ニートの引きこもり、大好きなストッキングを重ね穿き!三週間風呂に入ってません!~異世界転生したら最強3K冒険者ストッKINGになりました~

けろけろ

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4.小屋を入手

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「やったあ! これでゼンも私たちの仲間ですね!」
 チャンカナは喜んでいるが、俺はマスターと占い婆さんの方を見た。
「今日から仲間、という事でいいのか?」
「ゼンさん――いや、ストッKINGの力は、きっと我がギルドの役に立つ事でしょう」
「そうじゃそうじゃ、この男は逃したらいかん!」
「じゃあよろしく」
 握手の為に差し出した俺の手を、ソッと触れるだけのマスター。いきなり心の隔たりを感じてしまった。
 まぁいい。
「マスター、早速だが仕事と宿が欲しい。十万円しか路銀が無くてな」
「仕事ならロビーの掲示板で好きな依頼を選ぶといい。あちらこちらでモンスターの被害が出ている。宿は――失礼だがその臭いだと、どこからも断られるだろう。私の使っていない小屋があるから、そこにするかね? 窓も無ければ水も通っていない物置き小屋だが……」
「是非とも」
 俺は、まず小屋へ案内してもらう事にした。明るい内に寝床を作って安心し、それからモンスター退治に行きたいからだ。
「チャンカナ、お前はロビーで依頼を選定しておいてくれ」
「何でですか? 私も自分が寝起きする場所を見たいです!」
「水も無い小屋よりは自宅の方がいいだろう? ギルドも一緒だし、通ってくるといい」
「嫌です! 私は神様にゼンと協力するよう言われたのですよ! それに、夜間のスメルズゼットにも多大な興味が――」
「ああもう! 解った解った! じゃあ付いてこい!」
「はい!」
 小屋暮らしはどうかなと思ったが、本人が望むなら仕方ない。俺はチャンカナを伴い、マスターの後を付いていく。

 その小屋は、大きい公園の隣にあった。中にはこの世界のスポーツ道具が入っていて、でも今は使っていないそうだ。
「道具は処分していいから好きに使って。これ、鍵ね」
「ありがとうございます、じゃあ遠慮なく」
「ではまたロビーで」
 そう言うと、マスターは去って行った。俺は早速、室内に入ってみる。
「よしよし。小屋と言っても、スポーツの道具さえ処分したら、そこそこ広いじゃないか」
 間仕切りを立てれば、二部屋は確保出来そうだ。なので早速スポーツ道具を小屋の外に出そうと思ったら、スメルズゼットが咳払いする。
「その一件は儂に任せてくだされ!」
「掃除をか?」
「この道具に儂を宛がってくだされば、散り散りにして吸い込みますぞ!」
「そんな掃除機みたいな……お前の力だと床板まで斬っちまうんじゃないか?」
「木人と岩で感覚は得たでござる! またの機会がありますれば、おが屑も砂も出しもうさん!」
 じゃあ物は試しと、野球のバットみたいな物にスメルズゼットを宛がう。するとバットだけが消えた。不思議なものだ。
「かっかっか、ゼン殿のストッキングのお陰ですこぶる快調!」
 スメルズゼットの新たな力に、チャンカナの記録が始まっている。とても楽しそうだ。なので、邪魔しないよう他の道具も吸いに掛かる。
「頼むぞ、スメルズゼット」
「応!」
 俺は音も無く吸い込まれていく道具たちを見つつ、我ながら凄い兵器を覚醒させたものだと思っていた。軽いから長時間持っていても疲れないし、喋ってくれるから使いやすいし、斬るだけじゃなくて様々な用途に使える。難点はデカすぎるのと口臭くらいか。でもまぁデカいのは長所でもあるし、口臭は上の中、臭いに耐性のある俺なら、ちょっと気になる程度だ。
 そう考えているうちに、スポーツ道具とやらは全て無くなっていた。ここにベッドでも置けばいいだろう。
「おいチャンカナ、買い物に――ん?」
 いつの間にかチャンカナが居ない。てっきりスメルズゼットに夢中かと思っていた。携帯が無いので連絡も取れないし、俺は小屋の片隅に座ってチャンカナを待つ。すると、異世界で独りぼっちという感じがして不安になってきた。こちとら両親の庇護のもと、五年もニートをやっていたのだ。
「ゼン殿? やけに静かでござるが……?」
 俯いていた俺に、スメルズゼットが声を掛けてくる。そうだ、俺にはコイツがいた。
「例えチャンカナに捨てられても、俺は一人じゃなかったな」
「かっかっか! ゼン殿は大船に乗ったつもりで居てくだされ!」
「そう、そして俺にはストッキングもある……幾らでも出てくる無限のストッキングが……出でよ! チャコールグレー二十五デニール!!」
 天高く手を伸ばせば、ムニッとした感触。引っ張りだすと望みの物が手に入った。
「この大人びた色……タイツとの境界線になる厚み……最高じゃないか……!」
 俺は重ね穿きは五枚までと決めていたが、異世界だし六枚目があったっていい。そう思ってハーフパンツを下ろしたら、聞き覚えのある悲鳴が上がった。現れたのはチャンカナだ。
「ゼン! いきなり脱いでいて驚きました!」
「驚いたのは俺だ! 何も言わず、急に消えて!」
「ごめんなさい、作業の邪魔になると思いまして!」
 チャンカナの手にはバケツと雑巾があった。水も汲んで来たようだ。
「さ、これで小屋の中を拭きましょう! 住むんですからね、きっちりと!」
「ええー……面倒だな。寝られればそれでいいだろう?」
「ダメです! 天井、壁、床の順に拭きますよ! 埃は上から下に落ちるんです!」
「天井って……脚立も無いのにどうやって拭くんだ! 身長が足らんわ!」
「……便利な兵器があるじゃないですか?」
 チャンカナの視線がスメルズゼットに注がれる。
「この剣先、雑巾を挟むのに丁度いいと思うんです!」
「おいおい、伝説の兵器にそんな事を――」
「儂は構いませぬぞ! ささ、雑巾を挟みなされ」
 当の本人がそう言うので、俺は剣先に雑巾を挟んだ。そうして天井を拭けば、とても綺麗になる。あまりにピカピカなのでチャンカナも驚いていた。
 俺はスメルズゼットを床に置き、雑巾を取る。雑巾は真っ白のままだ。
「おい、どうやって天井を拭いたんだ?」
「剣先から蒸気を出し、雑巾に汚れを吸わせるでありましょう? その汚れを分解したのじゃ!」
「便利な家電だな」
「カデン?」
「いや、こっちの話。じゃあついでに壁と床も頼むぞ!」
「心得た!」
 また新しい能力が判明して、チャンカナも喜んでいるだろう。そう思っていたら、彼女は床に正座し、五指を組んでいた。
「クサル神さま、我らに明るい道をお与えください……」
 チャンカナはそんな風に呟いたあと、すっくと立ち上がる。
「……なんだ今のは?」
「クサル教徒は決まった時間に祈るんですよ」
「へぇ……」
「一日に三回、朝、正午、夜って感じですね」
「今は正午か?」
「そうですよ!」
 俺は元の世界で夜メシを食い損ねている。そこから何時間経過したのかは判らないが、昼と聞いて腹が鳴った。
「掃除が終わったらメシを食って、寝床を買いに行くか」
「はい!」
 チャンカナの良い返事を聞いてから、俺はまた掃除に戻る。すいすいスメルズゼットを動かすだけなので簡単だ。

 やがて、掃除が終わる。
 俺はスメルズゼットを鞘に収めてから、メシを食うため街中に向かった。しかし、臭いのせいか道行く人が避けていくので参ってしまう。これだと入店拒否は間違いない。なのでチャンカナを派遣し、テイクアウトのクレープ風な何かで済ませる。
 家具屋でもそうだ。俺たちが店に入ると、客がサーッと逃げていく。わずかに残るのは店員のみ。全員が鼻にティッシュを詰めている。
「すまん、今すぐ寝床の類が欲しいんだが。布団かベッド、どちらでも」
「フトン……? ベッドなら取り扱っておりますが」
「ああ、こっちには布団が無いんだな。じゃあベッドで」
「ベッドは職人が組み立てに参りますので、今すぐと言うのは……申し訳ございません」
 なんという事だ。俺は小屋の床で寝なければならないのか。しかもベッドの値段を聞いたら、一台十五万円もした。つまり俺に必要なのは――あっちこっちの家具を面白そうに見ている、チャンカナの分も入れて三十万円。予算を大幅に上回っている。
「手持ちが足りないけれど、寝床風にはならないか?」
「ではベッドの上に敷くマットをお持ちになったらいかがでしょう? ベッド本体を後で買うなら無駄にもなりませんし」
 マットの厚みは七、八センチくらい。幅はシングルで九十センチ。とりあえずはコレでいいだろう。
「値段は幾らだ?」
「一枚四万五千円でございます」
 高くないかコレと思ったのでチャンカナを呼ぶ。しかし、この世界では良心的な値段だと聞いた。
「……そうか、二枚で九万、そうかぁ~……」
 必要経費だというのに思い切れない俺。そこに店員が近寄ってくる。
「いまお買い上げになられましたら、すぐご指定の場所までお届けしますよ!」
「この商売上手が! 南にある公園の隣の小屋まで頼む!」
 これで俺の手持ちはクレープを食べたため一万円以下だ。この金額だと、シーツもタオルケットも枕も買うのが憚られた。小屋にはポツンとマットだけが置かれるのだろう。その装備だと、俺はちっとも落ち着かないと思われる。引きこもっていたいが、嫌でもギルドの仕事をするしかない。
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