イケメンマフィアの仰せのままに~断れるはずありません!

氷室ユリ

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第六章 揺るがぬココロ

52 共生への道~後日談~

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 日当たりの良いテラスで、ティーカップを手に庭を眺めるユイと新堂。
「たまには外でお茶もいいでしょ?先生」
「ああ、そうだな」

 二人の視線の先には、最近飼い始めた大型犬達と元気に戯れるサラの姿がある。
 新堂のきめ細やかなサポートの甲斐あって、サラは順調に育っている。多少の虚弱体質は残るものの、体格もほぼ平均に近づき、ユイのトレーニングが受けられるまでになった。

「新堂先生のお陰よ、ありがとう。物足りない仕事だろうけど、これからもよろしくね」
「お構いなく。何しろ報酬をたんまりいただいてるからな!これはこれで、なかなか割のいい仕事だよ」
「だけどこんな毎日じゃ、ご自慢のオペの腕が鈍っちゃうでしょ」
「問題ない。ちょくちょく街の大学病院でやらせてもらってる」

 庭には夫婦専用の赤のスポーツカーと、その横に黒のベンツが並ぶ。この車はフォルディス家の面々が乗るものとは別格の上級モデルだ。
「あんな車まで新調してもらって、至れり尽くせりだよ」新堂は満足げに目を向ける。
 時折受ける依頼に出向くための足として、ラウルが提供したのだ。

「生活には何ら不都合はない。こっちの方が居心地がいいくらいだ。慣れってのは恐ろしいな!」
 何しろ料理ももてなしも高級ホテル並みである。

 そして新堂はサラの方に目をやって笑みを浮かべる。
「それに何より、楽しいしな…」
――ロリコンじゃない俺でも、サラは別次元だよ――
 ユイの顔を西洋人風に、よりメリハリを付けたのがサラの顔立ちだ。美しくないはずがない。そして、新堂が嫌いなはずがないのだ。

 そんな目尻を下げている新堂を見てユイが言う。
「何か先生、雰囲気変わったよね~。前より人間らしいっていうかさ~」
「何だよそれ。なら昔の俺は何だって?」
「褒めてるの!だから、私にも優しくしてね?」
「だったら、まずはサラみたいに素直になる事だな!」そう答えながら笑う新堂。
 その顔は以前よりも穏やかに見えなくはない。

 ややムッとした表情をしたユイだが、プイと顔を背けてサラを見る。
「そんな事より!私、もう一つやらなきゃならない事があるんだから」
「おい、まさかまだ血液のストック作るとか言う気じゃないだろうな?」
「違うわ」
 新堂は組んでいた足を下ろしてユイを見る。

「フォルディス家の、マフィア脱却!」
「はぁ?」思わぬ発言に、新堂の口から間の抜けた声が出た。

「だって、そうしないとヴァシルがこの家継がないって言うんだもの。一大事でしょ」
「シャーバンが立候補しそうだけどな」
 何かとダークな発想をするシャーバンが新堂の頭に浮かんだ。
「それはそれでもいいんだけど。分かってる?私、元々ヤクザとかマフィアとか大嫌いなんです」
「それは初耳!フォルディスさんが聞いたら悲しむな~」
「ラウルは知ってるわ」

 肩を竦める新堂。「知ってて未だにマフィアやってるところからするに、脱却させるのは難しいんじゃないか?」
「う~ん。そうなのよ。だからサラにも手伝ってもらおうと思うの」
「娘を溺愛してるからな、フォルディスさんは」
 何かと普通ではないラウルも、これについては一般の父親と同じであった。もちろん向けられるのはユイへの愛とはまた別の種類の愛である。

「その溺愛する娘から言われたら、聞かない訳には行かなくならない?」
「さあな」新堂は面倒になって投げやりに返す。
「ちょっとー、素っ気なさすぎっ!自分だってマフィア嫌いでしょ!」

 またもや言い合いに発展して、それを聞きつけたサラがやって来る。

「二人とも、ま~たやってるの?よく飽きないわね~」
 犬達を侍らせて登場したサラは、二人を見て呆れたように言う。
「サラ、二人でお父さんを更生させるわよ!」
「は?何言ってるのユイ。ダーは真面目人間よ。更生の必要ないと思うけど」
 肩を竦めて言うサラに、ユイが畳みかける。「真面目だけど、職業は真面目じゃないでしょ?」

「ダーの職業って、そもそも何する人なの?ウチはユイのY・Aセキュリティで成り立ってるじゃない」
 マフィアがどんな事をするのか知らなくても当然だ。サラが生まれてからは、めっきりマフィアらしくないフォルディス家である。
「何って、まあ…簡単には説明できないけど。だから!ラウルにも警備事業の方を一緒にやってもらおうと…」

 ユイの言葉を遮ってサラが声を張った。
「ノンノン、ダーはやらないわ。いい?ユイ。ダーが守るのは、家族だけよ!」

 晴れ渡る青空に向けて、犬達がタイミング良くひと吠えした。


~完~
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