龍皇伝説  壱の章 龍の目覚め

藤堂慎人

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稽古停止、しかし・・・ 19

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 しかし、強さが結婚の条件というサキは、基本的な考え方が他とは違う。だから、こういう場で公に相手を探すような感じになってしまうが、サキの容姿を見ると挑戦したくなる男も出てくる。だいたいそういう相手の実力は知れているが、今日のサキはもやもやした気持ちを晴らすには戦いしかないと思っている。相手は誰でも良かった。負ける気がしないからだが、ある意味、こういう状況で戦う相手も気の毒だ。

 観衆の中には冷やかしで挑戦しようという輩もいたので、サキはその前にこれまで稽古した形をやってもらうことにした。空手の場合、形を見ることである程度の実力が測れる。

 3人の挑戦者が現れたが、その内の2人はそもそも空手の形になっていない。その様子に観衆も一斉にヤジが飛んだが、1人だけしっかりやった者がいる。名前を聞くと喜友名と名乗った。周りはこれならサキに勝つかもしれない、という思いが湧いてくるような内容だった。実際、サキ自身ももしかするとと内心思っていた。

 サキが提示した条件を満たしたということで、両者は中央に進み、一礼をして互いに構えて対峙した。

 周りの観衆は異色の戦いに興味津々だったが、中には不謹慎なヤジを飛ばしてくる者もいる。その言葉はサキにも喜友名にも関係ない。2人はそういう言葉は無視し、戦いに集中していた。

 そういう様子に周りもだんだん静かになったが、両者ともなかなか手が出ない。喜友名は女の空手家ということで話が大きく伝わっていたのだろうと思いつつも、目の前にサキが立っていると、実際よりも大きく見えていた。

 サキにしても、名乗り出た時には興味本位の挑戦くらいと考えていた。対峙する前に見た形で印象は変わり、その上で目の前に立たれるとこれまでとは異なった迫力を感じていた。今回は用心して戦わないと、という思いが強くなっていた。

 互いに想像と違っていたというところからなかなか手が出ない、というわけだが、いつまでもこうしていても埒が明かない。

 2人とも同じ思いだったが、最初に戦いの口火を切ったのは喜友名のほうだった。奥足による前蹴り、間髪入れずに同じ側で上段突き、そこからさらに反対側の足による回し蹴りと続いた。鋭く早い連続技だった。

 これまでのサキだったら、技と技の間の隙を捉え、受けから反撃を試みる所だったが、今回はそういうことができないくらいの質だった。サキはその迫力に押され、後退するしかなかった。そのおかげで当たることは無かったが、初めて経験する鋭い技だった。

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