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終章・新時代の幕開け編
リザルト
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「一体、何が起こったんですか……!?」
あくのだいまおうとパオング、カエルたちを除いて、御玲だけがその呆気ない勝敗に、呆然としていた。
目を閉じて一人思考に耽っているパオングの肩を叩く。そう問いかけることしかできない己を恥じながら、地面に倒れふす主人と、呆然と立ち尽くす銀髪の少年を見つめた。
最初は澄男が圧倒しているように見えていた。それは澄男が佳霖の戦いを経て成長したからだと思っていたのだが、そう至った次の瞬間、澄男は一人何も無いはずの荒地をぐるぐるとその場で回り始めたと思いきや、空気を殴る蹴るといった意味不明な行動をし始め、そんな澄男から数メートルほど離れた所から呆然と立ち尽くす裏鏡が何やらブツブツと澄男に話しかけているという理解しがたい状況が数分続いた。
だが、それも束の間。
澄男との距離、その数メートルをまるで転移でもしたのかというくらいの一瞬のうちに間合いを詰めたと思うと、地面に巨大な蜘蛛の巣ができるほどの大威力で、澄男はなすすべもなく地面に叩きつけられてしまったのだ。
とにかく起こった全ての出来事が、まるで流れる水のように一瞬だった。一つ一つを認識し、理解する。その作業が、何一つ追いつかないほどに。
佳霖という化け物を死に物狂いで倒した男としては、似つかわしくない決着だった。
「ふむ……簡単に結論から述べるのであれば、澄男殿は魔法によって倒された、となるであろうな」
パオングはようやく目を開き、長い鼻をうねらせる。
「澄男さまを一瞬で倒す魔法なんて、あると思えませんが……」
「そんな大それた魔法など使っておらぬ。奴がこの戦いにおいて行ったことは、魔法を扱う上で極めて基礎的な戦術だ」
「極めて基礎的な戦術……?」
「``多重行使``である」
御玲へと体の向きごと変え、丸い手の平を御玲に見せる。そこに二枚の真っ白な魔法陣が現れた。
「元来、魔法というものは重ねがけが基礎である。複数の魔法を適材適所、臨機応変に、なおかつあらゆる局面を想定した上で、対応を徹底する。今まで我が魔法を使うとき、複数の魔法陣が現れたことの方が多かったであろう?」
「そういえば……何の魔法を使っていたかはわかりませんでしたけど……」
「あれが本来の使い方である。特に無系は、単体使用することなどほとんどない。あるとすれば``顕現``ぐらいだが、それも本来であれば、あらゆる対策を施した上で使うのが定石である」
「転移を何者かに阻止される場合を想定しなくてはなりませんからね。まあパオングほどにもなると、少し大雑把に使っても問題ないのですが」
パオングとの会話にあくのだいまおうが割り込んでくる。
たしかに、今まで無系を一種類しか使わなかったときは、あまり良い結果には繋がらなかった。たとえばヴァルヴァリオン遠征時、``隠匿``で新設大教会に忍び込んだとき、十寺に所在があっさりばれてしまったことだ。
十寺曰く``魔法探知``を使っていたからわかったなどと言っていたが、あのとき``隠匿``ならば誰にも悟られないと思い込んでいたために、``隠匿``しか使わず、周囲を魔法で警戒するなどは一切しなかった。
もしもやっていたならば、十寺の所在をこちらが先に見つけられたかもしれない。それができなかったのは、あらゆる局面を想定し、魔法を行使しなかったためだ。
「でも納得できません。そもそも、裏鏡水月は魔法を使っていたんですか? 魔法陣が一切出てきませんでしたけど」
さっきまでの戦いを思い返す。
澄男はいつも通り、火の球を錬成して全てを焼き尽くす、力の限り殴る蹴るという何のひねりもない戦いをしていたが、裏鏡もまた、よく分からない力で無理矢理に、それも一瞬でねじ伏せたようにしか見えなかった。
それは数ヶ月前に初めて出会った頃と大して変わらない。魔法を使うには必ず魔法陣を描く必要があるはずで、魔法陣を描かなければ魔法自体使えないはずだ。
魔法陣無しで、裏鏡は魔法を使ったとでも言うのだろうか。
思考の袋小路に入ってしまった御玲を悟ったのか、パオングは右手に乗ったままの二枚の魔法陣を畳むように消してみせた。
「そなたら人間のほとんどはまだ知らぬようだが、魔法陣というのは基本、味方と目される者以外が存在しうる場所で表示してはならない。何故だか分かるかな?」
「えっと……隙になるから、でしょうか」
「それもあるな。だがそれが主ではない。御玲殿、あの戦いを見ていて、裏鏡がいかなる魔法を使ったか。理解できたかな?」
「いえ……正直、何をしているのか皆目分からないというのが、恥ずかしながら感想ですが……」
「そう。まさしくそこである」
パオングは鼻を唸らせ、パァオング、と呟く。そして意気揚々と再び右手のひらに魔法陣を出現させた。
「よいか? 魔法陣とは情報だ。その魔法を発動するに必要な情報と、その魔法自体の情報……その全てが記述されている。それを敵の前で見せるとはすなわち、敵に自分の手の内を親切に教えるようなもの。相手が有利になるような情報を自ら晒すなど、その時点で対策されるか、最悪勝敗が決してしまうようなものぞ」
「い、言われてみればたしかにそうですが……そんなことできるんですか……? 魔法陣なんて、勝手に出現するものでは……」
「それは制御できていないだけである。魔法陣の非表示は、魔導師の基礎技量の一つぞ」
「では魔法の詠唱も……」
「敵の目前および敵地では、無言詠唱が原則である。呪文を叫ぶなど、敵に何の魔法を使うか教えるようなものであろう」
パオングの魔法談義に、気づけばただただなるほど、としか言えなくなっていた。
だから裏鏡はいつもいつも無言で、何の前振りもなく魔法を使ってくるのだろうか。正直、そう納得せざる得ない自分が少し悔しい。
「とはいえ無言詠唱の有用性は、相手の魔法への理解に左右される。あまり情報の隠匿にこだわると魔法の精度は低下する。相手と自分で魔法への理解に大きな差がある場合、隠したところで相手は理解できぬのだから、精度を優先した方がよいと考えた上で無言詠唱をあえてしないのも戦略の一つ。相手に理解できない魔法を目の前で使えば、それだけで一定の牽制効果が見込める故にな」
「魔法というのは、とても奥深いものなんですね……」
「この世界に存在する叡智の一つであるからな。その深淵を、片鱗でも手にするのは至難の業ぞ。だが……」
彼を品定めしているような濃い眼差しで、呆然と立ち尽くす裏鏡をじっと見つめる。
「奴の魔法戦術……まさか」
「パオングも気づきましたか」
唐突に己の世界に没入する二人。置いてけぼりを食らいたくないので、パオングの方へ視線を向ける。
「む? ふむ……はて、どう説明してやるべきか」
「できれば簡潔にお願いします」
「中々に無茶な注文である。まあいい。我は我欲の神であるからな、成し遂げてしんぜよう」
手のひらに白い魔法陣が浮き上がると、白く光る微粒子たちが魔法陣上に集まり、人の姿を模っていく。完成したそれは、裏鏡水月の体内を表した立体ホログラムのようなものだった。
「結論から述べると、奴は数多の魔法をあらかじめ体内に仕込み、それらを任意に具現化している。といったところである」
立体ホログラムで描かれた裏鏡の身体に青白い筋が、血管のように張り巡らされていく。その筋の中に様々な色をした魔法陣が血液のように循環する。
「体内で魔法を詠唱しているってことですか」
ホログラムを見ながら呟く。
裏鏡は澄男との戦いの中で一切詠唱をしていなかった。魔法陣を描いた様子もない。だとしたら体内で魔法を詠唱し、それを即座に放っているということなのだろうか。
「それではあの戦いを説明できない。既に詠唱済みの魔法を、任意に具現化しているのだ」
「可能なんですか、そんなこと……」
「理論上、不可能ではない。実際、我が魔道具``我欲の笛``も、同じ理論で創造したゆえにな。だが人類規格の肉体を媒体にするとなると、話は変わってくる」
ホログラムで構成された裏鏡の身体が青白く輝き始めると、ドロドロとホログラムの身体が溶け始める。まるで融点に達した金属のように、ホログラム裏鏡はただの液体へ姿を変えていく。
「我が見る限り、裏鏡が体内に有している魔法の数は膨大だ。魔法の数が多いほど、発動に必要な霊力と要求される制御技量は高くなるのは想像がつくと思うが、当然容量を超過する霊力量を体内に含有することはできぬ。超過した分は体組織の過活動を誘発させ、融解させるに至る」
「でもそうはなっていない……」
「うむ。ならば事実と合致させるにはどうすればいいか。単純な話、それだけの霊力量に耐えうる強固な肉体を獲得すればよい。肉体改造を経て体内霊力許容量を拡充すれば、あとは術者本人の霊力制御技量次第となる」
ドロドロに溶けたはずの裏鏡の身体が一瞬で再構築され、再び様々な色をした小さな魔法陣が、血液のように循環系を駆け巡る。
「で、ですが。そんな大それた肉体改造……可能なんですか。彼一人の力で」
率直な問いかけを投げてみる。
ホログラムを見ながらパオングの魔法講義を黙って聞いて、カラクリはあらかた理解した。だが疑問は、大量の魔法を抱えられるほどの肉体改造を、彼一人でできるのか。そこだけが拭えない。
パオングの話からして、その肉体改造とやらは絶対に少し体を弄る程度でできるものとは思えない。専門知識が無いため間違えているかもしれないが、少なくとも体の中身から何までごっそり変えるぐらいの、大規模な肉体改造をしないと実現できないような気がする。それも今の人類の技術では到底不可能な、オーバーテクノロジーで。
裏鏡水月は強大な戦闘力こそ持つが、所詮ただの個人にすぎない。
確かに大陸八暴閥の一角、裏鏡家の当主、四強の一人という盛大な肩書きを持った人物ではある。でもそれはあくまで肩書きだ。
流川家のようにバックヤードがあるのかもしれないが、今のところ彼以外に裏鏡家の関係者が存在するという情報は存在しない。
流川家すらも知らないだけ、という可能性も十分に考えられる。だがもしバックヤードがある前提で考えるとしたら、裏鏡水月、延いては裏鏡家そのものが、流川家と同等―――あるいはそれ以上の技術力を持っていることになる。
そんなことが、果たしてありえるだろうか。
「だからこその、事象操作であろう」
思考に耽け、やはりというべきか袋小路に入ってしまう御玲をよそに、パオングは長い鼻で頬を叩いてきた。
「裏鏡水月に関してわかっていることは一つ、超能力者であることだ。ならばこの戦いに備え、現実離れした超常的な肉体改造を、あらかじめ己に施していたとしてもありえぬ話ではあるまい」
「しかし裏鏡の超能力が何なのか、私たちには……」
「そなたらが超能力と呼ぶそれは、いわばその者の``身勝手``の結晶。特定の個のみが有することを許される、唯一無二の権能である。重要なのは全能性とその本質。それらを見定められなければ始まらぬ」
「ではパオングは、裏鏡水月の超能力をどう見定めているんですか」
「そこよな……」
パオングが珍しく歯切れの悪い、そして神妙な面差しで考え込む。いつも悠々自適に、全ての疑問に難無く答える姿しか見たことがなかっただけに、真剣に考え込む姿は言い知れぬ不安を募らせる。
「不甲斐ないことであるが……」
結論が出たのか。顔を上げるが、その表情は暗澹なものであった。
「あの少年の超能力だけは、この我をもってしてその深淵を視ること能わぬ……何が起きても、不思議に思わぬが吉であろう」
それは、いままであらゆる疑問に確実な助言を授けてくれたパオングに似つかわしくない、曖昧な答えであった。
現状、久三男や弥平と同等以上の智者の一人であるパオングをして、裏鏡の超能力の奥底を知ることはできない。これがどれほどの意味を持つのか、分からないわけがない。
パオングに分からないなら、もはやこの世界のほとんどの者が理解できないことを意味する。自分の拙い理解力など、天秤にかけるまでもない。まさに、純粋な意味で``不明``ということだ。
明確化できない、というさらに強い意味も込めて。
「まあ、もしかしたら超能力ですらない何か……という可能性も考えられますがね」
さっきまで沈黙していたあくのだいまおうが、少し薄暗くなった雰囲気を掻い潜って割り込んでくる。ふむ、と思考に沈むパオングをよそに目を丸くして立ち上がるが、あくのだいまおうは手で制する。
「あくまで仮説です。この世界には、魔法と精霊魔法、固有能力に超能力、そしてそれら全ての起源たる竜位魔法しか存在しない。そのどれにも属さない力となると、もはやこの世界の枠外にある、純粋なる超常の力……ということになりますからね」
「あなたが言うと仮説に聞こえません……」
「それはすみません。ただ可能性として念頭に入れておくことを、推奨しておきます」
モノクルの位置を細長い指で調整し、再び裏鏡の方へ向き直るあくのだいまおう。
今日は逐一話に割り込んできては、煮え切らない話を投げてくるのはなんなんだろうか。
この世界の枠外にある、純粋なる超常の力。もはやわけがわからない。現実離れというか、荒唐無稽。あくのだいまおうが言うのだから、ただただ出鱈目な妄想ではないのは確かだろうが、それでも彼の言葉でなければ、酔狂にも程がある話だと切って捨てていただろう。
もはやパオングの話だけでもキャパシティがはち切れそうなのに、これ以上わけのわからない要素が増えると今日聞いたこと全部忘れてしまいそうになる。
肝心の弥平や久三男は戦後処理でこの場におらず、パオングやあくのだいまおうの話を聞けるのが自分ぐらいしかいない今、裏鏡に関する話を理解するのは骨を粉砕する思いだ。
話を聞く、覚えるだけならまだいい。しかし理解するとなると専門外になってくる。
まあ、そんなのはただの言い訳にしかならないのだが。
「グダグダ魔法談義で花咲かせてるとこ悪りぃけどよぉ」
草叢の隅で排泄物を撒き散らす子熊のぬいぐるみナージは、気張りながら澄男の方へ首をくいっと何度も向けた。
「そろそろ地べたで糞間抜けにぶっ倒れてる我らが大将を回収しにいかねぇのか? 勝負ついたんだろ」
「ああ……そうですね。いきましょうか」
「待て待て。いまファイナルウンコを捻り出す」
ぶりり、と不快な音を出しながら茶色い例のアレを野に放つと、そこらへんにあった雑草でお尻を適当に拭き取り投げ捨て、んじゃいくかと真っ白な翼をはためかせる。それと同時に、カエルたちものそりと立ち上がり、皆で澄男たちの方へ駆け寄った。
「あ……? だれか、きた、のか……? クソ……マジでなんなんだよこれ……さっきから全然前が見えねぇ」
澄男はものの見事に地面に縫いつけられていた。彼を中心に蜘蛛の巣状のヒビが無数に入り、なおかつ地面は隕石でも降ったかのように、中心部がべっこりと凹んでいる。
澄男さま、と声をかけるが、なぜか澄男と目線が交わらない。ただきょろきょろと視線を目まぐるしく変え、手や足を使って尚も居場所を把握しようとしていた。まるで失明しているかのような有様だ。
「ふむ。盲目に加え、不活の魔法毒も受けているようだな。いま解呪する」
澄男の身体から一瞬だけ白い光の粒子が湧き出ると、何度も何度も瞬きし、辺りを見渡す。そしてようやく目線が交わる。
「あ、あれ。見えるようになった……それにさっきまで全然湧いてこなかった霊力が嘘みたいに……」
「そなたは魔法毒に侵され、身体能力が大きく制限されていたのだ。いま解呪魔法で解毒したところである」
「マホードク……? ええと、いわゆるデバフみたいなもんか」
平たく言えば、とパオングが告げる。
魔法毒に関しての知識も専門職に比べるべくもないほどしか持ち合わせていないが、常識レベルの話をするなら、魔法によって付与され、魔法でしか決して解毒できない毒。
この世に何種類か存在し、高名な魔導師にのみ扱うことができると言われている一種の災厄である。
魔法でしか治せず、解毒しない限り効果が死ぬまで永続する凶悪さから、かつてより``不治の毒``と言われ、扱うことのできる魔道師とともに大衆からは強く恐れられてきた。
確か盲目は言葉どおり視界が真っ暗闇になってしまう毒。不活は霊力に関する全ての能力が低下する毒と、当主候補時代に勉強したことがあったか。
パオングに頭を支えられ、ゆっくりと立ち上がった澄男は身体の節々を調整した後、深く肩を落とした。
俯いたまま何も言わない彼をよそに、ずっと沈黙を守っていた裏鏡が身を翻す。
「待って」
怒気を込めた声音が一瞬、辺りの空気を強張らせる。
裏鏡は歩みを止め、ゆっくりと振り返る。ブラックホールを彷彿とさせる瞳が、容赦なくこちらへ向けられた。
「身勝手に喧嘩を売ってきて、庭を荒らして、私たちの予定を狂わせておいて、一言もなし? 勝ちさえすればもうどうだっていいって、そう思ってるの?」
敬語を投げ捨て、負けじとその瞳から放たれる眼光に食らいつく。
もはや敗者に興味はない。そう言っているように思える背中が、神経を逆撫でするのだ。このまま彼を帰してしまっていいものか、と。
確かに澄男は負けた。決着などわざわざ詳しく語るべくもない。しかし裏鏡の理不尽な振る舞いも、看過されるべきものではないはずだ。
元より澄男に裏鏡と戦う理由は既にない。それなのに裏鏡は己の暴威を誇示し、無理矢理に戦わなければならない状況を作り出した。
戦う理由などありはしないのに、戦わされた。なら―――。
「私の主人は、まだ負けてない」
目を細め、しかしどこか興味深げにこちらへ向き直る裏鏡をよそに、澄男は目を丸くして、はぁ? と叫ぶ。いや俺負けたじゃん、見てなかったのかよ。と台詞が顔に書いてあるが、そんなことは知ったことではない。
「確かに澄男さまは負けた。でもこれって、いわばただの喧嘩でしょ? 試験じゃあるまいし、こんな喧嘩で澄男さまとの強弱を決めるなんて馬鹿げてるわ。そう思わない?」
「負け惜しみか、雑兵」
「それを言うならあんたもよ。あんたは一度、澄男さまに白星を預けて撤退した。あんた言ってたわよね? 撤退とはすなわち敗走だって。だから再戦を申し込んだ。だったら次は、こっちから再戦を申し込む権利が発生するはずよ」
「お、おいお前、さっきから何言って」
「あなたは黙ってて!」
「んぉ!? あ、はい」
肩を鷲掴んでくる澄男を振りほどき、強く睨んで諌める。殴られると思ったが、彼は意外にも気圧され、まるで子供のように小さくなり後ずさった。
意外と効いたことに内心驚きながらも、黙ったままの裏鏡へと視線を戻す。
「面白い。そうでなくてはつまらんというもの」
「なんですって?」
「好きにするがいい。俺はいつでも相手をしてやる。勝てる見込みができたなら、俺の下へ来るがいい」
「その一方的に自分の言いたいことだけ言うのやめて。対話になってないわ」
「俺と対等になりたくば、俺から力づくで勝利を奪ってみせよ。それまで、俺はお前たちより上位の存在だと知ることだ」
「随分と傲慢ね。上か下か、そんなのでしか人を見れないなんて惨めだわ」
「強いか、弱いか。それは摂理だ。強い者がより上位に、弱い者はより下位に座する。その当然の理を解せぬと、お前はいうのか?」
「ええ、解せないわ。だからこの戦いで、私の主人を勝手に推し量らないで。私の主人は、そして私たちは、これから前へ進むんだから」
「負け犬の遠吠えも、ここまで吠えられると立派なものだな」
「ええ立派よ。当たり前じゃない。負け犬だって……意地ってもんがあるんだから!!」
庭に響くほどの大声。心の奥底から湧き出てくる激情が霊力となって、霊力が氷となって、地面に具現化する。
半径数百メートルぐらいになろうか。一面は一瞬にして、氷と霜だけの世界に様変わりする。
そう、この戦いは裏鏡の勝ちだ。白星は見事に奪い去られ、代わりに黒星を擦りつけられた。
たとえどんな理由であっても、どんな理不尽な状況であっても負けは負け。敗者が何を言っても立場がないのは、戦争であろうと喧嘩であろうと変わらない。
まさしく立派な負け犬の遠吠えだ。敗者の言い分など、どれだけ正統で筋が通っていようと価値はない。
でも、だからなんだというのか。
弱肉強食は確かに自然の摂理だが、それが果たして人間にとって重要な摂理と言えるのか。
今は負けていても、次は勝てるかもしれない。擦りつけられた黒星を、裏鏡に擦りつけ返すことだって不可能ではないはずだ。それを「お前は俺より弱く、俺はお前より強い」などという空虚な論理で、可能性を零だと勝手に見込むのは早計ではないか。
生殺与奪が跋扈する魑魅魍魎なら、弱い種は強い種に食われて淘汰されてもおかしくはない。しかし人間はどうなのか。今が弱いなら、もうそれで可能性は皆無なのか。
そんなことはない。今は負けても、次は勝てる可能性は零ではない。限りなく低くても、決して零ではないのだ。
気がつけば右半身が凍っていた。同時に、裏鏡の身体も半分程度が凍結していたが当然というべきか、まったく意に介していない。むしろ半身が凍っているにもかかわらず、無表情で歩み寄ってくる。
思ったことを言ったら、胸中に渦巻く言いようのない怒りの正体が、ようやくハッキリした。
流川澄男の可能性、ひいては澄男を取り巻く人々の可能性。それを勝手に決めつけられたことが、なによりも納得いかなかったのだ。
確かに裏鏡は強い。果てしなく、その強さの底を見通すことができないほどに。でもだからといって、神のように全てを決める権利は絶対ない。
いや仮に神であったとしても、そんな勝手極まりない決めつけには全力で抗いたい。決めるのは強大な一個人ではなく、各々本人たちの意志であるべきだろうから。
辺りを支配する不気味な静寂。裏鏡との距離は目と鼻の先に迫った。ブラックホールのような瞳の中に今にも吸い込まれてしまいそうな不快感が、全身を舐め回す。
足から頭にかけて肌がぞわぞわと泡立ち、心拍数が跳ね上がる。まるでさっき自分の心の中で吐露したありとあらゆる言葉を的確に読み取るような、心臓を撫でられるような感覚が走り、胸の中心にかけて血の気が引いていく冷たさが、寒気となってのしかかる。
「約束……破る気?」
言い知れない不快感に晒され、今にも凝縮し、反動で一気に爆発しそうな心臓。
左胸が気持ち悪くて、思わず手で押さえる。そんなことをしても意味がないのは理屈では分かっているが、彼が距離を詰める度、彼の瞳が映す度、脈拍は上がり、鼓動は大きくなり、心臓が痛くなる。
彼から距離を取ろうとするが身体が何故か完全に麻痺し、全く動く気配がない。まるで何かに縛り上げられているように、ただ小刻みに震わせることしかできない。
何かの魔法か、それとも超能力か。いずれにしろ、裏鏡は澄男との約束で澄男以外の皆には手が出せないはず。それを反故にしたとなれば、本当の反則だ。
約束を守る保証などありはしなかったが、もしそうなら最悪の状況と言える。戦って勝てる相手ではない、どうする―――。
「見くびられたものだ」
銀髪の隙間から覗く暗黒の瞳が射抜いてくる。一瞬、呼吸ができなくなった。
「あのときは家格でしか己を誇示できぬ無能と評したが……あの方の言うとおり、全ての可能性に目を向けておくべきだったな」
「あの方……?」
「その屈託のない、気高くも青き瞳に免じ、今までの評価を訂正してやろう。お前が、俺が観測した先にあるお前の沿線上に在る限り、お前は決して無能ではない」
当然というべきか、問いかけには答えてはくれない。ブラックホールのような暗黒の瞳が、冷酷にも睥睨しながら上位者の如き言葉を羅列するのみ。
剣呑とした雰囲気は薄くなったものの、その瞳から発せられる威圧感はいまだ全身を震わせる。
「ではさらばだ、今後のお前たちに期待する」
裏鏡の全身が銀色一色に染まった。
液状化した鏡のようになったその物体は、形を保ちながら断片と化してその姿を変えていく。陽の光を乱反射させながら鏡の断片に形態変化する様は、敵ながら思わず見惚れてしまうほどだ。
そのままずっと目が離せなかったが、身体を構築していた鏡の断片は、ついに散り散りとなって四方八方へ散らばる。
全身を押さえつけていた威圧感、拘束感は消え失せた瞬間、辺りから白銀の暴威が去ったことに、ようやく胸を撫で下ろしたのだった。
あくのだいまおうとパオング、カエルたちを除いて、御玲だけがその呆気ない勝敗に、呆然としていた。
目を閉じて一人思考に耽っているパオングの肩を叩く。そう問いかけることしかできない己を恥じながら、地面に倒れふす主人と、呆然と立ち尽くす銀髪の少年を見つめた。
最初は澄男が圧倒しているように見えていた。それは澄男が佳霖の戦いを経て成長したからだと思っていたのだが、そう至った次の瞬間、澄男は一人何も無いはずの荒地をぐるぐるとその場で回り始めたと思いきや、空気を殴る蹴るといった意味不明な行動をし始め、そんな澄男から数メートルほど離れた所から呆然と立ち尽くす裏鏡が何やらブツブツと澄男に話しかけているという理解しがたい状況が数分続いた。
だが、それも束の間。
澄男との距離、その数メートルをまるで転移でもしたのかというくらいの一瞬のうちに間合いを詰めたと思うと、地面に巨大な蜘蛛の巣ができるほどの大威力で、澄男はなすすべもなく地面に叩きつけられてしまったのだ。
とにかく起こった全ての出来事が、まるで流れる水のように一瞬だった。一つ一つを認識し、理解する。その作業が、何一つ追いつかないほどに。
佳霖という化け物を死に物狂いで倒した男としては、似つかわしくない決着だった。
「ふむ……簡単に結論から述べるのであれば、澄男殿は魔法によって倒された、となるであろうな」
パオングはようやく目を開き、長い鼻をうねらせる。
「澄男さまを一瞬で倒す魔法なんて、あると思えませんが……」
「そんな大それた魔法など使っておらぬ。奴がこの戦いにおいて行ったことは、魔法を扱う上で極めて基礎的な戦術だ」
「極めて基礎的な戦術……?」
「``多重行使``である」
御玲へと体の向きごと変え、丸い手の平を御玲に見せる。そこに二枚の真っ白な魔法陣が現れた。
「元来、魔法というものは重ねがけが基礎である。複数の魔法を適材適所、臨機応変に、なおかつあらゆる局面を想定した上で、対応を徹底する。今まで我が魔法を使うとき、複数の魔法陣が現れたことの方が多かったであろう?」
「そういえば……何の魔法を使っていたかはわかりませんでしたけど……」
「あれが本来の使い方である。特に無系は、単体使用することなどほとんどない。あるとすれば``顕現``ぐらいだが、それも本来であれば、あらゆる対策を施した上で使うのが定石である」
「転移を何者かに阻止される場合を想定しなくてはなりませんからね。まあパオングほどにもなると、少し大雑把に使っても問題ないのですが」
パオングとの会話にあくのだいまおうが割り込んでくる。
たしかに、今まで無系を一種類しか使わなかったときは、あまり良い結果には繋がらなかった。たとえばヴァルヴァリオン遠征時、``隠匿``で新設大教会に忍び込んだとき、十寺に所在があっさりばれてしまったことだ。
十寺曰く``魔法探知``を使っていたからわかったなどと言っていたが、あのとき``隠匿``ならば誰にも悟られないと思い込んでいたために、``隠匿``しか使わず、周囲を魔法で警戒するなどは一切しなかった。
もしもやっていたならば、十寺の所在をこちらが先に見つけられたかもしれない。それができなかったのは、あらゆる局面を想定し、魔法を行使しなかったためだ。
「でも納得できません。そもそも、裏鏡水月は魔法を使っていたんですか? 魔法陣が一切出てきませんでしたけど」
さっきまでの戦いを思い返す。
澄男はいつも通り、火の球を錬成して全てを焼き尽くす、力の限り殴る蹴るという何のひねりもない戦いをしていたが、裏鏡もまた、よく分からない力で無理矢理に、それも一瞬でねじ伏せたようにしか見えなかった。
それは数ヶ月前に初めて出会った頃と大して変わらない。魔法を使うには必ず魔法陣を描く必要があるはずで、魔法陣を描かなければ魔法自体使えないはずだ。
魔法陣無しで、裏鏡は魔法を使ったとでも言うのだろうか。
思考の袋小路に入ってしまった御玲を悟ったのか、パオングは右手に乗ったままの二枚の魔法陣を畳むように消してみせた。
「そなたら人間のほとんどはまだ知らぬようだが、魔法陣というのは基本、味方と目される者以外が存在しうる場所で表示してはならない。何故だか分かるかな?」
「えっと……隙になるから、でしょうか」
「それもあるな。だがそれが主ではない。御玲殿、あの戦いを見ていて、裏鏡がいかなる魔法を使ったか。理解できたかな?」
「いえ……正直、何をしているのか皆目分からないというのが、恥ずかしながら感想ですが……」
「そう。まさしくそこである」
パオングは鼻を唸らせ、パァオング、と呟く。そして意気揚々と再び右手のひらに魔法陣を出現させた。
「よいか? 魔法陣とは情報だ。その魔法を発動するに必要な情報と、その魔法自体の情報……その全てが記述されている。それを敵の前で見せるとはすなわち、敵に自分の手の内を親切に教えるようなもの。相手が有利になるような情報を自ら晒すなど、その時点で対策されるか、最悪勝敗が決してしまうようなものぞ」
「い、言われてみればたしかにそうですが……そんなことできるんですか……? 魔法陣なんて、勝手に出現するものでは……」
「それは制御できていないだけである。魔法陣の非表示は、魔導師の基礎技量の一つぞ」
「では魔法の詠唱も……」
「敵の目前および敵地では、無言詠唱が原則である。呪文を叫ぶなど、敵に何の魔法を使うか教えるようなものであろう」
パオングの魔法談義に、気づけばただただなるほど、としか言えなくなっていた。
だから裏鏡はいつもいつも無言で、何の前振りもなく魔法を使ってくるのだろうか。正直、そう納得せざる得ない自分が少し悔しい。
「とはいえ無言詠唱の有用性は、相手の魔法への理解に左右される。あまり情報の隠匿にこだわると魔法の精度は低下する。相手と自分で魔法への理解に大きな差がある場合、隠したところで相手は理解できぬのだから、精度を優先した方がよいと考えた上で無言詠唱をあえてしないのも戦略の一つ。相手に理解できない魔法を目の前で使えば、それだけで一定の牽制効果が見込める故にな」
「魔法というのは、とても奥深いものなんですね……」
「この世界に存在する叡智の一つであるからな。その深淵を、片鱗でも手にするのは至難の業ぞ。だが……」
彼を品定めしているような濃い眼差しで、呆然と立ち尽くす裏鏡をじっと見つめる。
「奴の魔法戦術……まさか」
「パオングも気づきましたか」
唐突に己の世界に没入する二人。置いてけぼりを食らいたくないので、パオングの方へ視線を向ける。
「む? ふむ……はて、どう説明してやるべきか」
「できれば簡潔にお願いします」
「中々に無茶な注文である。まあいい。我は我欲の神であるからな、成し遂げてしんぜよう」
手のひらに白い魔法陣が浮き上がると、白く光る微粒子たちが魔法陣上に集まり、人の姿を模っていく。完成したそれは、裏鏡水月の体内を表した立体ホログラムのようなものだった。
「結論から述べると、奴は数多の魔法をあらかじめ体内に仕込み、それらを任意に具現化している。といったところである」
立体ホログラムで描かれた裏鏡の身体に青白い筋が、血管のように張り巡らされていく。その筋の中に様々な色をした魔法陣が血液のように循環する。
「体内で魔法を詠唱しているってことですか」
ホログラムを見ながら呟く。
裏鏡は澄男との戦いの中で一切詠唱をしていなかった。魔法陣を描いた様子もない。だとしたら体内で魔法を詠唱し、それを即座に放っているということなのだろうか。
「それではあの戦いを説明できない。既に詠唱済みの魔法を、任意に具現化しているのだ」
「可能なんですか、そんなこと……」
「理論上、不可能ではない。実際、我が魔道具``我欲の笛``も、同じ理論で創造したゆえにな。だが人類規格の肉体を媒体にするとなると、話は変わってくる」
ホログラムで構成された裏鏡の身体が青白く輝き始めると、ドロドロとホログラムの身体が溶け始める。まるで融点に達した金属のように、ホログラム裏鏡はただの液体へ姿を変えていく。
「我が見る限り、裏鏡が体内に有している魔法の数は膨大だ。魔法の数が多いほど、発動に必要な霊力と要求される制御技量は高くなるのは想像がつくと思うが、当然容量を超過する霊力量を体内に含有することはできぬ。超過した分は体組織の過活動を誘発させ、融解させるに至る」
「でもそうはなっていない……」
「うむ。ならば事実と合致させるにはどうすればいいか。単純な話、それだけの霊力量に耐えうる強固な肉体を獲得すればよい。肉体改造を経て体内霊力許容量を拡充すれば、あとは術者本人の霊力制御技量次第となる」
ドロドロに溶けたはずの裏鏡の身体が一瞬で再構築され、再び様々な色をした小さな魔法陣が、血液のように循環系を駆け巡る。
「で、ですが。そんな大それた肉体改造……可能なんですか。彼一人の力で」
率直な問いかけを投げてみる。
ホログラムを見ながらパオングの魔法講義を黙って聞いて、カラクリはあらかた理解した。だが疑問は、大量の魔法を抱えられるほどの肉体改造を、彼一人でできるのか。そこだけが拭えない。
パオングの話からして、その肉体改造とやらは絶対に少し体を弄る程度でできるものとは思えない。専門知識が無いため間違えているかもしれないが、少なくとも体の中身から何までごっそり変えるぐらいの、大規模な肉体改造をしないと実現できないような気がする。それも今の人類の技術では到底不可能な、オーバーテクノロジーで。
裏鏡水月は強大な戦闘力こそ持つが、所詮ただの個人にすぎない。
確かに大陸八暴閥の一角、裏鏡家の当主、四強の一人という盛大な肩書きを持った人物ではある。でもそれはあくまで肩書きだ。
流川家のようにバックヤードがあるのかもしれないが、今のところ彼以外に裏鏡家の関係者が存在するという情報は存在しない。
流川家すらも知らないだけ、という可能性も十分に考えられる。だがもしバックヤードがある前提で考えるとしたら、裏鏡水月、延いては裏鏡家そのものが、流川家と同等―――あるいはそれ以上の技術力を持っていることになる。
そんなことが、果たしてありえるだろうか。
「だからこその、事象操作であろう」
思考に耽け、やはりというべきか袋小路に入ってしまう御玲をよそに、パオングは長い鼻で頬を叩いてきた。
「裏鏡水月に関してわかっていることは一つ、超能力者であることだ。ならばこの戦いに備え、現実離れした超常的な肉体改造を、あらかじめ己に施していたとしてもありえぬ話ではあるまい」
「しかし裏鏡の超能力が何なのか、私たちには……」
「そなたらが超能力と呼ぶそれは、いわばその者の``身勝手``の結晶。特定の個のみが有することを許される、唯一無二の権能である。重要なのは全能性とその本質。それらを見定められなければ始まらぬ」
「ではパオングは、裏鏡水月の超能力をどう見定めているんですか」
「そこよな……」
パオングが珍しく歯切れの悪い、そして神妙な面差しで考え込む。いつも悠々自適に、全ての疑問に難無く答える姿しか見たことがなかっただけに、真剣に考え込む姿は言い知れぬ不安を募らせる。
「不甲斐ないことであるが……」
結論が出たのか。顔を上げるが、その表情は暗澹なものであった。
「あの少年の超能力だけは、この我をもってしてその深淵を視ること能わぬ……何が起きても、不思議に思わぬが吉であろう」
それは、いままであらゆる疑問に確実な助言を授けてくれたパオングに似つかわしくない、曖昧な答えであった。
現状、久三男や弥平と同等以上の智者の一人であるパオングをして、裏鏡の超能力の奥底を知ることはできない。これがどれほどの意味を持つのか、分からないわけがない。
パオングに分からないなら、もはやこの世界のほとんどの者が理解できないことを意味する。自分の拙い理解力など、天秤にかけるまでもない。まさに、純粋な意味で``不明``ということだ。
明確化できない、というさらに強い意味も込めて。
「まあ、もしかしたら超能力ですらない何か……という可能性も考えられますがね」
さっきまで沈黙していたあくのだいまおうが、少し薄暗くなった雰囲気を掻い潜って割り込んでくる。ふむ、と思考に沈むパオングをよそに目を丸くして立ち上がるが、あくのだいまおうは手で制する。
「あくまで仮説です。この世界には、魔法と精霊魔法、固有能力に超能力、そしてそれら全ての起源たる竜位魔法しか存在しない。そのどれにも属さない力となると、もはやこの世界の枠外にある、純粋なる超常の力……ということになりますからね」
「あなたが言うと仮説に聞こえません……」
「それはすみません。ただ可能性として念頭に入れておくことを、推奨しておきます」
モノクルの位置を細長い指で調整し、再び裏鏡の方へ向き直るあくのだいまおう。
今日は逐一話に割り込んできては、煮え切らない話を投げてくるのはなんなんだろうか。
この世界の枠外にある、純粋なる超常の力。もはやわけがわからない。現実離れというか、荒唐無稽。あくのだいまおうが言うのだから、ただただ出鱈目な妄想ではないのは確かだろうが、それでも彼の言葉でなければ、酔狂にも程がある話だと切って捨てていただろう。
もはやパオングの話だけでもキャパシティがはち切れそうなのに、これ以上わけのわからない要素が増えると今日聞いたこと全部忘れてしまいそうになる。
肝心の弥平や久三男は戦後処理でこの場におらず、パオングやあくのだいまおうの話を聞けるのが自分ぐらいしかいない今、裏鏡に関する話を理解するのは骨を粉砕する思いだ。
話を聞く、覚えるだけならまだいい。しかし理解するとなると専門外になってくる。
まあ、そんなのはただの言い訳にしかならないのだが。
「グダグダ魔法談義で花咲かせてるとこ悪りぃけどよぉ」
草叢の隅で排泄物を撒き散らす子熊のぬいぐるみナージは、気張りながら澄男の方へ首をくいっと何度も向けた。
「そろそろ地べたで糞間抜けにぶっ倒れてる我らが大将を回収しにいかねぇのか? 勝負ついたんだろ」
「ああ……そうですね。いきましょうか」
「待て待て。いまファイナルウンコを捻り出す」
ぶりり、と不快な音を出しながら茶色い例のアレを野に放つと、そこらへんにあった雑草でお尻を適当に拭き取り投げ捨て、んじゃいくかと真っ白な翼をはためかせる。それと同時に、カエルたちものそりと立ち上がり、皆で澄男たちの方へ駆け寄った。
「あ……? だれか、きた、のか……? クソ……マジでなんなんだよこれ……さっきから全然前が見えねぇ」
澄男はものの見事に地面に縫いつけられていた。彼を中心に蜘蛛の巣状のヒビが無数に入り、なおかつ地面は隕石でも降ったかのように、中心部がべっこりと凹んでいる。
澄男さま、と声をかけるが、なぜか澄男と目線が交わらない。ただきょろきょろと視線を目まぐるしく変え、手や足を使って尚も居場所を把握しようとしていた。まるで失明しているかのような有様だ。
「ふむ。盲目に加え、不活の魔法毒も受けているようだな。いま解呪する」
澄男の身体から一瞬だけ白い光の粒子が湧き出ると、何度も何度も瞬きし、辺りを見渡す。そしてようやく目線が交わる。
「あ、あれ。見えるようになった……それにさっきまで全然湧いてこなかった霊力が嘘みたいに……」
「そなたは魔法毒に侵され、身体能力が大きく制限されていたのだ。いま解呪魔法で解毒したところである」
「マホードク……? ええと、いわゆるデバフみたいなもんか」
平たく言えば、とパオングが告げる。
魔法毒に関しての知識も専門職に比べるべくもないほどしか持ち合わせていないが、常識レベルの話をするなら、魔法によって付与され、魔法でしか決して解毒できない毒。
この世に何種類か存在し、高名な魔導師にのみ扱うことができると言われている一種の災厄である。
魔法でしか治せず、解毒しない限り効果が死ぬまで永続する凶悪さから、かつてより``不治の毒``と言われ、扱うことのできる魔道師とともに大衆からは強く恐れられてきた。
確か盲目は言葉どおり視界が真っ暗闇になってしまう毒。不活は霊力に関する全ての能力が低下する毒と、当主候補時代に勉強したことがあったか。
パオングに頭を支えられ、ゆっくりと立ち上がった澄男は身体の節々を調整した後、深く肩を落とした。
俯いたまま何も言わない彼をよそに、ずっと沈黙を守っていた裏鏡が身を翻す。
「待って」
怒気を込めた声音が一瞬、辺りの空気を強張らせる。
裏鏡は歩みを止め、ゆっくりと振り返る。ブラックホールを彷彿とさせる瞳が、容赦なくこちらへ向けられた。
「身勝手に喧嘩を売ってきて、庭を荒らして、私たちの予定を狂わせておいて、一言もなし? 勝ちさえすればもうどうだっていいって、そう思ってるの?」
敬語を投げ捨て、負けじとその瞳から放たれる眼光に食らいつく。
もはや敗者に興味はない。そう言っているように思える背中が、神経を逆撫でするのだ。このまま彼を帰してしまっていいものか、と。
確かに澄男は負けた。決着などわざわざ詳しく語るべくもない。しかし裏鏡の理不尽な振る舞いも、看過されるべきものではないはずだ。
元より澄男に裏鏡と戦う理由は既にない。それなのに裏鏡は己の暴威を誇示し、無理矢理に戦わなければならない状況を作り出した。
戦う理由などありはしないのに、戦わされた。なら―――。
「私の主人は、まだ負けてない」
目を細め、しかしどこか興味深げにこちらへ向き直る裏鏡をよそに、澄男は目を丸くして、はぁ? と叫ぶ。いや俺負けたじゃん、見てなかったのかよ。と台詞が顔に書いてあるが、そんなことは知ったことではない。
「確かに澄男さまは負けた。でもこれって、いわばただの喧嘩でしょ? 試験じゃあるまいし、こんな喧嘩で澄男さまとの強弱を決めるなんて馬鹿げてるわ。そう思わない?」
「負け惜しみか、雑兵」
「それを言うならあんたもよ。あんたは一度、澄男さまに白星を預けて撤退した。あんた言ってたわよね? 撤退とはすなわち敗走だって。だから再戦を申し込んだ。だったら次は、こっちから再戦を申し込む権利が発生するはずよ」
「お、おいお前、さっきから何言って」
「あなたは黙ってて!」
「んぉ!? あ、はい」
肩を鷲掴んでくる澄男を振りほどき、強く睨んで諌める。殴られると思ったが、彼は意外にも気圧され、まるで子供のように小さくなり後ずさった。
意外と効いたことに内心驚きながらも、黙ったままの裏鏡へと視線を戻す。
「面白い。そうでなくてはつまらんというもの」
「なんですって?」
「好きにするがいい。俺はいつでも相手をしてやる。勝てる見込みができたなら、俺の下へ来るがいい」
「その一方的に自分の言いたいことだけ言うのやめて。対話になってないわ」
「俺と対等になりたくば、俺から力づくで勝利を奪ってみせよ。それまで、俺はお前たちより上位の存在だと知ることだ」
「随分と傲慢ね。上か下か、そんなのでしか人を見れないなんて惨めだわ」
「強いか、弱いか。それは摂理だ。強い者がより上位に、弱い者はより下位に座する。その当然の理を解せぬと、お前はいうのか?」
「ええ、解せないわ。だからこの戦いで、私の主人を勝手に推し量らないで。私の主人は、そして私たちは、これから前へ進むんだから」
「負け犬の遠吠えも、ここまで吠えられると立派なものだな」
「ええ立派よ。当たり前じゃない。負け犬だって……意地ってもんがあるんだから!!」
庭に響くほどの大声。心の奥底から湧き出てくる激情が霊力となって、霊力が氷となって、地面に具現化する。
半径数百メートルぐらいになろうか。一面は一瞬にして、氷と霜だけの世界に様変わりする。
そう、この戦いは裏鏡の勝ちだ。白星は見事に奪い去られ、代わりに黒星を擦りつけられた。
たとえどんな理由であっても、どんな理不尽な状況であっても負けは負け。敗者が何を言っても立場がないのは、戦争であろうと喧嘩であろうと変わらない。
まさしく立派な負け犬の遠吠えだ。敗者の言い分など、どれだけ正統で筋が通っていようと価値はない。
でも、だからなんだというのか。
弱肉強食は確かに自然の摂理だが、それが果たして人間にとって重要な摂理と言えるのか。
今は負けていても、次は勝てるかもしれない。擦りつけられた黒星を、裏鏡に擦りつけ返すことだって不可能ではないはずだ。それを「お前は俺より弱く、俺はお前より強い」などという空虚な論理で、可能性を零だと勝手に見込むのは早計ではないか。
生殺与奪が跋扈する魑魅魍魎なら、弱い種は強い種に食われて淘汰されてもおかしくはない。しかし人間はどうなのか。今が弱いなら、もうそれで可能性は皆無なのか。
そんなことはない。今は負けても、次は勝てる可能性は零ではない。限りなく低くても、決して零ではないのだ。
気がつけば右半身が凍っていた。同時に、裏鏡の身体も半分程度が凍結していたが当然というべきか、まったく意に介していない。むしろ半身が凍っているにもかかわらず、無表情で歩み寄ってくる。
思ったことを言ったら、胸中に渦巻く言いようのない怒りの正体が、ようやくハッキリした。
流川澄男の可能性、ひいては澄男を取り巻く人々の可能性。それを勝手に決めつけられたことが、なによりも納得いかなかったのだ。
確かに裏鏡は強い。果てしなく、その強さの底を見通すことができないほどに。でもだからといって、神のように全てを決める権利は絶対ない。
いや仮に神であったとしても、そんな勝手極まりない決めつけには全力で抗いたい。決めるのは強大な一個人ではなく、各々本人たちの意志であるべきだろうから。
辺りを支配する不気味な静寂。裏鏡との距離は目と鼻の先に迫った。ブラックホールのような瞳の中に今にも吸い込まれてしまいそうな不快感が、全身を舐め回す。
足から頭にかけて肌がぞわぞわと泡立ち、心拍数が跳ね上がる。まるでさっき自分の心の中で吐露したありとあらゆる言葉を的確に読み取るような、心臓を撫でられるような感覚が走り、胸の中心にかけて血の気が引いていく冷たさが、寒気となってのしかかる。
「約束……破る気?」
言い知れない不快感に晒され、今にも凝縮し、反動で一気に爆発しそうな心臓。
左胸が気持ち悪くて、思わず手で押さえる。そんなことをしても意味がないのは理屈では分かっているが、彼が距離を詰める度、彼の瞳が映す度、脈拍は上がり、鼓動は大きくなり、心臓が痛くなる。
彼から距離を取ろうとするが身体が何故か完全に麻痺し、全く動く気配がない。まるで何かに縛り上げられているように、ただ小刻みに震わせることしかできない。
何かの魔法か、それとも超能力か。いずれにしろ、裏鏡は澄男との約束で澄男以外の皆には手が出せないはず。それを反故にしたとなれば、本当の反則だ。
約束を守る保証などありはしなかったが、もしそうなら最悪の状況と言える。戦って勝てる相手ではない、どうする―――。
「見くびられたものだ」
銀髪の隙間から覗く暗黒の瞳が射抜いてくる。一瞬、呼吸ができなくなった。
「あのときは家格でしか己を誇示できぬ無能と評したが……あの方の言うとおり、全ての可能性に目を向けておくべきだったな」
「あの方……?」
「その屈託のない、気高くも青き瞳に免じ、今までの評価を訂正してやろう。お前が、俺が観測した先にあるお前の沿線上に在る限り、お前は決して無能ではない」
当然というべきか、問いかけには答えてはくれない。ブラックホールのような暗黒の瞳が、冷酷にも睥睨しながら上位者の如き言葉を羅列するのみ。
剣呑とした雰囲気は薄くなったものの、その瞳から発せられる威圧感はいまだ全身を震わせる。
「ではさらばだ、今後のお前たちに期待する」
裏鏡の全身が銀色一色に染まった。
液状化した鏡のようになったその物体は、形を保ちながら断片と化してその姿を変えていく。陽の光を乱反射させながら鏡の断片に形態変化する様は、敵ながら思わず見惚れてしまうほどだ。
そのままずっと目が離せなかったが、身体を構築していた鏡の断片は、ついに散り散りとなって四方八方へ散らばる。
全身を押さえつけていた威圧感、拘束感は消え失せた瞬間、辺りから白銀の暴威が去ったことに、ようやく胸を撫で下ろしたのだった。
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