剣拳波

jino

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序章

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真っ暗な部屋のなか、ゲームの光が冴えない男の顔を照らしている。
「はぁ、この敵もあまり手応えなしか」
絵に描いたオタクであるこの男、春原次郎は徹夜で疲れた眼を擦りながらそう言った。眠気でぼやぼやした視界の中で次郎は時計を見て、病人のような掠れた声で呟いた。
「学校だるいが行くしかないか」
そういい残し、徹夜で共にゲームをしていた盟友(ネットモ)であるミレイユにチャットでメッセージを送り渋々学校へ向かう次郎であった。
徒歩通学の次郎は重い足取りで徹夜明けの怠い体を動かしていた。いつも通りの日常。気がつけば校門の前にいた。

学校へついた次郎は、普通の人なら発生するであろう「友達と挨拶をする」というイベントが発生することもなく席につくのだった。そう、俗に言うボッチだ。そして誰よりも早く身支度を済ませ読書に喫していた。
朝からガヤガヤとリア充が会話している。
「はやく帰りてぇ」
次郎は休めていない目を、読んでいた本から目を離した。
自分の心と程遠い清々しい青空であった。いつも通りの日常が当たり前のように過ぎ去っていく。しかしそれは長くは続かなかった。
刹那、青空に紫色のグラデーションがかかる。
ついに頭がいかれたのかと思い目を擦るが次郎の瞳に映る景色は変わらなかった。
そして、漆黒に染まった空に罅が入り、徐々に剥がれていった。
「なんだこれ、空が剥がれている」
戦慄の表情を浮かべた次郎が震える声で言うと周りからも似た声が聞こえてきた。
「なんだあれ」
「え、なにマジおかしくない?」
「なにかの見せ物にしては派手すぎないか?」
やはり全員見えているのだ。自分だけではないということは少し救いだったかもしれない。
するとまぶしい光りが世界を包み込んだのであった。

「いったいなんなんだ急に空が剥がれたと思ったら突然眩しいし」
謎の現象に戸惑っていた次郎だが冷静さは取り戻していた。昔からトラブル体質だった次郎にとっては多少の耐性がついていたからだ。
悪寒が背筋にはしる。
白昼夢だと信じたかった。しかしそんな甘い願望も即座に打ち砕けた。
「あれはなんだ!」
クラスメートが声を荒げる。その声につられ人が窓辺へ向かう。
窓の周りが騒がしくなり、気になった次郎は皆に倣って窓辺に近づいたそしてその光景に目を見開いた。
「あれは、GLAYのモンスター、ブリザード!」
そこにはまるで吹雪を具現化したかのような鳥がいた。次郎が恐る恐る視界を下げるとそこは化け物だらけであった。
しかし、不幸中の幸いでモンスターはこちらに気づいていないようだ。
「ここは、GLAYの世界なのか。それよりもなんで俺、GLAYでのアバターになってるんだ?」
空が発光したとき次郎は体の異変に気づいていた。
赤に染まった髪の毛。妙に力がみなぎる体。赤と黒で染め上げられた戦闘服。
服装の変化は次郎だけではなかった。ほとんどの人は素肌に皮の鎧というGLAYでの初期装備で、ちらほらと他の装備の人がいた。
しかし、装備は変わっていたが顔つきだけは変わっていなかった。
「ここがもしGLAYの世界ならコマンドが使えるはずだな。じゃあもしかしたら能力も。あぁーもうどうしたものか。」
次郎はよく言えばゲーマー、悪く言えばオタクという属性のためあまり頭は冴えていない。真面目に勉強すればよかったと次郎は少し後悔した。
次郎は頭を抱えた挙げ句コマンドを試した。試すといってもボタンがあるわけでもないのでとりあえず適当に指を動かしてウィンドウを開くとアイテム欄、チャットなどが出てきた。
「チャットか。。。。あ!ミレイユなら。。」
そしてあまり慣れない手つきで目の前に出てきた映像のキーボードでメッセージをうった
『ミレイユ、今からあえるかこの世界おかしいぞ』
ゲーム通りにチャットが届くのは半信半疑だったが、尻込みしている暇はなかった。
するとすぐ返信がきた。
『そうね、まだ確信はないけどGLAYの世界かもしれないわね。とりあえず東京駅でいい?』
ミレイユも落ち着いているようだ。
『いいけど俺の家から遠いんだが、どうすればいい?』
『え、転移の魔法を使えばいいじゃない』
ミレイユの現実では奇想天外過ぎる言葉に次郎は戸惑ったが続けてチャットを打ち込む。
『は?どうやって?』
『私もよくわかんないけどさっき使えたわよ頭のなかで想像する感じ』
『よくわからんがやってみる』
会話が終わり次郎はウィンドウを閉じると、アバウトすぎるミレイユの方法を試そうとした瞬間、教室のドアから教師(皮装備)が息を切らして入ってきた。なんてシュールな絵面なのだろうか。
「みなさん落ち着いて!今から指示をします!」
息を切らしながらも、教師は避難を促していた。だが、そんな指示を聞かず転移する次郎であった。

目を開けるとそこは東京駅であった。どうやら転移に成功したみたいだ。しかし、普段とは違い、いたるところに化け物がおり、逃げ惑う人々がいた。次郎はミレイユを探した。
「ゲーム通りだと、ピンクの長髪で白いコートを着てて、あと貧乳。。ヒッ!」
小声でミレイユの特徴を挙げると後ろから殺気をかんじ、恐る恐る振り替えった。
「誰が貧乳ですってぇぇ?」
案の定、貧乳、いや巨乳のミレイユ様がいた。そのあと一発殴られたのは言うまでもないだろう。
なぜだか、ミレイユの服に血痕がついていたが触れたらまずい気がしたのでそっとしておいた。
「とりあえず!今、日本は大パニックよ」
手に持っていたスマホのニュースをミレイユが見せてきた。そこにはお偉いさんが今の状況について説明していた。
今、世界を巻き込んでいるゲームの名はGLAY。
古くから人気のあるRPGゲームでさまざまな敵を倒すゲームだ。このゲームには能力というものがあり、主に召喚系、発動系、変身系、向上系、の4つがありそしてこの4つのなかでGLAYで伝説となった能力は伝説系と呼ばれている。
「パニックになるのも無理はない。命が危険だからな」
「そうね、とりあえずGLAYの廃人である私たちにできることは人を守ることよ」
ミレイユらしい言葉だと素直に次郎は感心し、首肯した。
「あぁ、でも能力つかえるかな。転移は上手くできたけどさすがに無理だろ」
次郎が頬をポリポリとかくと腕組みしたミレイユが言う。
「そんなことないわよ物は試しよ」
二人が歩き出そうとしたときだった。
背後に巨大な影が近づいてくるのがわかり、二人が後ろに素早く下がる。その正体はすぐにわかった。
「あれは、トロール?」
そこには緑色の容姿に棍棒をもった化け物がいた。次郎は、初めて対峙するトロールに若干怯んだが、ミレイユは怯むことなく対峙していた。
「そうみたいね、でも私とあんたにとっては敵じゃないわ」
ゲームの中ではこの程度、秒殺で消せる。
次郎は首肯し拳を握った。それにならってミレイユは光の剣を顕現させた。
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