僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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4話 本心×一目惚れ

授業の終わりを告げるチャイムが学校中に鳴り響いた。

「これで授業を終える。伝えておいた課題を忘れずにな?以上、解散」

授業が終わり皆が休憩に入ると、極限ともいえる程の緊迫した空気が立ち去り教室には明るい雰囲気に戻った。

「賢人!お前すげぇなぁ!あんな問題どうやったら解けるんだよ?」

「流石の俺でもあの問題を解く事など不可能とも言い難い」

授業が終わるなり怜人と伸之は頭を使い過ぎたせいもあるのかグッタリとしていながらも、自分の机で教科書やノートを整理している賢人に質問した。

「え?あぁ、中学校を卒業した後、勉強していた時にたまたまやっていた問題と内容が似ていたから・・・
最も、最初にあの問題をやろうとした時は流石に骨が折れたもんだよ」


「「いやお前は一体どの辺を勉強したらあんな問題解ける様になるんだよ・・・」」


怜人と伸之は考えていた事を息ピッタリに言った。
化け物レベルの頭脳を持つ賢人にそんな二人の考えなど分からず、ただポカンとするだけであった。

「・・・ていうか賢人。お前いつの間に眼鏡かけてたんだよ?」

「え?あぁ、勉強する時はいつも眼鏡かけるものなんで」

伸之に指摘された賢人は授業の最中にかけたと思われる白と桃色で塗装されたフレームの大きい眼鏡を外した。

「だがお前のその眼鏡、賢人の割にはカラーが可愛過ぎるんじゃないか?」

「あっホントだ!賢人って容姿だけじゃなくて趣味まで女子っぽいよなぁ」

「っ・・・いや、そんな事は無いと思うよ・・・?」

賢人は照れながらも、自分が女子に近い事を否定したが、周りにいる何人かがこちらを見てひそひそと話をしているのが分かった。
言われてみれば、確かに自分は小学生の頃からずっと周りから女子っぽいとイジられる(?)事が多かった。そのせいもあって、体育祭や文化祭でも女装に近い服を着せられて、本当に女子だと間違われることあった。
しかし、賢人にとってその黒歴史(?)は死んでも他人に話したくない程、恥ずかしいものだ。

「次の時間は国語だよな?」

「あぁ、とりあえず資料集が必要だと思うぞ」

「そうだな。でもその前に、ちょっと喉渇いたから自販機行ってくるわ」

「あ、俺も行くぞ」

「じゃあ僕も」

「OK、人数が多い方が好きだしな」

三人は自分達の鞄から財布を取り出して教室から廊下へと出た。すると・・・・・・

「あっ!見て!あの子が昨日言ってた山本くんだよ!」

「あんな背が小さい奴が言っていた大会のチャンピオンなんだ」

「可愛いー!今日もやる気だして行こー!」

「おーい山本くーん!こっち来て写メ取らせてくれー!」

廊下にいた男子女子問わない生徒たちが賢人を見つけるなり、あちこちから声が飛んできた。

「・・・ホンマに勘弁してほしいわぁ」

「まぁ良いじゃねえかー賢人。それなりに人気って事なんだよお前は」

「やかましいわ!」

怜人に煽られてプンプンと怒るその姿は可愛らしくえ全然怖くなく、そうやって会話を続けながら三人は自販機のある中庭へと向かって行った。


◇◇◇◇


ここはB棟の反対側に建っているA棟。E組を除く2年生と3年生の教室がある。その内の二階にある2年A組の教室で、里奈は窓辺付近にある自身の机に座って不機嫌そうにしながら、外の景色を眺めていた。

「おーい里奈!今朝も大変だったねー」

「ホントだよーまさかC組の伊達くんまで切り捨てちゃう振っちゃうなんてさー」

里奈と同じクラスの女子二人が里奈に話しかけた。

「・・・あんな下心丸出しで告白する奴に振り向く訳無いでしょ?」

「・・・さ、流石は『冷徹姫』と呼ばれるだけの事はあるわ、里奈!」

「成績優秀で、容姿端麗。だけど大の男嫌いで、先生以外の男は断固拒絶。これほどスゴい内面を持った女子なんかいないわぁ」

「いや、それ褒めてる事になっていないからね?」

流石の里奈もこれには少し呆れた。自分がそこまで怖く思われている事をまるで誇っているみたいで。

(私だって、ちゃんと恋と言える恋がしたいもん・・・)

実は里奈は根っから男が嫌いな訳ではなく、自分の事を最初から見て想って考えてくれる人と恋をしたい乙女そのものなのだ。
しかしそんな里奈に恋をしてくる男子は皆いい加減な気持ちで向かってくる者ばかりで、何回も振っていくうちにいつからか男子達は自分を恐れるようになり、自分もどんな人が好みでタイプであったのか分からなくなってしまっていたのだ。

それが影響で告白された時もどう対応したすれば良いのか分からず、ついついあんな風に厳しく言ってしまうのだ。

しばらくして里奈は自分の携帯を取り出して、カメラモードを開いた。

「里奈?何してんの?」

「ちょっと景色の写真撮っておこうかなって思って。ほら、ここから見える景色って最高でしょ?」

「ふ~ん、まぁ良いけど・・・」

里奈が撮ろうとしている景色は窓から覗いてすぐに見えるグラウンドと校門の上に広がる青い空と白い雲、そしてその両方を照らす太陽の光が合わさったものだ。しかも、今日は快晴でいつもより良く見えるので最高のベストショットだ。

本当は2年生で最初の授業がある日に撮ろうと思っていたのだが、生徒会などの用事があって撮る機会をことごとく逃してしまっている。
今度こそこのチャンスを逃すまいと、校門とグラウンドが映る方向に携帯を向けたその時だった。
学校から入り口から体育館までに出来ている通路で三人の男子が喋りながら、歩いてるのが分かった。

「んだよ、中庭にある自販機の飲み物が補充中でもう一個のある自販機まで遠回りするとか、マジ最悪だし!」

「そう怒るな怜人。こっちにある自販機の方がもっと安いし、美味い物揃ってるじゃないか」

「それに僕が好きなミルクココアもあったしね」

(なんだ、仲良さそうじゃん)

里奈が羨ましそうにして見ていると少し違和感に気付いた。その内の一人はやけに身長が低く他の二人の身長に比べると全く持ってとも言える程の差だった。
しかも・・・

(あの子は確か・・・昨日転校してきたって言ってた子だよね?それに今朝私が告白された時にもチラッといたような・・・)

里奈がなお様子を見ていると、グラウンドの方で体育の授業前でサッカーの練習でゴールキーパーをしていた男子生徒が自分のチームにパスしようと思いっきり投げたがら投げる力が勢い余って三人の方に目掛けて高く飛んでいった。

「あっヤバイ!すいませーん!ボールがそっち行ったんで取ってもらっても良いですかー?」

グラウンドから聞こえてくる声に気付いた三人は飛んできたボールをいち早く捉えて、賢人がキャッチしようと後ろに下がったが、すぐ後ろにあった桜の木の根元に足が引っ掛かり桜の木にぶつかって思わず仰向きに転んでしまった。
更にその衝撃で、咲いていた桜がすぐ下にいる賢人目掛けて大量に降ってきた。

(あ・・・)

里奈が大丈夫なのかと心配して見ていると、雪の如く一ヵ所に積もった桜の中から賢人が顔を出した。

「賢人、大丈夫か?」

「悪ぃな、取らせに行かせちゃって・・・」

「あいててて・・・」
 
「!」

賢人を立ち上がらせるため怜人は手を差し伸べようとしたが、何かに気付いて手を差し伸べるのを止めた。

「てか賢人その頭、なんか髪飾りっぽくなってるぞ」

「え?」

怜人の言う通り、さっき桜に埋もれた影響なのか、桜の花びら数枚が賢人の髪の毛に引っ掛かっていた。

「ハッハッハ!」
 
「何それ?可愛いじゃん!」
 
「っ!!」

怜人と伸之に可愛いとイジられる賢人は今まで以上に顔を真っ赤にして、髪の毛に引っ掛かっていた花びらを振り払った。

「う、うるさいわ!友達が転んだんやからすぐに助けるぐらいしーや!」

「えーその方向に似合うのにー・・・」

「ハァ!!


カシャッ


その様子を見続けていた里奈はいつの間にか賢人に向けてカメラボタンを押していた。
気づいたら心と体が両方とも熱く、心臓の音が異常な程うるさく、里奈の瞳の奥に映る光がハート型に変わっていた。

「あ・・・あ・・・」

「?・・・里奈?どうしたの?」

「え?いや、その、何でもない・・・」

「?」

友達の女子に話し掛けられた事にようやく気が付いた里奈は、今自身に起きている状況を何とか誤魔化した。何故自分が、あの子を見てこんなにドキドキしているのか一旦いつもの様に冷静になり、ようやく分かった。


自分はあの子に一目惚れしたんだと・・・
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