僕から放たれた光は一筋の柱になって、天井を突き抜け、北の空を指し示した。

「ほう、そこに御座おわしましたか、我が祖神よ。今こそそのお力、貰い受けに参りましょう……」

玄道の高笑いが、この牢獄みたいな部屋に不気味に響き渡った。


でもその時、祭壇に据えた大鏡に人影が映った。

「ふむ、どうやらネズミどもが入り込んだようだ」

そこに映し出されたのは、真白と夜刀だった。

きっと僕が残した霊符を見つけて、助けに来てくれたんだ……!

でも、喜んだのもつかの間、二人は屋敷の周りに張られた結界が破れず、立ち往生していた。
真白が霊符を叩きつけても、びくともしない。

「……ふふ。私の結界はそう簡単に破れぬよ」

そう言って、玄道は僕を抱く腕に力を籠めると、片手で髪を梳いた。

(だから、触るなって!)

恍惚とした表情で見つめながら、何度も髪を梳く手のいやらしさに総毛立つ。

我慢も限界になってきた時、鏡の中の夜刀が、ふと動きを止めた。
何か呟いたみたいだけど、鏡から伝わる音は小さすぎて、聞き取ることはできなかった。
息を詰めて見守る僕の視線の先で、彼は目を閉じ、深く息を吐く。

次の瞬間、夜刀の体から凄まじい神気が溢れ出し、その姿は白銀の鱗を輝かせる巨大な蛇へと変わった。

は!? どういうこと!?

初めて見る夜刀の姿に、僕は動揺を隠せなかった。
真白も驚いて固まっているのが、鏡越しに見て取れる。
白い大蛇は、その巨体で激しく突進し、結界をいともたやすく粉砕した。

え、夜刀……すごすぎない!? 
そんな隠し玉、聞いてないんだけど!

◇◇◇

【あとがき】
カオス会議:第8章第2話「男装の陰陽師は囚われの月となる」編

登場人物
朔夜: 絶賛囚われ中の姫ポジ主人公。玄道にお触りされてSAN値が地の底。夜刀の姿にちょっと引いてる。
真白: 屋敷に入れずウロウロする姿はまさにワンコ。怒りのボルテージは最高潮なので次話に期待。
夜刀: 主を救うため本当の力を解放。狼系かと思いきや、まさかの蛇系。でも性格的には“それな”感。
玄道: 愛しのツクヨミ(朔夜)の拉致に成功し、ご満悦の黒幕。結界の外で騒ぐネズミどもを優雅に高みの見物中。

真白 (結界の前で右往左往) :
「くそっ! なんだよこの結界、硬すぎだろ! 朔夜ァ! 今助けに行くからなー!」

夜刀 (一周回って冷静) :
「……真白殿、無駄に叫ぶのはおやめなさい。ここは私がなんとかします」

真白 (オロオロ):
「なんとかって、どうすんだよ!?」

玄道 (儀式の間の祭壇で、朔夜の髪を弄びながら):
「ふふ……聞こえるか、朔夜。外で犬が二匹、けたたましく吠えているぞ」

朔夜 (顔を背けながら):
「……触るな、気色悪い!」

夜刀 (聞こえてきた声に驚いて):
「……主!?」

真白 (心配そうに):
「朔夜!?大丈夫か!?」

朔夜 (ゲッソリ):
「だいじょぶだけど、だいじょばない……助けてド〇えもん……」

玄道 (余裕の笑み):
「ふふ……嫌がる姿もまた一興」

朔夜 (“G”を見るような目で):
「マジでキモイ……」

夜刀 (何かを決意して):

「くっ……できればこの手は使いたくなかったのですが、やむを得ません」(深紅の瞳が輝く)
朔夜 (驚愕して):
「え、夜刀!?」

夜刀 (大声で叫びつつ決めポーズ):
「チェーンジ!ダイジャマン!!」(神気を放って大蛇に変化)

朔夜 (顔を引きつらせて):
「ダサッ! 昭和でもそれは無いわってくらいダサッ!!あとダイジャマンていうか、ただの大蛇じゃん!」

玄道 (面白そうに):
「おや? 朔夜は私よりも式神の方が気になるか?」

朔夜 (水晶を指差して):
「いやいや、気にならない方がおかしいでしょ!? セリフもポーズもでっかい白蛇になってんのも何もかも!え、何なの!?神気ってことは夜刀も神の転生体ってこと!?」

夜刀“大蛇ver.” (キリッ):
『詳細はWebで』

朔夜 (困惑して):
「Webでって何!?蛇でキメ顔やめれる!?なんか怖い!」

真白 (キャパオーバーでパニック中) :
「……え、え、ダイジャマン!?Web!?どゆこと!?」

玄道 (心底愉しそうに):
「ククク……あの式神、あのような力を隠し持っていたか。だが、無駄なことだ。この結界は破れんよ。朔夜、もう諦めて、私だけのものになると誓うがいい」

朔夜 (睨みつけて):
「死んでもヤダ!」

真白(気を取り直して) :
「ふさげんな、玄道! 朔夜に指一本でも触れてみやがれ!ボッコボコにしてやんよ!」

玄道 (心底楽しそうに耳に唇を寄せて):
「ふふ……もはや触れているどころではないのだが。なあ、朔夜?」

朔夜 (全身トリ肌):
「ぎゃあああ!やめろヘンタイいいい!!」

真白 (焦って):
「朔夜!?玄道、てめえ、朔夜に何してんだ!?」

夜刀“大蛇ver.” (シャーッと威嚇音を響かせながら) :
『……我が主に狼藉を働いた罪、死をもって償わせてやる。覚悟せよ』(と言いつつ、結界に猛烈アタック)

\パリーーーン/

真白 (口をあんぐり開けて):
「……マジかよ。あの結界が一撃で粉々に……」

玄道 (まだ余裕の表情で):
「ほう、あれを破るか。だが、まだ罠は何重にも張ってある。果たしてここまで辿り着けるかな?」

夜刀“大蛇ver.”(怒りを堪えつつ) :
『……当然です。主、すぐにお助けいたします。もう少しご辛抱ください』

朔夜 (スンッ):
「……あ、うん。ありがとう。けど、人型になってから来て?今更だけど、僕、爬虫類NGなんだよ……」

夜刀“大蛇ver.”(大ショック) :
『……な、なんと!?』

朔夜 (ガクブル):
「遠目ならなんとかなるけど、至近距離はマジで無理……」

真白 (同情的な目で):
「……ドンマイ、夜刀。てか、さすがにそのサイズはオレでもビビるわ」

夜刀 (速攻で変化を解いて何事もなかったかのように):
「……主、あなたは夢を見たのです。ほら、私はいつもどおりのイケメン式神ですよ?」

朔夜 (ジト目):
「いや、今さら夢にはできないよ?あと、確かにイケメンだけど、自分で言っちゃう?」

夜刀 (ニコニコ):
「お褒めにあずかり光栄です」

朔夜 (呆れながら):
「いや、褒めてないけどね!?」

夜刀 (そ知らぬ顔で):
「さあさあ、真白殿。さっさと行きましょう」

真白 (焦って追いかける):
「ちょっと待てって、夜刀!ひとりで先に行くな!」

玄道 (優雅なため息):
「ふう……まったく、騒がしいネズミどもだ。朔夜、周りに置く者はもっと選んだほうが良いぞ?」

朔夜 (キレ気味に):
「“自分は常識人です”みたいな顔すんな!あんたが一番ヤバい奴だからね!?」

◇◇◇

まさかの爬虫類NGに夜刀涙目。
がんばれ夜刀! 
「こんなカオス会議とかSSが読みたい」などご要望があればぜひ!
コメント、評価、よろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

処理中です...