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【高校編】分岐・鹿王院樹
☆【番外編】春の日(下)(side樹)【了】
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初めて君に会ったのは、桜がちらちらと散る春の終わりだった。
風もないのに、ゆっくりと散っていく桜。
紅い振袖で、幼い華は楽しげに鞠を持って、ケタケタと笑っていた。
あの瞬間に恋に落ちて。
今彼女は、俺の腕の中で真っ白なドレスを着て、泣いている。
結婚式のあと、その夜。
並んで湖を眺めながら、華は小さく笑った。
「楽しかったね」
「うむ」
手を繋いで。
湖上、はるか空には金色の月が浮かんでいる。
「かずは、やたらと寝つきが良かったね」
「疲れたんだろう」
「夜中ぐずらないといいけど」
華は目を細める。その頬に、キスをひとつ。
俺を見上げる華の、その唇にもキスを落とす。ありったけの愛してるをこめて。
ふふ、と華は笑う。
「樹くん」
「なんだ?」
「大好き!」
「愛してる」
「ずるい」
「なにが」
そうっと、華は俺に抱きついてくる。
「私の方が百倍好き」
「その一千倍は愛してる」
ぷ、と華は吹き出す。
「やだもー、痛いカップルじゃん」
「痛くてなにが悪い」
ふ、と笑う。
「別に誰に見られているわけでもなし」
「そーだけど、さ」
手を繋ぎ直して、ぷらぷらと歩きながら俺は言う。
「そういえば」
「? なぁに」
「覚えているか?」
きゅ、と手を強く握って。
「世界中の神に結婚を誓ってまわろうと言ったこと」
「……あ、あー。あったねぇ」
笑う華に、俺は続ける。
「毎年、春はどうだろうか」
「……へ?」
「春に」
「うん」
「式を」
「毎年!?」
驚く華に、俺は笑う。
「俺は有言実行の男なんだ」
「なにそれカッコいい……じゃない、ええっ、本気!?」
「本気も本気。大マジだ」
「大マジって……」
華は呆れたように俺を見たあと、ケタケタと笑い出す。
あの日のように。
あの、桜が舞っていた、あの春の日のように。
桜の代わりに、月光がちらちらと散る。
湖面に反射したそれは、華の周りで飛散して、拡散して、とても眩しくて。
「うん」
笑いながら、華は言う。
「それ、しよう。ちょっと楽しそう」
「だろう」
毎年毎年、君と出かけよう。
桜が咲く頃に。
どこにいたって、なにをしていたって、必ず。
「世界中の神様、呆れちゃうね。ひどいバカップルだって」
「バカップルなぁ」
「……言いかた、古い?」
「どうだろう」
妙なことを気にする華の手を、強く握る。
君と世界で愛を誓ってまわろう。
世界中の誰もが呆れたって構わない。
「愛してる、華」
君が笑うならなんだっていい。
月光の下で、華がきらきらと笑った。
風もないのに、ゆっくりと散っていく桜。
紅い振袖で、幼い華は楽しげに鞠を持って、ケタケタと笑っていた。
あの瞬間に恋に落ちて。
今彼女は、俺の腕の中で真っ白なドレスを着て、泣いている。
結婚式のあと、その夜。
並んで湖を眺めながら、華は小さく笑った。
「楽しかったね」
「うむ」
手を繋いで。
湖上、はるか空には金色の月が浮かんでいる。
「かずは、やたらと寝つきが良かったね」
「疲れたんだろう」
「夜中ぐずらないといいけど」
華は目を細める。その頬に、キスをひとつ。
俺を見上げる華の、その唇にもキスを落とす。ありったけの愛してるをこめて。
ふふ、と華は笑う。
「樹くん」
「なんだ?」
「大好き!」
「愛してる」
「ずるい」
「なにが」
そうっと、華は俺に抱きついてくる。
「私の方が百倍好き」
「その一千倍は愛してる」
ぷ、と華は吹き出す。
「やだもー、痛いカップルじゃん」
「痛くてなにが悪い」
ふ、と笑う。
「別に誰に見られているわけでもなし」
「そーだけど、さ」
手を繋ぎ直して、ぷらぷらと歩きながら俺は言う。
「そういえば」
「? なぁに」
「覚えているか?」
きゅ、と手を強く握って。
「世界中の神に結婚を誓ってまわろうと言ったこと」
「……あ、あー。あったねぇ」
笑う華に、俺は続ける。
「毎年、春はどうだろうか」
「……へ?」
「春に」
「うん」
「式を」
「毎年!?」
驚く華に、俺は笑う。
「俺は有言実行の男なんだ」
「なにそれカッコいい……じゃない、ええっ、本気!?」
「本気も本気。大マジだ」
「大マジって……」
華は呆れたように俺を見たあと、ケタケタと笑い出す。
あの日のように。
あの、桜が舞っていた、あの春の日のように。
桜の代わりに、月光がちらちらと散る。
湖面に反射したそれは、華の周りで飛散して、拡散して、とても眩しくて。
「うん」
笑いながら、華は言う。
「それ、しよう。ちょっと楽しそう」
「だろう」
毎年毎年、君と出かけよう。
桜が咲く頃に。
どこにいたって、なにをしていたって、必ず。
「世界中の神様、呆れちゃうね。ひどいバカップルだって」
「バカップルなぁ」
「……言いかた、古い?」
「どうだろう」
妙なことを気にする華の手を、強く握る。
君と世界で愛を誓ってまわろう。
世界中の誰もが呆れたって構わない。
「愛してる、華」
君が笑うならなんだっていい。
月光の下で、華がきらきらと笑った。
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