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反省会
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「今回は何がいけなかったんだ・・・・・・?」
ショートカクテルを一気に飲み干して,割れるんじゃないかと心配になるほど強くグラスを置いて,蓮は唸った。
おれと蓮は,女子たちをそれぞれ蓮の車で送った後,蓮の行きつけというバー・スリラーという飲み屋に来ていた。
普段使いで来ている店だと言うが,蓮には似つかわしくない安っぽい店だった。女の子がいないから金を使わないようにしているだけだと思ったのだが,バーテンダーと蓮には,常連を思わせるような雰囲気もある。見渡せば,安っぽいインテリアに綺麗とは言い難い内装,おまけに客層も大学生が数人で,しかもそいつらはなぜか水槽をバーに持ってきて飲んでいるなんとも不思議な店だった。
そんな店に,「おごるから反省会に付き合ってくれ」と蓮に言われたので,ただより上手い酒はないとほいほいついてきたのだ。
強いお酒を二杯ほど飲んで気持ちよくなっている蓮に,おれは今問い詰められている。
「なあ,あゆむっち。おれは今日何を失敗したって言うんだ? おしゃれなコテージを予約して,BBQも通ぶった鬱陶しさも出さずに,でも任せたら安心という男らしさもあったはずだ。それなのにだ。女の子たちの反応はどうだ? なんの取り柄もないあゆむっちに釘付け。おれの準備も,手際の良さも,抱腹絶倒のトークも,全て相手にされない。まるで,ツイッターに渾身の投稿をしたのに”いいね”が一つも付かなかった気分だ。自己投資に時間とお金を費やして,女子ウケのいい体に仕上げてもいるのに,カエルみたいな体つきをしたあゆむっちに女の子たちは釘付け。一体どうなっているんだ? 一人ならまだ分かる。相性ってもんがあるからな。でもだ。三人だぞ。美女が三人。どうしてこんなことが起こるんだ!?」
酒の力もあったのだろうが,酷い言いようだ。でも,言わんとすることはわかる。確かに,大学の人たちが,いや,世の男がこの現実を目の当たりにすると一人残らず目を向くだろう。
そこそこの規模の大学でグランプリを取った高身長イケメン金持ち男子が,なんの取り柄もない芋くさい男に,ことごとく美女を奪われているのだ。映画にしたら,世のブサメンに勇気と感動と性浴を与えるベストヒットを作品になるに違いない。
それは言い過ぎだが,文句の一つも言いたくなる蓮の気持ちは十分に分かる。
「蓮,おれにもよくわからないんだ。どうしておれがこんなことになっているのか。あの子たちが,おれの何に惹かれているのか。ただ,自分に言い聞かせていることがある」
のどをごくりと鳴らして,おれは続けた。
「今は奇跡が起きていて,こんなことは続かない。いまこの瞬間にでも,この世の女性はおれのくだらなさに気づいて,愛想を尽かすだろうさ」
本心でそう言い,自分のその言葉に深く傷つく。そうだ。おれには何の魅力もない,くだらない人間なのだ。こんな幸せなことがいつまでも続くはずはない。
そう考えると,自然と涙が溢れてきた。そんなおれを見て,蓮は済まなさそうな顔をした。
「すまん。ちょっと酔ってしまってな。みんなそれぞれ悩みを抱えてんだよな。おれ,甘えていたよ」
そういって,おれの背中をさする。
おれは何も言わず,ただただ頷いた。
おれたちに,今までとは質の違う厚い何かが生まれて,それが二人を固く結ぶような感じがした。これが絆というやつか。
そんなことを考えていた時,バーに人が入る気配がした。入ってきたのは,この安っぽいバーには似つかわしくない,おしゃれで小ぎれいな格好をした美女だった。
まさかこの美女が,たった今感じたこの友情を引き裂きかねない事態を起こすとは,まだ誰も思っていなかった。
ショートカクテルを一気に飲み干して,割れるんじゃないかと心配になるほど強くグラスを置いて,蓮は唸った。
おれと蓮は,女子たちをそれぞれ蓮の車で送った後,蓮の行きつけというバー・スリラーという飲み屋に来ていた。
普段使いで来ている店だと言うが,蓮には似つかわしくない安っぽい店だった。女の子がいないから金を使わないようにしているだけだと思ったのだが,バーテンダーと蓮には,常連を思わせるような雰囲気もある。見渡せば,安っぽいインテリアに綺麗とは言い難い内装,おまけに客層も大学生が数人で,しかもそいつらはなぜか水槽をバーに持ってきて飲んでいるなんとも不思議な店だった。
そんな店に,「おごるから反省会に付き合ってくれ」と蓮に言われたので,ただより上手い酒はないとほいほいついてきたのだ。
強いお酒を二杯ほど飲んで気持ちよくなっている蓮に,おれは今問い詰められている。
「なあ,あゆむっち。おれは今日何を失敗したって言うんだ? おしゃれなコテージを予約して,BBQも通ぶった鬱陶しさも出さずに,でも任せたら安心という男らしさもあったはずだ。それなのにだ。女の子たちの反応はどうだ? なんの取り柄もないあゆむっちに釘付け。おれの準備も,手際の良さも,抱腹絶倒のトークも,全て相手にされない。まるで,ツイッターに渾身の投稿をしたのに”いいね”が一つも付かなかった気分だ。自己投資に時間とお金を費やして,女子ウケのいい体に仕上げてもいるのに,カエルみたいな体つきをしたあゆむっちに女の子たちは釘付け。一体どうなっているんだ? 一人ならまだ分かる。相性ってもんがあるからな。でもだ。三人だぞ。美女が三人。どうしてこんなことが起こるんだ!?」
酒の力もあったのだろうが,酷い言いようだ。でも,言わんとすることはわかる。確かに,大学の人たちが,いや,世の男がこの現実を目の当たりにすると一人残らず目を向くだろう。
そこそこの規模の大学でグランプリを取った高身長イケメン金持ち男子が,なんの取り柄もない芋くさい男に,ことごとく美女を奪われているのだ。映画にしたら,世のブサメンに勇気と感動と性浴を与えるベストヒットを作品になるに違いない。
それは言い過ぎだが,文句の一つも言いたくなる蓮の気持ちは十分に分かる。
「蓮,おれにもよくわからないんだ。どうしておれがこんなことになっているのか。あの子たちが,おれの何に惹かれているのか。ただ,自分に言い聞かせていることがある」
のどをごくりと鳴らして,おれは続けた。
「今は奇跡が起きていて,こんなことは続かない。いまこの瞬間にでも,この世の女性はおれのくだらなさに気づいて,愛想を尽かすだろうさ」
本心でそう言い,自分のその言葉に深く傷つく。そうだ。おれには何の魅力もない,くだらない人間なのだ。こんな幸せなことがいつまでも続くはずはない。
そう考えると,自然と涙が溢れてきた。そんなおれを見て,蓮は済まなさそうな顔をした。
「すまん。ちょっと酔ってしまってな。みんなそれぞれ悩みを抱えてんだよな。おれ,甘えていたよ」
そういって,おれの背中をさする。
おれは何も言わず,ただただ頷いた。
おれたちに,今までとは質の違う厚い何かが生まれて,それが二人を固く結ぶような感じがした。これが絆というやつか。
そんなことを考えていた時,バーに人が入る気配がした。入ってきたのは,この安っぽいバーには似つかわしくない,おしゃれで小ぎれいな格好をした美女だった。
まさかこの美女が,たった今感じたこの友情を引き裂きかねない事態を起こすとは,まだ誰も思っていなかった。
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