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第十四話
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さて、時を同じくして。
こちらも狂っている夜を迎えようとしていた。
すみれとなおの部屋。
すみれは鼻歌混じりに鏡を見ながら揺れている。
「どうしたの?楽しそう。何かあったの?」
左右に揺れるすみれの両肩を背後から押さえて、なおは笑いながら言う。
すみれは、にこにことしながら鏡越しになおを見つめた。
あまりにも嬉しそうな顔をするので、なおの顔も綻ぶ。
だが、すみれが次に発した不可解な言葉でなおは混乱をきたすことになる。
「れいこさんとケーキを食べたの!」
すみれはぴょんと跳ねる。
「れいこさん・・・?・・・誰?」
眉間に皺を寄せてすみれをじっと見ると、すみれは子供のようになおを下から覗き込んだ。
「ミカエル様よ!」
「はぁ!?」
「ミカエル様のお名前は、犬飼れいこっていうの。知っているでしょう?」
当たり前のように言うすみれになおの驚きは止まらない。
「そりゃ、知ってるけど。知ってるけど!なんであんたが勝手に名前で呼んでるのよ!?」
「私だけじゃないよ?れいこさんも私のこと、すみれちゃんって呼んでくださるの。」
「はぁぁ!?ちょっと、ちょっと待って、意味が全くわからない。」
「もう!そのままだよ!」
すみれは、ぶぅっとふくれっ面をした。
それに対して、なおは目を見開いてすみれの肩を掴むと激しく揺すぶる。
「ひゃっ!」
「頭が追いつかないし、あんたの短絡的な説明じゃ何もわからない。最初から順を追って私に話して。」
「う、うん・・・。」
発端をすみれなりに事細かになおに説明した。
だが、なおの表情は晴れないまま。その不穏な空気を察してすみれは怯えながらゆっくり、なおの目を見た。母親に怒られている子供のように。
長い沈黙のあとようやく、なおが口を開く。
「あのね・・・すみれ。私がこの前に言ってた事ちゃんと聞いてた?あんたは馬鹿だけど、それくらいは理解してると思ってた。」
「そ、それは・・・。」
目線を逸らそうとすると、なおに一喝された。
「目を逸らさない!!ちゃんと私を見て!!」
「ひゃっ!」
すみれは、びくっとして両手を握り締めた。そして小声で言う。
「あの、でも・・・れいこさんは悪くないと思う。ケーキくれたし。」
「食べ物に釣られるんじゃない!!」
「ひゃっ!!ごめんなさい。」
全く反省の色が見えないすみれに、なおはため息をつく。そして頭を撫でると、呆れながら口を開いた。
「すみれ、私はあんたが心配なのよ。馬鹿だから騙されやすいし利用されやすい。だからね、あんたはわたしの言う事を素直に聞いていればいいの。私、今まで間違った事言ったことある?」
「ない・・・。」
「だよね。じゃあ、もう勝手なことしない?」
「うん。しない。」
「私の言うことはちゃんと聞く?」
「うん。聞く。」
「貴女は何もできない馬鹿な子なの。」
「うん。馬鹿な子なの。」
「あんたは何も考えなくていいの。」
「うん。何も考えない。」
「私しかあんたを守れないの。」
「うん。なおしか守れない。」
「あんたが一番好きなのは私なの。」
「うん。なおが一番好き。」
「すみれはいい子だね。」
「なおはいつも私を助けてくれるから。なおの言うことは間違いないから。なおの言う通りにしていい子にしてる。」
すみれは、なおの首にきゅっと両手を回して抱きついた。
「今日はなおと一緒に寝たい。一緒に遊びたい。」
なおはすみれを抱きしめ返すと彼女の背中を、子供をあやすようにぽんぽんと叩く。
「わかった、一緒に寝ようね。今日は何して遊ぼうか?」
「なおが決めて。私じゃわかんない。」
「そっか。じゃあ、すみれに目隠ししていい?何されているか当てる遊び。」
「楽しそう!する!」
すみれはまたぴょんぴょん飛び跳ねると、おもむろに制服を脱ぎ始めた。
「なお、早く遊んで!」
「すみれは気が早いね。」
なおは、幸せそうな笑顔を見せ、そんななおに対してすみれも服を全部脱ぎ捨てて、屈託のない笑みを見せたのであった。
狂乱の夜が始まる。
彼女たちも、また、破綻していた。
こちらも狂っている夜を迎えようとしていた。
すみれとなおの部屋。
すみれは鼻歌混じりに鏡を見ながら揺れている。
「どうしたの?楽しそう。何かあったの?」
左右に揺れるすみれの両肩を背後から押さえて、なおは笑いながら言う。
すみれは、にこにことしながら鏡越しになおを見つめた。
あまりにも嬉しそうな顔をするので、なおの顔も綻ぶ。
だが、すみれが次に発した不可解な言葉でなおは混乱をきたすことになる。
「れいこさんとケーキを食べたの!」
すみれはぴょんと跳ねる。
「れいこさん・・・?・・・誰?」
眉間に皺を寄せてすみれをじっと見ると、すみれは子供のようになおを下から覗き込んだ。
「ミカエル様よ!」
「はぁ!?」
「ミカエル様のお名前は、犬飼れいこっていうの。知っているでしょう?」
当たり前のように言うすみれになおの驚きは止まらない。
「そりゃ、知ってるけど。知ってるけど!なんであんたが勝手に名前で呼んでるのよ!?」
「私だけじゃないよ?れいこさんも私のこと、すみれちゃんって呼んでくださるの。」
「はぁぁ!?ちょっと、ちょっと待って、意味が全くわからない。」
「もう!そのままだよ!」
すみれは、ぶぅっとふくれっ面をした。
それに対して、なおは目を見開いてすみれの肩を掴むと激しく揺すぶる。
「ひゃっ!」
「頭が追いつかないし、あんたの短絡的な説明じゃ何もわからない。最初から順を追って私に話して。」
「う、うん・・・。」
発端をすみれなりに事細かになおに説明した。
だが、なおの表情は晴れないまま。その不穏な空気を察してすみれは怯えながらゆっくり、なおの目を見た。母親に怒られている子供のように。
長い沈黙のあとようやく、なおが口を開く。
「あのね・・・すみれ。私がこの前に言ってた事ちゃんと聞いてた?あんたは馬鹿だけど、それくらいは理解してると思ってた。」
「そ、それは・・・。」
目線を逸らそうとすると、なおに一喝された。
「目を逸らさない!!ちゃんと私を見て!!」
「ひゃっ!」
すみれは、びくっとして両手を握り締めた。そして小声で言う。
「あの、でも・・・れいこさんは悪くないと思う。ケーキくれたし。」
「食べ物に釣られるんじゃない!!」
「ひゃっ!!ごめんなさい。」
全く反省の色が見えないすみれに、なおはため息をつく。そして頭を撫でると、呆れながら口を開いた。
「すみれ、私はあんたが心配なのよ。馬鹿だから騙されやすいし利用されやすい。だからね、あんたはわたしの言う事を素直に聞いていればいいの。私、今まで間違った事言ったことある?」
「ない・・・。」
「だよね。じゃあ、もう勝手なことしない?」
「うん。しない。」
「私の言うことはちゃんと聞く?」
「うん。聞く。」
「貴女は何もできない馬鹿な子なの。」
「うん。馬鹿な子なの。」
「あんたは何も考えなくていいの。」
「うん。何も考えない。」
「私しかあんたを守れないの。」
「うん。なおしか守れない。」
「あんたが一番好きなのは私なの。」
「うん。なおが一番好き。」
「すみれはいい子だね。」
「なおはいつも私を助けてくれるから。なおの言うことは間違いないから。なおの言う通りにしていい子にしてる。」
すみれは、なおの首にきゅっと両手を回して抱きついた。
「今日はなおと一緒に寝たい。一緒に遊びたい。」
なおはすみれを抱きしめ返すと彼女の背中を、子供をあやすようにぽんぽんと叩く。
「わかった、一緒に寝ようね。今日は何して遊ぼうか?」
「なおが決めて。私じゃわかんない。」
「そっか。じゃあ、すみれに目隠ししていい?何されているか当てる遊び。」
「楽しそう!する!」
すみれはまたぴょんぴょん飛び跳ねると、おもむろに制服を脱ぎ始めた。
「なお、早く遊んで!」
「すみれは気が早いね。」
なおは、幸せそうな笑顔を見せ、そんななおに対してすみれも服を全部脱ぎ捨てて、屈託のない笑みを見せたのであった。
狂乱の夜が始まる。
彼女たちも、また、破綻していた。
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