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3章 騎士養成学校
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王城から少し離れた場所にあるベネディクド所有の建物。その地下には、何重にも魔法が施され、魔力、音、光、全てが外へ漏れることなく、入り口も存在しない造りの空間がある。
さながら研究所の様に魔法設備や魔法具が設置してあるその中で今、耳を塞ぎたくなるような声が響いていた。
『っぅああぁぁあぁああ!!』
複数の水晶が置かれた魔方陣の中心に、魔力で出来た球体の中に閉じ込められたジオが身をよじりながら悲鳴を上げている。
彼の体から強制的に魔力が吸い取られ、一つだけ周りと違い赤く発光している水晶から、魔力の結晶である魔石がバラバラと大粒で生み出されていく。
「ベ、ベネディクド様…、かなりの量となっておりますが…。この勢いではすぐに枯渇するのでは…?」
「おほほほほ!まだまだ溢れてくるではありませんか!騎士学校に潜り込ませてた者から報告を受けた時は、半信半疑でしたけど…まだ忌み子がいたとはね。あぁ、でもこんな使い方があったのなら、もう一人も捕まえておけば良かったかしら?
…私の役に立つことが出来るなんて…」
その子も本望でしょう?と、部下に笑みを向けるグロッグの目に、正気の色はもはやなかった。
今まで、魔法省の為に、自分の為になるならばと何でもしてきた。魔力を持つ女性こそが万物を理解することができ、至上である。そして、自分がその頂点に立つことがこの国の為になると信じて疑わなかった。だから、魔力至上主義であるギムレット国とは繋がりを持つべきであると主張も続け、独自に繋がりを持つ為、使者には便宜を図ってきた。それなのに、魔石を渡したことが国への裏切りだと見なされ、一気に築き上げてきたものを奪われた。
何故私の考えを理解出来ないのか、何故私が裁かれなくてはいけないのか。この国はそこまで腐ってしまったのか…。
「腐敗した場所は私には相応しくありませんわ。なら、この魔石を手土産に私を受け入れてくれるお隣へ、移ることにいたしましょう」
ゆったりとした足取りで水晶の一つに近づいたグロッグは、指先でするりと水晶を一撫でした。
『っ!!ぐぁ、ああぁぁああ、あ…!!』
ビクリと痙攣を起こし、一段と苦しそうな悲鳴を上げるジオ。その時、彼の懐から青い輝きが飛び出す。ジオを捕らえていた魔力の球を突き破りグロッグの真横を掠めて壁に刺さり、パンッと銀色の欠片が飛び散った。同時に球体も消え、ドサリとジオの体が魔方陣の上に投げ出される。
「…守り刀ですの?フンッ!小賢しいこと」
壁にかけられていた防御の魔法によって砕かれた薔薇の細工部分をグロッグは踏みにじる。腹立たしい気持ちをそのままに、魔力抽出作業の再開を命じようと視線を上げて、捉えたのは転移魔法によって二人の人物が姿を現す瞬間だった。
♢♢♢クラリッサ視点♢♢♢
「魔法省 魔導機関 魔法具部門長及び騎士養成学校 魔法監察係のクラリッサ・バリエストの名において命じます!直ちに違法行為を止めなさい!抵抗は武力を持って制圧させて頂きます」
魔法設備が並び研究室のような造りの地下空間は、学園の教室2部屋分くらいで、壁の防御壁で簡単には壊れないにしても激しい戦闘は出来そうにない。そんな手狭な空間にベネディクドを含め、見えるだけで魔法使いが5人。その後ろに見える一段と大きな魔力抽出装置の中心に、ジオが力なく倒れていた。
転移してすぐ、ゼノの防御膜が発動し更に別の魔法を唱え始める。
「何事かと思えばバリエスト嬢ではありませんか。不法侵入とはいただけませんわね?」
カツリと一歩近付いたベネディクドは焦った様子もなく、静かにこちらを見据えていた。その足元に転がっている魔石の量にぞっとする。あの何%がジオから取り出されたものなのか…。もし全てだったとしたら…。
「よくもぬけぬけと!こんな非道、許されることじゃないわ!元次官として、魔法使いの誇りはないんですかっ!?」
「誇り?ほほほほほ…!おかしなことを言う方ですね。本当に何も見えていないのだから…。例えこの行いが非道だったとして、あなた達は一体どうするのです?ほら、周りをよく見てごらんなさい」
私とゼノの周りを4人が攻撃体制で囲っていた。その中に見たことのある上級魔法使いまでいて愕然とする。更にゼノの視線の先では、一人の魔法使いがジオに杖を向けた状態だった。
「出来れば、最後の一絞りまで私の為に使いたかったのですけれど、あなた方次第で彼の虫の息も止まりますわよ?」
「外道が…っ!!」
ギリリッと奥歯を鳴らすゼノは、肉体強化のオーラをまといながら今にも飛び出しそうな体をぐっと堪えている。
下手に動けばジオが危ない。しかし、予想外の人数にゼノも手を駒根いていた。
(ベネディクド一人ならなんとか対応出来る。でも、あの状態のジオを救出しつつこの人数を相手に無事、脱出できる?)
さらに困ったのは、外の感知が出来なくなったこと。さっきの結界の解れはもうなくなっているのか、この空間の外へ魔力を飛ばすことすら出来ない。
つまり、転移が出来ないことになる。これではなんとかジオに辿り着けても外へ出ることは叶わない。
(どうすればいい…?せめて二人だけでも助ける方法は…)
この状況を打開する策はないか?必死に頭を巡らす。
ニヤリと暗い笑みをこちらへ向けるベネディクドの眼は、静かに狂っていた。
さながら研究所の様に魔法設備や魔法具が設置してあるその中で今、耳を塞ぎたくなるような声が響いていた。
『っぅああぁぁあぁああ!!』
複数の水晶が置かれた魔方陣の中心に、魔力で出来た球体の中に閉じ込められたジオが身をよじりながら悲鳴を上げている。
彼の体から強制的に魔力が吸い取られ、一つだけ周りと違い赤く発光している水晶から、魔力の結晶である魔石がバラバラと大粒で生み出されていく。
「ベ、ベネディクド様…、かなりの量となっておりますが…。この勢いではすぐに枯渇するのでは…?」
「おほほほほ!まだまだ溢れてくるではありませんか!騎士学校に潜り込ませてた者から報告を受けた時は、半信半疑でしたけど…まだ忌み子がいたとはね。あぁ、でもこんな使い方があったのなら、もう一人も捕まえておけば良かったかしら?
…私の役に立つことが出来るなんて…」
その子も本望でしょう?と、部下に笑みを向けるグロッグの目に、正気の色はもはやなかった。
今まで、魔法省の為に、自分の為になるならばと何でもしてきた。魔力を持つ女性こそが万物を理解することができ、至上である。そして、自分がその頂点に立つことがこの国の為になると信じて疑わなかった。だから、魔力至上主義であるギムレット国とは繋がりを持つべきであると主張も続け、独自に繋がりを持つ為、使者には便宜を図ってきた。それなのに、魔石を渡したことが国への裏切りだと見なされ、一気に築き上げてきたものを奪われた。
何故私の考えを理解出来ないのか、何故私が裁かれなくてはいけないのか。この国はそこまで腐ってしまったのか…。
「腐敗した場所は私には相応しくありませんわ。なら、この魔石を手土産に私を受け入れてくれるお隣へ、移ることにいたしましょう」
ゆったりとした足取りで水晶の一つに近づいたグロッグは、指先でするりと水晶を一撫でした。
『っ!!ぐぁ、ああぁぁああ、あ…!!』
ビクリと痙攣を起こし、一段と苦しそうな悲鳴を上げるジオ。その時、彼の懐から青い輝きが飛び出す。ジオを捕らえていた魔力の球を突き破りグロッグの真横を掠めて壁に刺さり、パンッと銀色の欠片が飛び散った。同時に球体も消え、ドサリとジオの体が魔方陣の上に投げ出される。
「…守り刀ですの?フンッ!小賢しいこと」
壁にかけられていた防御の魔法によって砕かれた薔薇の細工部分をグロッグは踏みにじる。腹立たしい気持ちをそのままに、魔力抽出作業の再開を命じようと視線を上げて、捉えたのは転移魔法によって二人の人物が姿を現す瞬間だった。
♢♢♢クラリッサ視点♢♢♢
「魔法省 魔導機関 魔法具部門長及び騎士養成学校 魔法監察係のクラリッサ・バリエストの名において命じます!直ちに違法行為を止めなさい!抵抗は武力を持って制圧させて頂きます」
魔法設備が並び研究室のような造りの地下空間は、学園の教室2部屋分くらいで、壁の防御壁で簡単には壊れないにしても激しい戦闘は出来そうにない。そんな手狭な空間にベネディクドを含め、見えるだけで魔法使いが5人。その後ろに見える一段と大きな魔力抽出装置の中心に、ジオが力なく倒れていた。
転移してすぐ、ゼノの防御膜が発動し更に別の魔法を唱え始める。
「何事かと思えばバリエスト嬢ではありませんか。不法侵入とはいただけませんわね?」
カツリと一歩近付いたベネディクドは焦った様子もなく、静かにこちらを見据えていた。その足元に転がっている魔石の量にぞっとする。あの何%がジオから取り出されたものなのか…。もし全てだったとしたら…。
「よくもぬけぬけと!こんな非道、許されることじゃないわ!元次官として、魔法使いの誇りはないんですかっ!?」
「誇り?ほほほほほ…!おかしなことを言う方ですね。本当に何も見えていないのだから…。例えこの行いが非道だったとして、あなた達は一体どうするのです?ほら、周りをよく見てごらんなさい」
私とゼノの周りを4人が攻撃体制で囲っていた。その中に見たことのある上級魔法使いまでいて愕然とする。更にゼノの視線の先では、一人の魔法使いがジオに杖を向けた状態だった。
「出来れば、最後の一絞りまで私の為に使いたかったのですけれど、あなた方次第で彼の虫の息も止まりますわよ?」
「外道が…っ!!」
ギリリッと奥歯を鳴らすゼノは、肉体強化のオーラをまといながら今にも飛び出しそうな体をぐっと堪えている。
下手に動けばジオが危ない。しかし、予想外の人数にゼノも手を駒根いていた。
(ベネディクド一人ならなんとか対応出来る。でも、あの状態のジオを救出しつつこの人数を相手に無事、脱出できる?)
さらに困ったのは、外の感知が出来なくなったこと。さっきの結界の解れはもうなくなっているのか、この空間の外へ魔力を飛ばすことすら出来ない。
つまり、転移が出来ないことになる。これではなんとかジオに辿り着けても外へ出ることは叶わない。
(どうすればいい…?せめて二人だけでも助ける方法は…)
この状況を打開する策はないか?必死に頭を巡らす。
ニヤリと暗い笑みをこちらへ向けるベネディクドの眼は、静かに狂っていた。
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