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3話 失恋×腕試し
「・・・で、私に何の用?私は色々と忙しいんだから」
印象を一言で例えるなら『クールビューティー』という言葉が似合う彼女が発した言葉によって賢人は現実世界に引き戻され、状況を把握した。彼女は智則先輩に呼び出されてここにやってきたのだと。
しかしこんな朝早くから呼び出す程の用があるなんて、まさかとは思うが・・・
「じ、実は・・・この学校に入学した時からあなたのこと好きでした!俺と付き合って下さい!」
(やっぱりそうなりますよねー!!でも、一年の頃から想っているなんて何かロマンチックな感じだなぁ。確か漫画やアニメではここはOKするんだったと思うけど、あんな怖い感じの人がするとは思えないけど・・・)
「キモいんだけど、マジで」
「え・・・今なんて・・・?」
彼女の目に宿る感情が一瞬にして殺意に変わったのが分かり、見ているこっちにもその殺意が伝わってきて鳥肌が立った。
それはまるで自然界で獲物を狩る時の獣のようだった。
「あんたさ、サッカー部のエースだからって、他の女子にちやほやされている上にイチャイチャしているんだってね?」
「あ、いやそれは・・・」
「そうだとしたらもしOKした所で、私の目を盗んでまた他の女子とイチャイチするんじゃないかしら?」
「別にそんなことは・・・」
「私はね、あんたみたいなナルシストで調子に乗る奴が大っ嫌いなのよ!!」
「っ・・・!!」
「分かったら二度と私に話しかけないでくれる?」
極限なまでの罵倒を彼に浴びせた挙句、トドメの捨てゼリフを吐き捨てると、彼女はイライラしたまま去っていった。
その場に取り残された智則は、地獄のどん底に叩き落されたかのように真っ白になって四つん這いになった。
その姿はまさにあの有名なボクシング漫画及びアニメの名シーンを態勢を変えた上で再現したようだった。
「うわぁ、学園一のモテ男でも無理だったかぁ・・・」
「あの様子だと当分立ち直れやしないな」
周りがショックに加え騒然としながらもアイドルのLIVEが終わったかのように去っていく中、怜人と伸之は智則先輩を哀れむようにして言った。
「怜人、斉藤さん。これは一体どういう事か説明してくれないか?」
「あぁ、あれは2年A組石見里奈。通称『冷徹姫』だよ」
「成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、生徒会副会長を務める、いわゆるこの学校の生徒全員の憧れの存在だ」
「へぇー」
「それ故に男子だけでなく、女子からも高い人気を誇るんだ。だが彼女は女子とは仲良くするが、大の男嫌いでも有名なんだ」
「・・・そうなの!?」
「あぁ、だから石見先輩に告白した奴は必ずキツい言葉とセットであんな風に返り討ちにあっちまうんだ」
(あっ、だからあんな風に智則先輩を振ったのか。いやそれにしても振る時の罵倒が凄かったなぁ・・・)
「とうとう智則先輩まで振られるなんてなぁ・・・」
「えっ?智則先輩もって事はもしかして・・・」
「あぁ、里奈先輩に惚れて告った奴等は全員振られちまったよ」
「学園一のモテ男の智則先輩もダメってことになると、もう里奈先輩を振り向かせられる可能性がある奴がいなければ、希望がある奴もいないも同然だ」
「言っておくが、惚れたからって行動に出るんじゃねぇぞ?後で絶対後悔する事になるからな」
「え?あ、うん・・・・・・いやでもまさかね・・・」
「何だよ?どうかしたのか?まさかもう惚れたってことはないだろうな?」
「あ、いやそうじゃなくて、前にどこかで会った気がして・・・。でもいつ頃だったかなぁ・・・?」
「まさか!里奈先輩は立派な東京育ちだぞ?そんな偶然あるわけねぇって」
「そ、そうだよね。ははっ、何言ってんだろ僕・・・」
(確かにそうかも知れない。でもあの紫のかかった髪と目は何故か初めてじゃなかった気がするんだけど、どうしても思い出せないんだ?何か記憶に引っ掛かっるんだよなぁ・・・)
「・・・ってやベぇ!もうチャイムが鳴るじゃねえか!おい、急いで教室に戻るぞ!」
「お、おい怜人、お前置いていくなよ!」
「ち、ちょっと二人とも待ってよ!」
朝のチャイムの音が学校中に響く中、時計を見て全力疾走する怜人の後を追い掛けながら伸之と二人で、大慌てて教室まで走っていった。
◇◇◇◇
「えぇこれで朝の会を終わりに致します。次の授業の準備をしておくように。以上解散」
竹内先生はそういって教室から出ていった。
朝の会が終わってから、授業の準備をしたり、本を読んだり、何人か集まって会話したり、スマホでゲームするなどみんなそれぞれが休憩を取り始めた。
「・・・ったくもう、ギリギリセーフで助かったー」
「だな。って怜人、なんで僕達を置いていくんだよ」
「悪ぃ悪ぃ。あまりにも急ぎ過ぎたもんで、ついピッカリ・・・」
「それを言うなら、うっかりだろ、怜人」
「まぁそうとも言うな・・・」
あの後三人は、チャイムが鳴り終わり、先生が教室に入る前に何とか間に合った。三人とも全力疾走してきたので、まだ息が切れていた。
特に賢人はまだ荷物を持っていたままであったため三人の中で一番疲れていた。
「えーと、次の授業は何だっけ?」
「あー、確か長谷川先生の数学だったような・・・」
「あれ昨日の数学に長谷川って先生いたっけ?」
「あー、賢人はまだ知らなかったか。僕達の学年ではそれぞれ担当している教科によって先生の数も変わるんだ。数学では長谷川愛音っていう女の先生が担当しているんだけど、昨日はたまたま出張だったからもう一人数学を担当している中岡 剛先生だったんだ」
「へぇー」
(担当の先生って一人だけじゃないんだ、結構ややこしいなこの学校・・・。前の高校ではそんなの無かったのに。せいぜい副担任ぐらいはいたけど・・・)
「あっそうそう、一つだけ言っておくけどよ、
長谷川先生はこの学校の先生の中で、1番の美人教師なんだぜ。間違って惚れちまうんじゃねえぞ?」
「「いやお前さっきと同じ様な事言ってるじゃん」」
賢人と伸之は怜人に素早く突っ込んだ。
キーンコーンカーンコーン
休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、クラスメート達は一斉に自分達の席に戻った。
しかしチャイムが鳴り終わったのにも関わらず、肝心の長谷川先生は現れていなかった。
(あれ?チャイムが鳴り終わったのにまだ来ないなんて一体どういう事だ?)
賢人が心の中でそう考えていた矢先・・・
「きっと委員会の最後の仕事をまとめるのに時間が掛かってるんだよ。今朝そう言ってから」
「きり・・・いや、真依ちゃん・・・」
まるで心を読んだかのように真依が前の席から後ろを向いて話し掛けてきた。
〝ねぇ山本君。せっかく同じクラスになれたんだから下の名前で呼び合わない?〟
緑色と青色の瞳が合った時、今朝言われた言葉と出来事を思い出してしまいお互いに頬を赤くして視線を反らしたその時だった。教室のドアがガラガラと音を立てながら開き、一人の女性が入ってきた。
「・・・!」
その姿から目に映るのは後ろに長く伸びた綺麗な黒髪。黒眼鏡から通して見える色褪せた碧色の瞳。
誰もが注目してしまいそうな豊満な胸。
紺色のノースリーブの上に医療ドラマに出てきそうな白衣を羽織るその姿は『妖艶』という言葉に相応しい女性だった。
「遅くなって済まない、資料のまとめるのに時間が掛かってしまってな」
相応のリップを塗っているのか光に当たると綺麗に光る唇から出る男勝りかつクールな口調を放つこの人こそが数学を担任している長谷川先生だと賢人は確信した。
「あと、私は昨日出張で留守にしていたから、今朝聞かされたばかりなのだが、このクラスに転校生がやって来たんだとな」
(ドキッ!)
いきなり自分の事を言われたので、思わず胸がドキッとしてしまった。
「山本賢人だな?初対面だが、しかと噂は聞いているぞ。2年前の『キング・オブ・クリエイト』を歴代最年少で優勝したんだとな」
「い、いえ・・・あんなのただのまぐれですよ」
「そんなことはないはずだろ?あの時のお前はまるで輝きかけのダイヤだったが、とても美しかった。
それに私は・・・・・・
お前のファンでもあるからな」
「「「「えぇーーーーー!!?」」」」
クラス一同が驚きに包まれる中、賢人は目を丸くして唖然としていた。何故なら自分にファンがたくさんいる事は百も承知だったが、あれから2年も経っているのにも係わらずまだ居ることが分かったからだ。
当の長谷川先生も頬を赤く染めながら、もじもじと喋った。普段はクールであまり表情が変わることはないというが、長谷川先生が乙女のような表情で顔を赤くするその姿を見た者はこの学校では何人いるだろうか?
「・・・だが、お前のファンであろうと私が教師であることには変わりない。
ビシバシ教えていくから覚悟しておけ」
長谷川先生はクールな印象に戻り、恥ずかしさをごまかしながらも賢人の胸にグサッと刺さるように厳しく言い放った。
「・・・済まない皆、それでは授業を始めるから科書とノートを開け」
チャイムが鳴り終わってから10分経っているが、賢人にとって本格的な授業が始まった。長谷川先生は大きな黒板の半分は埋め尽くす程の文章問題を書いた。
「早速だが、この問題を解ける奴はいるか?」
長谷川先生は賢人を含めた生徒達に質問したが、誰一人として解答しようと名乗り出る者は居なかった。
むしろ自分が当てられるのを恐れているかのように気まずい顔をしながら、ただひたすら黙認し続けていた。
(え?なになにこの雰囲気?めちゃくちゃ気まずいんですけどーーー!!真依ちゃんはこの状況に対してどうしているのかな?)
長い沈黙が苦手な賢人は肩身を狭くしながらも、前の席に座っている真依を見た。周りの人とは違い、若干落ち着いているように見えるものの、顔から首まで冷や汗を流していた。
たとえ後ろから見ていても苦笑いしながらも戸惑いを感じているのが分かった。
「・・・誰も名乗る奴は居ないか。流石に名門私立大学で出る問題から出しているんだから、分からないのも当然か・・・」
(え!?大学に出てくる問題!?そりゃ桐谷さんも分からない訳だ・・・)
「では山本、お前がこの問題を解け」
「え!?僕がですか!?」
「あぁ、昨日が初めての授業だったとはいえ、数学の解答は素晴らしいと中岡先生から既に話は聞いているぞ」
長谷川先生はこっちの様子が丸っきり分かっていたかのように笑みを浮かべながら言った。
流石は大阪とは違って、日本の都市とも言われる東京。世間話、そして噂という名の風の流れが早い。
長谷川先生もその一環で、こちらの腕を試しているんだなと、賢人は実感した。
「・・・分かりました」
賢人は息を飲んだ後、目の前に立ち塞がる大きな壁を乗り越えるかのように席から立って前の黒板へと向かい、解答するために黒板に書かれている文章を一番最初から心で読み始めた。
解答するのはほぼ不可能だという文章問題を真剣に向き合うが、表情は険しくなるばかりだった。
そんな中、後ろでただ見守る事しか出来ない生徒達は不安が募るばかりだった。
(んだよこれ!?こんなにムズい問題、賢人は解けるのか?)
(見た所、まだ解答への道筋を探している。
ただ全く分からないという訳ではなさそうだな・・・)
(賢人くん・・・頑張って!)
怜人、伸之、真依の3人は心の中で賢人の様子を伺いながら様子を見ていたが、賢人の表情は更に険しくなっていたがここで・・・
(・・・・・・あ、そうか!)
険しかった賢人の表情は一瞬にして和らぎ、黒板の隅に置いてあった白のチョークを手に持ち、途中の計算式、そして証明と説明による文章をスラスラと書き始めた。
「なっ・・・」
「嘘だろ・・・?」
「信じられない・・・」
流石にこの問題の解答は不可能だと確信していた長谷川先生だけでなく、
怜人や伸之を含めたクラスメート達は唖然として見ていた。更にその表情から、どうやって考えたらこの問題の解答に辿り着くのか誰も理解出来なかった。
「ーーー以上です」
黒板に解答を書き終えた賢人はチョークを置いて、後ろに振り返った。その解答は文字の多い問題にしては意外にも解答文は少なかった。
「っ!・・・正解だ」
まさかとは思いつつも、黒板に書かれた解答が合っているかどうか確認した長谷川先生は流石に驚き、悔しくて下唇を噛みながらも正解を認めた。
「「「おぉーーー」」」
クラス全体の雰囲気は静寂という重い空気から一変して、驚きと呆然に包まれた。
それも当然だ。昨日転校してきてまだ2日しか授業を受けていない男子がたった今、名門私立大学で出題され、高難易度の問題をサラッと解いてしまったのだから。
印象を一言で例えるなら『クールビューティー』という言葉が似合う彼女が発した言葉によって賢人は現実世界に引き戻され、状況を把握した。彼女は智則先輩に呼び出されてここにやってきたのだと。
しかしこんな朝早くから呼び出す程の用があるなんて、まさかとは思うが・・・
「じ、実は・・・この学校に入学した時からあなたのこと好きでした!俺と付き合って下さい!」
(やっぱりそうなりますよねー!!でも、一年の頃から想っているなんて何かロマンチックな感じだなぁ。確か漫画やアニメではここはOKするんだったと思うけど、あんな怖い感じの人がするとは思えないけど・・・)
「キモいんだけど、マジで」
「え・・・今なんて・・・?」
彼女の目に宿る感情が一瞬にして殺意に変わったのが分かり、見ているこっちにもその殺意が伝わってきて鳥肌が立った。
それはまるで自然界で獲物を狩る時の獣のようだった。
「あんたさ、サッカー部のエースだからって、他の女子にちやほやされている上にイチャイチャしているんだってね?」
「あ、いやそれは・・・」
「そうだとしたらもしOKした所で、私の目を盗んでまた他の女子とイチャイチするんじゃないかしら?」
「別にそんなことは・・・」
「私はね、あんたみたいなナルシストで調子に乗る奴が大っ嫌いなのよ!!」
「っ・・・!!」
「分かったら二度と私に話しかけないでくれる?」
極限なまでの罵倒を彼に浴びせた挙句、トドメの捨てゼリフを吐き捨てると、彼女はイライラしたまま去っていった。
その場に取り残された智則は、地獄のどん底に叩き落されたかのように真っ白になって四つん這いになった。
その姿はまさにあの有名なボクシング漫画及びアニメの名シーンを態勢を変えた上で再現したようだった。
「うわぁ、学園一のモテ男でも無理だったかぁ・・・」
「あの様子だと当分立ち直れやしないな」
周りがショックに加え騒然としながらもアイドルのLIVEが終わったかのように去っていく中、怜人と伸之は智則先輩を哀れむようにして言った。
「怜人、斉藤さん。これは一体どういう事か説明してくれないか?」
「あぁ、あれは2年A組石見里奈。通称『冷徹姫』だよ」
「成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、生徒会副会長を務める、いわゆるこの学校の生徒全員の憧れの存在だ」
「へぇー」
「それ故に男子だけでなく、女子からも高い人気を誇るんだ。だが彼女は女子とは仲良くするが、大の男嫌いでも有名なんだ」
「・・・そうなの!?」
「あぁ、だから石見先輩に告白した奴は必ずキツい言葉とセットであんな風に返り討ちにあっちまうんだ」
(あっ、だからあんな風に智則先輩を振ったのか。いやそれにしても振る時の罵倒が凄かったなぁ・・・)
「とうとう智則先輩まで振られるなんてなぁ・・・」
「えっ?智則先輩もって事はもしかして・・・」
「あぁ、里奈先輩に惚れて告った奴等は全員振られちまったよ」
「学園一のモテ男の智則先輩もダメってことになると、もう里奈先輩を振り向かせられる可能性がある奴がいなければ、希望がある奴もいないも同然だ」
「言っておくが、惚れたからって行動に出るんじゃねぇぞ?後で絶対後悔する事になるからな」
「え?あ、うん・・・・・・いやでもまさかね・・・」
「何だよ?どうかしたのか?まさかもう惚れたってことはないだろうな?」
「あ、いやそうじゃなくて、前にどこかで会った気がして・・・。でもいつ頃だったかなぁ・・・?」
「まさか!里奈先輩は立派な東京育ちだぞ?そんな偶然あるわけねぇって」
「そ、そうだよね。ははっ、何言ってんだろ僕・・・」
(確かにそうかも知れない。でもあの紫のかかった髪と目は何故か初めてじゃなかった気がするんだけど、どうしても思い出せないんだ?何か記憶に引っ掛かっるんだよなぁ・・・)
「・・・ってやベぇ!もうチャイムが鳴るじゃねえか!おい、急いで教室に戻るぞ!」
「お、おい怜人、お前置いていくなよ!」
「ち、ちょっと二人とも待ってよ!」
朝のチャイムの音が学校中に響く中、時計を見て全力疾走する怜人の後を追い掛けながら伸之と二人で、大慌てて教室まで走っていった。
◇◇◇◇
「えぇこれで朝の会を終わりに致します。次の授業の準備をしておくように。以上解散」
竹内先生はそういって教室から出ていった。
朝の会が終わってから、授業の準備をしたり、本を読んだり、何人か集まって会話したり、スマホでゲームするなどみんなそれぞれが休憩を取り始めた。
「・・・ったくもう、ギリギリセーフで助かったー」
「だな。って怜人、なんで僕達を置いていくんだよ」
「悪ぃ悪ぃ。あまりにも急ぎ過ぎたもんで、ついピッカリ・・・」
「それを言うなら、うっかりだろ、怜人」
「まぁそうとも言うな・・・」
あの後三人は、チャイムが鳴り終わり、先生が教室に入る前に何とか間に合った。三人とも全力疾走してきたので、まだ息が切れていた。
特に賢人はまだ荷物を持っていたままであったため三人の中で一番疲れていた。
「えーと、次の授業は何だっけ?」
「あー、確か長谷川先生の数学だったような・・・」
「あれ昨日の数学に長谷川って先生いたっけ?」
「あー、賢人はまだ知らなかったか。僕達の学年ではそれぞれ担当している教科によって先生の数も変わるんだ。数学では長谷川愛音っていう女の先生が担当しているんだけど、昨日はたまたま出張だったからもう一人数学を担当している中岡 剛先生だったんだ」
「へぇー」
(担当の先生って一人だけじゃないんだ、結構ややこしいなこの学校・・・。前の高校ではそんなの無かったのに。せいぜい副担任ぐらいはいたけど・・・)
「あっそうそう、一つだけ言っておくけどよ、
長谷川先生はこの学校の先生の中で、1番の美人教師なんだぜ。間違って惚れちまうんじゃねえぞ?」
「「いやお前さっきと同じ様な事言ってるじゃん」」
賢人と伸之は怜人に素早く突っ込んだ。
キーンコーンカーンコーン
休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り、クラスメート達は一斉に自分達の席に戻った。
しかしチャイムが鳴り終わったのにも関わらず、肝心の長谷川先生は現れていなかった。
(あれ?チャイムが鳴り終わったのにまだ来ないなんて一体どういう事だ?)
賢人が心の中でそう考えていた矢先・・・
「きっと委員会の最後の仕事をまとめるのに時間が掛かってるんだよ。今朝そう言ってから」
「きり・・・いや、真依ちゃん・・・」
まるで心を読んだかのように真依が前の席から後ろを向いて話し掛けてきた。
〝ねぇ山本君。せっかく同じクラスになれたんだから下の名前で呼び合わない?〟
緑色と青色の瞳が合った時、今朝言われた言葉と出来事を思い出してしまいお互いに頬を赤くして視線を反らしたその時だった。教室のドアがガラガラと音を立てながら開き、一人の女性が入ってきた。
「・・・!」
その姿から目に映るのは後ろに長く伸びた綺麗な黒髪。黒眼鏡から通して見える色褪せた碧色の瞳。
誰もが注目してしまいそうな豊満な胸。
紺色のノースリーブの上に医療ドラマに出てきそうな白衣を羽織るその姿は『妖艶』という言葉に相応しい女性だった。
「遅くなって済まない、資料のまとめるのに時間が掛かってしまってな」
相応のリップを塗っているのか光に当たると綺麗に光る唇から出る男勝りかつクールな口調を放つこの人こそが数学を担任している長谷川先生だと賢人は確信した。
「あと、私は昨日出張で留守にしていたから、今朝聞かされたばかりなのだが、このクラスに転校生がやって来たんだとな」
(ドキッ!)
いきなり自分の事を言われたので、思わず胸がドキッとしてしまった。
「山本賢人だな?初対面だが、しかと噂は聞いているぞ。2年前の『キング・オブ・クリエイト』を歴代最年少で優勝したんだとな」
「い、いえ・・・あんなのただのまぐれですよ」
「そんなことはないはずだろ?あの時のお前はまるで輝きかけのダイヤだったが、とても美しかった。
それに私は・・・・・・
お前のファンでもあるからな」
「「「「えぇーーーーー!!?」」」」
クラス一同が驚きに包まれる中、賢人は目を丸くして唖然としていた。何故なら自分にファンがたくさんいる事は百も承知だったが、あれから2年も経っているのにも係わらずまだ居ることが分かったからだ。
当の長谷川先生も頬を赤く染めながら、もじもじと喋った。普段はクールであまり表情が変わることはないというが、長谷川先生が乙女のような表情で顔を赤くするその姿を見た者はこの学校では何人いるだろうか?
「・・・だが、お前のファンであろうと私が教師であることには変わりない。
ビシバシ教えていくから覚悟しておけ」
長谷川先生はクールな印象に戻り、恥ずかしさをごまかしながらも賢人の胸にグサッと刺さるように厳しく言い放った。
「・・・済まない皆、それでは授業を始めるから科書とノートを開け」
チャイムが鳴り終わってから10分経っているが、賢人にとって本格的な授業が始まった。長谷川先生は大きな黒板の半分は埋め尽くす程の文章問題を書いた。
「早速だが、この問題を解ける奴はいるか?」
長谷川先生は賢人を含めた生徒達に質問したが、誰一人として解答しようと名乗り出る者は居なかった。
むしろ自分が当てられるのを恐れているかのように気まずい顔をしながら、ただひたすら黙認し続けていた。
(え?なになにこの雰囲気?めちゃくちゃ気まずいんですけどーーー!!真依ちゃんはこの状況に対してどうしているのかな?)
長い沈黙が苦手な賢人は肩身を狭くしながらも、前の席に座っている真依を見た。周りの人とは違い、若干落ち着いているように見えるものの、顔から首まで冷や汗を流していた。
たとえ後ろから見ていても苦笑いしながらも戸惑いを感じているのが分かった。
「・・・誰も名乗る奴は居ないか。流石に名門私立大学で出る問題から出しているんだから、分からないのも当然か・・・」
(え!?大学に出てくる問題!?そりゃ桐谷さんも分からない訳だ・・・)
「では山本、お前がこの問題を解け」
「え!?僕がですか!?」
「あぁ、昨日が初めての授業だったとはいえ、数学の解答は素晴らしいと中岡先生から既に話は聞いているぞ」
長谷川先生はこっちの様子が丸っきり分かっていたかのように笑みを浮かべながら言った。
流石は大阪とは違って、日本の都市とも言われる東京。世間話、そして噂という名の風の流れが早い。
長谷川先生もその一環で、こちらの腕を試しているんだなと、賢人は実感した。
「・・・分かりました」
賢人は息を飲んだ後、目の前に立ち塞がる大きな壁を乗り越えるかのように席から立って前の黒板へと向かい、解答するために黒板に書かれている文章を一番最初から心で読み始めた。
解答するのはほぼ不可能だという文章問題を真剣に向き合うが、表情は険しくなるばかりだった。
そんな中、後ろでただ見守る事しか出来ない生徒達は不安が募るばかりだった。
(んだよこれ!?こんなにムズい問題、賢人は解けるのか?)
(見た所、まだ解答への道筋を探している。
ただ全く分からないという訳ではなさそうだな・・・)
(賢人くん・・・頑張って!)
怜人、伸之、真依の3人は心の中で賢人の様子を伺いながら様子を見ていたが、賢人の表情は更に険しくなっていたがここで・・・
(・・・・・・あ、そうか!)
険しかった賢人の表情は一瞬にして和らぎ、黒板の隅に置いてあった白のチョークを手に持ち、途中の計算式、そして証明と説明による文章をスラスラと書き始めた。
「なっ・・・」
「嘘だろ・・・?」
「信じられない・・・」
流石にこの問題の解答は不可能だと確信していた長谷川先生だけでなく、
怜人や伸之を含めたクラスメート達は唖然として見ていた。更にその表情から、どうやって考えたらこの問題の解答に辿り着くのか誰も理解出来なかった。
「ーーー以上です」
黒板に解答を書き終えた賢人はチョークを置いて、後ろに振り返った。その解答は文字の多い問題にしては意外にも解答文は少なかった。
「っ!・・・正解だ」
まさかとは思いつつも、黒板に書かれた解答が合っているかどうか確認した長谷川先生は流石に驚き、悔しくて下唇を噛みながらも正解を認めた。
「「「おぉーーー」」」
クラス全体の雰囲気は静寂という重い空気から一変して、驚きと呆然に包まれた。
それも当然だ。昨日転校してきてまだ2日しか授業を受けていない男子がたった今、名門私立大学で出題され、高難易度の問題をサラッと解いてしまったのだから。
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