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10.向き合う気持ち
六人から告白されてから、一週間が経った。
彼らは相変わらず交代で僕のマンションに来てくれるけれど、雰囲気は前よりも少し変わった気がする。
それぞれが、僕に「選ばれる」ために、自分をアピールしているような。
月曜日、怜央と過ごす時間。
「先生、今日は俺の大学に来ませんか」
「え?」
「学祭があるんです。よかったら、案内させてください」
怜央に連れられて、大学のキャンパスに行った。広い構内、行き交う学生たち。みんな若くて、まぶしい。
「怜央の友達とか、いるの?」
「ええ。紹介しますよ」
怜央が案内してくれた先には、数人の男子学生がいた。
「おお、一条。これが例の――」
「彼です」
怜央が僕の肩に手を回した。
「大切な人」
その言葉に、友人たちが驚いた顔をする。
「マジか。一条がそんな風に言うなんて」
「よっぽど大事なんだな」
冷やかされて、怜央は平然と答えた。
「ええ。俺の一番大切な人です」
その言葉に、胸がざわついた。
学祭を回りながら、怜央は色々な場所を案内してくれた。模擬店、ステージ、展示。
「怜央、楽しそうだね」
「ええ。先生と一緒だから」
怜央が微笑む。
「俺、先生とこういう場所に来たかったんです。デートみたいに」
「デ、デート……」
「そうです。デート」
怜央が僕の手を取った。
「俺は本気ですから。先生を、恋人として見ています」
その視線から、逃げられなかった。
火曜日、陽太と過ごす時間。
「先生! 公園行こうぜ!」
陽太に連れられて、近くの公園に行った。休日だからか、家族連れが多い。
「先生、キャッチボールしよう!」
「え、俺?」
「うん! 先生、運動不足でしょ。リハビリにもなるって」
陽太がグローブを渡してくる。しばらくぶりのキャッチボール。陽太は手加減してくれているのか、優しく投げてくれる。
「先生、いいフォームだね!」
「そう?」
「うん! 俺、先生が頑張ってる姿、好きだな」
陽太が笑う。その笑顔が、眩しい。
しばらく遊んだ後、ベンチで休憩する。陽太が自販機で買ってきた飲み物を渡してくれた。
「なあ、先生」
「うん?」
「俺、体育教師になりたいって言ったじゃん」
陽太が空を見上げる。
「それ、先生のおかげなんだ」
「え?」
「先生が、いつも俺と遊んでくれたから。走ったり、ボール投げたり。楽しかったんだ」
陽太が僕を見た。
「だから、俺も誰かに楽しさを教えられる人間になりたい。先生みたいに」
陽太が僕の手を握った。
「先生は、俺の憧れで、目標で――好きな人です」
その言葉が、胸に響いた。
水曜日、奏と過ごす時間。
「先生、買い物に付き合ってください」
奏に連れられて、ショッピングモールに行った。奏はアパレルショップに入って、色々な服を見ている。
「奏、服好きなの?」
「はい。デザインに興味があって」
奏がシャツを手に取る。
「先生、これ似合うと思います」
「え、俺に?」
「試着してみてください」
押し切られて、試着室に入る。出てくると、奏が満足そうにうなずいた。
「やっぱり。先生、何着ても似合います」
奏が僕の服の襟を直してくれる。その手つきが、妙に色っぽい。
「先生は、もっとおしゃれしたほうがいいです」
「そうかな……」
「はい。綺麗なんですから」
奏が僕の顔に手を伸ばし、髪を撫でた。
「僕、先生を綺麗に着飾らせたい。誰よりも」
奏の瞳が、僕を見つめる。
「先生を、僕だけのものにしたい」
その言葉に、心臓が跳ねた。
木曜日、颯真と湊と過ごす時間。
「先生、料理教えてください」
二人に頼まれて、一緒にキッチンに立った。
「何作りたいの?」
「カレーです」
「先生の好きな味で」
二人が微笑む。
一緒に野菜を切ったり、炒めたり。二人は驚くほど息がぴったりで、阿吽の呼吸で作業を進めていく。
「颯真、湊。二人とも料理上手だね」
「一人暮らしですから」
「でも、先生の味を覚えたくて」
二人が僕を挟むように立つ。
「先生が作ってくれた料理、忘れられないんです」
颯真が僕の肩に手を置く。
「先生の温もりも、匂いも、全部」
湊が僕の手に手を重ねる。
「忘れられない」
二人の声が重なった。
カレーができて、三人で食べる。二人は嬉しそうに笑っていた。
「先生と一緒に作った料理、最高に美味しいです」
「また、作りましょうね」
二人の笑顔が、温かかった。
金曜日、蒼と過ごす時間。
「先生、図書館に行きませんか」
蒼に連れられて、大きな図書館に行った。蒼は慣れた様子で本棚を巡り、何冊か本を選ぶ。
「先生、これ」
蒼が絵本を渡してくれた。
「これ……」
「保育園で、先生が読んでくれた本です」
蒼が微笑む。
「覚えていますか」
「うん……覚えてる」
二人で静かな場所に座って、その絵本を開いた。懐かしい物語。
「先生の声、好きでした」
蒼が呟く。
「優しくて、温かくて。聞いていると、安心した」
蒼が僕を見た。
「今も、変わらない」
蒼が僕の手を取った。
「先生の全部が、好きです」
蒼の言葉は、いつも静かで、でも重い。
土曜日、また六人全員が集まった。
「先生、考えてくれましたか」
怜央が聞いてくる。
「う、うん……でも、まだ……」
「いいんです」
陽太が笑う。
「俺たち、待ちます」
「でも、諦めません」
奏が付け加える。
「先生のこと、もっと知りたいです」
颯真が言う。
「俺たちのことも、もっと知ってください」
湊が続ける。
「その上で、選んでください」
蒼が静かに言った。
六人が僕を見つめる。
「だから、これから――」
怜央が口を開いた。
「もっと、二人きりの時間を作りましょう」
その言葉に、僕はうなずくしかなかった。
こうして、僕と六人の、特別な時間が始まった。
それぞれとの時間を通して、僕は彼らのことをもっと知っていく。
そして、自分の気持ちとも向き合っていく。
誰を選ぶのか――。
その答えは、まだ僕の中にはなかった。
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