ブラッディソード・エクレア

渋谷かな

文字の大きさ
13 / 37

13

しおりを挟む
「アダイブ・シエル!?」
シューはアダイブ・シエルが冥界にいると聞いて驚いた。
「そうだ。アダイブ・シエル様の前ではハーデースなど敵ではないのだ。」
アダイブ・オボロスはアダイブ・シエルに絶対の信頼を置いている。
「今度、会う時までに強くなっておけよ。ハッハッハ!」
シューの脳裏にアダイブ・シエルの自分を見下した言葉が甦る。
「クソッ。アダイブめ。今度、会ったら僕の手で殺してやる。」
シューはアダイブ・シエルに復讐を誓う。
「おいおい、アダイブ・シエル様と戦うことを考えるより、目の前の俺を倒すことを考えろよ。それとも、もう勝ったつもりか? 俺も甘く見られたものだな。」
アダイブ・オボロスはシューを牽制する。
「何を!? アダイブなんか・・・!?。」
「ここは私が。」
挑発にのってしまいそうなシューをヘカテーが制する。
「ハーデース様に刺客が向かっていると聞いた以上、こんなところでゆっくりしている訳にはいきません。」
ヘカテーがシューの前に出る。
「直ぐに、魂を抜いてあげましょう。」
怒れるヘカテーの後ろに死の女神の姿が見える。
「ああ~、怖い怖い。魂でも生気でも・・・抜けるものなら抜いてもらおうか。」
アダイブ・オボロスはヘカテーを前にしても余裕の表情を見せる。
「私に歯向かったことを後悔するがいい! エクストラクト・ザー・ソール!」
ヘカテーがアダイブ・オボロスの魂を抜きにかかる。
「うわあああああああ!?」
アダイブ・オボロスの体から魂が抜かれようとする。
「なんてね。」
アダイブ・オボロスは余裕の表情を浮かべ、魂も体の中に戻っていく。
「なに!? どうして魂が抜けない!?」
ヘカテーは自分の思い通りにならない展開に戸惑う。
「なぜ魂が抜けないのか教えてやろうか? 私はカローンの血を吸い冥界の住人の体質を手に入れたのだ。だから死の女神だろうが、冥王だろうが冥界の者の攻撃は俺には効かないのだ! 分かったか? ワッハッハー!」
アダイブ・オボロスは得意げに笑う。
「冥界の者の攻撃が効かないというのか!? そんなことがあるはずがない!?」
ヘカテーはアダイブ・オボロスの言うことが信じられなかった。
「俺はアダイブ・システムで生み出された白い天使。おまえの血も吸って、俺が強くなる糧にしてくれる。」
「クッ!?」
迫り始めたアダイブ・オボロスにヘカテーは、どう対処すればいいのか思慮している。
「どれ、冥界の女神の血を味見してやろう。」
アダイブ・オボロスはヘカテーに襲い掛かる。
「エエイ!? こんな奴に手も足も出ないというのか。」
ヘカテーは現在の境遇を恨めしく思う。
「死ね!」
吸血天使アダイブ・オボロスがヘカテーに噛みつこうとする。
「なに!?」
アダイブ・オボロスとヘカテーの間にシューが割って入り、アダイブ・オボロスの牙をブラッディソード・エクレアで受け止める。
「シュー!?」
ヘカテーはシュー危機一髪のところをシューに助けられる。
「ヘカテーさんは僕が守る。」
シューは剣でアダイブ・オボロスを振り払い、お互いの距離に間合いができる。
「貴様!? いったい何者だ!?」
「僕は冥界の住人じゃない。生身の人間だ。」
「生きた人間だと!? 嘘を吐くな!? 死んだ人間以外が冥界に来られる訳がないだろう!?」
アダイブ・オボロスはシューの言葉が信じられなかった。
「なら試してください。僕の剣があなたを倒せるか。」
シューはアダイブ・オボロスを挑発する。
「調子にのるなよ! 人間ごときが!」
アダイブ・オボロスは完全にシューの挑発にのってしまい、シューに突進して襲い掛かる。
「エクレアさん、僕に力を貸してください。」
シューは少し寂しそうな表情で剣に願い事をする。
「死の女神でも倒せない俺が、人間の小僧ごときにやられる訳ないだろうが!?」
アダイブ・オボロスはシューに突進する。
「ダアアアッ!!!」
シューは深紅の剣を突き出す。
「グワアッ!?」
シューの剣がアダイブ・オボロスの体を突き刺す。
「おまえに1オボロス銅貨の価値もない。」
シューは不味そうな獲物を仕留めた。
「クッハッハッハ! 悪いが俺は三途の川の守り人、カローンの血を吸ったのだ。俺に冥界の者の攻撃は効かないのだ! ワッハッハー!」
アダイブ・オボロスはダメージを受けているのに、自分は大丈夫だと過信していた。
「エクレアさん、吸って。」
シューの言葉に剣が血を吸い始め、赤い剣が、さらに赤く染まっていく。
「ギャア!? なんだこれは!? 血が吸われていく!? ギャアアア!?」
血を吸われ、どんどん干からびて萎れていくアダイブ・オボロス。
「俺は・・・アダイブ・・・だぞ。」
ブラッディソードは完全にアダイブ・オボロスの血を吸いつくした。
「大丈夫? エクレアさん? 不味そうな血だったから、気分が悪くなったりしてない? ごめんなさい。」
シューはブラッディソード・エクレアに心配して謝っている。
「クスッ。」
さっきまで緊迫していたヘカテーの顔に笑顔が戻った。
「あ!? また笑った!?」
シューは、なぜかヘカテーに笑われることに反応する。
「すまない。バカにしているのではないよ。あのアダイブを倒したシューが、剣に頭を下げている姿が滑稽でね。クスクスッ。」
またヘカテーは笑い出す。
「ああ!? やっぱりバカにしてるんじゃないですか!?」
「クスッ。そんなことはない。私がハーデース様の元まで道案内をするから、道中のボディーガードは任せる。頼りにしているぞ。」
「はい。」
ヘカテーはシューを信頼した。シューもヘカテーを必死に守ろうと思った。
「クスッ。ダメだ。笑いを抑えることができない。クスクスクスッ。」
「へ、ヘカテーさん!? もう!?」
湧き上がってくる笑いを抑えることができないヘカテーに困るシュー。
「さあ、行きましょう。三途の川を渡ります。」
「は、はい。」
シューとヘカテーは冥王ハーデースの元を目指す。
「エクレアさんに会えるんだ。」
シューはエクレアに会うことだけを考え期待に胸がドキドキしていた。


「なかなか釣れないな。」
冥界の池で釣りをしている者がいる。
「エサが悪いのかな? 人間界に行って、生きた人間をさらってくるか?」
この惚けた釣り人が冥王ハーデースである。
「ああ~釣れない。」
ハーデースは両手を伸ばし天を仰ぐ。
「ん?」
何者かが空にいて、ゆっくりとハーデースの元に降りてくる。
「探しましたよ。ハーデース様。」
空から舞い降りた白い光を放ちまくる者は、釣り人がハーデースと知っている。
「誰だ? おまえ。私は忙しい。消えろ。」
ハーデースは釣りに忙しいのだった。
「そういう訳にはいきません。わざわざ冥界まで来たんです。少しは俺の相手をしてもら・・・な!?」
その時、池から巨大な冥界魚が現れて、白い天使を丸飲みする。
「そうか、エサは亡者より、生きた人間の方がいいのか。」
陸に上がってピチピチと跳ねている冥界魚を見てハーデースは、エサの重要さに気づいた。
「ああ~不味そうな肉だ。魚も人間界まで行って釣った方がいいのかな。」
口では悪く言うものの、魚が取れたことにご満悦だった。
「今日は冥界魚のオニオン・ホイル蒸しにしよう。不味そうな見てくれだが、味は絶品に違いない。」 
このハーデースは釣りもすれば、料理もする愉快者らしい。
「ん?」
その時、冥界魚がアンコウのように白い光を放ち内部から爆発する。
「おえ、汚い魚だ。おかげで体中がネチョネチョしてやがる!?」
中から冥界魚の胃液がベトベト粘っている白い天使が現れた。
「俺の名前はアダイブ・シエル。アダイブ本体に近い男・・・!?」
アダイブ・シエルが自己紹介をしていると、アダイブ・シエルの体が吹き飛んで消滅した。
「消えろと言ったはずだ。」
冥界では冥王ハーデースの思い通りにならないことはなかった。

つづく。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

遊鷹太
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

処理中です...