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第一章 引き寄せ合うチカラ
7 自分に素直に(2)
しおりを挟む照明が落とされ、月明かりだけがぼんやりと室内を照らす中、キャミソールの紐が肩から落とされる。
現れたのは小振りの可愛らしい膨らみだ。
――日頃のシルエットから予想はしていたが、豊満ではないバストは久しぶりだ。だが肝心なのは感度…――
ラウルの指が意味ありげにその先端を弄ぶ。
「あんっ!くすぐったいったら…っ」
「おまえの体はなかなか敏感なようだ。他も試してみよう…ここはどうかな?」
「きゃぁっ!」
ショーツの中に手を入れられて飛び上がるユイ。
「初心な反応だ。こういうのは久しぶりだよ」
率直な感想を述べつつ、下生えだけを器用に撫でる。まだ素肌には触れない。
「っ、ふ、フォルディス様は、いつも…経験豊富な大人の女性とされるんでしょ」
「そうだな」
「っ!そこは否定してほしかったなぁ…」
「私は嘘はつかない」
「…いいです、大丈夫です」
ユイの男性経験はゼロに近い。数年前にブロンドの英国人とそんな仲になったが、すでに自然消滅している。
やや落ち込んだユイを見るや、ついにラウルの指がショーツの中で動いた。
下生えを掻き分けて指が肌へと到達すると、中心をあえて避けながら触れて行く。
その手がさらに奥へと入って行くも、周辺だけを優しく愛撫するに留める。
「ああ…んっ…」
――なんて微妙な触れ方するの…っ!やっぱこの人慣れてるわ…――
ユイがさらに落ち込んだ時、ラウルがタイミングよく言う。
「落ち込むな。おまえは十分魅力的だ」
「ほんと、ですかっ…?んっ、あっ!」
不意打ちで女性の最も敏感とされる箇所を弾かれたから堪らない。ひと際高い声がユイの口から飛び出す。
そんな反応に満足して笑みを零し、ラウルは至近距離でユイを見下ろす。
「ああ」
答えながらもショーツ内の探索は続く。
「ウソは、つかないんですものね」頬を赤らめたユイがそう言って微笑んだ。
嫌がる素振りを見せない事を確認できたラウルは、その唇にそっとキスを落としてから、先ほど弾いた陰核を今度は親指で擦り始める。
「んんっ、そこは…っ、ダメ!ん!」
「そんなに良さそうな顔をしながら拒絶されても、やめる訳には行かないな」
ユイの顔は紅潮し、その瞳は潤んでいる。その理由をラウルは性的興奮と捉えているのだが…。
――恥ずかし~!!もうイヤっ――ユイ的には恥じらい故であった。
「イジワル、フォルディス様…、あん!ダメったら!」
ユイは堪らずラウルに抱き付く。
少しでも手の動き止めさせるべく抵抗したのだが逆効果だった。ユイの熱い吐息がラウルの首筋に当たり、動きは加速。
――まだ軽く触れているだけだというのにこの反応。これは期待できるな――
そう確信したラウル。欲望に勝てずあっさり焦らすのをやめ、迷う事なく目的の場所に指を差し入れた。
そこはすでにかなりの潤いに満ちていた。
「あっ!イヤぁ…っ!」
「…おまえは、あまり経験がないようだな」
指を入れてそれが分かる。そこはとても窮屈な空間であった。
――これでは私のものが収まるか…不安だ――
女性を痛めつける趣味はない。痛がる姿を想像してしばし悩むも、旺盛な性欲には勝てず。
「分かっちゃったかぁ。…あんっ、ダメ、そんなに指、動かしちゃっ」
「もっとリラックスしろ。今日は緊張の連続だっただろう?」
「そりゃあもう…!」
まさか公的のパーティ会場でスナイパーに出くわすとは思いもしない。そんな事は口に出せないが。
不意にラウルが前触れもなく指を引き抜いた。その突然の刺激に耐え切れず、ユイが身を捩らせる。
「はぁんっ!」
ラウルは抜いた指に絡んだ透明な蜜を見つめ、鼻先を近づけている。
「ヤダっ、フォルディス様?何を…っ」
「あまりにいい香りなので、味わってみたいと思ってな」
「んなっ、何を言ってるんですかっ!恥ずかし~っ!」
その蜜の香りは今しがた飲んでいた白ワインと良く似ていた。
ここでラウルはある事を確信する。ルーマニアの女はこんな匂いはしない。どれ程の経験を経てして見極められるようになったかは、あえて触れないでおく。
――この女は生粋のアジア人だ。つまり…――身元を偽っている事になる。
だがここは目を瞑る。せっかくの時間を台無しにしたくはない。
「おまえも嗅いでみろ」
「…え、ちょっとっ」
組み敷かれた体勢で指を近づけられては逃げ場もない。仕方なく嗅いでみると、確かに似ている。
「ん?ホントだ、こんな匂いするのね」
「…知らなかったのか?」
――自分の体液だろうに…――
黙ってしまったラウルに、知っているのが普通なのかと不安になるユイ。
「まあいい。色々と試してみたい。今はそういうための期間だろう?」
「っ!いろいろ、って…?」
――こう言われたら断る訳に行かないじゃない!一体何されるのよー?!――
そしてラウルは指に絡んだ蜜を舐め取った。
「やはり味も悪くない。おまえも味わ…」
「遠慮しときます!」間髪を入れずに拒否するユイであった。
経験が浅くとも、男慣れしていない体を自分仕様にするのもまた一興だ。ラウルの中で性欲と共に支配欲が高まって行く。
その上、想像以上に鍛え上げられた体は、当然中も良く締まっている事だろう。
ある意味ではラウルもまた、鍛え抜かれた立派なモノを手にしている。こちらは意図的に鍛えた訳ではなく、これまで欲のままに生きて来た結果だが。
――この勝気な女は、昇りつめた時にどんな顔をするのだろうな――
久しぶりの高揚感にラウルが胸をときめかせる。こんな事は本当に久しぶりだ。
シーツを払い除ければ、ラウルの尊い象徴が堂々たる姿を見せた。今宵のお相手と対面である。
「おまえの香りはまるで媚薬だな…」――すでにこちらは万全だ――
自らの象徴の様子に満足したラウルは、いつものように迷わず挿入を試みる。
ところが予想外の事が起きた。
「うっ…」――キツすぎる、皮を剥がれそうだ!ここまでとは…――
ラウルが軽く呻き声を上げた。余裕めいた顔も歪んでいる。
「痛、いった~い!ダメ、やっぱり嫌!」
ユイは堪らず渾身の力でラウルの体を押し返した。
「…ああ、分かっている、私も痛い。だが諦めるのは早い」
同意を貰えるとは思っていなかったユイが問い返す。「フォルディス様も痛いの?男の人も痛いんだ…」
「おまえの体はよく鍛えられているようだ」
「えっ?!そ、それってどういう…」
慌てるユイ。体を鍛えている事を褒められれば喜ぶところだが、現在の状況が状況だけに複雑である。
――私が強い事バレたらダメなの!ってその前に、そんなトコ鍛えてないから!――
そんなユイとは対照的にラウルは増々燃える。強敵であればある程燃えるのが男だ。そして、諦めるなどという文字はラウルの中にはない。
「ユリ、力を抜いてくれ。そういきんでいては余計に痛いぞ」
「だ、だって…っ、うう…」
「しー…。深く呼吸しろ、さあ」
しばし入口付近で抜き差ししていた動きを止めて、ラウルがなだめるように優しく諭す。
ユイは素直に頷いて、荒くなっていた息を整える。
「性急すぎた。もう少しゆっくり解して行こう」
「スミマセン…お手数をおかけします…」
――良かった、あのまま無理やりされると思った。優しいのね、マフィアなのに!――
「気にするな。これがおまえの拒絶でないのなら?」
ダメ、嫌い、と否定的な言葉を浴びせられた事への確認も込めてのコメントだ。
何せ欧米系のセックスシーンで登場するのは、カモン!イエス!等の肯定的な言葉が主流なのだから。
耳元で響いた少しだけ意地悪な色を帯びた声に、ユイが真顔で否定する。
「ないです!…っ!あ、いっ!」
返答とほぼ同時にラウルは再び挿入を試みる。
「なかなかに、っ、攻略のし甲斐のある体だな」
こんなやり取りがしばらく続き、次第にユイの表情から苦痛の色が消え始めた。
――そろそろいいか。では一気に…――
いい加減痺れを切らしていたラウルは、一息にユイの最奥へと押し入った。
「あああっ!痛いったら、そんな急に…はぁ…!もうダメっ、フォルディス、様っ…」
「もうか?今入ったばかりだが?…ああ、こんなのは初めてだ。っ!そんなに締め付けるな」
――ようやく入った。しかしマズいな、これは病みつきになりそうだ…!――
中は痛みが走る程の窮屈さにも関わらず、その痛みすら強烈な快感となって全身を巡る。それは百戦錬磨のはずのラウルにとっても、初めての感覚だった。
何よりユイの放つ極上の香りが堪らない。深く吸い込んでは心行くまで堪能する。それはどんどん威力を増し、媚薬の如くラウルの神経を狂わせて行く。
そして痛みから解放されたユイもまた快感に震える。体を突き抜けるような衝撃に抗う術もなくただ屈服する。抵抗できないこの状況は、ユイにとっては敗北を意味する。
普通の女とは違い、朝霧ユイにとって敗北は最も屈辱の事態なのだ。
そんな精神とは裏腹に、体はあっさりラウルに囚われた。
――何なのこの感覚は…っ!!悔しい、けど、抗えない…っ、気持ち良すぎる!ああ私、この人に…――
心での葛藤が続く中、体は完全なる受け身姿勢で、繰り返される激しい律動によって揺さぶられ続けている。
だが、やがて何も考えられなくなった。
「あああ!もういいや。んっ、いやん!ああん、もうダメー!!」
良さそうな顔をしながらも、口から出る言葉はどれも否定的なもの。そこに百戦錬磨のこの男はピンと来る。
この女はセックスに後ろ向きなのではと。
――問題ない。私がセックスの素晴らしさを教えてやればいいのだ――
その後夜明け近くまで、無限ループのように行為は繰り返された。
「ユリ、おまえは最高ではないか!これまでムダな時間を過ごさせて悪かった」
ユイが屋敷へ来てもう5日。現在屋敷にはユイしかいない。つまり夜のお相手がいないという事。過ぎ去った時が非常に惜しい。
数々の疑惑もそっちのけで、たちまち見る目が変わるラウルであった。
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