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裏ノ鏡編
敗北、再び 3
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「……他愛ない」
辺り一面氷雪と化した更地に、銀髪の男―――裏鏡水月は、目の前で氷漬けになった澄男を一瞥し、身を翻す。
「万世一系の家格を持つ末裔も、所詮この程度か」
裏鏡はTシャツを靡かせながら、氷が張った大地を踏みしめる。
彼の背中には哀愁も、後悔も、達成感もない。氷の平原と化した世界にも興味は無く、ただ悠然と闊歩する。
敗北に追いやった澄男にすら、既に有象無象というが如く。
「残るは``終夜``と``拳骨``、``天帝``と``劔征``……アポトーシスの最上位天使のみか。次は``終夜``を……」
刹那、ぱりっと氷が砕ける音が彼の鼓膜を揺らす。体勢そのままに立ち止まり、後ろを振り向かないまま、毛を僅かに逆立てた。
「……ほう」
彼はゆっくりと振り向き、その姿に感嘆する。
裏鏡を前にして立っていたのは、澄男であった。しかし彼はもはや、裏鏡に氷漬けにされた彼にあらず。
全身黒い鱗に身を包み、燃え滾る炎のような、紅いオーラを放出している。
オーラの正体は霊力。更地に触れ合うと同時、地面を敷いていた氷はみるみるうちに融けていく。
彼の霊力から熱さが滲む。触れれば肉が焼け落ち、骨が滲み出そうなほどの熱さが。
虹彩は往時を上回るほどに鋭く輝き、裏鏡を射殺す勢いで睨んでくる。
吹雪を含んだ爆発を受け、一度は死に損ないになりながらも生還した勇姿。猛々しい殺意に、禍々しい霊力。
触覚を司る神経が、伝わってくる熱さを一生懸命、脳味噌へ信号を送る。
人でありながら、人でない獣のような姿と化した彼を前にしても、裏鏡の顔色に変化はない。
ただおもむろに、じっと澄男の変わり果てた姿を見つめるだけである。
「生きていたか。死んだと思ったぞ」
冷淡に呟く裏鏡をよそに、竜人と化した澄男は口を大きく開けた。
彼の口元に浮かび上がったのは、真っ白に輝く球体であった。例えるならば、白色の恒星。
澄男が手の平に出現させる火の玉を数十倍に濃縮し、高温高密度に圧縮したかのような火球。
ゆっくりとゆっくりと、その大きさを増幅させていく。周りの星間ガスを集める星のように。
そしてその白い球体は、極太の光線に姿を変えた。
眼前にいた裏鏡の姿など一瞬で掻き消え、澄男を中心とする氷の平原は、光線と化した恒星の炸裂によって目にも留まらぬ勢いで消滅していく。
それは純然な破壊。氷の大地が剥げ飛ぶ。跡形も無く熱分解する様々な破片。爆轟の中心に咆哮が鳴り響いた。
まさに竜を連想させる咆哮。大地を揺らし、大気をも激しく沸騰させる。
天空へ、一本の光る柱が伸びた。同時に上威区を覆い尽くす勢いで、真っ赤な魔法陣が出現する。
光る柱が魔法陣の中心を貫いた瞬間、魔法陣の至るところから、まるで落雷のように光線が舞い降りた。
澄男から少し離れた地点、光線が着弾し、更地となった場所に、山積みになった瓦礫が、一人の少年によって掘り起こされる。
Tシャツは見るも無惨に引き裂かれ、ズボンもよれよれとなっていたが、少年自身は煤がついている程度で、やはり無傷であった。
少年、裏鏡水月は剣を抜く。
首を左、右に傾けて関節を鳴らし、空爆のように降り注ぐ光線の雨にはもろともせず、爆轟の中心部で呻く化物を睥睨する。
「``鏡術・霊象反射``」
周囲が光の爆撃と剥げ飛ぶ平原で混沌と化す中、裏鏡は冷静であった。彼の胸の中心で、澄男が放ったのと同じ恒星が宿る。
突風が吹き荒れた。全てを吹き飛ばさんとする猛烈な爆風。
裏鏡の銀髪が今にも全て抜け落ちてしまいそうな勢いで後ろに靡くが、それでも尚、彼の顔色に変化はない。
「く、KUそが……NAんでむきずなん……ごHAぁ!!」
澄男は掻き消えそうになる意識の中で、平然と反撃してくる裏鏡を見舞う。口から大量の血と吐瀉物を吐き出したと同時に。
苦しい。熱い。痛い。内臓が沸騰してのた打ち回ってるみたいで、凄い吐き気がする。
頭も朦朧として、気張ってないと十寺と戦ったときみたく暴走しちまいそうだ。
今はなんとか制御できてるが、理性を張ってないと身体が勝手に動いて全然言う事を聞かなくなる。
まるで、己の破壊衝動が、別人格として体を乗っ取ろうととしてるみたいに。
しかし、やっぱり効いてない。だったら早速―――。
刹那、裏鏡の頭上と足元に、幾重にも連なる真っ赤な魔法陣が一気に姿を現わす。
上から下から、彼を囲むようにして配置された魔法陣。裏鏡りきょうはそれらを無視し、尚も胸の中心で息吹く恒星を育む。
破戒。既に在る戒めを破り、本来禁止されてる無法を、自己中を、無理矢理可能にする業。相手を強制的に抹消する奥義。
相手を壊したい。倒したいと念じる。壊す壊す壊す壊す。破壊粉砕崩壊瓦解消滅滅却封滅灰燼。破壊。破壊破戒破壊破戒破壊破戒破壊破戒―――。
「NNNNNNNNNNNNNN!! HAKAIIIIIIIIIIIIIIIIII!!」
変わり果てた竜人が、咆哮とともに言霊を発し、魔法陣が瞬く間に光度を上昇。
裏鏡の身体は、眼に見えない何かによって、粉々に砕け散った。
まるで硝子を鈍器で打ち砕いたかのように、裏鏡の身体は破片となって、空間の至る所に吹き飛ばされてしまう。
澄男だった何かは雄叫びを挙げた。大地を揺らす地震の如く。嵐に猛威を振るう雷雨の如く。
大地は罅割れ、雲は引き裂かれる。
澄男の姿が掻き消えた。彼がいた中心が、まるで飛び上がる瞬間のトランポリンのように大きく沈み、ごぼ、という野太い爆音とともに、大地が沈む。
と思いきや、一瞬で山のように盛り上がった。
山の頂点から現れた一筋の彗星。それは空高く舞い上がったと見せかけて軌道を百八十度回転。勢いなど留まらず、彗星は地面目掛けて真っ逆さまに落ちてくる。
それはもはや、大気圏を突破した隕石。
―――``鏡術を打ち払うだけでなく、俺の肉体をも砕いたか。面白い。その力、評価に値する``
どこからともなく聞こえる声。その声には絶妙にエコーがかかっているように思えるが、音源が特定できない。
まるで立体音響のようで、空間全体が音色を発している。
空気が淀む。空間が歪んだのか、否。空気中に漂っていた破片が、再び一箇所に集まっているのだ。
それが何なのか。誰もが見れば一度は思案したくなるだろう。一度粉々に破壊された硝子細工が、時間を逆行するように巻き戻されていく情景。
非現実的だ。しかし、これは確かに現実で起こっていた。硝子の破片のような一つ一つはパズルのように連なり、高速でものを象り、人の姿を空気に描く。
その姿は、まさしく彼。
「だが。それだけでは、この裏鏡水月は打ち砕けんぞ」
跡形も無く粉砕されたはずの破片から、再び形作られたのは彼、裏鏡水月本人であった。
無地のTシャツに無地のズボン。戦う前と同じ服装も一緒に復元し、彼は猛スピードで肉薄する澄男に立ちはだかる。
あまりの速度に衝撃波が左右へ放出。放物線を描くように破壊の波動が、大地を通った。
「鏡影斬」
裏鏡の姿がふっと消えた。美しい直線を描く澄男を前にして、風に煽られたかの如く。だが、それも刹那であった。
「GUUURYUAAAAAAAAAAAA?!」
突如、彗星の如く猪突猛進していた澄男から夥しく鮮血が噴射する。それも独りでに、鎌鼬に切り刻まれたかのように。
全身から血を吹き出す澄男の後方、彼が通り過ぎたすぐ後の場所に、刀身についた血を払う裏鏡の姿があった。
「二度も言わせるな。俺に安直な突貫は無意味だ」
豪速の彗星を斬り刻んでも、彼の言葉は淡々としていた。
血を噴き出しながら地面に没する澄男を悠然と見つめ、追撃するように、言葉を投げかける。
「だが鏡術を破ったのは、お前が初めてだ。誇るがいい」
上から目線の弁は止まらない。地面を真っ赤に染めながらも、猛々しい戦意を絶やさない竜人は、猛獣の如き鋭い眼光を放ち、裏鏡を睥睨する。
澄男の殺意を介さず、裏鏡は無の感情を前面に押し出した。
戻れ。戻れ戻れ戻れ戻れ意識。視界が真っ赤でよく見えない。くそ、やっぱ``破戒``を使っても倒せないか。
アニメとか漫画とかならここで大逆転になるはずなのに、なんて理不尽なんだ。
意志の強さ次第でなんでも破壊できる無法を使ったのに、それでも平然としてやがる。これが、仙人ってヤツなのか。
でもアイツの鏡を粉砕できた。つまり、コレを使えばヤツの無法を邪魔する事ができる。
あいつは倒せないが、鏡術とかいうのが使えなければ、こっちが一方的に負けることはな―――。
「うGU……ぐAAAA……きばれぇ、おれE……ここDEぼうそうSIたら、まKEだ……」
体の奥底からぐつぐつとのた打ち回る巨大な何か。少しでも気を抜けば、その何かに呑み込まれそうになる。
コイツは十寺とは違う。ヤツは暴走でもなんとかできた。でもコイツの場合、暴走すればむしろ負ける。理性を保ってなきゃ、一方的に殺られる。
気がつけば、相手をミンチにするようなヤツだ。暴走すら呑み込むバケモンに、いつものパワー押しは通用しない。
相反する感情を抱きながらも、睨み合う二人。
猛烈な殺意と静謐な戦意。極めて緩急の険しい雰囲気の中で、災害と起こそうとも、彼らの戦いにピリオドは打たれる様子はない。
人生最大の難敵と巨大な何かに板ばさみにされながらも、澄男はただの意地と根性のみで、銀髪の少年、裏鏡水月に立ち向かった。
辺り一面氷雪と化した更地に、銀髪の男―――裏鏡水月は、目の前で氷漬けになった澄男を一瞥し、身を翻す。
「万世一系の家格を持つ末裔も、所詮この程度か」
裏鏡はTシャツを靡かせながら、氷が張った大地を踏みしめる。
彼の背中には哀愁も、後悔も、達成感もない。氷の平原と化した世界にも興味は無く、ただ悠然と闊歩する。
敗北に追いやった澄男にすら、既に有象無象というが如く。
「残るは``終夜``と``拳骨``、``天帝``と``劔征``……アポトーシスの最上位天使のみか。次は``終夜``を……」
刹那、ぱりっと氷が砕ける音が彼の鼓膜を揺らす。体勢そのままに立ち止まり、後ろを振り向かないまま、毛を僅かに逆立てた。
「……ほう」
彼はゆっくりと振り向き、その姿に感嘆する。
裏鏡を前にして立っていたのは、澄男であった。しかし彼はもはや、裏鏡に氷漬けにされた彼にあらず。
全身黒い鱗に身を包み、燃え滾る炎のような、紅いオーラを放出している。
オーラの正体は霊力。更地に触れ合うと同時、地面を敷いていた氷はみるみるうちに融けていく。
彼の霊力から熱さが滲む。触れれば肉が焼け落ち、骨が滲み出そうなほどの熱さが。
虹彩は往時を上回るほどに鋭く輝き、裏鏡を射殺す勢いで睨んでくる。
吹雪を含んだ爆発を受け、一度は死に損ないになりながらも生還した勇姿。猛々しい殺意に、禍々しい霊力。
触覚を司る神経が、伝わってくる熱さを一生懸命、脳味噌へ信号を送る。
人でありながら、人でない獣のような姿と化した彼を前にしても、裏鏡の顔色に変化はない。
ただおもむろに、じっと澄男の変わり果てた姿を見つめるだけである。
「生きていたか。死んだと思ったぞ」
冷淡に呟く裏鏡をよそに、竜人と化した澄男は口を大きく開けた。
彼の口元に浮かび上がったのは、真っ白に輝く球体であった。例えるならば、白色の恒星。
澄男が手の平に出現させる火の玉を数十倍に濃縮し、高温高密度に圧縮したかのような火球。
ゆっくりとゆっくりと、その大きさを増幅させていく。周りの星間ガスを集める星のように。
そしてその白い球体は、極太の光線に姿を変えた。
眼前にいた裏鏡の姿など一瞬で掻き消え、澄男を中心とする氷の平原は、光線と化した恒星の炸裂によって目にも留まらぬ勢いで消滅していく。
それは純然な破壊。氷の大地が剥げ飛ぶ。跡形も無く熱分解する様々な破片。爆轟の中心に咆哮が鳴り響いた。
まさに竜を連想させる咆哮。大地を揺らし、大気をも激しく沸騰させる。
天空へ、一本の光る柱が伸びた。同時に上威区を覆い尽くす勢いで、真っ赤な魔法陣が出現する。
光る柱が魔法陣の中心を貫いた瞬間、魔法陣の至るところから、まるで落雷のように光線が舞い降りた。
澄男から少し離れた地点、光線が着弾し、更地となった場所に、山積みになった瓦礫が、一人の少年によって掘り起こされる。
Tシャツは見るも無惨に引き裂かれ、ズボンもよれよれとなっていたが、少年自身は煤がついている程度で、やはり無傷であった。
少年、裏鏡水月は剣を抜く。
首を左、右に傾けて関節を鳴らし、空爆のように降り注ぐ光線の雨にはもろともせず、爆轟の中心部で呻く化物を睥睨する。
「``鏡術・霊象反射``」
周囲が光の爆撃と剥げ飛ぶ平原で混沌と化す中、裏鏡は冷静であった。彼の胸の中心で、澄男が放ったのと同じ恒星が宿る。
突風が吹き荒れた。全てを吹き飛ばさんとする猛烈な爆風。
裏鏡の銀髪が今にも全て抜け落ちてしまいそうな勢いで後ろに靡くが、それでも尚、彼の顔色に変化はない。
「く、KUそが……NAんでむきずなん……ごHAぁ!!」
澄男は掻き消えそうになる意識の中で、平然と反撃してくる裏鏡を見舞う。口から大量の血と吐瀉物を吐き出したと同時に。
苦しい。熱い。痛い。内臓が沸騰してのた打ち回ってるみたいで、凄い吐き気がする。
頭も朦朧として、気張ってないと十寺と戦ったときみたく暴走しちまいそうだ。
今はなんとか制御できてるが、理性を張ってないと身体が勝手に動いて全然言う事を聞かなくなる。
まるで、己の破壊衝動が、別人格として体を乗っ取ろうととしてるみたいに。
しかし、やっぱり効いてない。だったら早速―――。
刹那、裏鏡の頭上と足元に、幾重にも連なる真っ赤な魔法陣が一気に姿を現わす。
上から下から、彼を囲むようにして配置された魔法陣。裏鏡りきょうはそれらを無視し、尚も胸の中心で息吹く恒星を育む。
破戒。既に在る戒めを破り、本来禁止されてる無法を、自己中を、無理矢理可能にする業。相手を強制的に抹消する奥義。
相手を壊したい。倒したいと念じる。壊す壊す壊す壊す。破壊粉砕崩壊瓦解消滅滅却封滅灰燼。破壊。破壊破戒破壊破戒破壊破戒破壊破戒―――。
「NNNNNNNNNNNNNN!! HAKAIIIIIIIIIIIIIIIIII!!」
変わり果てた竜人が、咆哮とともに言霊を発し、魔法陣が瞬く間に光度を上昇。
裏鏡の身体は、眼に見えない何かによって、粉々に砕け散った。
まるで硝子を鈍器で打ち砕いたかのように、裏鏡の身体は破片となって、空間の至る所に吹き飛ばされてしまう。
澄男だった何かは雄叫びを挙げた。大地を揺らす地震の如く。嵐に猛威を振るう雷雨の如く。
大地は罅割れ、雲は引き裂かれる。
澄男の姿が掻き消えた。彼がいた中心が、まるで飛び上がる瞬間のトランポリンのように大きく沈み、ごぼ、という野太い爆音とともに、大地が沈む。
と思いきや、一瞬で山のように盛り上がった。
山の頂点から現れた一筋の彗星。それは空高く舞い上がったと見せかけて軌道を百八十度回転。勢いなど留まらず、彗星は地面目掛けて真っ逆さまに落ちてくる。
それはもはや、大気圏を突破した隕石。
―――``鏡術を打ち払うだけでなく、俺の肉体をも砕いたか。面白い。その力、評価に値する``
どこからともなく聞こえる声。その声には絶妙にエコーがかかっているように思えるが、音源が特定できない。
まるで立体音響のようで、空間全体が音色を発している。
空気が淀む。空間が歪んだのか、否。空気中に漂っていた破片が、再び一箇所に集まっているのだ。
それが何なのか。誰もが見れば一度は思案したくなるだろう。一度粉々に破壊された硝子細工が、時間を逆行するように巻き戻されていく情景。
非現実的だ。しかし、これは確かに現実で起こっていた。硝子の破片のような一つ一つはパズルのように連なり、高速でものを象り、人の姿を空気に描く。
その姿は、まさしく彼。
「だが。それだけでは、この裏鏡水月は打ち砕けんぞ」
跡形も無く粉砕されたはずの破片から、再び形作られたのは彼、裏鏡水月本人であった。
無地のTシャツに無地のズボン。戦う前と同じ服装も一緒に復元し、彼は猛スピードで肉薄する澄男に立ちはだかる。
あまりの速度に衝撃波が左右へ放出。放物線を描くように破壊の波動が、大地を通った。
「鏡影斬」
裏鏡の姿がふっと消えた。美しい直線を描く澄男を前にして、風に煽られたかの如く。だが、それも刹那であった。
「GUUURYUAAAAAAAAAAAA?!」
突如、彗星の如く猪突猛進していた澄男から夥しく鮮血が噴射する。それも独りでに、鎌鼬に切り刻まれたかのように。
全身から血を吹き出す澄男の後方、彼が通り過ぎたすぐ後の場所に、刀身についた血を払う裏鏡の姿があった。
「二度も言わせるな。俺に安直な突貫は無意味だ」
豪速の彗星を斬り刻んでも、彼の言葉は淡々としていた。
血を噴き出しながら地面に没する澄男を悠然と見つめ、追撃するように、言葉を投げかける。
「だが鏡術を破ったのは、お前が初めてだ。誇るがいい」
上から目線の弁は止まらない。地面を真っ赤に染めながらも、猛々しい戦意を絶やさない竜人は、猛獣の如き鋭い眼光を放ち、裏鏡を睥睨する。
澄男の殺意を介さず、裏鏡は無の感情を前面に押し出した。
戻れ。戻れ戻れ戻れ戻れ意識。視界が真っ赤でよく見えない。くそ、やっぱ``破戒``を使っても倒せないか。
アニメとか漫画とかならここで大逆転になるはずなのに、なんて理不尽なんだ。
意志の強さ次第でなんでも破壊できる無法を使ったのに、それでも平然としてやがる。これが、仙人ってヤツなのか。
でもアイツの鏡を粉砕できた。つまり、コレを使えばヤツの無法を邪魔する事ができる。
あいつは倒せないが、鏡術とかいうのが使えなければ、こっちが一方的に負けることはな―――。
「うGU……ぐAAAA……きばれぇ、おれE……ここDEぼうそうSIたら、まKEだ……」
体の奥底からぐつぐつとのた打ち回る巨大な何か。少しでも気を抜けば、その何かに呑み込まれそうになる。
コイツは十寺とは違う。ヤツは暴走でもなんとかできた。でもコイツの場合、暴走すればむしろ負ける。理性を保ってなきゃ、一方的に殺られる。
気がつけば、相手をミンチにするようなヤツだ。暴走すら呑み込むバケモンに、いつものパワー押しは通用しない。
相反する感情を抱きながらも、睨み合う二人。
猛烈な殺意と静謐な戦意。極めて緩急の険しい雰囲気の中で、災害と起こそうとも、彼らの戦いにピリオドは打たれる様子はない。
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