電車内珍事件

牛酪 落花生

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電車内珍事件

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ガタン、ガタン
此処は電車内、私はマスク着用をしてる
乗ってる人々もマスクをしている。
ジャックオーランタンにフランケンシュタイン、ミイラ男に狼男
突然、ガタンッガタンッ
電車内に響き渡る謎の音が気になる
電車内を見渡すが特に異常は無かった
電車の走る音だったみたいだ。
この時間は満員とはいかなくとも結構の人数
電車内に居て席も全て埋まっている
私は扉の近くの手すりに掴まっていた
「あのぉ~優先席ですよね?」
と腰を摩って辛そうなご老人がライオンのマスクを着用している男に話しかけた
優先席は端から順にご高齢達が座っていたが、一番、扉に近い優先席だけはライオンのマスクを着用していた男の人が座っていた
「あ?別に良くね?座りテェヤツいねぇだろ」
聞いていられない、不常識極まり無い
私は二人の近くに寄った
「腰を痛そうにしてるじゃないですか
ご高齢に見てとれますし、アナタ自身が何とも無ければ席譲ってあげて下さい」
どうだ、コレで譲るだろ
「あ?なんだテメェ?ふざけたマスク付けやがって!俺はこう見えて!腹痛なんだよ!
朝から腹痛で!立っていらねぇんだよ!」
カチンときた、私のマスクを馬鹿にされた事にもだ。
それに大声で叫んでる時点で元気な証だ
「腹痛でしたら大きな声は控えるべきです」
「あ?コレが俺の!最大限の努力と配慮なんだよっ」
彼はそう言うと、電車が止まった
彼の声量で次の駅に着くアナウンスが聞こえなかったらしい
彼は電車が止まると舌打ちするなり悪態をついて電車から降りてった、其れと同時に数名の人が電車に乗った
内心、あの男には不幸になれと思った。
電車が次の行こうと動くとアナウンスが流れた。
「ありがとうねぇ」
と言って腰に痛そうにしていたご高齢は
優先席に座る一件落着だ。
私は扉の近くの手すりにもう一度捕まる。
しかし、私のマスクを馬鹿にしたあのライオンのマスクに関心しては本当に地獄に落ちて欲しい。
私のこのマスクは、夜になると光る優れもので通販サイトなどで好評発売中だ。
発売当初こそはそこまで話題などにはならなかったが、徐々に口コミで広がっていき
話題が沸騰した。テレビでも広く取り上げられた。今、流行りのマスクだ。
名前は「DXスター」で名前の通り星形に型取られたマスクだ。
コレの良さは可愛いだけじゃなく
夜間時の防犯対策にもなる。
あの男は時代に遅れた人間だったんだ。
外を眺めると、時々、暗くなり「DXスター」を着用してる私の姿が反射する
うん、やっぱり可愛い。
やがて、私の目的地に着いて電車から降りようとすると、扉の前でさっきのご高齢が現れ
「ほんと、ありがとね、アナタのそのマスク可愛いねぇ‥ワシのとは大違いだ」
とそう言って足取り重くまた、優先席に戻っていった。
言葉の真意を確実に理解するのに時間を有した。そうこうする内に電車の扉は閉まり
やっと真意が分かった時には電車は移動してった。
あの、ご高齢はマスクだ。
まんまと、騙された。
だけど、不思議といい事した気分でそんなに
悔しい気分でも無い。其れは自分のマスクを褒められた事と関係があるのかは分からないけれど、きっと感謝は本当にされていたんだと思う。腰はホントに痛そうだったし。
思い詰める事はない。
よし、行こう。


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