剣拳波

jino

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ラミレジ

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次郎は死ぬということをよく知っていた。
なぜなら自身が幼い頃に両親を事故で喪っていたからだ。
次郎は当事のことを鮮明に覚えている。だから大切なものを喪う辛さをよく知っていた。
ミレイユの表情は曇っていた。雨雲のように。
「そうか、そんなことが 。。。」
次郎は沈黙と重い空気に耐えられなくなり言葉を発した。しかしどうすればいいのか分からなく呟くことしかできなかった。
ミレイユは次郎を見て笑顔を見せた。
明らかな空元気だった。
「あんたまで落ち込まないの。確かに辛かったけど、前を向かなきゃしょうがないでしょ」
ミレイユらしい言葉だった。ミレイユは女だが、男を凌ぐ程のメンタルの強さがある。
次郎がミレイユに感銘を受けていると、
頼んだサンドイッチがテーブルの上に運ばれてきた。
色鮮やかで見栄えがよくさまざまな種類があった。ミレイユと次郎はそれぞれ気に入ったものを取って口に運んだ。
噛んだ瞬間に野菜の瑞々しさが広がった。
次郎は独り暮らしのためよく料理を作るがこれ程美味しいものを食べるのは初めてだった。
次郎が感動しているのに対し、ミレイユは普通の食事のように食べていた。
「これ、おいしくないか?俺こんな美味しいもの食うの初めてだ」
次郎が言うとミレイユは首を傾げて言った。
「これぐらいのものだったら、私でも作れるわよ?」
次郎は対抗しているのかと思い、じと目を向けた。
「な、なによその目は。信じられないなら今度作って食べさせてあげるわよ」
「おう、楽しみにしてるぜ」
次郎はサンドイッチを頬張りながら言った。
ミレイユは(絶対聞いていないなこいつ)と思いながら次郎に倣ってサンドイッチを食べた。 


テーブルの上にある空になったお洒落なサンドイッチの容器を前にミレイユと次郎はこれからのことについて話していた。
「これからのこと」という単語は普通、婚約者などが使うものなのだろうが、二人はそれとは程遠い表情で「これからのこと」について話していた。
「そういえば、ミレイユの家族ってどうしてるんだ?」
次郎は両手を首にまわして聞いた。
「それは、こっちの台詞でもあるわ。あんたこそどうしているのよ?」
ミレイユは目を細めて問いかけた。
次郎は先に言わないと言ってくれないだろうと観念して話した。自分には家族がいないと。
それを聞いたミレイユは複雑そうな顔をした。
「まぁ幼い頃からいないものだから気にしてないよ。だからそんな顔すんなって」
次郎はミレイユが気を使っているのかと思った。しかしミレイユの口から出た言葉に次郎は動揺を隠しきれなかった。
「私もいないわ」と。
「お、おいだったらお前なんで俺がいないって言ったときそんな複雑そうな顔したんだよ」
次郎が聞くとミレイユは指の先と先を合わせて顔を赤らめ、小声で言った。
「そ、それはお互い家族がいないなら二人で暮らせるじゃん」
「なんか言ったか?もう一回頼む」
次郎はうまく聞き取れず再び聞いた。しかし次に返ってきたのは声じゃなく拳だった。
「いってぇな!なにすんだよ!」
次郎は涙目で顔の一部が赤くなっていた。
「うっさいわね!なんもないわよ!」
ミレイユはそっぽを向いた。
端からみたら仲のいい夫婦喧嘩のようであった。しかも声が大きかったため、周りから冷たい視線が二人にささった。二人は恥ずかしくなりだんまりしてしまった。
すると二つの影が近づいてきた。
「全く相変わらず仲がいいっスね」
声のする方へ振り返るとそこには、女性が立っていた。
水晶のような瞳と美しい金髪。綺麗に結われたお団子。小柄な体躯とは似ても似つかないインパクトの強い胸の少女がいた。
ミレイユに申し訳なくなるような人間だと次郎は思った。
「あんた、私の嫌味を考えてない?」
ミレイユに睨まれ、図星がばれないように苦笑いで装う。
「ミレイユさん、次郎さん久しぶりです」
もう一人は眼鏡をかけており、真面目な雰囲気を醸し出した男だった。次郎とミレイユはその男を見てはっとした。
「お前は、レイヴン!」
「正解です。改めてお久しぶりです次郎さんミレイユさん」
レイヴンと呼ばれる男は愛想のよい笑顔を見せた。


GLAYの世界でミレイユと次郎はギルドを所属していた。その名をラミレジ。
理由は至極簡単でメンバーの頭文字を取ったものだ。ラムのラ。ミレイユのミ。
レイヴンのレ。ジローのジ。という成り行きだった。
ラミレジは四人だけのギルドなのにも関わらずGLAYでは知らないものはいないほど有名なギルドであった。配信されたばかりのボスを秒殺し、必ずクリアする。そんなギルドであった。
次郎とミレイユは最強コンビと言われており、恐れられていた。
レイヴンは頭脳を上げる向上系の能力で、もとの頭がいいためさらに向上したとなると相手の攻撃を予測したりすることができる。そのためGLAYで相手からのダメージを受けたことはない。しかし希に天然がでて、毒沼に填まったりしてダメージを受けるらしい。
ラムは召喚系の能力で化け兎を召喚する。化け兎の実力は次郎とミレイユでも苦戦するほど強い。また、召喚系の能力で化け兎の力を吸収したラムの破壊力はまるで化け物であった。現実とは違い、幼女の形相なため、油断して痛い目をみる人が多いらしい。


次郎はレイヴンと久しぶりに会って嬉しく思った。しかし気がかりがあった。それはレイヴンの前に話しかけてきた金髪だ。
次郎は逡巡し何かを思いだし金髪の少女にじと目を向けた。ミレイユもじと目を向けていた。
「な、なんスか?その目は」
少女は脂汗を浮かべて目を逸らした
「お前さては、ラムだな?」
レイヴンは苦笑していた。
「よくわかったスね!さっきはスルーされたからショックだったスよぉ」
ラムは満面の笑みを浮かべて言った。
ミレイユと次郎はゲームとの形相の違いに呆れていた。
「お前、ゲームの中ではそんなでかくなかっただろ」
次郎は手を自分の腹辺りに当てて大きさを示した。
「あれあれ?次郎はゲーム内での私の方が好みだったスか?」
ラムがからかうように言うと。レイヴンとミレイユから冷たい視線が飛んできた。
「んなわけねぇだろ!ていうか二人してなんでここにいるんだ?」
次郎が無理やり話を変えるとレイヴンが説明した。
「実は。。。。」
レイヴンとラムはこの世界が変わったとき同じ学校に通っていたことを初めて知ったらしい。そして例によって数々のモンスターと闘いつつ、次郎とミレイユを探していた。
そして今に至るということらしい。
「だったらメールを使った方が早くなかったか?」
次郎は疑問に思い口にした。
するとレイヴンとラムの時が止まった。
「はぁ、やっぱりレイヴンの天然は本物だったんだな」
次郎は微笑しながら言った。
「僕としたことがまた失敗を」
レイヴンが本格的に落ち込み、闇にのまれた。
「まぁ、しょうがないッスよ!人間誰でも失敗はあるっス」
次郎は、お前が言うなと突っ込みたかったが久しぶりのやり取りが見られて微笑ましかったからやめておいた。
「コホン、で、ギルドは再結成するの?」
しばらく放置されて不機嫌なのかミレイユがわざとらしい咳払いをした。
「それについてなんですが、少し提案がありまして」
立ち直ったレイヴンが眼鏡を指で押し上げはなしを切り出した。
「お二人とも、試合に出てみませんか?」と。











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