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36話 テスト結果×完全敗北
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「今日はいよいよテスト返しだな・・・」
「ま、精々点数が取れていることを祈っていることだな。怜人」
「と、取れているに決まってるだろう!?」
「どうだかねえ」
「か、勝手に決めんじゃねえ!」
生徒たちは1学期最後の期末テストの結果に胸を躍らせていた。
B組のこの二人も例外ではなかった。
「じ、じゃあ全科目の中で一つだけでも俺がお前より点数を取れていたら、俺が好きなやつを奢ってもらうかな!」
「フン、いいだろう。意味もない賭けをして、後でくだらないだけ恥をかかないことだな」
「勝手に言っておけ。お前こそ後悔しても知らないからな」
余程テストに自信がないのか、そわそわした様子の怜人。
それを見て伸之は上から目線で励ます。
自分は元々成績は平均的なので平気であるという意思表示なのだろう。
しかし、その態度は怜人にとってはあまりにも挑発的で見下しているようにしか見えない。
「ちょっと二人とも!テスト返しだから気持ちは分かるけど、そんなにピリピリしちゃダメだよ」
いつのまにか賭け事の話になっていた二人を様子を見ていた賢人は仲裁に入る。
とはいっても喧嘩という程に騒がしいものではない。
「これは俺と怜人の賭け事なんだ。あまり突っかからないでくれないか」
「なんだよ。俺の賭け事に乗るっていうのか?」
「フン、勘違いするな。くだらない遊びに付き合ってやるだけさ」
「先に余裕かまして、後で後悔しても知らないからな?」
「こっちのセリフだ」
男なら譲りたくないというプライドは、同じ性別である賢人にも分からなくはないが、あまりにもくだらない小競り合いだ。
「ていうか賢人。お前の方こそどうなんだよ?」
「そうだ。俺たちだけじゃ面白くない。お前も加わってくれないか?」
「えっ!?僕も!?」
「あぁ、もちろん!そうだ、俺と斎藤さん二人で賢人と点数を競うってのはどうだ?」
「成る程、その方が面白いかもな。なら俺か怜人、どちらかが一科目でも賢人より点数が上だったら賢人の奢りとしよう」
「ちょっと、なんで勝手に話進めてんの!?」
「それ乗った」
「乗らなくていいよ!!」
ただ仲裁に入っていただけなのに、いつのまにか賢人まで二人の賭け事に参加する話になってしまっていることに抗議する賢人。
しかし二人は構わず話を進める。
「そうカッカするなって。もしお前が勝ったら可愛い女の子紹介してやるからさ」
「いらないよ!僕には里奈先輩が・・・っ!!」
怜人のとんでもない提案に賢人は里奈の名前を出そうして、怜人と伸之が咄嗟にバッと賢人の口を手で塞ぐ。
流石の二人でも、今ここで里奈の名前を軽々しく口にすれば周囲から怪しまれて、面倒なことに巻き込まれかねないことを理解していた上での行動だ。
賢人は二人の突然の行動に驚くが、口ではなく目で語っていることを見て賢人は二人の意思を悟ってひとまず喋るのをやめた。
幸い他にこの話を聞いている生徒はおらず、人気者の三人がまた仲良く話をしている程度の認識で済んでいた。
「・・・とにかくもう一度言うぞ?俺か斎藤さんのどちらかが1科目でも賢人より点数が上だったら俺たちの勝ち。賢人は俺たち二人より全科目の点数が上だったら俺たちの負けってことでいいな?」
「乗った。賢人お前もそれでいいな?」
「・・・もう分かったよ!」
こうして賢人は二人の賭け事に自分まで加わったことに納得がいかないものの、仕方なく話に乗ることにしたのだった。
◇◇◇◇
「「参りました…」」
怜人と伸之は自分たちのテストの答案用紙を持って重苦しい表情で賢人に正座していた。
朝の会が終わり、賢人たちが受けた全ての科目のテストの答案用紙が帰ってきた。
結果は彼らに直接聞く必要もなく、文句の付けようがない賢人の完全勝利だった。
怜人の点数はテスト勉強の甲斐もあってか以前より上がっていたが、平均より2割上というギリギリのラインだった。
一方伸之は、元々勉強に身が入るだけあって、全科目の点数は平均からかなり上だが、賢人レベルになるとまるで足元にも及ばなかった。
「まあ、こちとら勝負する気なんてなかったんだけどね…」
余程のことでもないのにもかかわらず、ここまで落胆する二人に賢人は普通に呆れながらもコメントした。
「それにしても、二人とも夏休みの補修のラインを超えられたじゃん」
「「!」」
すっかり忘れていたが、賢人はもちろん怜人も伸之も夏休みの補修の範囲となる平均点のラインを上回ることができていた。
つまり、テスト勉強の甲斐もあって、三人とも夏休みの補修を受けるのを回避できたのである。
それを聞いた怜人と伸之の表情が変わった。
「あーそうだった!つまり俺たちは勝ち組ってことだよな」
「まあ、その程度の枠に入れることなんて元々余裕だったんだがな」
自分たちのノルマが達成できてモチベーションが上がったことで、二人は自分たちが勝手に持ちかけておいて勝負に負けたことを蔑ろにした上で、華々しく開き直った。
なんとも厚かましいというか。
賢人がそう呆れていると、伸之が話を切り出した。
「・・・それはさておき、帰りに学年の順位でも見に行ってみないか?そろそろ職員室前の掲示板に結果が貼られている頃だと思うから」
「それいいな!賢人も来るだろ?」
「あ、うん・・・」
完全に勝負の話は蔑ろになったものの、賢人も一応自身の順位も気になるということもあって、学校が終わったら見に行くことにした。
「ま、精々点数が取れていることを祈っていることだな。怜人」
「と、取れているに決まってるだろう!?」
「どうだかねえ」
「か、勝手に決めんじゃねえ!」
生徒たちは1学期最後の期末テストの結果に胸を躍らせていた。
B組のこの二人も例外ではなかった。
「じ、じゃあ全科目の中で一つだけでも俺がお前より点数を取れていたら、俺が好きなやつを奢ってもらうかな!」
「フン、いいだろう。意味もない賭けをして、後でくだらないだけ恥をかかないことだな」
「勝手に言っておけ。お前こそ後悔しても知らないからな」
余程テストに自信がないのか、そわそわした様子の怜人。
それを見て伸之は上から目線で励ます。
自分は元々成績は平均的なので平気であるという意思表示なのだろう。
しかし、その態度は怜人にとってはあまりにも挑発的で見下しているようにしか見えない。
「ちょっと二人とも!テスト返しだから気持ちは分かるけど、そんなにピリピリしちゃダメだよ」
いつのまにか賭け事の話になっていた二人を様子を見ていた賢人は仲裁に入る。
とはいっても喧嘩という程に騒がしいものではない。
「これは俺と怜人の賭け事なんだ。あまり突っかからないでくれないか」
「なんだよ。俺の賭け事に乗るっていうのか?」
「フン、勘違いするな。くだらない遊びに付き合ってやるだけさ」
「先に余裕かまして、後で後悔しても知らないからな?」
「こっちのセリフだ」
男なら譲りたくないというプライドは、同じ性別である賢人にも分からなくはないが、あまりにもくだらない小競り合いだ。
「ていうか賢人。お前の方こそどうなんだよ?」
「そうだ。俺たちだけじゃ面白くない。お前も加わってくれないか?」
「えっ!?僕も!?」
「あぁ、もちろん!そうだ、俺と斎藤さん二人で賢人と点数を競うってのはどうだ?」
「成る程、その方が面白いかもな。なら俺か怜人、どちらかが一科目でも賢人より点数が上だったら賢人の奢りとしよう」
「ちょっと、なんで勝手に話進めてんの!?」
「それ乗った」
「乗らなくていいよ!!」
ただ仲裁に入っていただけなのに、いつのまにか賢人まで二人の賭け事に参加する話になってしまっていることに抗議する賢人。
しかし二人は構わず話を進める。
「そうカッカするなって。もしお前が勝ったら可愛い女の子紹介してやるからさ」
「いらないよ!僕には里奈先輩が・・・っ!!」
怜人のとんでもない提案に賢人は里奈の名前を出そうして、怜人と伸之が咄嗟にバッと賢人の口を手で塞ぐ。
流石の二人でも、今ここで里奈の名前を軽々しく口にすれば周囲から怪しまれて、面倒なことに巻き込まれかねないことを理解していた上での行動だ。
賢人は二人の突然の行動に驚くが、口ではなく目で語っていることを見て賢人は二人の意思を悟ってひとまず喋るのをやめた。
幸い他にこの話を聞いている生徒はおらず、人気者の三人がまた仲良く話をしている程度の認識で済んでいた。
「・・・とにかくもう一度言うぞ?俺か斎藤さんのどちらかが1科目でも賢人より点数が上だったら俺たちの勝ち。賢人は俺たち二人より全科目の点数が上だったら俺たちの負けってことでいいな?」
「乗った。賢人お前もそれでいいな?」
「・・・もう分かったよ!」
こうして賢人は二人の賭け事に自分まで加わったことに納得がいかないものの、仕方なく話に乗ることにしたのだった。
◇◇◇◇
「「参りました…」」
怜人と伸之は自分たちのテストの答案用紙を持って重苦しい表情で賢人に正座していた。
朝の会が終わり、賢人たちが受けた全ての科目のテストの答案用紙が帰ってきた。
結果は彼らに直接聞く必要もなく、文句の付けようがない賢人の完全勝利だった。
怜人の点数はテスト勉強の甲斐もあってか以前より上がっていたが、平均より2割上というギリギリのラインだった。
一方伸之は、元々勉強に身が入るだけあって、全科目の点数は平均からかなり上だが、賢人レベルになるとまるで足元にも及ばなかった。
「まあ、こちとら勝負する気なんてなかったんだけどね…」
余程のことでもないのにもかかわらず、ここまで落胆する二人に賢人は普通に呆れながらもコメントした。
「それにしても、二人とも夏休みの補修のラインを超えられたじゃん」
「「!」」
すっかり忘れていたが、賢人はもちろん怜人も伸之も夏休みの補修の範囲となる平均点のラインを上回ることができていた。
つまり、テスト勉強の甲斐もあって、三人とも夏休みの補修を受けるのを回避できたのである。
それを聞いた怜人と伸之の表情が変わった。
「あーそうだった!つまり俺たちは勝ち組ってことだよな」
「まあ、その程度の枠に入れることなんて元々余裕だったんだがな」
自分たちのノルマが達成できてモチベーションが上がったことで、二人は自分たちが勝手に持ちかけておいて勝負に負けたことを蔑ろにした上で、華々しく開き直った。
なんとも厚かましいというか。
賢人がそう呆れていると、伸之が話を切り出した。
「・・・それはさておき、帰りに学年の順位でも見に行ってみないか?そろそろ職員室前の掲示板に結果が貼られている頃だと思うから」
「それいいな!賢人も来るだろ?」
「あ、うん・・・」
完全に勝負の話は蔑ろになったものの、賢人も一応自身の順位も気になるということもあって、学校が終わったら見に行くことにした。
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