無頼少年記 ~最強の戦闘民族の末裔、ガールフレンドを失って失意と憎悪の果てに復讐を決意する~

ANGELUS

文字の大きさ
49 / 93
愚弟怨讐編 上

プロローグ:怨嗟

しおりを挟む
久三男くみおくん、何してるの」


 僕は彼女が好きだった。


久三男くみおくーん。おーい」


 僕が教室の隅でラノベを読んでいたら話しかけてくる彼女。


「今日はどんな本を読んでるの」


 僕がぼうっと考え事をしていれば、微笑みを浮かべながら話しかけてくる彼女。 


「また妄想? 兄弟揃ってよく考え事してるよね」


 僕にとって彼女の全てが愛おしくて、愛おしくて、仕方なかった。教室の隅で休み時間は読書に費やしている僕みたいなのからすれば、友達になれただけでも奇跡と言ってもいい代物だろう。


 本当、あの頃は誰かといて初めて楽しいって思えた。どうして過去形なのかと問われれば、もうその彼女はこの世に存在しないからだ。


 厳密にはまだ生きているのかもしれない。でもきっと、その彼女は僕が知っている彼女では既になく、もはや``ただの別物``なんだろう。


 既に傷物になってしまった、ただの別物。


 いずれ傷物になるのは分かっていたし、傷物にするのが僕じゃないのも分かってた。それは友達だと心を開いたその時から、自覚していたことだ。


 でもさ、こんなのないよね。


 どうしてなの。僕の初めての友達で女の子だったのに初めて画面の向こう側以外の女の子の友達ができたのに、どうして消えてなくなってしまったの。


 僕が一体、何をした。行きたくもない学校に通わされて、それでも真面目に勉強したじゃないか。宿題だってちゃんとやってたじゃないか。


 学校の授業内容なんて幼稚すぎて聞くに堪えないものだったけど、それでも僕は真面目にやってたんだ。テストでも満点とって学年一位の座をほしいままにしてたぐらいなのに。


 どうしてそんなどうだっていい概念だけが残って、重要なものが手から滑り落ちるように消えてなくなってしまうのか。分からない。全然分からないし納得いかない。


 これは誰のせいだ。僕のせいか。否、違う。


 決まってる。みんな世界が悪い。世界に蔓延る周りの人間が悪い。そして守ってくれなかった兄さんが悪い。


 奴らがちゃんとしていれば、僕より強い奴らがちゃんとしていれば、澪華れいかが死ぬ事なんてなかった。ただの別物に成り果てる事もなかったんだ。


 僕はいつもいつも被害者。か弱くて、戦う力も無くて、体力も無くて、ただ手が器用で物作りが得意なだけの、ただのゲーマー兼オタク。


 だから。だから僕は、悪くない。


 悪いのは、僕より強いくせに、その強さを然るべきときに発揮できない、周りの奴ら全てなんだ――――――――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

200万年後 軽トラで未来にやってきた勇者たち

半道海豚
SF
本稿は、生きていくために、文明の痕跡さえない200万年後の未来に旅立ったヒトたちの奮闘を描いています。 最近は温暖化による環境の悪化が話題になっています。温暖化が進行すれば、多くの生物種が絶滅するでしょう。実際、新生代第四紀完新世(現在の地質年代)は生物の大量絶滅の真っ最中だとされています。生物の大量絶滅は地球史上何度も起きていますが、特に大規模なものが“ビッグファイブ”と呼ばれています。5番目が皆さんよくご存じの恐竜絶滅です。そして、現在が6番目で絶賛進行中。しかも理由はヒトの存在。それも産業革命以後とかではなく、何万年も前から。 本稿は、2015年に書き始めましたが、温暖化よりはスーパープルームのほうが衝撃的だろうと考えて北米でのマントル噴出を破局的環境破壊の惹起としました。 第1章と第2章は未来での生き残りをかけた挑戦、第3章以降は競争排除則(ガウゼの法則)がテーマに加わります。第6章以降は大量絶滅は収束したのかがテーマになっています。 どうぞ、お楽しみください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

処理中です...