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33話 テスト終了×呼び出し
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あれから数日が経ち、期末テスト最終的を控えたある日。
あの後、怜人と斎藤さんに何があったのかを質問をされたけど、真依ちゃんのためにも、そして自分のためにも僕は「なんでもない。ただ走り疲れて休憩していただけ」と話をはぐらかしてその場を凌で、家に帰った。
それからこの数日間、何の出来事も進展もなく深夜までテスト勉強に励み、テストに取り組んで終わったらまっすぐ家に帰って、そのまま次のテスト勉強するの繰り返しだった。
しかし期末テストの件もあるが、あれ以来真依との会話はない。
石見先輩の方もテスト勉強で忙しいらしくて、あのメール以来互いに面と向かって中々交流できていない。
明日で期末テストも終わるし、学校が終わったら誘おうかな。
久々に二人っきりで話したいし。
そう思いつつ賢人は深夜までテスト勉強に励んだのちに、眠りにつくのだった。
◇◇◇◇
ーーーキーンコーンカーンコーン
「よし、これで1学期の期末テストは終わり!みんなよく頑張ったな」
最後の最後までテストの問題と向き合っていた生徒たちの思いや魂が込められた答案用紙が全員分回収できたことを確認した竹内先生の一言で、クラス全体は一気に緊張の糸が解けたように立ち上がったり、友達と会話したりし始めた。
「ふぅ~、やっと終わった~」
「あぁ、長かったな」
もちろんこの二人も例外ではない。
怜人が自分の席で疲労に身を任せて頬杖をつきながらそう言うと、見兼ねた伸之が呆れた態度を示しつつ共感した。
「あ、そうだ!おい賢人」
「なんだ、その賢人がついでみたいな・・・」
伸之は怜人の賢人に対する扱いに少々違和感を覚えながらも、賢人がいる席に向かった怜人の後に続いた。
「・・・あぁ怜人、斎藤さん」
「「?」」
いつもと違う賢人の反応に動揺する二人。
今やクラスはおろか学年全体の順位を容易に競える賢人。
普通なら天才らしく余裕であるかピリピリするところだが、当の本人はそのどちらでもなく文字通り気怠そうだった。
確かに天才である以上、夜遅くまでテスト勉強をしていたんだと推測した。
「どうした賢人、テストで解けない問題でもあったのか?」
「平凡なら未だしも、天才にとって全て解答できなかったというのは、かなり痛いと言うからな」
「いや、聞いたことねえよ」
「聞いたことない?それはお前が馬鹿だからな」
「ば、馬鹿じゃねえし!」
「・・・で、どうなんだ賢人?」
「無視かよ!?」
いつものようにやり取りをして伸之は怜人に構うことなく改めて賢人に質問した。
「あぁ、テストの解答は特に問題無かったよ」
「そうか、それは良かった」
「うん、ところで二人の方はどうだったの?」
「ドキッ!」
賢人の不意の質問に怜人は声を上げた。
それを見た伸之は眼鏡をキランと光らせながら賢人の質問に答える。
「フン、その様子だとかなりまずかったらしいな?怜人」
「そそそ、そんなわけねえだろ!」
目の前でこんなやり取りがされているにもかかわらず、尚も反応が薄いくらいに元気が無いのは無論、真依のことだ。
しかし当然ながらあの出来事について思い悩んでいたと、二人に言えるはずがない。
そして真衣の方はというと、何事も無かったように話しかけてくる有様で、まるでこっちが夢を見ていただけだったのかと錯乱してしまう状況だった。実を言うと夢であってほしいと心から望んでいたが、悲しくもそれは現実である。
しかしながらそれらの悩みを抱えつつも、怜人と伸之の疑問になんの迷いもなく応えられるようテストには最後まで励むことが出来た。
これでひとまず安心を得られる。
「おーい、山本!」
「「「!?」」」
教壇の方から呼ぶヤクザのような渋い声が聞こえてくるかと思えば我らが担任の竹内先生だった。
「ごめん、ちょっと失礼」
「なんだなんだ?賢人が呼び出しだなんて」
「さあな。お前程のレベルの奴が普段から呼び出しされないことの方が余程珍しいがな」
「そんなことねえよ!」
二人のやり取りに構わず賢人は竹内先生のいる教壇へと向かう。
「どうしました?先生」
「あぁ実はな、長谷川先生がお前がテストが終わったら生徒指導室に来るようにという伝言をもらっていてな」
「長谷川先生が?」
長谷川先生といえば、初対面ながら他の生徒がいる前で堂々と僕の大ファンだと豪語したあの綺麗な先生だ。
そういえば授業では顔を合わせているものの、最初程の会話はほとんどしていない。そんな長谷川先生が今になって呼び出しとはなんとも珍しい。
「あぁ、だから今からでも向かってくれ」
「・・・分かりました」
あんな先生のことだから何かしら物事が起こる予感をしつつも、賢人は断ることなく了承した。
「で?どうだって?」
「その様子だと、思ったより呼び出しを食らうほどの内容じゃなかったようだが?」
「・・・まぁ大したことはなかったよ。でも一緒に帰れないことになったから、ごめんね?」
「いいってことよ」
「そうさ、こういうこともないわけじゃない」
二人には竹内先生との会話は聞こえてこなかったらしく、都合がいいと判断して賢人は長谷川先生の件は伏せて報告した。
すると二人は何も疑うことなく、むしろポジティブに受け止めてくれた。
「じゃあ俺たちは先に帰るわ。また明日な!」
「賢人、一人での帰り道は気をつけるんだぞ?」
「分かってるよ」
賢人の話を聞いて了承した二人は学校に残る用事もなく、そのまま荷物をまとめて教室を出ていった。
よし、これで心配をかけてもらう必要が無くなった。
だが親友とも呼べる二人に嘘をついてしまったことに申し訳なく感じた。
そんな思いを胸にしまいつつ賢人は荷物をまとめて、クラスメイトが次々と帰っていく教室を後にした。
その前にクラスメイトや同じ学年の生徒たちに、もみくちゃにされながら絡まれまくったのは別の話。
長かった期末テストが終わり、ようやく解放されたと喜んで帰っていく他の生徒とは違い、賢人は下駄箱に続く廊下とは反対の廊下を進んでいった。
もうこの学校には慣れているが、生徒相談室がある西棟には滅多に近づかないので、賢人は新鮮ともいえる感覚で足を動かしていった。
「やあ、やっと来たか。随分待ちくたびれてしまったよ」
「・・・」
「山本賢人くん」
あの後、怜人と斎藤さんに何があったのかを質問をされたけど、真依ちゃんのためにも、そして自分のためにも僕は「なんでもない。ただ走り疲れて休憩していただけ」と話をはぐらかしてその場を凌で、家に帰った。
それからこの数日間、何の出来事も進展もなく深夜までテスト勉強に励み、テストに取り組んで終わったらまっすぐ家に帰って、そのまま次のテスト勉強するの繰り返しだった。
しかし期末テストの件もあるが、あれ以来真依との会話はない。
石見先輩の方もテスト勉強で忙しいらしくて、あのメール以来互いに面と向かって中々交流できていない。
明日で期末テストも終わるし、学校が終わったら誘おうかな。
久々に二人っきりで話したいし。
そう思いつつ賢人は深夜までテスト勉強に励んだのちに、眠りにつくのだった。
◇◇◇◇
ーーーキーンコーンカーンコーン
「よし、これで1学期の期末テストは終わり!みんなよく頑張ったな」
最後の最後までテストの問題と向き合っていた生徒たちの思いや魂が込められた答案用紙が全員分回収できたことを確認した竹内先生の一言で、クラス全体は一気に緊張の糸が解けたように立ち上がったり、友達と会話したりし始めた。
「ふぅ~、やっと終わった~」
「あぁ、長かったな」
もちろんこの二人も例外ではない。
怜人が自分の席で疲労に身を任せて頬杖をつきながらそう言うと、見兼ねた伸之が呆れた態度を示しつつ共感した。
「あ、そうだ!おい賢人」
「なんだ、その賢人がついでみたいな・・・」
伸之は怜人の賢人に対する扱いに少々違和感を覚えながらも、賢人がいる席に向かった怜人の後に続いた。
「・・・あぁ怜人、斎藤さん」
「「?」」
いつもと違う賢人の反応に動揺する二人。
今やクラスはおろか学年全体の順位を容易に競える賢人。
普通なら天才らしく余裕であるかピリピリするところだが、当の本人はそのどちらでもなく文字通り気怠そうだった。
確かに天才である以上、夜遅くまでテスト勉強をしていたんだと推測した。
「どうした賢人、テストで解けない問題でもあったのか?」
「平凡なら未だしも、天才にとって全て解答できなかったというのは、かなり痛いと言うからな」
「いや、聞いたことねえよ」
「聞いたことない?それはお前が馬鹿だからな」
「ば、馬鹿じゃねえし!」
「・・・で、どうなんだ賢人?」
「無視かよ!?」
いつものようにやり取りをして伸之は怜人に構うことなく改めて賢人に質問した。
「あぁ、テストの解答は特に問題無かったよ」
「そうか、それは良かった」
「うん、ところで二人の方はどうだったの?」
「ドキッ!」
賢人の不意の質問に怜人は声を上げた。
それを見た伸之は眼鏡をキランと光らせながら賢人の質問に答える。
「フン、その様子だとかなりまずかったらしいな?怜人」
「そそそ、そんなわけねえだろ!」
目の前でこんなやり取りがされているにもかかわらず、尚も反応が薄いくらいに元気が無いのは無論、真依のことだ。
しかし当然ながらあの出来事について思い悩んでいたと、二人に言えるはずがない。
そして真衣の方はというと、何事も無かったように話しかけてくる有様で、まるでこっちが夢を見ていただけだったのかと錯乱してしまう状況だった。実を言うと夢であってほしいと心から望んでいたが、悲しくもそれは現実である。
しかしながらそれらの悩みを抱えつつも、怜人と伸之の疑問になんの迷いもなく応えられるようテストには最後まで励むことが出来た。
これでひとまず安心を得られる。
「おーい、山本!」
「「「!?」」」
教壇の方から呼ぶヤクザのような渋い声が聞こえてくるかと思えば我らが担任の竹内先生だった。
「ごめん、ちょっと失礼」
「なんだなんだ?賢人が呼び出しだなんて」
「さあな。お前程のレベルの奴が普段から呼び出しされないことの方が余程珍しいがな」
「そんなことねえよ!」
二人のやり取りに構わず賢人は竹内先生のいる教壇へと向かう。
「どうしました?先生」
「あぁ実はな、長谷川先生がお前がテストが終わったら生徒指導室に来るようにという伝言をもらっていてな」
「長谷川先生が?」
長谷川先生といえば、初対面ながら他の生徒がいる前で堂々と僕の大ファンだと豪語したあの綺麗な先生だ。
そういえば授業では顔を合わせているものの、最初程の会話はほとんどしていない。そんな長谷川先生が今になって呼び出しとはなんとも珍しい。
「あぁ、だから今からでも向かってくれ」
「・・・分かりました」
あんな先生のことだから何かしら物事が起こる予感をしつつも、賢人は断ることなく了承した。
「で?どうだって?」
「その様子だと、思ったより呼び出しを食らうほどの内容じゃなかったようだが?」
「・・・まぁ大したことはなかったよ。でも一緒に帰れないことになったから、ごめんね?」
「いいってことよ」
「そうさ、こういうこともないわけじゃない」
二人には竹内先生との会話は聞こえてこなかったらしく、都合がいいと判断して賢人は長谷川先生の件は伏せて報告した。
すると二人は何も疑うことなく、むしろポジティブに受け止めてくれた。
「じゃあ俺たちは先に帰るわ。また明日な!」
「賢人、一人での帰り道は気をつけるんだぞ?」
「分かってるよ」
賢人の話を聞いて了承した二人は学校に残る用事もなく、そのまま荷物をまとめて教室を出ていった。
よし、これで心配をかけてもらう必要が無くなった。
だが親友とも呼べる二人に嘘をついてしまったことに申し訳なく感じた。
そんな思いを胸にしまいつつ賢人は荷物をまとめて、クラスメイトが次々と帰っていく教室を後にした。
その前にクラスメイトや同じ学年の生徒たちに、もみくちゃにされながら絡まれまくったのは別の話。
長かった期末テストが終わり、ようやく解放されたと喜んで帰っていく他の生徒とは違い、賢人は下駄箱に続く廊下とは反対の廊下を進んでいった。
もうこの学校には慣れているが、生徒相談室がある西棟には滅多に近づかないので、賢人は新鮮ともいえる感覚で足を動かしていった。
「やあ、やっと来たか。随分待ちくたびれてしまったよ」
「・・・」
「山本賢人くん」
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