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本編

3.5(おまけです)

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前の話で出てきたプロポーズの話です。

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颯人を話があると呼び出した。その時、私は颯人と付き合ってることがバレて颯人に好意を持っていた女性社員から陰湿なイジメを受けていた。徐々にそれがエスカレートしていき、耐えられなくなった私は会社を休みがちになった。心配して連絡をずっとくれていた颯人に押し負けて私が呼び出した。

「颯人、仕事休みがちでごめんね。会社にも迷惑かけてるよね。」

「.....」

「私ね、会社辞めようかと思ってるんだ...。
別に今の現状に満足してないわけじゃないんだけど...このままだと颯人に甘えちゃいそうで」

「.....」

「あとね、好きな人できたの。
颯人よりも...
だから...」

強がって、意地張って。俯いたまま、涙を必死にこらえて。こうしなきゃ私の心が見透かされそうで怖かった。好きなのにその気持ちを押し隠して明るくイイ女であろうとした。なのにそうさせてはくれなかった。

「...なんで絵愛がそんなに辛そうな顔するの
全部嘘、俺のせいでしょ。なんで俺を責めないで自分を犠牲にするの」

「...っ」

「...絵愛が会社を休むようになってから気づいたんだ、イジメのこと。気づいてあげられなくてごめん。守ってあげられなくてごめん。しかも文句も言わず自分を犠牲にさせた。絵愛にずっと甘えてた。こんな言葉望んでないのもわかってる」

「...じゃあ、なんで....!!」

居てもたってもいられず私は顔を上げて颯人を見上げた。すると、颯人はすごく真面目な顔で私の目を見てきた。

「こんな時に言うことじゃないとは思うんだけど、やっぱり今言わないと後悔しそうだから」

ふぅと息を吐いて、私の手を握った。

「佐藤絵愛さん。僕は貴女の誰にでも優しいところ、笑顔が可愛いところ、怒ると怖いところ、泣き虫なのに泣くのを我慢するところ、とっても強い芯を持っているところ、嘘をつく時は必ず俯いて手を握りしめるところ、幸せそうにご飯を食べるところ、いつも僕の手を握って照れながら好きって言ってくれるところ、貴女の言葉、行動、全てが大好きです。愛してます。僕は貴女が感じる喜びや楽しみ、苦しみや悲しみを一緒に背負いたいです。今も僕のことで悩ませているし、これからも悩ませることは多くあると思います。ただ、それで自分を犠牲にしないように、全力で僕が隣で守ります。僕とこれからも一緒に居てくれませんか。

僕と結婚してください」

プロポーズだった。ちゃんと指輪まで用意してる。その目はとても真剣で目を離すことができなかった。

「....なんで」「うん」

「婚約者は嘘だったんじゃないの」「ごめん」

「なんで謝るの」「ごめん。でもいま言わないと絵愛がどっか行っちゃいそうで。あの時はそう思ってた。けどもう無理だから」

「....ばか」「そうだね」

颯人は最初から知っていた。私の言葉が嘘で、颯人のプロポーズの答えを。けど、それを催促しないし、じっと待ってる。
私の決意を易々と超えて私の欲しかった言葉をくれるのが悔しくて、素直にプロポーズが受け入れられなかった。

「...颯人はバカだし、鈍感だし、いっつも仕事忙しいし、そばにいて欲しいときにいないのに。
でも、必ず私の気持ち察してくれるし。颯人ばっかりずるいよ。私だって...本当は大好きだってわかっちゃったんだよ。だけど、迷惑にならないように、困らないように意地張ったのに」

「そこは『はい、よろしくお願いします』って答えるとこでしょ」

「....私なんて意地張るし、泣き虫だし、嘘つくの下手くそだし、めんどくさいでしょ」

「それでもいい」

「でも....」

「俺が1番欲しいのはいま目の前にいる佐藤絵愛ただ1人だよ、他の誰でもない。絵愛は?」

「私だって.....颯人がいい」

「なら答えは簡単でしょ。結婚してください」

「....はい。よろしくお願いします」

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