龍皇伝説  壱の章 龍の目覚め

藤堂慎人

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颯玄、熱情 2

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 颯玄は小声で言ったつもりだが、緊張もあったのだろう、思ったより大声になった。

 この日は全部で5名が稽古していたが、颯玄の申し出は他の稽古生の耳にも入り、一斉に注目を浴びた。

 その視線を感じた颯玄はもう後には引けない、と感じた。真栄田は颯玄も言葉を聞いた瞬間は何も返事しなかったが、周りの視線を感じた時、颯玄に諭すような感じで言った。

「先生から自由組手の許しは出ていないだろう。聞かなかったことにするから、そのまま稽古を続けろ」

 真栄田はいわゆる大人の対応をした。

 しかし、颯玄は自分が一旦口にした言葉として引かなかった。再度、真栄田に自由組手を申し込んだ。真栄田は周囲を見渡し、困ったような顔をしている。誰かに何か言ってもらいたいような表情だ。無言の時間が過ぎたが、実際にはそれは短時間だった。だが、颯玄にはとても長い時間に感じていた。

 真栄田が了承しないので、颯玄は真栄田に向かって軽く攻撃する様な素振りを見せた。周囲から見ていたら、明らかに挑発行為だ。年下の者が年長者に対して行なう行為ではない。

 そういうことをやられてそのままにしておくことはできないが、かといって本気で対応はせず、軽くいなす程度で颯玄の攻撃に対処していた。

 その様子に周りは囃し始めた。武術を稽古しているだけあって、もともと全員血の気が多い。だからこういう場面を見せられたら、つい乗せられてしまうのだ。

 周りの雰囲気は真栄田にも伝わり、きちんと対応しなければならないような状態になった。

「颯玄、分かった。きちんとやろう。お前はまだ先生から自由組手の許しが出ていないので、あくまでも約束組手の延長として行なおう」

「分かった。じゃあ、そういう建前で、ということで・・・」

 颯玄の意識の中では、この言葉ですでに約束組手という認識は無くなっていた。これまで稽古してきたことが試せる、ということで頭が一杯だったのだ。

 一応、稽古の一環ということなので互いに一礼して始まった。

 両者は基本通り、左足を前にして中段の構えを取っている。約束組手ではそういう状態から始まることを何度も経験しているが、颯玄から見た真栄田はいつもより大きく見える。こんなに体格差があるとは思っていなかったと感じている颯玄だが、実際にはほぼ同じ体格だ。ただ、稽古している際、気が満ちている時には大きく見えていたことは颯玄も知っているが今回、組手の時はそれよりも大きく見えることを経験し、戦いの時と日常との違いを全身で経験していた。

 真栄田は自分から仕掛けることは無かった。颯玄の攻撃をしっかり受け、自ら止めるように仕向けたかったのだ。そこでは空手の受けの特徴である受け即攻撃をイメージし、颯玄からの突きや蹴りに対し、上肢や下肢の急所に受けの技を当て、その痛みで負けを知らしめようと考えていた。
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