無頼少年記 ~最強の戦闘民族の末裔、父親に植えつけられた神話のドラゴンをなんとかしたいので、冒険者ギルドに就職する~

ANGELUS

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覚醒自動人形編 下

初陣、悪の大魔王

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 パオングの転移魔法で戦場に降り立った執事―――あくのだいまおうは、ビルの屋上から街中を埋め尽くすロボット軍団を見下ろす。

 彼の瞳は、暗澹としていた。地上で己の命を賭けて奮闘する請負人たちとは裏腹に、彼の瞳は大地を掌握したロボット軍団など路頭の小石としか思っていない、酷く冷淡な漆黒に染まっている。

「この姿で戦場に立つのは初めてなのですが……はてさて。この者どもは、私の``予想``を超えてくるのでしょうか」

 意気揚々とモノクルの位置を正し、大地の者どもを睥睨する。

 彼は全てを知っている。ゆえに、予想とはすなわち既知であり、既知とはすなわち既定事実である。

 彼には分かっているのだ。蹂躙する側が誰で、される側が誰なのか。だからこそ求めてしまう。既定事実を乗り越えてくる存在を。

 全てを知っているがゆえの、性というものであった。

「おっと、私としたことが。悪癖が滲み出てしまいました。久しぶりの戦場で、少し気が昂っているようですね」

 などと嘯くが、その表情は不敵な笑みで満たされている。

 それはたとえ既定事実を超えられたとしても、どうにかできるという絶対的自信。傲慢などではなく、確固たる自信があるのだ。

 戦いを終わらせて、何を得るか。どう勝つかなど、砂塵のようなものでしかない。

「ふふふ、やはりあの``巫女``は気付きますか。片鱗とはいえ、この私の深淵に迫ろうとするとは」

 そう、ここまでの流れもまた、彼にとっては既定事実。既に知っている物事である。

 気が昂ったのは確かだが、それで霊力の制御を怠る彼ではない。あえて霊力を出したのは、その者の所在を確認すること。そして己に敵意がないことを、その者に伝えるためであった。

 今から行うのは、まさしく蹂躙。それで友軍を殺めてしまっては、あくのだいまおうの名が廃る。そんな凡ミスを犯す彼ではない。

「よろしい。では、下に降りる準備をいたしましょう」

 頭上に現れる巨大な漆黒の魔法陣。陽の光も、何もかも呑み込んでしまいそうな、その漆黒から現れたるは、ビルの屋上すら簡単に覆い尽くしてしまうほどの、巨大な蝿であった。

 その姿は、かの蝿王を彷彿とさせるほど禍々しく、体色も黒の成分が多い紫という毒々しさを絵で描いたような異形。ハニカム構造をした複眼が目まぐるしく動くが、その禍々しい姿に臆する様子は微塵もない。むしろ不敵な笑みを浮かべたままだ。

「まあ、この子で下の者どもを破壊してしまえば速いのですが……彼らの為になりませんからね。なにより面白くない」

 巨大な蝿はあくのだいまおうを背に乗せ、ビルの屋上から飛び立った。同時に高層ビルは粉々に砕け散る。

 離陸時の風圧に、霊力で強化されたビルの鉄骨が耐えられなかったのだ。あくのだいまおうは怪しげな笑みをこぼしながら、ベルゼタイタンと呼んだその巨大な蝿の優しく肌を撫であげた。

「さてベルゼタイタン、私が降り立つためのスペースを作りなさい。なるべく最小限で、ね」

 可愛いペットを可愛がる微笑みを漏らすあくのだいまおうとは裏腹に、ベルゼタイタンはその姿には似つかわしくなく、小刻みに震えている。

 まるで絶大な絶対強者に怯える、小さき者のように。

 あくのだいまおうに背を押されたためか、ベルゼタイタンの行動は迅速だった。口から吐き出された緑色の光線。それが地面に着弾するや否や、大地を埋め尽くしていたロボット軍団の一部が消滅した。

 全体からすればほとんど米粒程度の量だが、それでも一撃で、数百体ものロボットが跡形もなく消し飛んだのである。あくのだいまおうの要望通り、彼が降りるにふさわしいだけの最小限のスペースを確保したのだ。

 あくのだいまおうはまた優しく撫でた。ベルゼタイタンの震えは尚も治らなかったが、スペースが埋まらないうちにゆっくりと地面に降り立つ。

「よくできました。帰って休むといい」

 彼がそう言うと、ベルゼタイタンの姿が粒子となって掻き消え、漆黒の魔法陣の中に吸収されていく。それを一瞥する事なく、あくのだいまおうは悠然と佇む。

 空いたスペースを即座に埋めようと、無機質なロボットたちは持ち前の物量であくのだいまおうに迫るが、彼の微笑みは、尚も不敵であった。

「では幕を上げましょうか。ほんのひととき、蹂躙劇でも。これ程の贄があるのです。余興程度には、舞ってくださいね」

 彼もまた歩み出した。一歩、また一歩と。肉薄する両者、そして軍勢の最初の一体が、容赦なく彼に殴りかかろうと片手を振り上げる。

 蹂躙が始まった―――。
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