ブラッディソード・エクレア

渋谷かな

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「私に剣を突き刺し、ブラッディソードに冥王の血を吸わせろ。エクレア少年。」
冥王ハーデースの切り札はシューであった。
「さあ、早くさせ。エクレア少年。」
「ええ!? そんなこと僕にはできませんよ!?」
刺せという言うハーデースにシューは戸惑い抵抗する。
「エクレア大好き天使の時のように、何もしないつもりか?」
「な!?」
ハーデースの指摘にシューは忘れ去りたい出来事を思い出す。
「え、エクレアさん・・・。」
シューは過去を思い出し体の動きが止まり震えが始まる。
「何もできなかった・・・エクレアさんを助けられなかった・・・違う・・・僕がエクレアさんを殺したんだ・・・。」
シューは自己嫌悪に陥る。
「エクレアさん・・・うああああ~!?」
シューは最愛の人を自分の手で殺したことを思い出し精神が壊れる。
「・・・。」
ハーデースは黙ってシューを見ている。
「おい、ハーデース。か弱い人間に何を言ってるんだ? 愛する天使さえ守ることができなかった人間に期待するのはやめるんだな。」
アダイブ・シエルはシューだけでなく、冥王ハーデースまでバカにしたようなものの言い方をする。
「それはどうかな? 追い込まれれば追い込まれるほど、もがき苦しむのが人間だ。天使の模造品。」
「なんだと!?」
ハーデースはアダイブ・シエルを天使の模造品と言い捨てる。
「・・・血。」
シューは心を閉ざした。
「・・・エクレアさんの血。」
シューは目が点になったままで視点が合っていなかった。
「・・・そうだ・・・血を集めなきゃ・・・血を集めれば・・・エクレアさんが生き返るんだ。」
シューの中で何かが覚醒する。
「血、血、血、血、血、血、血!!!」
シューはエクレアのために血を求める狂気の世界に精神が入る。
「なんだ!? あの変わりようは!? 同じ人間なのか!?」 
アダイブ・シエルはシューの天と地ほどの変わりように戸惑う。
「天使を真似て神が作ったアダイブ。おまえには分かるまい。他人を愛する心を。」
ハーデースも冥界の王ではあるが、妻のペルセポネーを愛している。
「愛する心だと!? 人間ごときの心がなんだというのだ!?」
明らかにアダイブ・シエルは動揺していた。
「もしも天界と冥界の力を手に入れたおまえが負けるとすれば、人の心だ。」
「人の心!?」
アダイブ・シエルは神の作りし新しい天使だが、人間の心の強さを理解できなかった。
「おい、エクレア少年。」
「!?」
シューはハーデースを見る。シューもハーデースを見る。
「大好きな天使に会いたければ、私の血を吸いに来い。」
「・・・血・・・エクレアさん・・・うおおおおおおお!」
シューはハーデースを目掛けて突進する。
「でやあ!」
シューはブラッディソードでハーデースの胸を突き刺す。
「ゲフッ!? そ、それでいい。エクレア少年。」
ハーデースの胸から血が湧き出し、その血をシューの剣が吸い深紅に染まっていく。
「・・・血・・・血が足らない・・・血がまだまだ足らない!」
シューがどれだけ冥王ハーデースの血を吸っても、エクレア大好き天使は生き返らない。
「エクレアさん・・・エクレアさん・・・。」
シューは正気を失うとエクレアのために血を集めることしか考えていない。
「おい、そろそろ離れてもらおうか? エクレア少年。」
「うわあ!?」
ハーデースは冥王の覇気だけで、胸に刺さった剣ごとシューを吹き飛ばす。
「さあ、冥王の血だけでは大切な愛する人は甦らないぞ。そこのアダムとイブの出来損ないの吸血天使の血もいるんじゃないか?」
ハーデースはシューとアダイブ・シエルが戦うように仕向ける。
「血・・・血!?」
アダイブ・シエルを見つめるシューは思い出してしまった。
「・・・アダイブ。」
エクレアを殺すきっかけになったアダイブのことを。
「血・・・アダイブ・・・エクレアさん・・・血・・・アダイブ・・・エクレアさん・・・。」
シューの表情が怒りに満ち溢れる。
「うわああああああ!?」
そして気持ちを抑えることができずに大声で叫ぶとシューの姿が消えた。
「なに!?」
一瞬でシューはアダイブ・シエルの目の前に現れる。
「死ね! アダイブ!」
シューはブラッディソードで斬りかかる。
「ええい!?」
アダイブ・シエルは間一髪の所で避ける。
「ペルセポネー!?」
「あなた・・・。」
アダイブ・シエルから離れた妻のペルセポネーを主人のハーデースが救い受け止める。
「・・・。」
その様子を面白くないように死の女神ヘカテーが見ている。
「血! 血! 血! 血! 血! 血! 血!」
シューは血を求める精神の壊れた剣士になってしまった。
「なんだ!? この動きは!? 以前の人間とは違う!?」
アダイブ・シエルはシューの剣を受け止める。前に戦った時は自分の圧勝だった。所詮は人間だと格下に見下ろしていた。
「気圧されているというのか!? 天使の私が!? 人間ごときに!?」
それなのに今はどうだろう。パワーもスピードも以前とは比べ物にならない人間のシューに押されている。
「舐めるな!!!」
アダイブ・シエルがシューに斬りかかる。
「なんだと!?」
斬られたシューは体を血に変え、アダイブ・シエルの攻撃を避ける。
「アダイブ! 血を寄こせ!」
シューはブラッディソードから大量の血を噴き出しながらアダイブ・シエルに斬りかかる。
「ギャア!?」
シューの一撃がアダイブ・シエルを切り裂く。
「き、斬られた!? なぜ俺が、俺様が人間に傷を付けられるなどと!?」
アダイブ・シエルは目の前で起きている現象、自分の体に傷がつけられたことを受け入れることができなかった。
「血! 血! 血! 血! 血! 血! 血!」
シューは攻撃の手を緩めずに血を求めてアダイブ・シエルに襲い掛かる。
「クソ!?」
アダイブ・シエルは全力でシューの剣を剣で受け止める。
「なぜ人間ごときが、神が想像した俺と互角に戦っているだと!? ふざけるな!」
アダイブ・シエルはパワーでシューを圧倒しようとする。
「エクレアさんの敵!!!」
シューはパワー勝負に出たアダイブ・シエルをパワーで押し払う。
「うわあ!? 神の使徒である俺が力負けしただと!?」
アダイブ・シエルは、もう何が何だか分からなくなっていた。
「どうだ? 模造品。人間の情念は?」
ハーデースがアダイブ・シエルに声をかける。
「情念だと!?」
「そうだ。出来たばかりの世間知らずのおまえには分かるまい。人が人を思う気持ちの強さを。まあ、エクレア少年の場合は天使だがな。」
シューのエクレアを思う気持ちの強さが、今のシューの強さになっている。
「血・・・血・・・血・・・。」
シューはエクレアを甦らせるまでは、例え相手が強敵であっても諦めない。
「こんなひ弱な人間のどこに、こんな力があるというのだ!?」
アダイブ・シエルは神が作った新しい天使かもしれないが、たかが人間のシューに気圧されてしまっている。
「クスッ。アダイブも大したことが無いのね。」
「ヘカテー!?」
その時、ヘカテーが前に出て話し始める。
「まずシューの剣は天使エクレアの血を吸ったブラッディソード。これで神が想像した、あなたと同じ天界の属性を持ち、冥界の女王ペルセポネーの血を吸ったあなたに対し、シューは冥王ハーデース様の血を吸ったんだから、レベルが上がって強くなっていても、なんの不思議もないでしょうに。」
ヘカテーはアダイブ・シエルに近づいていく。
「ヘカテー、アダイブを冥界に招き入れたのはおまえか?」
「はい。ハーデース様。」
ヘカテーは最後の笑顔を最愛のハーデースに見せる。
「あなたと結婚できなかった、私の愚かな嫉妬心です。」
ヘカテーの背後に牙をむき出しにしたアダイブ・シエルが迫る。
「さようなら、愛するハーデース様。」
アダイブ・シエルの牙がヘカテーの首筋に刺さり血を吸い始める。

つづく
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