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【高校編】分岐・相良仁
フラペチーノフラペチーノフラペチーノ
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「フラペチーノフラペチーノ、フラペチーノっ」
作詞作曲、設楽華。謎の鼻歌が止まらない。
「ご機嫌だなー」
仁がクルマを運転しながら嬉しそうに言う。助手席の私はずっと飲んでみたかったフラペチーノを仁が買ってくれて、ちょうゴキゲンです。
「だってずっと飲みたかったんだもん」
「それさ、むしろ"食べてみたかった"じゃね? 飲みモンなのそれ」
「飲み物なの~」
や、生クリームはスプーンで食べる派ですけれども。
「いや、飲みモノにマシュマロ入れるとかちょっと狂気の沙汰だと思うぞ俺は……」
「おいしーのに! はい!」
仁におススメしたけど断られた。ちぇ。代わりに赤信号で止まったスキに、口のあたりをぺろりと舐められた。
「ひゃ」
「クリームついてたから。甘っ」
これくらいでいいや、と仁は笑った。私はちょっと赤くなる。
「もう、イヌみたいなこと」
クリームつかないように気をつけながら、フラペチーノを飲むと言うか食べるというか。うう、それにしても美味しいよ……。
「多分それ、カロリーえげつないぞ」
信号は青に変わる。車はゆっくりと動き出した。
「知ってるよ! 覚悟の上だよ!」
大盛りラーメンくらいあるとか噂もあるけれど、……仕方ない。仕方ないんだ……。新作なんだもの……。
「つうかさ、」
「うん」
生クリームに入ってるつぶつぶのマシュマロ。なにこれ美味しい。うっとり味わってる私を尻目に、仁は淡々と言葉を続けた。
「あいついたわ。カフェに」
「あいつ?」
「桜澤青花」
「ぶふう」
思わず生クリーム(大事)を吹き出しそうになって耐える……。え、なに、なんですと?
「あ、青花いたのっ」
「そう。クラスのさ、取り巻き男子くんたちと」
「ま、まじですか……」
夏休みも取り巻いてるのですか。男子くんたちも、おヒマなんだか、お忙しいんだか。
「仁、気づかれた? 私も」
すこし青くなりながら聞く。軽く変装もどきなカッコはしてるけど、"設楽華"が"ガッコの先生"と一見デートにしか見えないコトしてるの、見られるのは相当まずい。
(ていうか、デートなんですけれど)
私は生クリームをちろりと舐めた。
こないだ、仁のこと色々聞いて、なんていうか、……少しでもいっしょにいたいな、と思うようになったのだ。
(えと、ちょっと違う?)
自分で考え直す。
いたい、っていうか、もっと知っておきたい、みたいな。
前世の仁のことじゃなくて、今の彼のことを。家族はどんな人なのか、いままでどんな風に生きてきたのか、
(どんな恋をしてしたの、ってのも聞けたらな)
今日いますぐ、とかじゃなくていい。
いろんな話を、少しずつでも。
(ずっと一緒にいるんだもん)
たっぷり時間はあるはずです。
まぁ、そんな感じの今日のデートなのです、が。
(青花いたのかーっ)
ちょっとワガママ言って寄ってもらったのだ、みかけたカフェに。この辺りは青百合の学生もたくさん住んでるから、気をつけなきゃと分かってたのに!
少し青くなってる私の頭を、仁がゆっくりと撫でる。
「クルマ、店の中からは死角になるとこに停めてたから大丈夫だよ」
「ほんと?」
「取り巻き男子くんには見られたかもだけど、普段とずいぶん雰囲気違うし大丈夫じゃね?」
「そ、そかな」
私は少し安心して、窓ガラスにうっすら写る自分を見る。
「てーかさー」
「なに?」
窓ガラスから、仁に視線を移す。
「なんでそんな可愛いカッコしてくれてるわけ? 普段ちょーシンプルなのに」
「え、派手かなっ」
「や、全然?」
仁はちら、と私を見る。
「シンプル目だけどさ、化粧とかしてくれてるしさ、なにそれ」
「……デートだから?」
私はふい、と目を逸らした。なんか気恥ずかしいです。ピアスは赤いお花のほう。
「おデートですもんねぇ」
仁のからかうような声。もう!
「ところでお嬢様、このおデート、どこへ行けばよろしいのですかね」
「決めてない」
「あ、そ」
仁は楽しそうに笑った。なんとなくデートしたくて呼び出したけれど、場所は決めてない。
「ワガママお嬢様だな」
「そーなの、ワガママお嬢様なの」
「惚れてなきゃ張っ倒すとこだ」
ケタケタ、と仁は笑った。惚れてなくても張っ倒さないで欲しいんだけど。アンタ一応、私の護衛さんなんでしょうに……。
「じゃー日光でも行くか」
「遠くない!?」
思わず仁を見た。
「3時間くらいか?」
「3時間か~」
遠いけど、私としては全然大丈夫だ。仁といると飽きないし。
(まだ午前中だもんね)
着くのはお昼過ぎかなぁ。
「あのさ、運転、きつくない?」
「ん? 運転好きだから、それは大丈夫」
「ほんと?」
「お前と話してたらスグだよ」
さらり、と言われて私は少し胸がきゅんとする。同じこと考えてた。
「ま、お前多分寝るけどな」
「寝ないよ! ちゃんとさぁ、なんていうか、助手席の彼女っぽいことするよ!」
お茶差し出したりとか、ガム渡したりとか! なんかそういう! うん!
「いやいや寝ていいよ気にすんな」
仁は一瞬ぽかんとした後、なぜかすっごい嬉しそうに笑って言った。
「起きてますもんねっ」
そう言ったのに。言いましたのに。
「おい、着いたぞ」
ぱちりと目がさめると、仁がものすごくニヤニヤしながら私を覗き込んでいた。
「あれ?」
ぼけーっと何度か瞬きする。あれれ?
「到着しましたけどお姫様」
おでこにキス。それから唇。
「ん」
「起きた? おねんねオジョーサマ」
そこはせめて眠り姫では?
なんて少し思いながら、私はこっそりヨダレをぬぐった。どうやら、爆睡していたようですね、これは……。
作詞作曲、設楽華。謎の鼻歌が止まらない。
「ご機嫌だなー」
仁がクルマを運転しながら嬉しそうに言う。助手席の私はずっと飲んでみたかったフラペチーノを仁が買ってくれて、ちょうゴキゲンです。
「だってずっと飲みたかったんだもん」
「それさ、むしろ"食べてみたかった"じゃね? 飲みモンなのそれ」
「飲み物なの~」
や、生クリームはスプーンで食べる派ですけれども。
「いや、飲みモノにマシュマロ入れるとかちょっと狂気の沙汰だと思うぞ俺は……」
「おいしーのに! はい!」
仁におススメしたけど断られた。ちぇ。代わりに赤信号で止まったスキに、口のあたりをぺろりと舐められた。
「ひゃ」
「クリームついてたから。甘っ」
これくらいでいいや、と仁は笑った。私はちょっと赤くなる。
「もう、イヌみたいなこと」
クリームつかないように気をつけながら、フラペチーノを飲むと言うか食べるというか。うう、それにしても美味しいよ……。
「多分それ、カロリーえげつないぞ」
信号は青に変わる。車はゆっくりと動き出した。
「知ってるよ! 覚悟の上だよ!」
大盛りラーメンくらいあるとか噂もあるけれど、……仕方ない。仕方ないんだ……。新作なんだもの……。
「つうかさ、」
「うん」
生クリームに入ってるつぶつぶのマシュマロ。なにこれ美味しい。うっとり味わってる私を尻目に、仁は淡々と言葉を続けた。
「あいついたわ。カフェに」
「あいつ?」
「桜澤青花」
「ぶふう」
思わず生クリーム(大事)を吹き出しそうになって耐える……。え、なに、なんですと?
「あ、青花いたのっ」
「そう。クラスのさ、取り巻き男子くんたちと」
「ま、まじですか……」
夏休みも取り巻いてるのですか。男子くんたちも、おヒマなんだか、お忙しいんだか。
「仁、気づかれた? 私も」
すこし青くなりながら聞く。軽く変装もどきなカッコはしてるけど、"設楽華"が"ガッコの先生"と一見デートにしか見えないコトしてるの、見られるのは相当まずい。
(ていうか、デートなんですけれど)
私は生クリームをちろりと舐めた。
こないだ、仁のこと色々聞いて、なんていうか、……少しでもいっしょにいたいな、と思うようになったのだ。
(えと、ちょっと違う?)
自分で考え直す。
いたい、っていうか、もっと知っておきたい、みたいな。
前世の仁のことじゃなくて、今の彼のことを。家族はどんな人なのか、いままでどんな風に生きてきたのか、
(どんな恋をしてしたの、ってのも聞けたらな)
今日いますぐ、とかじゃなくていい。
いろんな話を、少しずつでも。
(ずっと一緒にいるんだもん)
たっぷり時間はあるはずです。
まぁ、そんな感じの今日のデートなのです、が。
(青花いたのかーっ)
ちょっとワガママ言って寄ってもらったのだ、みかけたカフェに。この辺りは青百合の学生もたくさん住んでるから、気をつけなきゃと分かってたのに!
少し青くなってる私の頭を、仁がゆっくりと撫でる。
「クルマ、店の中からは死角になるとこに停めてたから大丈夫だよ」
「ほんと?」
「取り巻き男子くんには見られたかもだけど、普段とずいぶん雰囲気違うし大丈夫じゃね?」
「そ、そかな」
私は少し安心して、窓ガラスにうっすら写る自分を見る。
「てーかさー」
「なに?」
窓ガラスから、仁に視線を移す。
「なんでそんな可愛いカッコしてくれてるわけ? 普段ちょーシンプルなのに」
「え、派手かなっ」
「や、全然?」
仁はちら、と私を見る。
「シンプル目だけどさ、化粧とかしてくれてるしさ、なにそれ」
「……デートだから?」
私はふい、と目を逸らした。なんか気恥ずかしいです。ピアスは赤いお花のほう。
「おデートですもんねぇ」
仁のからかうような声。もう!
「ところでお嬢様、このおデート、どこへ行けばよろしいのですかね」
「決めてない」
「あ、そ」
仁は楽しそうに笑った。なんとなくデートしたくて呼び出したけれど、場所は決めてない。
「ワガママお嬢様だな」
「そーなの、ワガママお嬢様なの」
「惚れてなきゃ張っ倒すとこだ」
ケタケタ、と仁は笑った。惚れてなくても張っ倒さないで欲しいんだけど。アンタ一応、私の護衛さんなんでしょうに……。
「じゃー日光でも行くか」
「遠くない!?」
思わず仁を見た。
「3時間くらいか?」
「3時間か~」
遠いけど、私としては全然大丈夫だ。仁といると飽きないし。
(まだ午前中だもんね)
着くのはお昼過ぎかなぁ。
「あのさ、運転、きつくない?」
「ん? 運転好きだから、それは大丈夫」
「ほんと?」
「お前と話してたらスグだよ」
さらり、と言われて私は少し胸がきゅんとする。同じこと考えてた。
「ま、お前多分寝るけどな」
「寝ないよ! ちゃんとさぁ、なんていうか、助手席の彼女っぽいことするよ!」
お茶差し出したりとか、ガム渡したりとか! なんかそういう! うん!
「いやいや寝ていいよ気にすんな」
仁は一瞬ぽかんとした後、なぜかすっごい嬉しそうに笑って言った。
「起きてますもんねっ」
そう言ったのに。言いましたのに。
「おい、着いたぞ」
ぱちりと目がさめると、仁がものすごくニヤニヤしながら私を覗き込んでいた。
「あれ?」
ぼけーっと何度か瞬きする。あれれ?
「到着しましたけどお姫様」
おでこにキス。それから唇。
「ん」
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そこはせめて眠り姫では?
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