ネオンの下の懺悔

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ネオンの誓い

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堂山町の夜は、雨に濡れながらも、そのネオンの光でいつもよりも色鮮やかに輝いていた。その片隅にある「Neon Confession」の看板が、ぼんやりとした光を放ち、雨音と共に静かな夜の空間を作り出していた。

店内に一歩足を踏み入れると、高橋健二マスターの穏やかな眼差しが訪れる客を迎えた。彼はその日も黙々とカウンターを磨き、静かな夜の準備を整えていた。健二は話すことは少ないが、その少ない言葉には重みがあり、多くの客が彼の助言を求めて「Neon Confession」を訪れる。

この夜、店のドアが静かに開き、中村拓海が足を踏み入れた。彼は20代前半の若者で、ウリ専で働いている。拓海は健二に軽く会釈をし、いつもの席に腰を下ろした。
「こんばんは、マスター。いつもの、お願いします」
と彼は言った。健二は無言で頷き、拓海の好きなウイスキーを丁寧に注いだ。

しばらくの沈黙の後、健二が静かに話し始めた。
「今夜はどうしたの? 何か悩みでもあるの?」
拓海はしばらく黙っていたが、やがて静かに心を開いた。
「実は、一人のお客さんのことで、和馬さんって言うんですけど...」
彼の声は小さく、繊細な感情が露わになった。拓海はそのお客さんに心を寄せていたが、その感情をどう扱っていいかわからずにいた。

健二は彼に注目し、静かに耳を傾けた。

「和馬さんはね、30代で、細身だけど筋肉質で...その、とても激しいんです。ただ回数を重ねるごとに、自分も和馬さんのことを気になり始めてしまって。ただ彼には奥さんがいるんです、セックスレスですけど。たまたまゲイバーに来たときに、男性の魅力を知ってしまったみたいで...」
拓海は言葉を選びながら続けた。

「で、どうしたんだい?」
健二が静かに尋ねる。

「和馬さん、僕に一目惚れしたみたいなんです。でも、奥さんがいるから、僕とは...ただの体の関係でいるって決めたみたいで。僕はその話を聞いて、どうしても諦められなくて...」

健二は拓海の話をじっと聞いていた。彼の目には温かい理解が宿っている。拓海の話が一段落すると、健二はゆっくりと言葉を選んで話し始めた。
「たくちゃん、人の心は複雑だよ。でもね、大切なのは自分の心に正直に生きることだ。和馬さんにも、君にも、それぞれの道がある。周りに惑わされず、自分の心に耳を傾けてごらん」

拓海は健二の言葉にじっと耳を傾け、心のどこかで和馬への気持ちと向き合う勇気を得た。健二の言葉はいつも彼に新たな視点を与え、心の支えとなっていた。

「ありがとう、マスター」と拓海は深く感謝を込めて言った。彼はその夜、新たな決意を胸に「Neon Confession」を後にした。

健二は彼の背中を見送りながら、自分自身の過去を思い返していた。彼にも語れない物語があったが、今はこの小さなバーで、訪れる人々の心の支えであり続けることに、深い意義を見出していた。

雨が上がり、ネオンの光はさらに明るく輝き、「Neon Confession」は静かにその夜を包み込んでいた。
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